分娩介助学 第2版

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正常分娩から異常分娩まで、そのメカニズムと介助のしかたを丁寧に解説。母子の安全・快適な出産を成就するために、分娩介助者に必要な知識と技術を網羅している。分娩介助を学べるとともに、医療従事者として当たり前と思っていることに一石が投じられており、あらためて分娩のあり方を考えさせられる。
進 純郎
発行 2014年02月判型:B5頁:352
ISBN 978-4-260-01886-9
定価 5,280円 (本体4,800円+税)

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第2版 序

 2005年に本書『分娩介助学』の初版が誕生した.わが国では1980年代初頭にカルデイロ・バルシアが行った自然分娩回帰に関する講演を機会に,それまでの積極的管理分娩の見直しが唱えられるようになった.時を同じくしてジャネット・バラスカスがアクティブ・バースを唱え,わが国ではフリースタイル出産という考えが助産師の間に広まり,助産の世界に新しい時代の光がようやく差し込んでくると思われた.しかし20世紀末の医療万能の時代は「安全・安心・満足」のためには医療の介入が不可欠であると声高に叫ばれ,自然な出産はむしろ危険な出産方法であると隅に追いやられてしまった.そんな中で,産む女性の主体性を損なう医療介入にアンチテーゼを唱え,出産のあり方を見直したいという熱い思いが本書の出版へと駆り立てたのである.しかし,出産への医療の介入を否定したものではなく,あらゆる出産方法を網羅し産科医にも助産師にも役立てられるものを目指した.
 初版が出版されてから,すでに8年の星霜を経た.医学の世界では5年が一昔とよく言われる.この8年間に日本の産科医療には大きな変革が生じた.初版が出版された翌年,大野病院事件が発生し産科医は「訴訟」という言葉に極めて敏感になり,産科医の現場離れが加速し産科医は「絶滅危惧種」とまで言われるようになり,妊婦にはお産難民という言葉が生まれた.2009年には産科医療補償制度が作られ,分娩に関連して新生児に脳性麻痺が残った場合には医師に過失がない場合でも保険制度で補償することが可能になった.産科医は少しでも危険なお産を回避しようと帝王切開を選択することが多くなり,医療介入が進む中でできるだけ経腟分娩を目指そうとの思いが薄れてきている.骨盤位分娩や鉗子分娩ができる若い産科医はもうほとんどいないのではないかという不安にかられる.そんな中で助産師に対する期待が高まり,最近では多くの施設で助産外来,院内助産などが行われ,できるだけ医療介入のない自然なお産を見直そうという風潮も出現してきている.
 産科,周産期医療の分野では胎児心拍数モニタリングの新しい判読法,新生児仮死蘇生法の普及事業,超音波断層装置の進歩など安全・安心なお産に向けてさまざまな取り組みが始まっている.これらのことを斟酌し,もう一度本書を時代のニーズに応えられるように改訂することにした.それでも,骨盤位分娩介助法や鉗子分娩の手技など産科医として決して忘れてはならない技も網羅した.また,助産師主体の自然なお産のためのさまざまな分娩体位や会陰裂傷縫合などに関しても実地臨床に役立つように改変した.本書を紐解く産科医や助産師の皆さんに少しでもお役に立てればこれ以上の歓びはありません.
 今回の改訂では2色化に伴い,イラストもより美しくわかりやすくなった.初版の制作にご尽力いただいた制作部の岡田幸子氏に今回もご助力いただき感謝の念を禁じ得ません.また,第2版改訂にさまざまな角度からご教示くださった看護出版部の藤居尚子氏に厚く感謝申し上げます.

 少しでも「よいお産」の遂行のために役立つことを希求して本書を世に送る.

 2014年1月
 進 純郎

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総論
 1 世界と日本のお産の歴史
   1.世界のお産
   2.日本のお産
 2 出産におけるパラダイムと自然なお産
   1.出産におけるパラダイム
   2.自然なお産
 3 WHOの59カ条と新しいお産の考え方
   1.医学的に正しいお産を保証する59カ条
   2.ルーチンの医療処置を見直す

