肝臓の外科解剖 第2版
門脈segmentationに基づく新たな肝区域の考え方
新たな提唱や新術式を加え大改訂!
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肝臓の手術に不可欠な区域解剖において、従来のCouinaudの肝区域に替わり、門脈など静脈系に着目した新たな考え方を呈示。2004年の初版以後の、最新の立体画像構築による新知見とともに、「肝門板」の新たな視点を提唱。腹腔鏡下肝切除術式も加えて、手術書としても大幅リニューアル。
編著 | 竜 崇正 |
---|---|
発行 | 2011年10月判型:A4頁:240 |
ISBN | 978-4-260-01421-2 |
定価 | 13,200円 (本体12,000円+税) |
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- 序文
- 目次
- 書評
序文
開く
第2版の序
『肝臓の外科解剖』(初版)の出版から7年が経過した。この間,肝切除は術中エコーガイド下切除から,流入血行遮断による阻血域切除へと変化した。すなわち肝門部から各fissureを開いて,流入血行をグリソン一括で処理して,阻血域を切除し,最後に流出ドレナージ静脈を根部で処理する術式である。この肝臓の外科解剖は「anterior fissure」に集約されるが,多くのanterior fissure経由の肝切除がわれわれの関連施設だけでなく,日本全国の多くの施設で行われるようになった。日本全国の多くの外科医の支持を受けての第2版の刊行である。われわれの解剖の正しさの証明は,安全な手術の実践である。今回の第2版の執筆者の多くは,千葉県がんセンターやその他の病院で日常的に肝切除を行っている若い先生方である。定年を過ぎて現場から遠ざかっている私との交流がほとんどない先生方であるが,この解剖を完全に理解して臨床に生かしていることがよくわかり,この第2版を魅力あるものにしてくれている。
初版以来の本書のコンセプトとして脱Couinaudを目指したが,Couinaudの解剖を否定するものではない。しかし,初版出版時には日本の外科解剖の常識でもあったCouinaudの解剖とどう向き合うか,苦労した。Couinaudの8つのsegmentをバイブルのごとく信じていた時期が長かったからである。初版の準備を進める中,右の4つのsegmentとdorsal liverの考えには同意できなかったが,S1からS8までの用語をどうするのかの整理がつかなかった。しかし,肝臓の領域を示すものとすることで,整理がついた。肝臓の解剖の研究をすればするほど,Couinaudの解剖の奥の深さを思い知らされる。4つのsectorとその境界の3つのportal fissureの考えは実に合理的である。Couinaudの研究に心からの敬意を表したい。
われわれの外科解剖の象徴である「anterior fissure」については,すでに多くの研究者が前区域には縦に走るfissureがあることを報告している。しかしanterior fissureは左のumbilical fissureに対応し,発生学的にも肝臓の脈管構築は左右対称であることに言及したのは,われわれが初めてである。右側肝円索例でも4つのsectorとumbilical fissure veinとanterior fissure veinと,3本の主肝静脈が確認でき,左右対称であることがわかったときは狂喜した。貴重な症例のダイコム画像を提供いただいた多くの日本の研究者に,心からお礼を申し上げたい。
また本書の出版を機に,韓国全北大学の趙白・教授との交流が深まり,肝臓の解剖を,胎児の解剖研究から説き起こした趙先生と,国を越えて研究し合えたことも嬉しいことである。心からお礼を申し上げたい。
われわれのグループの研究は,造影CTを中心とした画像解剖の研究であり,安全に肝切除を行うためにはまだまだ不十分であった。そこで第2版では,われわれ千葉グループ以外で,先駆的臨床解剖研究をされている先生方にも分担執筆をお願いした。肝動脈,尾状葉動脈,短肝静脈,下大静脈靭帯に関する素晴らしい原稿がそろった。
本書を参考にして,流入血行の先行処理による肝切除が,開腹手術でも内視鏡下手術でも安全に施行されるようになり,多くの患者さんの利益が倍増することを期待したい。
2011年 初秋
竜 崇正
『肝臓の外科解剖』(初版)の出版から7年が経過した。この間,肝切除は術中エコーガイド下切除から,流入血行遮断による阻血域切除へと変化した。すなわち肝門部から各fissureを開いて,流入血行をグリソン一括で処理して,阻血域を切除し,最後に流出ドレナージ静脈を根部で処理する術式である。この肝臓の外科解剖は「anterior fissure」に集約されるが,多くのanterior fissure経由の肝切除がわれわれの関連施設だけでなく,日本全国の多くの施設で行われるようになった。日本全国の多くの外科医の支持を受けての第2版の刊行である。われわれの解剖の正しさの証明は,安全な手術の実践である。今回の第2版の執筆者の多くは,千葉県がんセンターやその他の病院で日常的に肝切除を行っている若い先生方である。定年を過ぎて現場から遠ざかっている私との交流がほとんどない先生方であるが,この解剖を完全に理解して臨床に生かしていることがよくわかり,この第2版を魅力あるものにしてくれている。
