救急整形外傷レジデントマニュアル
当直医必携! 整形外科疾患への対応はこれで解決!
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整形外科医「以外」のための整形外科当直マニュアル。この本さえあれば、当直中の整形外科疾患の対応には困らない。どの時点で専門医にコンサルトすればよいかも判断できる。診療中に常備しておきたい整形外傷本の決定版! 救急医療の現場で直ちに実践できる具体的手技、レントゲンで骨折を見逃さないための読影のコツ、緊急性がある疾患か否かの鑑別ポイント、入院か帰宅の適応や専門機関転送の判断など、要点を簡潔に記載。
*「レジデントマニュアル」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ | レジデントマニュアル |
---|---|
監修 | 堀 進悟 |
執筆 | 田島 康介 |
発行 | 2013年10月判型:B6変頁:192 |
ISBN | 978-4-260-01875-3 |
定価 | 3,850円 (本体3,500円+税) |
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序文
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監修の序(堀 進悟)/序:読者へのメッセージ(田島 康介)
監修の序
『救急レジデントマニュアル』は,救急診療を怖がらずに実行するための実践マニュアルである.しかし,整形外傷の記載が十分ではないことを残念に思っていた.そのため,良い副読本がないかと真剣に探していたが見つからなかった.本書の著者は,整形外科専門医であるが,同時に救急医としてERであらゆる傷病を診療できる医師である.この著者が非整形外傷を診療する手際は,整理されて無駄がなく,しかも安全である.さらに,整形外傷の処置を,面白く楽しく,同僚の救急医に教えることが上手である.そこで,『救急レジデントマニュアル』の副読本を書いてほしいと依頼したところ,あっという間に原稿が出来上がり,親本第5版と同時に上梓されることとなった.
整形外科医は,一般医が整形外傷を診る際に「何を悩むか」がわからない.したがって,一般医が既刊の整形外科教科書を読んでもわかりにくく,ピンとこない.ピンとこないので,面白くなくなり,嫌になり,勉強しない.患者を診なくなる.これは悪循環である.本書の著者はその点を熟知しており,救急外来で非整形外科医が知るべき知識と行うべきスキルを選別し,救急外来で役に立つことを優先してコンサイスにまとめた.読者は整形外傷を怖がらなくなり,処置を行うことが楽しくなる.楽しくなれば,患者の診かたが深くなり,スキルは向上する.しかも,整形外科専門医との棲み分けが明快で,ここまで行ってよいという区分も明解に述べられた.『救急レジデントマニュアル』とはスタイルが異なり,叙述風に記載されたことも,理解のための副読本として適している.今までになかった,読者の高いニーズを満たすマニュアルと思う.
救急医療の質を高めるには,非専門医の診療レベルを高め,専門医が本来の専門性を発揮できるようにするべきである.しかしこの点が,医学の各領域でないがしろにされてきた.本書は,救急診療に携わる非整形外科専門医(研修医,救急医,あるいは他の外科系医師)のための整形外傷の好適な入門書と言えよう.
2013年9月
堀 進悟
序:読者へのメッセージ
このたび,『救急レジデントマニュアル』の整形外科関連の内容を拡充した『救急整形外傷レジデントマニュアル』を刊行することになった.本書は,救急外来や当直者が使用することを目的として執筆された「整形外科医以外のための整形外科の本」であり,すでに書店で陳列されている整形外科の各種マニュアルとは異なった性格である.たとえば,整形外科の慢性疾患についてはほとんど記載がない.また,整形外科医が行う専門処置についても,一般医が施行できないと考えられるものは記載していない.一方で,救急外来で必要な手技や豆知識(とくに教科書には記載されていないような内容)を多く含んでいる.
