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あなたへの医師キャリアガイダンス

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研修病院選びの決め手は何か、専門を何にするか、臨床か研究か、留学や開業をいつするか……。医師としてのキャリアの積みかたは多様だ。本書では50人の先輩医師が「今のあなたの悩みについて、かつて(あるいは現在進行形で)同じように悩み、このような道を選んだ」と、本音で語る。執筆陣は聖路加国際病院内科の現役・OB/OGという共通点はあれどその経歴は多種多様。さまざまな努力や転機となったエピソードが興味深い。
編集 岡田 定 / 堀之内 秀仁 / 藤井 健夫
発行 2012年08月判型:A5頁:240
ISBN 978-4-260-01620-9
定価 1,980円 (本体1,800円+税)

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 本書は、医師としてあなたが進むべき道を照らし出すサーチライトになります。執筆者自身の生々しい体験を通して、あなたに本音で語りかけるガイダンスです。
 聖路加国際病院には毎年多くの医学生が実習に訪れます。彼らから研修医、専門研修医、スタッフが決まって受ける質問があります。「どうしてこの病院を研修先に選んだのですか」、「先生はどうして今の専門にしたのですか」という質問です。
 「将来の自分の進路をどのように考えて決めればよいのか」は、彼らの大きな悩みなのです。「医師としてどう生きていけばよいのか」という彼らの内なる疑問に、本気になって答えてもらえる機会は限られているのでしょう。
 「そのような彼らの疑問に真正面から本音で答えてあげたい」という思いから生まれたのが、本書『あなたへの医師キャリアガイダンス』です。
 執筆者は、当院内科の現役・OB\OGの各年代の医師たちです。当院に一時期、籍を置いていたというだけで、その経歴(次頁図参照、本サイトでは省略)は実にさまざまです。卒後の年数も一年目から七十五年目まで及びます。現在の身分も、研修医(ジュニアレジデント)、専門研修医(シニアレジデント)、専門医、開業医、病院勤務医、行政官、事業者などとても多彩です。
 あえて共通項を探せば、「自分の心の欲する新しい世界に挑戦する人たち」と言えば、少し美化しすぎでしょうか。
 「医学生のあなた」。どんな医師になりたいですか。研修病院はどのように選びますか。
 「研修医や専門研修医のあなた」。専門分野はどうしますか。臨床を続けますか。基礎に行きますか。公衆衛生や行政に興味はありますか。
 「専門医の道を歩んでいるあなた」。大学病院で生きていきますか。一般病院で勤務を続けますか。開業を目指しますか。事業を起こしますか。
 「医師として長い道のりを歩いてこられたあなた」。残りの医師人生をどのように設計されますか。
 本書は、どの疑問に対してもお答えします。
 ただし、選ぶべき進路の正解は、決して一つではありません。目標を定めてそこにまっしぐらに進むのもよし、そのときそのときの出会いを大切にして一歩一歩、道を踏み固めていくのもよし、なのです。あなたにとっての正解を選びとってください。
 医師として進むべき道に悩むとき、あるいは今踏みしめている道に不安を感じるとき、どうぞ本書のページを繰ってください。きっとそこに、あなたの背中を押してくれる熱い声が聞こえてくるでしょう。
 「活字だけのガイダンスではよくわからない!」と思われる方は、おられませんか。
 本書に登場する五十名の医師のなかに、あなたが知っている先生はおられないでしょうか。出身大学や勤務した病院の先輩だったり、人生のどこかで接点があったり。そういう先生がおられたら、個人的に連絡を取って直接相談されてはいかがでしょうか。
 「接点がある先生は全くいない!」と思われたあなた。大丈夫です。本書を読んで「この先生だ」とピン!ときたら、勇気をもってその先生に接触を試みてください。
 本書の執筆者は誰もが、「チャンスを見逃さない」あなたの味方になります。
 本書は、藤井健夫(二〇〇七年卒)、堀之内秀仁(二〇〇三年卒)、岡田 定(一九八一年卒)が、当院の現役・OB/OGに執筆を依頼して編集しました。依頼に対して快く原稿をお寄せいただいた本書の先生方に、この場をお借りして深甚の感謝を申し上げます。また医学書院の菅 陽子さん、玉森政次さんにも感謝申し上げます。

