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内視鏡下鼻内副鼻腔手術 [DVD付]
副鼻腔疾患から頭蓋底疾患まで

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東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科およびそのグループが総力を挙げて編集・執筆した内視鏡下鼻内副鼻腔手術(endoscopic sinus surgery;ESS)および頭蓋底手術のスタンダードテキスト。書籍の解説と付録DVDを同時に活用することで、手術の実際をより詳細・確実に理解することができる。これからESSを学ぼうとする若手医師からESSに習熟するベテラン医師まで、すべてのESS術者に贈る。
編集 森山 寛 / 春名 眞一 / 鴻 信義
発行 2015年05月判型:A4頁:336
ISBN 978-4-260-02094-7
定価 19,800円 (本体18,000円+税)

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編集の序

 東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科(以下,慈恵医大)ならびにその関係者は,90有余年にわたり鼻内経由の副鼻腔手術(高橋研三:鼻内整形術,高橋 良:鼻腔側壁整復術)の理論体系の確立(基礎的・臨床的研究)とその実践を行ってきた.そしてその理論に基づいて1980年にわが国において初めて,硬性内視鏡を使用して全副鼻腔を開放する鼻内手術を報告した.その後,教室一丸となって手術手技の改良が加えられ,わが国における内視鏡下鼻内手術の普及の端緒となった.また慈恵医大において1992年より“内視鏡下鼻内手術の研修会”を開催し,講義・解剖ならびに手術見学を通して内視鏡下の鼻内副鼻腔手術のconcept,理論により裏付けられた安全で的確な手術手技を学んでいただくなど,内視鏡下鼻内副鼻腔手術(endoscopic endonasal sinus surgery,以下ESS)の普及に努めてきた経緯がある.
 それを受けて1995年に教室の足川力雄先生,内田豊先生と森山寛ならびに内視鏡に造詣の深い山下公一先生(金沢医科大学)による『内視鏡下鼻内手術 臨床解剖と手技』が医学書院より刊行された.この本は足川先生の長年の業績の1つである副鼻腔の組織大切片を数多く掲載するなど,臨床解剖を含めて多彩で豊富な内容となった.またこの本はわが国初の本格的なESSに関する手術書であり,予想をはるかに上回る部数を重ね,多くの耳鼻咽喉科医に愛読された.
 この本の発刊から20年が経過したが,その間にESSは急速に普及し,鼻科手術の主流となった.そして光学機器の改良や手術支援機器の開発により,鼻内経由の内視鏡下手術は,副鼻腔炎などの副鼻腔疾患のみならず,周辺臓器である眼窩ならびに頭蓋底疾患に対しても適応が拡大されてきた.このような手術手技の進歩ならびに医療機器・資材の改良進歩もあり,ESSに関する事項が包括的に学べる新たな手術書が必要となってきた.そこで今回,臨床解剖をはじめESSの基本手技から応用編ならびに頭蓋底疾患にいたるまでの幅広い分野を,正しい手技で丁寧に解説するとともに,実際の手術ビデオを併用しさらに理解を深めていただく工夫を行った.本書の執筆者や動画の術者の所属大学・病院はさまざまであるが,すべて慈恵医大の関係者であり,conceptや手技は統一されているので,どの章を開いても基本的事項は同じであり,読者に十分に満足してもらえる内容になっているものと確信している.
 本書の編集・執筆に際しては1年半以上の年月をかけ,実際の症例写真やビデオを丹念に選び,若手医師から経験のある術者まで幅広い層の医師にできるだけわかりやすく解説することを心がけた.手術においてその手技は大事であるが,最も重要なのは基本的な考え方である.本書ではこれらの点にも十分な配慮を行った.本書が多くの医師に利用され,わが国の鼻科手術(ESS)の安全性ならびに手技・治療成績の向上に役立つことを切に希望する.
 最後になるが,本書を出版するに当たり,企画の初めからお世話になった渡辺一氏をはじめとする医学書院の方々に厚くお礼を申し上げる次第である.

 2015年4月吉日
 森山 寛
 春名眞一
 鴻 信義

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編集の序

総論
 1 内視鏡下鼻内副鼻腔手術(ESS)の基本概念
 2 ESSの歴史
 3 鉗子類,光学機器
 4 手術支援機器と使用法
 5 術前の検査とケア
 6 鼻副鼻腔炎病態とESS
 7 好酸球性副鼻腔炎の取り扱い
 8 慢性副鼻腔炎に対する内視鏡下の鼻副鼻腔手術分類
 9 麻酔
 10 パッキング資材
 11 術後のケア

第1章 鼻腔・鼻翼の手術
 1 鼻茸切除術
 2 下鼻甲介手術
 3 鼻中隔手術
 4 鼻中隔前方の弯曲に対する鼻中隔矯正術と外鼻形成術
 5 蝶口蓋孔へのアプローチ

第2章 副鼻腔の手術
 1 前篩骨洞手術
 2 後篩骨洞手術
 3 上顎洞手術
 4 endoscopic modified medial maxillectomy(EMMM)
 5 前頭洞手術
 6 蝶形骨洞手術
 7 再手術症例への対応