時間外診療における外科系診療の多くは外傷であり,打撲,骨折,挫創,交通事故などの整形外科関連が最多である.救急外来や当直業務で整形外科関連の疾患に対応しなくてはならない場合,専門医でない場合は常に不安を抱えながらの診療となる.もちろん,骨折の症例が来院したら,整形外科医による整復操作とそのあとのシーネ固定を行うことが最も望ましい.しかしながら時間外に整形外科医が対応できない施設の方が圧倒的に多いのがわが国の現状である.
この現状を踏まえ,「救急外来で骨折を見逃さない」「シーネを上手に巻く」「どこまでは自分で治療してよいのか」「どこからは専門医を呼んだほうがよいのか」,こういった救急外来での不安・疑問に少しでも応えられるよう,本書がお役に立てれば幸いである.
2013年9月
田島 康介
監修の序
『救急レジデントマニュアル』は,救急診療を怖がらずに実行するための実践マニュアルである.しかし,整形外傷の記載が十分ではないことを残念に思っていた.そのため,良い副読本がないかと真剣に探していたが見つからなかった.本書の著者は,整形外科専門医であるが,同時に救急医としてERであらゆる傷病を診療できる医師である.この著者が非整形外傷を診療する手際は,整理されて無駄がなく,しかも安全である.さらに,整形外傷の処置を,面白く楽しく,同僚の救急医に教えることが上手である.そこで,『救急レジデントマニュアル』の副読本を書いてほしいと依頼したところ,あっという間に原稿が出来上がり,親本第5版と同時に上梓されることとなった.
整形外科医は,一般医が整形外傷を診る際に「何を悩むか」がわからない.したがって,一般医が既刊の整形外科教科書を読んでもわかりにくく,ピンとこない.ピンとこないので,面白くなくなり,嫌になり,勉強しない.患者を診なくなる.これは悪循環である.本書の著者はその点を熟知しており,救急外来で非整形外科医が知るべき知識と行うべきスキルを選別し,救急外来で役に立つことを優先してコンサイスにまとめた.読者は整形外傷を怖がらなくなり,処置を行うことが楽しくなる.楽しくなれば,患者の診かたが深くなり,スキルは向上する.しかも,整形外科専門医との棲み分けが明快で,ここまで行ってよいという区分も明解に述べられた.『救急レジデントマニュアル』とはスタイルが異なり,叙述風に記載されたことも,理解のための副読本として適している.今までになかった,読者の高いニーズを満たすマニュアルと思う.
救急医療の質を高めるには,非専門医の診療レベルを高め,専門医が本来の専門性を発揮できるようにするべきである.しかしこの点が,医学の各領域でないがしろにされてきた.本書は,救急診療に携わる非整形外科専門医(研修医,救急医,あるいは他の外科系医師)のための整形外傷の好適な入門書と言えよう.
2013年9月
堀 進悟
序:読者へのメッセージ
このたび,『救急レジデントマニュアル』の整形外科関連の内容を拡充した『救急整形外傷レジデントマニュアル』を刊行することになった.本書は,救急外来や当直者が使用することを目的として執筆された「整形外科医以外のための整形外科の本」であり,すでに書店で陳列されている整形外科の各種マニュアルとは異なった性格である.たとえば,整形外科の慢性疾患についてはほとんど記載がない.また,整形外科医が行う専門処置についても,一般医が施行できないと考えられるものは記載していない.一方で,救急外来で必要な手技や豆知識(とくに教科書には記載されていないような内容)を多く含んでいる.
時間外診療における外科系診療の多くは外傷であり,打撲,骨折,挫創,交通事故などの整形外科関連が最多である.救急外来や当直業務で整形外科関連の疾患に対応しなくてはならない場合,専門医でない場合は常に不安を抱えながらの診療となる.もちろん,骨折の症例が来院したら,整形外科医による整復操作とそのあとのシーネ固定を行うことが最も望ましい.しかしながら時間外に整形外科医が対応できない施設の方が圧倒的に多いのがわが国の現状である.