 二〇一二年七月
 編集者を代表して
 聖路加国際病院 内科チェアマン
 岡田 定

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 序

医学部卒年
H23 正直に、全力で。……[初・研修]廣田 雄輔
   回り道は無駄にならない……[初・研修]北田 彩子
   医師としての基礎づくりを魅力ある病院で……[初・研修]榊原 健二
H22 基礎研究をするための「臨床研修」……[専・研修]鈴木 翔二
   本当にやりたいことを見つけるために……[専・研修]夏本 文輝
   ハードルが高くても行動に移してみる……[専・研修]荻野 広和
   視野は広く、芯は太く……[膠内・ア][専・研修]駒井 俊彦
   まずは「医者の心構え」をしっかりと……[代内][専・研修]駒井 絵里
H21 ベストな研修生活のために……[専・研修]佐藤 真洋
   まずは、行動!……[専・研修]島村 勇人
H20 知的好奇心をもち続ける……[腎内][専・研修]比良野圭太
   一つひとつの経験から、次の目標を定めていく……[循内][専・研修]堀内 優
   2施設での研修を経験して思うこと……[代内][専・研修]遅野井雄介
   出産・育児からcareer developmentを考え直す……[腫内][専・研修]名取亜希奈
   憧れを憧れのままにしない……[公衛][医行政]坂元 晴香
H19 初期研修で「何を習得したいのか」を考える……[腫内][専・研修]藤井 健夫
   自分自身で限界をつくらない……[呼内][専・研修]山野 泰彦
   常に自分を見つめ直し、「人間力」のある医者を目指そう……[病理][専・研修]楊 陽
   「最も近道」でなくても、「自分が最もよいと思う選択肢」を……[循内][大学院]猪原 拓
H18 常に謙虚に、野心をもって。……[循内]野村 章洋
H17 「居心地のよい不安定感」を求め続ける……[循内]水野 篤
   道しるべは出会い……[呼内][大学院]須田 理香
   どのような医師でありたいか、そのために何をすべきか
    -‘Clinician Educator’として-……[感内]森 信好
   がんと向き合うということ……[腫内][血内][大学院]山口 典宏
H16 Progress……[消内]鈴木 祥子
   出会いを求め、楽しいと感じることを見つける……[循内][腎内][公衛]西崎 祐史
H15 循環器診療の「内科」と「外科」の架け橋を目指す……[循内]片岡 明久
   “Connecting the Dots” その時々に訪れた機会を大切に。……[感内]小林美和子
   自らのミッションとビジョンを常に意識する……[呼内][腫内]堀之内秀仁
H13 自分が楽しめるものを見つけ、
    その手段(=キャリア)を考える……[高齢・在宅]飛田 拓哉
H11 研究者に適した「自分」を発見した……[基礎研]狩野 光伸
H9 研究が日本を、世の中を変える……[公衛]東 尚弘
   医師としての基礎のうえに感染症医のキャリアを積む……[感内]大曲 貴夫
H7 キャリアを積み始めた方に伝えたいこと……[呼内]西村 直樹
H6 偶然や必然の出会いを大切にする……[呼内][基礎研]鈴木 拓児
H4 Twist and Turnsの繰り返しが成長の糧……[総内・総診]星 哲哉
H3 レジデント時代のやりがい、今の私のやりがい……[腫内]大山 優
S63 腫瘍内科医を目指し、悩んだ日々のこと……[腫内]山内 照夫
S61 「医者という薬」の効能を高める……[総内・総診][血内][高齢・在宅]宮崎 仁
S60 「全身を診ることができる眼科医」が、私が選択した道……[眼科]草野 良明
S56 ユニークな医師になる……[血内]岡田 定
S54 「中途半端な 努力」ほど若い医師に毒性の強いものはない……[感内]青木 眞
   どのような医療をどのように提供するか?
    -よい臨床医を目指して-……[循内]高尾 信廣
S53 その時々与えられた場で一生懸命……[代内]出雲 博子
   よいコミュニケーションが道をひらく……[感内]古川 恵一
S52 向上を目指して自作の計画書・カリキュラムをもとう……[総内・総診][神内]大生 定義
S51 「苦労は人を育てる」そして「継続は力なり」……[循内]山科 章
S32 いつまでも専門医でいることはできない……[循内]五十嵐正男
S23 内科臨床医として六〇年 これまでの思い出……[血内]寺田 秀夫
S12 臨床経験が、医師を「本当の医師」にする……[循内]日野原重明