第3章 その他の疾患に対するESS
 1 小児鼻副鼻腔炎
 2 上顎洞嚢胞
 3 その他の副鼻腔嚢胞
 4 鼻性眼窩内・頭蓋内合併症
 5 鼻涙管閉塞
 6 外傷
  A 眼窩壁骨折-鼻内的アプローチ
  B 眼窩壁骨折-combinedアプローチ
  C 視神経管開放
 7 腫瘍
  A 乳頭腫
  B 若年性血管線維腫
  C 悪性腫瘍

第4章 副損傷の原因と対応
 1 篩骨動脈損傷
 2 顎動脈・蝶口蓋動脈損傷
 3 眼窩内側壁損傷
 4 視神経損傷
 5 内頸動脈損傷
 6 髄液漏

第5章 頭蓋底手術
 1 頭蓋底の臨床解剖
 2 頭蓋底へのアプローチ
  A 鼻内法
  B combined法
 3 各種頭蓋底病変に対するESS
  A 嗅神経芽細胞腫
  B 下垂体腫瘍
  C 錐体尖部コレステリン肉芽腫症
  D 斜台病変

索引

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今日の内視鏡下鼻内副鼻腔手術の理論体系を見事に確立
書評者: 川内 秀之 (島根大教授・耳鼻咽喉科学/日本鼻科学会理事長)
 300頁余を擁する本書は,鼻・副鼻腔あるいは関連領域の疾患に関する外科的治療について解説した,国内最高の教科書といえる。後世に残る歴史的なstate-of-the-artである。書評を依頼され読んでいくうちに,自分にフルボディのビンテージの赤ワインを味わう資格があるのかと,自問自答するはめになった。そのため,小職が多忙な仕事の合間を縫い時間をかけて熟読するのに2か月を要した。その理由には,二つの大きな要素がある。第一の理由は,本書が単なる内視鏡を用いた鼻副鼻腔手術の技術的な解説書ではなく,高橋研三先生に端を発し高橋良先生に受け継がれ,多くの東京慈恵会医科大学の諸先輩の長年の努力により,熟成され築かれてきた集大成の結実であることをひしひしと感じたからである。第二の理由は,臨床医学としての鼻副鼻腔手術の技術革新に貢献する手法として,本書には鼻副鼻腔の機能解剖に関する研究の歴史と深い造詣が基盤にあり,東京慈恵会医科大学方式と謳われる今日の内視鏡下鼻内副鼻腔手術(endoscopic sinus surgery ; ESS)の理論体系が見事に確立されている点である。素晴らしい成書であると賞賛し感嘆するほかない。

 各論に少々触れてみると,編者の森山寛名誉教授が述べておられるように,ESSを志す若手の耳鼻咽喉科医から,症例経験の多い術者まで,幅広く,座右の銘として使える仕様になっている。付録のDVDは,解説書の理解を容易にし,その情報が2次元的に読者の脳に入ってくる。

 また本書には,鼻副鼻腔疾患を有する患者の鑑別診断,局所所見や画像診断からの術前の病変の熟読から,内視鏡手術を施行するに当たっての術前の準備,術中の対応,術後の患者のケアがきめ細かく記載されている。また,それらの実施を完璧にするため,種々の医療材料や手術器具の使い方についても,微に入り細に入り紹介されており,ESSを行う読者のニーズに対応するencyclopedia(百科事典)と言っても過言ではない。慢性副鼻腔炎や鼻茸の手術はもちろんのこと,鼻中隔手術,外傷や腫瘍,各種頭蓋底病変に対する内視鏡手術についても,詳細な臨床解剖に基づいた手術手技が紹介されている。さらに手術の際の副損傷に関しても,その要因や予防について詳細にかつ誠実に解説されており,現場で手術を担当している医師には大変貴重な情報である。慢性副鼻腔炎の内視鏡手術の新たな手術分類や好酸球性副鼻腔炎に関する病態,外科的治療などについても詳細に言及されており,最新の内容をも網羅している。

 熟読した結果,余計なお世話と言われるが,いくつかの小さな変更すべき点も見つけるに至った。しかし,耳鼻咽喉科医になって33年を過ごし,教授職に奉職して21年が過ぎた自分だが,こんなに熟読した素晴らしい手術書は後にも先にも出てこないと確信している。半世紀以上前に東京慈恵会医科大学を中心として日本で始まった鼻内手術の伝統は,医療用硬性内視鏡と手術機器の技術革新により,そのコンセプトが見事に結実され,今や全世界に百花繚乱のごとく浸透した。

 最後に,この成書が英文に翻訳され,森山,春名,鴻の各氏のご努力と名声が全世界に行き渡ることを願ってやまない。
書籍本体とDVD(動画)によりESSの基本から応用までがよくわかる
書評者: 甲能 直幸 (杏林大教授・耳鼻咽喉科・頭頸科学/佼成病院院長)
 このたび医学書院より,『内視鏡下鼻内副鼻腔手術—副鼻腔疾患から頭蓋底疾患まで』が刊行された。鼻の慈恵と言われた伝統を受け継ぐ,東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科森山教室の総力を挙げた鼻の内視鏡下手術の集大成である。鼻副鼻腔手術で鼻外手術から鼻内手術,そして内視鏡下の手術へと至る,歴史を踏まえた,内視鏡手術の全てがわかりやすく解説されている。