この現状を踏まえ,「救急外来で骨折を見逃さない」「シーネを上手に巻く」「どこまでは自分で治療してよいのか」「どこからは専門医を呼んだほうがよいのか」,こういった救急外来での不安・疑問に少しでも応えられるよう,本書がお役に立てれば幸いである.
2013年9月
田島 康介
目次
開く
第1章 創傷処置
用語の定義
創傷処置の前に
1 受傷機転の確認
2 画像検査
3 洗浄,デブリードマン
4 縫合するか否か
縫合
1 縫合糸の選択
2 麻酔方法
3 縫合方法
4 出血に対する処置
5 ドレーン挿入
6 縫合後のドレッシング
処置後のケア
1 抗菌薬の処方
2 破傷風トキソイド
3 創処置後の予定
第2章 外固定の仕方(シーネの当て方)
総論
用語の定義
外固定の原則
良肢位
ソフトシーネ
アルフェンスシーネ
シーネの巻き方
1 シーネ幅の選択の目安
2 用意するもの
3 シーネの実際
特殊な固定
1 鎖骨骨折
2 上腕骨近位部骨折(上腕骨頸部骨折・上腕骨外科頸骨折)
3 大腿骨近位部骨折(大腿骨頸部骨折・大腿骨転子部骨折),大腿骨骨幹部骨折
小児の骨折
外固定の合併症
1 皮膚潰瘍
2 神経麻痺
3 コンパートメント症候群
第3章 そのほかの基本手技
関節穿刺
1 膝関節穿刺・外側法
2 膝関節穿刺・前方法
爪下血腫の除去
トリガーポイント注射
第4章 軟部組織損傷
打撲
1 診断と治療
2 コンパートメント症候群(筋区画症候群)
靱帯損傷,捻挫
診断と初期治療
筋・腱損傷
1 開放性損傷
2 閉鎖性損傷
神経損傷
指尖部の感覚障害
血管損傷
1 止血の基本
2 止血法
3 動脈損傷部位における末梢壊死
そのほかの特殊な損傷
1 四肢や指の切断
2 デグロービング損傷
第5章 脱臼
脱臼の診断
脱臼整復時の麻酔
整復法
1 肩関節脱臼
2 指の脱臼
3 肘関節脱臼
4 股関節脱臼
5 膝蓋骨脱臼
6 膝関節脱臼
7 足関節脱臼
8 顎関節脱臼
9 そのほかの脱臼
第6章 骨折
上肢編
1 指周囲の骨折
2 手の骨折
3 手関節周囲の骨折
4 前腕部の骨折
5 肘関節周囲の骨折
6 上腕部の骨折
7 肩関節周囲の骨折
下肢編
1 足趾周囲の骨折
2 足部の骨折
3 足関節周囲の骨折
4 下腿部の骨折
5 膝関節周囲の骨折
6 大腿部の骨折
7 股関節周囲の骨折
骨盤骨折
1 まず患者受け入れが可能か判断する
2 患者が搬入されたらまず行うべきこと
3 骨盤の解剖
4 骨盤X線における骨折の評価と分類
5 CTの撮影
6 治療
7 根治手術
脊椎編
1 高エネルギーでない外傷
2 高エネルギー外傷
第7章 非外傷性疾患
一般医が知っておくべき非外傷性整形外科疾患
1 しびれ,運動麻痺
2 関節痛
3 四肢熱感(関節以外)
整形外科的愁訴の他科疾患
1 肩甲背部痛(胸背部痛)
2 腰痛
第8章 小児関連
総論
1 小児骨折の特徴
2 診断
3 患児の帰宅に際して
各論
1 肘内障
2 上腕骨顆上骨折
3 単純性股関節炎
4 大腿骨頭すべり症,上前腸骨棘剥離骨折
第9章 診断書の書き方
病院書式診断書の書き方
保険会社の診断書(通院証明)の書き方
労災関連書類の書き方
索引
MEMO
指尖部損傷におけるwet dressing
縫合後の被覆
救急外来でできる駆血法
damage control orthopaedics
Barsony(バルソニー)
用語の定義
創傷処置の前に
1 受傷機転の確認
2 画像検査
3 洗浄,デブリードマン
4 縫合するか否か
縫合
1 縫合糸の選択
2 麻酔方法
3 縫合方法
4 出血に対する処置