 MEMO:
  聖路加国際病院の理念
  医師臨床研修制度の変遷/研修の必修化

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激動の時代の中で進路に悩むあなたに
書評者: 石見 陽 (メドピア(株)代表取締役社長/医師・医学博士)
 実は,私自身も医学生時代,聖路加国際病院の研修とはどんなものなのだろう? と思い,半日だけ病棟を見学させていただいたことがある。地方の大学に通っていた私は情報に疎く,「将来は人が多く,モチベーションの高い仲間に囲まれる環境で働きたい」と考えながらも,部活動中心ののんびりした学生生活を送っており,気づいた時点で聖路加国際病院の夏休みの見学の応募期間は過ぎていたのだった。あきらめきれなかった私は,友人のつてをたどり,非公式に半日だけ院内を案内してもらった。その夜に開かれた宴会で聖路加国際病院での研修の激しさをうかがい,医師になるというのはこういうことかと身が引き締まる思いをしたことを思い出す。何よりこの病院に所属している研修医の方々の誇り・病院への愛情を感じ,感銘を受けたのである。結果として私は研修先を東京女子医科大学に決め,聖路加国際病院で研修をすることはなかったが,今でも私の中の憧れの病院であることに変わりはない。

 さて,本書は岡田定先生,堀之内秀仁先生,藤井健夫先生が編者となり,過去または現在において,聖路加国際病院で診療にかかわった数十名の先生方が執筆した医学生・医師向けのキャリアガイドである。各先生方が,医師になるにあたってどのように悩み,医師になってからどのようなキャリアを志向し,障害を越え,今後どのように進んでいこうとしているのか? 後輩である医師・医学生を想定して執筆されている。

 私は,現在週一回の臨床医,その他は会社経営者と二足のわらじを履いている,いわゆるベンチャー起業家であるが,本書を完読して最初に「皆さん,結構起業家の考え方と似ているな」という感想を持った。

 アップルの創業者として有名な,故Steve Jobs氏のStanford大学でのスピーチは経営者の間では有名である。Jobs氏は「Connecting Dots」というテーマで講演した。その時その時で自分の興味のあることに全力で取り組んでいれば,将来は一つ一つの点(Dot)がつながり,線となり面となるという話だ。

 本書では,皆が思い思いに自身の考えを執筆しているわけだが,その中のなんと3名が上記Jobs氏の講演に触れているのである。また,Jobs氏の講演に触れていなくても,多くの執筆者が「目の前のことに全力を尽くせ」とのメッセージを伝えている。

 経営をしていると,どうにも理不尽なことばかり続き,「他の道はなかったかな……」と思うことも多い。そのようなときには自分がどうしてこの道に入ったのか? と自問するようにしているわけだが,結局最後は「全力でやりきるしかない。後は何とかなる」という結論に思い至る。原則は聖路加を選択した医師も経営者も自分の意志で選択した道である。ある程度不確実さを残しながらも,自分で選択した後は,目の前の一つ一つの点(Dot)を全力でこなしていく。このようなある種の愚直さの重要性がこの本のメッセージとなっている。

 医師の卒後臨床研修が必修となって8年が経つ。それまで卒業大学の医局に所属することが一般的だった医師のキャリアに多くの選択肢が与えられることになった。その大きな変化の前から臨床教育に力を入れていた聖路加国際病院,そしてその病院に集っていた意識の高い医師が本音で語っている本書は,激動の時代の中で進路に悩むあなたに必ずや一つの道しるべを提示してくれることであろう。
若手医師ばかりでなく,熟年世代の医師にも薦めたい一冊
書評者: 早野 恵子 (済生会熊本病院救急総合診療センター)
 この本は,聖路加国際病院出身の50名の医師たちが書いた本ですが,誰のために書かれたのでしょうか? さっと全体に目を通せば,これからキャリアを築いていく研修医・専門研修医や医学生が読むのに最適な本であることがわかります。すなわち,若手医師の最大の関心事である進路の選択やキャリア形成を経験した先輩の文章が掲載されていて,ロールモデルや後輩へのアドバイスを見出すことができるからです。

 さらに読み進めると,聖路加国際病院でさらなる研修を続けた医師,あえて国内の病院へ異動して研鑽を続けた医師,リサーチのための留学や海外での臨床研修やフェローシップの機会を得た医師,あるいは他の病院で研修後(海外も含めて)スタッフとして迎えられた医師など,その多様さに驚くと同時に,「みんなちがってみんないい」(金子みすゞの詩より)というフレーズを思い起こします。

 鈴木翔二先生が書かれたように,本や文献を読む時間さえ潤沢ではない「ハードな研修生活」の中で患者さんや指導医から実地に体感しつつ学ぶことにより,「初期研修で医師としての振る舞いや思考回路」が形成されていき,比良野圭太先生の文のように「知的好奇心を継続すること」は,その後の生涯にわたる学びの動機付けとなると思います。

