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米国SWOGに学ぶ

がん臨床試験の実践


(第2版(原書第3版))

著:Stephanie Green /Jacqueline Benedetti /Angela Smith /John Crowley 
訳:JCOGデータセンター 
訳者代表:福田 治彦

  • 判型 B5
  • 頁 256
  • 発行 2013年10月
  • 定価 5,400円 (本体5,000円+税8%)
  • ISBN978-4-260-01864-7
SWOG統計センターの生物統計家による臨床試験の教科書
がん対策基本法や基本計画等が施行され、「がん治療」および「がんの臨床試験」への関心が高まっていると同時に、臨床試験の「方法論」についても勉強しなければと思っている医師、スタッフもまた少なくない。本書は、米国最大のがん臨床試験グループであるSWOG統計センターの生物統計家による臨床試験のテキスト原書第3版。翻訳はJCOGデータセンターが担当。がんの薬物療法に携わる専門家・スタッフ必読の書。
序 文
訳者序

 本書の原書“Clinical Trials in Oncology, Third Edition”は,米国最大のがん臨床試験グループ(Cooperative Group)であるSouthwest Oncology Group(SWOG)の統計家による臨床医向けの臨床試験...
訳者序

 本書の原書“Clinical Trials in Oncology, Third Edition”は,米国最大のがん臨床試験グループ(Cooperative Group)であるSouthwest Oncology Group(SWOG)の統計家による臨床医向けの臨床試験方法論の教科書である.1997年の初版,2003年の改訂第2版に続く改訂第3版となる.そして本書は,2004年に出版した,原書第2版の和訳書である前書「米国SWOGに学ぶ がん臨床試験の実践-臨床医と統計家の協調をめざして」の改訂版である.10年前,初版の翻訳が原書第2版の出版に追い越されてしまったことから,前書は原書第2版の和訳本であり,本書は和訳本としては第2版であるが,原書第3版の翻訳であるためタイトルは「第2版(原書第3版)」とした.

 今版の基本的な構成は前版を踏襲しているが,「3章 臨床試験のデザイン」の大幅な加筆に加え,相ごとの方法論がそれぞれ「第Ⅰ相試験と第Ⅰ/Ⅱ相試験」,「第Ⅱ相試験」,「第Ⅲ相試験」と独立した章となり,詳細な解説が加えられている.特に,前版以降の10年間の時代の変化を反映して,分子標的薬の試験デザインやランダム化第Ⅱ相試験,ベイズ流のCRM増量デザインの記載が充実しており,「第Ⅱ/Ⅲ相試験」の項も新たに加わった.また,「常にランダム化第Ⅱ相試験が単群の第Ⅱ相試験より適切なわけではない」といったcaveat(警告)も語られているのはSWOGの統計家ならではであり,興味深く読んでいただけると思う.EDC(electronic data capturing)については,前版出版時にはまだSWOGも導入しておらず,やや否定的な記述であったが,現在はSWOGもEDCに完全移行していることから,肯定的なスタンスで大幅に記載が追加されている.

 日本語訳に関しては,前書の時も何度も推敲し,誤訳がないよう,わかりやすい日本語であるよう,ベストを尽くしたと思っていたが,8年を経て読み返してみると誤訳がわかった箇所や,より適切な日本語表現が可能な箇所が散見された.そのため,原書が変更されていない部分も含めて全体を綿密に推敲し直している.また,前書と同様,そのまま訳しただけでは理解しづらいと思われた,日米の環境の違いがある部分や聖書の引用箇所,原書の説明だけでは不親切と思われた箇所については,適宜「訳注」を付して解説を加えた.さらに統計用語については,前書より積極的にカッコ付で原語を付した.英語論文を読む際に役立てていただけるのではないかと自負している.

 前版の序でも述べたとおり,本書にみるSWOGの方法論の基本は“simple and conservative”である.統計用語の“conservative”とは「真にはよくないものをよいと誤って判断する偽陽性の誤りを小さくすることを優先する立場・態度・方法」を指し,試される試験的治療や新薬の成功確率が低い(第Ⅰ相に入った薬剤が承認に至る確率は循環器薬の20%に対して抗がん薬は5%)がんの臨床試験における行動哲学として訳者らもそれを支持する.この“simple and conservative”を念頭に置いて本書を読むことでSWOGの方法論の理解がより深まることと思う.