初版以来の本書のコンセプトとして脱Couinaudを目指したが,Couinaudの解剖を否定するものではない。しかし,初版出版時には日本の外科解剖の常識でもあったCouinaudの解剖とどう向き合うか,苦労した。Couinaudの8つのsegmentをバイブルのごとく信じていた時期が長かったからである。初版の準備を進める中,右の4つのsegmentとdorsal liverの考えには同意できなかったが,S1からS8までの用語をどうするのかの整理がつかなかった。しかし,肝臓の領域を示すものとすることで,整理がついた。肝臓の解剖の研究をすればするほど,Couinaudの解剖の奥の深さを思い知らされる。4つのsectorとその境界の3つのportal fissureの考えは実に合理的である。Couinaudの研究に心からの敬意を表したい。
われわれの外科解剖の象徴である「anterior fissure」については,すでに多くの研究者が前区域には縦に走るfissureがあることを報告している。しかしanterior fissureは左のumbilical fissureに対応し,発生学的にも肝臓の脈管構築は左右対称であることに言及したのは,われわれが初めてである。右側肝円索例でも4つのsectorとumbilical fissure veinとanterior fissure veinと,3本の主肝静脈が確認でき,左右対称であることがわかったときは狂喜した。貴重な症例のダイコム画像を提供いただいた多くの日本の研究者に,心からお礼を申し上げたい。
また本書の出版を機に,韓国全北大学の趙白・教授との交流が深まり,肝臓の解剖を,胎児の解剖研究から説き起こした趙先生と,国を越えて研究し合えたことも嬉しいことである。心からお礼を申し上げたい。
われわれのグループの研究は,造影CTを中心とした画像解剖の研究であり,安全に肝切除を行うためにはまだまだ不十分であった。そこで第2版では,われわれ千葉グループ以外で,先駆的臨床解剖研究をされている先生方にも分担執筆をお願いした。肝動脈,尾状葉動脈,短肝静脈,下大静脈靭帯に関する素晴らしい原稿がそろった。
本書を参考にして,流入血行の先行処理による肝切除が,開腹手術でも内視鏡下手術でも安全に施行されるようになり,多くの患者さんの利益が倍増することを期待したい。
2011年 初秋
竜 崇正
目次
開く
I 新しい肝区域概念の提唱
1 従来の肝区域分類
2 右肝の肝区域分類の矛盾:実はportal segmentationになっていない
3 正面からみた門脈像と尾側からみた門脈像
4 門脈分岐は実は左右対称
5 新しい肝区域分類の提唱
6 実は肝臓にはもう1つのfissureが隠れていた:anterior fissure
7 実は肝静脈も左右対称
8 第3の扉を開けてみる
II 肝臓解剖の歴史,従来の肝臓の区域分類
1 Healeyの肝解剖
a.Healeyの肝区域 b.Healeyの肝区域と門脈支配
c.Healeyの肝区域と肝静脈 d.左右肝の境界
e.尾状葉 f.Healeyの区域の問題点
2 Couinaudの肝解剖
a.Couinaudの肝区域 b.Couinaudの肝区域と門脈支配
c.Couinaudの肝区域の問題点
3 前区域が縦にsplitできるという従来の解剖研究
a.Hjortsjoの解剖 b.Nawarの肝臓領域区分
c.Kanemuraの肝静脈支配に基づく領域区分 d.Kogureの区域
4 右肝における実際のportal ramification
III 発生からみた肝臓の外科解剖
1 ゴールドハムスターの肝の発生
a.hepatic budとその発育 b.Nettelbladのstage 5
c.Nettelbladのstage 6 d.Nettelbladのstage 8
e.Nettelbladのstage 9~12
2 人間の肝の発生
a.受精3週まで b.胎生5週まで
c.胎生5週から d.脈管の完成
3 肝臓の発生からわかる外科解剖の新しい発見
IV 門脈segmentationからみた肝区域の外科解剖
1 左肝門脈
a.門脈左外側枝の分岐形態 b.内側区域門脈枝の分岐形態
2 前区域門脈
a.新しい肝右前区域の概念 b.高安分類との関係
c.従来のCouinaudの右前下区域(S5)との関係
d.前区域枝とするか後区域枝とするか迷う症例
3 後区域門脈
a.後区域門脈の分枝本数からのパターン分類 b.第一尾側枝の分岐部位
c.後区域尾側枝が右肝静脈腹側を走行する頻度
4 尾状葉の門脈を中心とした脈管支配
a.尾状葉の門脈 b.尾状葉門脈症例
c.発生からみた尾状葉 d.尾状葉とsegment IXは異なる!