 市中病院に長い間勤務した臨床医は,大生定義先生のように自分自身で「サバティカル(研究休暇)」を創造した生き方に共感することでしょう。願わくは,長年勤務した医師が希望すればサバティカルと職場への復帰が保証される制度が日本にもあればと思います。

 出雲博子先生が経験された,米国での数々の有益な研修の構築途上に家庭の事情による方向転換をしなやかに受け入れ,生涯学習を継続する生き方は,ぜひお手本としたいものです。私も沖縄県立中部病院での研修後,諸般の事情による職場の異動や,腎臓専門医から総合診療医への転換を経験しましたが,子育てや両親の看取りの経験は決してハンディとはならず,人として臨床医としてかけがえのない経験や糧となっています。星哲哉先生が書かれたように予定外のことも寛容に受け入れ,その時に与えられた役割を懸命に果たせば,地位や名誉とは質の異なる“パッチワークのように調和のとれた作品”を手にすることができるかもしれません。

 五十嵐正男先生の「いつまでも専門医でいることはできない」という文は,多くの医師が壮年や晩年を迎えるときに実感していることであり,日野原重明先生の“臨床経験が,医師を「本当の医師」にする”という言葉はもはや説明の必要はなく,しみじみとした共感を覚えます。

 この本の序文を読むと,さまざまな年代の医師に対して,寄稿者である医師たちを紹介せずにはいられないという編集者の想いや意図が自然に伝わってきます。

 最後に,この本は若手医師ばかりでなく熟年世代の医師にもぜひ読んでほしいと思います。その理由は,第一にこの本の中で発展途上の若手医師に出会うことができ,底知れぬパワーやエールを受け取ることができるからです。第二に,この本とともに研修医時代やこれまでの歩みを振り返ると,行く手に人生との調和のとれたライフステージが見えてくるかもしれないからです。指導医が周囲の研修医たちにぜひ読むように薦めるだけでなく,逆にこの本の中の若手医師の中にロールモデルを見つけたり,啓発されたりすることさえあるかもしれないと期待しています。
自身のロールモデルを見付ける一助として
書評者: 市村 公一 (あおばメンタルクリニック院長)
 この本は聖路加国際病院の,年代もさまざまな50名のOB・OGの先生方が,医師を志した理由から学生時代の思い出,研修病院を決めた経緯,実際に経験した研修の感想,その後の進路を決めた理由と現職への思い,そして最後に後輩へのアドバイスを書かれたものを,医学部卒業年次の若い方順にまとめられたものだ。こうした本が商品として成り立つこと自体,「聖路加」のブランド力の証であろうが,そのブランド力を育て,維持発展させてこられたのが,ここに登場される先生方ご自身でもあろう。

 私は卒後研修必修化前の2003年,当時の研修実態を探ろうと全国25ヶ所の病院を回り,『臨床研修の現在』(医学書院)という本にまとめたが,その際最初に訪問した聖路加国際病院の様子は今も鮮明に記憶している。循環器,呼吸器,内分泌などさまざまな疾患の患者を集めた混合病棟を3年目のレジデントをリーダーにきっちりした屋根瓦式のチームで診る。その体制はもちろんだが,看護師や薬剤師も交えた毎朝のミーティングや,知識と技能の伝授の場として充実した回診など,まさに理想的な研修の場だと感じたものだった。あの厳しく充実したトレーニングで鍛えられたからこそ,ここに登場される先生方の今があるのだとも思う。

 もっとも,初期研修はほかの病院で終えたという方も,意外にも何名か登場される。後期研修はどうしようと悩んでおられる初期研修医のみなさんには,大いに参考になるだろう。もちろん,これから研修病院を考えようという医学部上級生のみなさんには,どの先生のお話も参考になるに違いない。また,明確な目標はなく,漠然と医学部に入ったという学生のみなさんにも,将来を考える上で大いに参考と刺激になるだろう。残念ながら外科系の先生のお話はないが,内科系の医師といってもこんなにいろいろな生き方があるのかと,驚かれるに違いない。

 この本を読まれる医学生や研修医のみなさんの多くは,まだ20代だろう。みなさんには無限の可能性がある。この本に登場されるどの先生にも,そう,最後に登場される日野原重明先生にだって,なれる可能性がある。この本で私に印象的だったのは,登場される多くの先生が,比較的早い段階でご自身のロールモデルとなる先生と出会われていることだ。みなさんもぜひ「自分もこんな先生になりたい!」と思える先生を見つけてください。万一身近にいなければ,この本の中にその候補となる先生がたくさんおられるはずだ。ロールモデルを見つけ,高い志を持って,日々の勉強や研修に励んでください。

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