 前版発刊から9年を経たが,里見清一氏こと国頭英夫先生によるユニークな著書「誰も教えてくれなかった癌臨床試験の正しい解釈」(中外医学社,2011年)は例外として,依然,がんの臨床試験に特化した系統的な教科書は刊行されていない.この9年の間,2006年には「がん対策基本法」ができ,2007年の「がん対策推進基本計画」に基づいて「がん診療連携拠点病院」の整備が進められてきたが,がん診療連携拠点病院は「がん診療の均てん化」が主目的とされたため,これまでは「臨床研究機能」は求められてこなかった.しかし,今年の「がん診療提供体制のあり方に関する検討会」ではがん診療連携拠点病院の「臨床研究機能の強化」が謳われており,来年度からは,がん診療連携拠点病院にも「多施設共同臨床研究」への貢献が求められようとしている.がん臨床試験の重要性がさらに高まろうとしているこの時期に本書を発行できたことは訳者らにとって大きな喜びである.本書が,がん臨床試験に携わる人々の臨床試験方法論の正しい理解の一助となることを通じて,がん患者さんに「よりよい治療」を届けることに貢献することを祈念したい.

 2013年8月
 訳者代表 福田治彦
書 評
  • がん臨床試験における行動哲学を学ぶために必携の書
    書評者:北川 雄光(慶大教授・外科学/同大腫瘍センター長)

     SWOG(The Southwest Oncology Group)は,1956年に創設され,400以上の医療機関,のべ4,000人以上の医師が臨床試験に参加し,2,000を超える学術発表を行ってきた米国最大のがん臨床試験グループである。本書は,SWOGの統計家が臨床医に向けて発刊した臨床試験方法...
    がん臨床試験における行動哲学を学ぶために必携の書
    書評者:北川 雄光(慶大教授・外科学/同大腫瘍センター長)

     SWOG(The Southwest Oncology Group)は,1956年に創設され,400以上の医療機関,のべ4,000人以上の医師が臨床試験に参加し,2,000を超える学術発表を行ってきた米国最大のがん臨床試験グループである。本書は,SWOGの統計家が臨床医に向けて発刊した臨床試験方法論の解説書の和訳書第2版であり,訳者は,国立がん研究センター多施設臨床試験支援センター長,福田治彦氏を代表とするJCOG(Japan Clinical Oncology Group)データセンターのメンバーで構成されている。JCOGは1978年に発足し,現在16研究グループ,約200の医療機関が参加するわが国最大のがん臨床試験グループである。したがって本書は,わが国最大のがん臨床試験グループJCOGが最も信頼を寄せ,同様の「哲学」を共有すると考えている米国SWOGの臨床試験方法論を渾身の力を込めて紹介した教科書であるといえよう。

     原書では,「conservativeな」行動哲学が一貫して貫かれている。この厳格なポリシーは訳者が序文で紹介しているように,「真にはよくないものをよいと誤って判断する偽陽性の誤りを小さくすることを優先する立場」であり,分子標的薬をはじめとする高額な薬剤が相次いで開発されるがん臨床試験の現場では極めて重要な哲学といえる。本書は単なる統計学的方法論の解説書ではなく,臨床試験を立案遂行する上でのまさに行動哲学を示した骨太の教科書となっている。この第2版(原書第3版)では,分子標的薬の試験デザインの特殊性などに関する新たな記述が加わり,臨床試験方法論は,時代の趨勢,要請に応えて刻々と進化するものであることを痛感させられる。

     本書の傑出した信頼性を支えているのは,原書の厳格な記述のみならず,訳者の厳密なまでに原著に忠実な和訳と綿密な推敲である。翻訳に際して,さまざまな用語を原書の主旨を忠実に読み解いて厳密に定義し,原書よりもむしろ明確な使い分けがなされている。例えば,原書において単に「survival」と表現されている場合,広義の概念を包含する「survival time」を意味する場合には「生存時間」と訳し,「overall survival」を意図した表現の場合には「生存期間」と翻訳されている。まさに,臨床試験方法論のプロならではの厳密な翻訳といえよう。

     随所にみられる訳注からは,訳者らの究極の「こだわり」が伝わってくる。原書では各章の冒頭に,象徴的なエピソードや意味深な名言が掲げられている。その意味するところを読み解くために読者は各章の記述に吸い寄せられていくという粋な構成になっている。時には日本人に馴染みの薄いキリスト教社会の慣用的表現などが登場するが,訳者は丹念な調査の上で,正確な訳注を加え,原書の格調を損なうことなく読者の理解を導いてくれている。統計用語にはあえて原語が併記され,読者が国際舞台において英語で討論する際や,論文を執筆する際の大きな助けとなっている。