 本手術の基本概念は,鼻腔の形態を是正し,副鼻腔の換気と排泄の改善を図り,副鼻腔の空洞性治癒と洞内粘膜の炎症の軽減を目指すことであると,総論で述べられている(本文6ページ)。この目的を達成するためには,(1)副鼻腔の単洞化,(2)洞内粘膜の保存,(3)鼻腔形態の是正(鼻中隔弯曲の矯正を含む),(4)中鼻甲介・上鼻甲介の保存,が必要となる。本書はこの基本的な考え方をもとに,低侵襲で精度および患者満足度の高い治療を求めて術式の改良が行われた結果の書である。

 内視鏡下鼻内副鼻腔手術の普及には光学機器,手術関連機器,ナビゲーションシステムの発達が大きく貢献した。しかし一方で,器械が新しくなると,その使い方,扱い方にもいわゆるコツが必要となる。コツを誤ると思わぬ障害を引き起こすことになる。手術手技の解説書において非常に重要な項目は副損傷に関する記述である。本書ではマイクロデブリッダーや鼻内用高回転バーなどの手術器具の正しい操作(してはならない操作,危険な操作),損傷時の対応が適切にまとめられており,大いに参考になると思われる。また,付録DVDにまとめられている手術操作の動画も,器具の用い方や動かす方向など,文章では十分に表現しにくい詳細な部分の理解に役立つし,繰り返し見ることでイメージトレーニングにも有用である(Good surgeons operate well. Great surgeons know how to manage their own complications/by Moshe Schein)。

 そして,頭蓋底疾患に対する鼻腔経由のアプローチは,ナビゲーションシステムの発達や手術器具の進歩とともに普及した。本書では最先端の手法について紹介されているが,この分野はこれからさらに新しい技術革新が行われる可能性を秘めている。

 慈恵医大耳鼻咽喉科の内視鏡下鼻内副鼻腔手術における第一線の先生方の英知の結集とも言える本書が,日常の医療において多くの医師に有効に利用されることを願っている。
経鼻頭蓋底手術を施行する脳神経外科医に必須のテキスト
書評者: 佐伯 直勝 (千葉大教授・脳神経外科学)
 本書は経鼻的内視鏡下下垂体・頭蓋底手術を行う脳神経外科医に必須の書籍である。これから本法を学ぼうとする若い医師から習熟したベテラン医師まで,全ての術者にお勧めする。

 私は,経鼻内視鏡下単独頭蓋底手術を始めた2006年に,東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科の鼻内内視鏡研修会を見学させていただいた。慈恵大耳鼻咽喉科は1992年よりいち早く本領域の研修会を開催し,日本でも一番の歴史を誇っていた。熱気あふれる解剖学教室で,3日間にわたり教室の先生方が,全国からの若い先生方を丁寧に教育・指導されていた。一番印象に残っているのが,森山寛先生のライブサージェリーのデモンストレーションであった。その数十分に及ぶ操作の間,内視鏡先端をほんの1,2回だけ洗浄しただけであった。とてもきれいな手術野であった。

 今回,鼻内内視鏡手術を日本でいち早く開始し,常に本領域のリーダーとして活躍してこられた慈恵大耳鼻咽喉科学教室の先生方が,本書を刊行された。長い歴史を誇る研修会で培った本法に対する思い入れやノウハウが詰まっている。経鼻手術の,術前後の準備,ケア,器具,鼻腔・副鼻腔手術法,下垂体・頭蓋底手術,そして,合併症への予防・対応法など,耳鼻咽喉科領域からの考え方,工夫が述べられている。

 さらに本書で特に有用なのが,付録DVDによる頭蓋底の臨床解剖,鼻内法およびcombined法の各アプローチ,各種病変に対する内視鏡下鼻内副鼻腔手術として嗅神経芽細胞腫,下垂体腫瘍,錐体先端コレステリン肉芽腫症,斜台病変について,順を追って丁寧に説明されている点である。

 特に印象に残るのが,蝶口蓋動脈,前後篩骨動脈といった鼻粘膜の血管解剖を丁寧に描写している点などであり,私たち脳神経外科医にとり比較的なじみが薄いものの,こういった鼻腔粘膜を操作する際の必須の情報も見逃せない。

 経鼻頭蓋底下垂体手術を行っている脳神経外科医は,耳鼻咽喉科医の仲間と常に診療できているかというと,その実情はさまざまである。アプローチの際,通り道でありながら相当の部分を耳鼻咽喉科の先生の助けを借りずに行っていることが多いのではないかと思う。

 本領域に携わる脳神経外科医は,積極的に耳鼻咽喉科医から学び,できるだけ共同作業を行う努力をすべきである。本書はそういった実情と心構えを持つ経鼻頭蓋底手術を学び施行する脳神経外科医に必須の良書である。

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