5 ドレーン挿入
6 縫合後のドレッシング
処置後のケア
1 抗菌薬の処方
2 破傷風トキソイド
3 創処置後の予定
第2章 外固定の仕方(シーネの当て方)
総論
用語の定義
外固定の原則
良肢位
ソフトシーネ
アルフェンスシーネ
シーネの巻き方
1 シーネ幅の選択の目安
2 用意するもの
3 シーネの実際
特殊な固定
1 鎖骨骨折
2 上腕骨近位部骨折(上腕骨頸部骨折・上腕骨外科頸骨折)
3 大腿骨近位部骨折(大腿骨頸部骨折・大腿骨転子部骨折),大腿骨骨幹部骨折
小児の骨折
外固定の合併症
1 皮膚潰瘍
2 神経麻痺
3 コンパートメント症候群
第3章 そのほかの基本手技
関節穿刺
1 膝関節穿刺・外側法
2 膝関節穿刺・前方法
爪下血腫の除去
トリガーポイント注射
第4章 軟部組織損傷
打撲
1 診断と治療
2 コンパートメント症候群(筋区画症候群)
靱帯損傷,捻挫
診断と初期治療
筋・腱損傷
1 開放性損傷
2 閉鎖性損傷
神経損傷
指尖部の感覚障害
血管損傷
1 止血の基本
2 止血法
3 動脈損傷部位における末梢壊死
そのほかの特殊な損傷
1 四肢や指の切断
2 デグロービング損傷
第5章 脱臼
脱臼の診断
脱臼整復時の麻酔
整復法
1 肩関節脱臼
2 指の脱臼
3 肘関節脱臼
4 股関節脱臼
5 膝蓋骨脱臼
6 膝関節脱臼
7 足関節脱臼
8 顎関節脱臼
9 そのほかの脱臼
第6章 骨折
上肢編
1 指周囲の骨折
2 手の骨折
3 手関節周囲の骨折
4 前腕部の骨折
5 肘関節周囲の骨折
6 上腕部の骨折
7 肩関節周囲の骨折
下肢編
1 足趾周囲の骨折
2 足部の骨折
3 足関節周囲の骨折
4 下腿部の骨折
5 膝関節周囲の骨折
6 大腿部の骨折
7 股関節周囲の骨折
骨盤骨折
1 まず患者受け入れが可能か判断する
2 患者が搬入されたらまず行うべきこと
3 骨盤の解剖
4 骨盤X線における骨折の評価と分類
5 CTの撮影
6 治療
7 根治手術
脊椎編
1 高エネルギーでない外傷
2 高エネルギー外傷
第7章 非外傷性疾患
一般医が知っておくべき非外傷性整形外科疾患
1 しびれ,運動麻痺
2 関節痛
3 四肢熱感(関節以外)
整形外科的愁訴の他科疾患
1 肩甲背部痛(胸背部痛)
2 腰痛
第8章 小児関連
総論
1 小児骨折の特徴
2 診断
3 患児の帰宅に際して
各論
1 肘内障
2 上腕骨顆上骨折
3 単純性股関節炎
4 大腿骨頭すべり症,上前腸骨棘剥離骨折
第9章 診断書の書き方
病院書式診断書の書き方
保険会社の診断書(通院証明)の書き方
労災関連書類の書き方
索引
MEMO
指尖部損傷におけるwet dressing
縫合後の被覆
救急外来でできる駆血法
damage control orthopaedics
Barsony(バルソニー)
書評
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整形外傷の診療に対する不安を払拭する当直マニュアル
書評者: 大泉 旭 (明理会中央総合病院副院長・整形外科部長)
以前評者が二次救急病院の当直をしていたころ,搬送された外科系疾患の多くが整形外科疾患であり,その中でも外傷が大半を占めていた。現在もそれは変わっていないだろう。しかし整形外科を専門としない医師にとって,整形外傷は専門的な知識と手技が必要と思われて敬遠されがちである。事実,東京都には搬送困難例を地域救急医療センターに搬送する「東京ルール」と呼ばれるものがあるが,その対象となる患者のキーワード第1位が「整形外科」であることが2013年5月に行われた東京都保健福祉局救急医療対策協議会でも報告された。