5 肝臓の新しい区域からみたボリューム
a.門脈segmentationに沿った肝右葉解剖 b.MDCTを用いた3D画像の作成
c.門脈segmentationに基づいたvolumetry d.新しい肝区域を用いた肝切除
V 肝臓の血管
1 肝静脈の解剖
2 左肝静脈
3 中肝静脈
4 右肝静脈
a.右肝静脈の合流様式 b.背側区域のドレナージ静脈
c.後区域のドレナージ静脈 d.後区域尾側門脈との関係
5 短肝静脈-特にhanging maneuverの解剖学的検討
a.Hanging maneuverの対象と方法 b.Hanging maneuverの結果
c.短肝静脈の開口部の分布とhanging maneuverとの関連について
d.Hanging maneverで切離される門脈枝について
6 下大静脈靭帯
a.検索対象と方法 b.結果
c.肝切除における下大静脈靭帯の処理の意味と重要性
7 胆嚢静脈
a.胆嚢静脈の流出部位および肝内流入経路 b.肝内流入領域
c.胆嚢静脈と胆癌肝内転移との関係 d.胆嚢静脈と肝内pseudolesion
8 肝動脈-CTAPとCTAによるFusion画像に基づく肝内動脈枝の解剖
a.右葉門脈枝と動脈の関係 b.右葉前区域における門脈と動脈
c.右葉後区域における門脈と動脈 d.左葉における門脈と動脈
e 右葉前区域動脈解剖と血管造影像・肝動脈塞栓術
9 尾状葉の動脈
a.検索方法
b.左右尾状葉動脈枝と肝動脈交通枝communicating artery(CA)の定義
c.尾状葉動脈の分岐パターン d.肝動脈交通枝(CA)型のパターン
e 尾状葉の動脈支配 f.パターン別の症例提示
g.尾状葉動脈と肝動脈交通枝 h.尾状葉動脈と肝門部胆管への動脈血流
10 右側肝円索の解剖
a.右側肝円索と左側胆嚢 b.右側肝円索の意義
c.肝内門脈の分岐異常 d.肝静脈解剖は左側肝円索例と同様に正常
11 肝静脈還流域からみた新しい肝区域分類
a.肝静脈の解剖 b.肝静脈還流領域の分類
12 肝動脈および肝静脈のクランプによる肝静脈うっ血領域の描出
a.anterior fissure b.中・左肝静脈,固有肝動脈のクランプによるうっ血域
c.右肝静脈,固有肝動脈のクランプによるうっ血域
d.うっ血域が描出されない例
VI 胆管
1 左肝管
a.左肝管合流様式 b.左肝管合流様式と門脈臍部との関係
2 右肝管合流様式
a.右肝管の合流様式 b.前区域胆管の合流様式
c.胆管の走行異常はすべて肝門板内で
3 尾状葉の胆管
a.尾状葉胆管 b.尾状葉胆管症例
VII 肝門板
1 血管造影からみた肝動脈左右交通枝
a.plate systemとhilar plate b.左右肝動脈の交通枝
c.左右肝交通枝の臨床的意義
2 castからみたplate system
a.方法 b.結果
c.左右肝動脈交通枝(CA)の解剖学的位置づけと機能
3 三次元立体画像からみた肝門板
a.門脈の解剖:3D-portographyを用いて
b.胆管と門脈の位置関係:3D-porto-cholangiographyを用いて
c.肝動脈,門脈,胆管の立体的位置関係
VIII 立体解剖からみた肝臓の治療
1 われわれの新解剖からみたCouinaudの解剖のvarietyの解釈
総論-われわれの解剖とCouinaudの解剖の相違点
各論-われわれの解剖からみたCouinaudの解剖のvarietyの解釈
2 切除
a.肝切除の鍵-Open the door of the liver to perform epatectomy
b.内側区域切除 c.肝前区域切除 d.後区域切除
e.内側区域+腹側区域切除(中肝静脈還流域切除) f.肝中央2区域切除
g.左肝+前腹側区域切除(中および左肝静脈還流域切除)