     教育機関,センター施設でacademicな活動に携わる臨床医にとって基礎研究業績を積み重ねることも重要であるが,最終目標である「よりよい治療を届ける」ためには研ぎ澄まされた「臨床研究機能」を体得することが必須であり,最重要な要素であることは言うまでもない。本書は,これから日本のがん臨床試験に携わるすべての若手臨床医が正確なエビデンスを世界に向けて発信するための道標となる必携の書であると考える。評者自身は,早速本学のがんプロフェッショナル養成コース大学院生たちのために本書を購入したが,その後,本書印税がJCOG運営資金に当てられると聞いて,臨床試験方法論の「布教」のために労を惜しまない訳者らの決意と献身にあらためて感服した次第である。
目 次
1章 序章 Introduction
 1.1 臨床試験の歴史 A Brief History of Clinical Trials
 1.2 The Southwest Oncology Group(SWOG)
 1.3 この本を書いた理由 The Reason for This Book

2章 統計的概念 Statistical Concepts
 2.1 はじめに Introduction
 2.2 単群第Ⅱ相試験:推定 The Single-Arm Phase Ⅱ Trial―Estimation
 2.3 ランダム化第Ⅲ相試験:仮説検定
    The Randomized Phase Ⅲ Trial―Hypothesis Testing
 2.4 比例ハザードモデル The Proportional Hazards Model
 2.5 サンプルサイズの計算 Sample Size Calculations
 2.6 おわりに Concluding Remarks

3章 臨床試験のデザイン The Design of Clinical Trials
 3.1 目的 Objectives
 3.2 適格性 Eligibility
 3.3 治療群(アーム) Treatment Arms
 3.4 治療群のランダム割付 Randomized Treatment Assignment
 3.5 エンドポイント Endpoints
 3.6 検出すべき差と推定の精度およびその他の仮定
    Differences to be Detected or Precision of Estimates and Other Assumptions
 3.7 独立データモニタリング委員会
    Use of Independent Data Monitoring Committees
 3.8 倫理に関する考察 Ethical Considerations
 3.9 まとめ Conclusion

4章 第Ⅰ相試験と第Ⅰ/Ⅱ相試験 Phase Ⅰ and Phase Ⅰ/Ⅱ Trials
 4.1 第Ⅰ相試験 Phase Ⅰ Trials
 4.2 第Ⅰ/Ⅱ相試験 Phase Ⅰ/Ⅱ Designs

5章 第Ⅱ相試験 Phase Ⅱ Trials
 5.1 単群の第Ⅱ相試験デザイン Single-Arm Phase Ⅱ Designs
 5.2 多群第Ⅱ相試験 Multi-Arm Phase Ⅱ Trials
 5.3 その他の第Ⅱ相試験デザイン Other Phase Ⅱ Designs
 5.4 ランダム化 対 単群:利点と欠点
    Randomized versus Single Arm : The Pros and Cons
 5.5 結論 Conclusion

6章 第Ⅲ相試験 Phase Ⅲ trials
 6.1 ランダム化 Randomization
 6.2 デザインに関するその他の考察 Other Design Considerations
 6.3 同等性試験または非劣性試験 Equivalence or Noninferiority Trials
 6.4 分子標的薬に対するデザイン Designs for Targeted Agents
 6.5 多群(3群以上)の試験 Multi-Arm Trials
 6.6 中間解析 Interim Analyses
 6.7 第Ⅱ/Ⅲ相試験 Phase Ⅱ/Ⅲ Trials
 6.8 まとめ Concluding Remark

7章 データマネージメントと品質管理 Data Management and Quality Control
 7.1 はじめに:なぜ,気にするのか? Introduction : Why Worry?
 7.2 プロトコールの作成 Protocol Development
 7.3 データ収集 Data Collection
 7.4 データの提出 Data Submission
 7.5 データの評価 Data Evaluation
 7.6 公表 Publication
 7.7 品質保証のための監査 Quality Assurance Audits
 7.8 トレーニング Training
 7.9 データベース管理 Database Management
 7.10 まとめ Conclusion

8章 結果の報告 Reporting of Results
 8.1 レポートのタイミング Timing of Report
 8.2 必要な情報 Required Information
 8.3 解析 Analyses
 8.4 まとめ Conclusion

9章 落とし穴 Pitfalls
 9.1 はじめに Introduction
 9.2 ヒストリカルコントロール Historical Controls
 9.3 競合リスク Competing Risks
 9.4 別のアウトカムを用いてアウトカムを解析すること
    Outcome by Outcome Analyses
 9.5 サブセット解析 Subset Analyses
 9.6 代替エンドポイント Surrogate Endpoints

10章 探索的な解析 Exploratory Analyses
 10.1 はじめに Introduction
 10.2 若干の背景と注記 Some Background and Notation
 10.3 予後因子の同定 Identification of Prognostic Factors
 10.4 リスクグループの作成 Forming Prognostic Groups
 10.5 マイクロアレイデータの解析 Analysis of Microarray Data
 10.6 メタアナリシス Meta-Analysis
 10.7 おわりに Concluding Remarks

11章 要約と結論 Summary and Conclusions

文献
索引