つい最近出版された田島康介先生の『救急整形外傷レジデントマニュアル』は,表紙帯に掲げているように,整形外科を専門としない医師を対象とした整形外科疾患の当直マニュアルである。当直帯で搬送される整形外科疾患のほとんどが外傷であり,本書は二次救急病院に搬送される整形外傷をほぼ網羅している。非外傷性疾患に関しては7ページのみではあるが,緊急を要する疾患や生命にかかわる疾患との鑑別に焦点が絞られている。当直医の職務は初期治療,すなわち診断,緊急性の有無の判断と応急処置のみを行えれば十分であり,根治的治療は要求されていない。むしろ下手に必要以上の処置を行い,治療方針まで私見で説明されてしまうと,それを引き継ぐ担当医師の治療に影響を及ぼしかねない。
本書はある意味「開き直って(?)」応急処置に徹し,根治的治療については触れていない。診断方法(レントゲンの撮り方,所見の取り方など),シーネなどの外固定の適応と方法が多くの写真やイラストとともにわかりやすく書かれており,患者(小児の症例ではその家族)への説明のコツなどもしっかり述べられている。的確な応急処置ができるかどうかはもちろんその医師の技量にもよるが,少なくともこのマニュアルがあれば整形外傷の診療に対する不安はかなり一掃されるのではないかと思う。当院も常に整形外科医が当直しているわけではないので,この書を既に救急外来に常備し,整形外科医以外の医師が当直する時の参考にさせてもらっている。
また,本書を読破して感じたことは,第1章「創傷処置」の冒頭や第2章の「外固定の仕方」でも出てくるように,用語の定義を非常に大事にしていることである。医師間,特に専門が異なる医師間では共通言語を持っていないと,カルテ上もしくは緊急の電話連絡でも,患者の病状(部位や損傷形態)を正確に把握することができない。また,最終章の診断書の書き方でもあるように,公文書は正確な医学用語で書くことは大事である。この書に出てくる創傷の用語,上腕骨遠位の解剖学的名称,第5中足骨基部骨折,脊髄の損傷高位や脊椎の脱臼方向などは整形外科医でさえ混用もしくは誤用していると思われる。恥ずかしながら今回自分も用語の使い方について襟を正すよい機会になったことも最後に付け加えておきたい。
当直やER診療を行う医師にとって心強い味方となる一冊
書評者: 新藤 正輝 (帝京大病院教授・外傷センター長)
『救急整形外傷レジデントマニュアル』を一言で表現すると,著者の細かい心遣いが感じられる,かゆいところに手が届いた内容の著書といえる。帯に「整形外科医以外のための整形外科当直マニュアル」とコピーがついているため,整形外科医には物足りない内容かというと,決してそんなことはない。当直に携帯できるポケットサイズ版の中に実にたくさんのことが記載され,非常に濃い内容となっているにもかかわらず,図や写真が豊富に使用され読みやすくわかりやすいことも特徴である。各章のところどころに簡潔にまとめられたPOINTやMEMOも,ためになると同時に興味深い内容が多く,読み進めていく中でのアクセントになっている。
9つの章からなる本書の内容について簡単に紹介する。
・1章「創傷処置」:種々の創傷の定義に始まり,デブリードマンのポイント,縫合すべきではない創の見分け方,麻酔方法,縫合糸の選択と縫合法,そして処置後のケアまで,初心者でも1人で創処置ができるように記載されている。
・2章「外固定の仕方(シーネの当て方)」:外固定の種類の説明から各部位の骨折固定時の肢位と巻き方,そして固定後の合併症まで図を用いてわかりやすく記載されている。