各論
 1 分娩の3要素
   1.骨盤底筋群
   2.子宮の支持靭帯
   3.子宮
   4.骨盤形態
   5.児頭の構造と各径線
   6.胎位,胎向,胎勢
   7.正常回旋機転
   8.軟産道
 2 さまざまな分娩体位
  分娩体位の分類と出産への影響
   1.分類
   2.出産への影響
  仰臥位分娩
   1.特徴
   2.介助の実際
   3.介助のポイント
  その他の分娩体位
   1.体幹直立位
   2.体幹水平位
   3.水中出産
   4.さまざまな分娩体位と分娩中の過ごし方
   5.分娩体位 その変遷と今後のありよう
 3 児頭の回旋・進入・胎位・胎勢の異常
   1.進入の異常
   2.回旋の異常と内診所見
   3.胎位の異常
 4 児頭下降度と分娩進行度の評価
   1.児頭下降度の機能的診断法と矢状縫合の触診
   2.分娩進行度の表現
   3.子宮頸管括約筋の構築と頸管の変化
 5 分娩の進行とその異常
   1.フリードマン曲線による正常分娩の経過
   2.フリードマン曲線による初・経産婦の分娩経過
   3.フリードマン曲線の分娩遷延の見方
   4.パルトグラムによる分娩経過の診断
   5.分娩第2期遷延と排尿障害
   6.有効ないきみの考察
 6 CPDの診断とその対応
   1.骨盤形態とCPD
   2.CPDを疑う対象
   3.主なCPDの診断法
   4.児頭骨盤X線撮影法
   5.骨盤X線撮影の読影と診断
   6.CPDの診断と対応
 7 分娩時胎児心拍数モニタリング
  分娩時胎児心拍数モニタリング概説
   1.胎児心拍数関連の用語
   2.種々の心拍数のタイプ
   3.分娩監視装置モニターの読み方
   4.子宮収縮曲線の読み方
  分娩中の胎児アスフィキシアの診断
   1.分娩中の胎児アスフィキシア(無酸素症)
   2.羊水混濁と胎児アスフィキシア
   3.胎児アスフィキシアの治療
   4.分娩監視装置の有効性
 8 産痛とその対応
   1.産痛コントロールの歴史
   2.産痛とは
   3.産痛を乗り切るために
   4.陣痛(産痛)を乗り切る諸法と分娩時の指導
   5.産痛をやわらげる気功,禅,ヨーガ
   6.産痛をやわらげるアロマセラピー
   7.麻酔分娩
   8.産痛とパニック状態
 9 分娩誘発と陣痛促進
   1.分娩誘発とその適応
   2.分娩誘発の準備と誘発法
   3.陣痛の促進法
   4.子宮収縮薬の「使用上の注意」
   5.子宮収縮の異常
 10 骨盤位分娩介助術
  骨盤位概説
   1.統計
   2.分類
   3.分娩様式選択のためのパラメータ
   4.分娩のための補助操作
  骨盤位娩出法
   1.骨盤位娩出法の種類と骨盤位分娩のメカニズム
   2.骨盤位の管理と分娩誘発法
   3.自然娩出介助法
   4.骨盤位牽出術
  骨盤位の予後
  骨盤位は経腟分娩か帝王切開か
 11 肩甲難産
   1.定義と頻度
   2.原因と診断
   3.肩甲娩出機転と児頭娩出後の難産の発生機転
   4.肩甲難産の娩出法
   5.肩甲難産の合併症
 12 双胎の分娩
   1.胎位
   2.三(品)胎と双胎の妊娠・分娩経過の比較
   3.経腟分娩と双胎間輸血症候群
   4.経腟分娩と懸鉤
   5.分娩様式
   6.経腟分娩管理
   7.第2児の分娩時well-beingの比較
 13 会陰裂傷・切開と縫合法
   1.会陰切開の歴史
   2.会陰切開・縫合に必要な外陰の基本解剖
   3.会陰裂傷
   4.会陰裂傷にかかわる因子
   5.会陰切開
   6.縫合法
   7.第3,4度会陰裂傷縫合,直腸腟瘻の縫合法
   8.縫合による問題
   9.会陰切開は本当に必要か
 14 吸引分娩
   1.吸引器の歴史
   2.娩出器の構造と娩出力
   3.吸引分娩の適応と要約
   4.吸引分娩の実際
   5.吸引分娩が母児に与える影響
   6.吸引分娩と鉗子分娩の比較
 15 鉗子分娩
   1.鉗子の歴史
   2.鉗子の種類
   3.鉗子の構造
   4.鉗子の機能
   5.鉗子分娩の適応と要約
   6.鉗子分娩の合併症
   7.鉗子の選択
   8.鉗子手術の種類と術式
   9.後頭位鉗子手術(1) 前方後頭位鉗子手術
   10.後頭位鉗子手術(2) 後方後頭位鉗子手術
   11.前頭位鉗子手術 前方前頭位鉗子手術
   12.低在横定位鉗子手術
   13.後続児頭鉗子手術
   14.殿位鉗子手術
   15.鉗子手術の合併症
 16 帝王切開
   1.帝王切開の歴史と頻度
   2.帝王切開の麻酔
   3.基本的手術術式
   4.早産での帝王切開
   5.骨盤位の帝王切開
   6.帝王切開後の経腟分娩
 17 新生児仮死の診断と対応
   1.定義とリスク因子
   2.新生児仮死蘇生法
   3.臍帯動脈血血液ガスと酸塩基平衡
 18 産科救急
  救急ケアの基礎知識
   1.救急ケアの基本的な考え方
   2.ショック時のバイタルサイン
   3.一次・二次救命処置の手順
   4.救急蘇生に必要な輸液・輸血
   5.産科ショック
  産科救急疾患
   1.腟・外陰血腫
   2.弛緩出血
   3.頸管裂傷
   4.子宮内反症
   5.子宮破裂
   6.常位胎盤早期剥離
   7.前置胎盤
   8.癒着胎盤
   9.羊水塞栓症
   10.子癇
   11.肺血栓塞栓症
   12.非出血性ショック

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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