・3章「そのほかの基本手技」:日常診療で用いることが多い膝関節穿刺,爪下血腫の除去,トリガーポイントについて,施行時のコツと注意点を含め記載されている。
・4章「軟部組織損傷」:打撲,靱帯損傷・捻挫,筋・腱損傷,神経血管損傷の診断と治療法に加えて,指切断,コンパートメント症候群,デグロービング損傷に対する初療についても記載されている。
・5章「脱臼」:各部位の脱臼がほぼ網羅され,その診断と整復法,整復時の麻酔法について記載されている。
・6章「骨折」:日常診療で遭遇することの多い一般的な四肢骨折から骨盤骨折,脊椎・脊髄損傷などの重症外傷まで網羅され,それぞれの骨折の診断・治療上の注意点が記載されている。
・7章「非外傷性疾患」:しびれや運動麻痺,関節痛を主訴として来院する代表的な整形外科疾患と軟部の炎症性疾患,そして自然気胸,心筋梗塞,尿路結石,大動脈瘤などの他科疾患と整形疾患の鑑別の注意点まで記載されている。
・8章「小児関連」:小児の骨折の特徴と診断時の注意点,代表的な小児期の骨折と小児に特有な疾患の代表例が記載されている。
・9章「診断書の書き方」:救急外来で求められることが多い診断書の書き方と作成時の注意点について記載されている。
一次~二次救急医療施設で診療する外傷患者の多くは整形外科外傷である。そのような施設で当直やER診療を行う医師にとって,この一冊が心強い味方になることは間違いない。
書評者: 大泉 旭 (明理会中央総合病院副院長・整形外科部長)
以前評者が二次救急病院の当直をしていたころ,搬送された外科系疾患の多くが整形外科疾患であり,その中でも外傷が大半を占めていた。現在もそれは変わっていないだろう。しかし整形外科を専門としない医師にとって,整形外傷は専門的な知識と手技が必要と思われて敬遠されがちである。事実,東京都には搬送困難例を地域救急医療センターに搬送する「東京ルール」と呼ばれるものがあるが,その対象となる患者のキーワード第1位が「整形外科」であることが2013年5月に行われた東京都保健福祉局救急医療対策協議会でも報告された。
つい最近出版された田島康介先生の『救急整形外傷レジデントマニュアル』は,表紙帯に掲げているように,整形外科を専門としない医師を対象とした整形外科疾患の当直マニュアルである。当直帯で搬送される整形外科疾患のほとんどが外傷であり,本書は二次救急病院に搬送される整形外傷をほぼ網羅している。非外傷性疾患に関しては7ページのみではあるが,緊急を要する疾患や生命にかかわる疾患との鑑別に焦点が絞られている。当直医の職務は初期治療,すなわち診断,緊急性の有無の判断と応急処置のみを行えれば十分であり,根治的治療は要求されていない。むしろ下手に必要以上の処置を行い,治療方針まで私見で説明されてしまうと,それを引き継ぐ担当医師の治療に影響を及ぼしかねない。
本書はある意味「開き直って(?)」応急処置に徹し,根治的治療については触れていない。診断方法(レントゲンの撮り方,所見の取り方など),シーネなどの外固定の適応と方法が多くの写真やイラストとともにわかりやすく書かれており,患者(小児の症例ではその家族)への説明のコツなどもしっかり述べられている。的確な応急処置ができるかどうかはもちろんその医師の技量にもよるが,少なくともこのマニュアルがあれば整形外傷の診療に対する不安はかなり一掃されるのではないかと思う。当院も常に整形外科医が当直しているわけではないので,この書を既に救急外来に常備し,整形外科医以外の医師が当直する時の参考にさせてもらっている。
また,本書を読破して感じたことは,第1章「創傷処置」の冒頭や第2章の「外固定の仕方」でも出てくるように,用語の定義を非常に大事にしていることである。医師間,特に専門が異なる医師間では共通言語を持っていないと,カルテ上もしくは緊急の電話連絡でも,患者の病状(部位や損傷形態)を正確に把握することができない。また,最終章の診断書の書き方でもあるように,公文書は正確な医学用語で書くことは大事である。この書に出てくる創傷の用語,上腕骨遠位の解剖学的名称,第5中足骨基部骨折,脊髄の損傷高位や脊椎の脱臼方向などは整形外科医でさえ混用もしくは誤用していると思われる。恥ずかしながら今回自分も用語の使い方について襟を正すよい機会になったことも最後に付け加えておきたい。
当直やER診療を行う医師にとって心強い味方となる一冊
書評者: 新藤 正輝 (帝京大病院教授・外傷センター長)
『救急整形外傷レジデントマニュアル』を一言で表現すると,著者の細かい心遣いが感じられる,かゆいところに手が届いた内容の著書といえる。帯に「整形外科医以外のための整形外科当直マニュアル」とコピーがついているため,整形外科医には物足りない内容かというと,決してそんなことはない。当直に携帯できるポケットサイズ版の中に実にたくさんのことが記載され,非常に濃い内容となっているにもかかわらず,図や写真が豊富に使用され読みやすくわかりやすいことも特徴である。各章のところどころに簡潔にまとめられたPOINTやMEMOも,ためになると同時に興味深い内容が多く,読み進めていく中でのアクセントになっている。
9つの章からなる本書の内容について簡単に紹介する。
・1章「創傷処置」:種々の創傷の定義に始まり,デブリードマンのポイント,縫合すべきではない創の見分け方,麻酔方法,縫合糸の選択と縫合法,そして処置後のケアまで,初心者でも1人で創処置ができるように記載されている。
・2章「外固定の仕方(シーネの当て方)」:外固定の種類の説明から各部位の骨折固定時の肢位と巻き方,そして固定後の合併症まで図を用いてわかりやすく記載されている。
・3章「そのほかの基本手技」:日常診療で用いることが多い膝関節穿刺,爪下血腫の除去,トリガーポイントについて,施行時のコツと注意点を含め記載されている。
・4章「軟部組織損傷」:打撲,靱帯損傷・捻挫,筋・腱損傷,神経血管損傷の診断と治療法に加えて,指切断,コンパートメント症候群,デグロービング損傷に対する初療についても記載されている。
・5章「脱臼」:各部位の脱臼がほぼ網羅され,その診断と整復法,整復時の麻酔法について記載されている。
・6章「骨折」:日常診療で遭遇することの多い一般的な四肢骨折から骨盤骨折,脊椎・脊髄損傷などの重症外傷まで網羅され,それぞれの骨折の診断・治療上の注意点が記載されている。
・7章「非外傷性疾患」:しびれや運動麻痺,関節痛を主訴として来院する代表的な整形外科疾患と軟部の炎症性疾患,そして自然気胸,心筋梗塞,尿路結石,大動脈瘤などの他科疾患と整形疾患の鑑別の注意点まで記載されている。
・8章「小児関連」:小児の骨折の特徴と診断時の注意点,代表的な小児期の骨折と小児に特有な疾患の代表例が記載されている。
・9章「診断書の書き方」:救急外来で求められることが多い診断書の書き方と作成時の注意点について記載されている。
一次~二次救急医療施設で診療する外傷患者の多くは整形外科外傷である。そのような施設で当直やER診療を行う医師にとって,この一冊が心強い味方になることは間違いない。
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