h.後区域+前背側区域切除(右肝静脈還流領域全切除)
i.肝S3切除 j.肝左paramedian sector(S3S4)切除
k.肝S3S4(left paramedian sector)+前腹側上区域切除
l.内側下区域+前腹側下区域切除
m.肝前腹側上区域切除(経肝的アプローチ)
n.肝前腹側上区域切除(経肝門アプローチ)
o.肝前背側上区域切除 p.肝前背側区域切除
q.肝前腹側下区域切除 r.肝門部胆管癌の縮小手術-尾状葉+前腹側区域切除
3 腹腔鏡下肝切除術
a.腹腔鏡下左外側区域切除 b.腹腔鏡下肝左葉切除術
c.腹腔鏡下肝右葉切除術
付録:撮影条件と再構成画像
索引
1 従来の肝区域分類
2 右肝の肝区域分類の矛盾:実はportal segmentationになっていない
3 正面からみた門脈像と尾側からみた門脈像
4 門脈分岐は実は左右対称
5 新しい肝区域分類の提唱
6 実は肝臓にはもう1つのfissureが隠れていた:anterior fissure
7 実は肝静脈も左右対称
8 第3の扉を開けてみる
II 肝臓解剖の歴史,従来の肝臓の区域分類
1 Healeyの肝解剖
a.Healeyの肝区域 b.Healeyの肝区域と門脈支配
c.Healeyの肝区域と肝静脈 d.左右肝の境界
e.尾状葉 f.Healeyの区域の問題点
2 Couinaudの肝解剖
a.Couinaudの肝区域 b.Couinaudの肝区域と門脈支配
c.Couinaudの肝区域の問題点
3 前区域が縦にsplitできるという従来の解剖研究
a.Hjortsjoの解剖 b.Nawarの肝臓領域区分
c.Kanemuraの肝静脈支配に基づく領域区分 d.Kogureの区域
4 右肝における実際のportal ramification
III 発生からみた肝臓の外科解剖
1 ゴールドハムスターの肝の発生
a.hepatic budとその発育 b.Nettelbladのstage 5
c.Nettelbladのstage 6 d.Nettelbladのstage 8
e.Nettelbladのstage 9~12
2 人間の肝の発生
a.受精3週まで b.胎生5週まで
c.胎生5週から d.脈管の完成
3 肝臓の発生からわかる外科解剖の新しい発見
IV 門脈segmentationからみた肝区域の外科解剖
1 左肝門脈
a.門脈左外側枝の分岐形態 b.内側区域門脈枝の分岐形態
2 前区域門脈
a.新しい肝右前区域の概念 b.高安分類との関係
c.従来のCouinaudの右前下区域(S5)との関係
d.前区域枝とするか後区域枝とするか迷う症例
3 後区域門脈
a.後区域門脈の分枝本数からのパターン分類 b.第一尾側枝の分岐部位
c.後区域尾側枝が右肝静脈腹側を走行する頻度
4 尾状葉の門脈を中心とした脈管支配
a.尾状葉の門脈 b.尾状葉門脈症例
c.発生からみた尾状葉 d.尾状葉とsegment IXは異なる!
5 肝臓の新しい区域からみたボリューム
a.門脈segmentationに沿った肝右葉解剖 b.MDCTを用いた3D画像の作成
c.門脈segmentationに基づいたvolumetry d.新しい肝区域を用いた肝切除
V 肝臓の血管
1 肝静脈の解剖
2 左肝静脈
3 中肝静脈
4 右肝静脈
a.右肝静脈の合流様式 b.背側区域のドレナージ静脈
c.後区域のドレナージ静脈 d.後区域尾側門脈との関係
5 短肝静脈-特にhanging maneuverの解剖学的検討
a.Hanging maneuverの対象と方法 b.Hanging maneuverの結果
c.短肝静脈の開口部の分布とhanging maneuverとの関連について
d.Hanging maneverで切離される門脈枝について
6 下大静脈靭帯
a.検索対象と方法 b.結果
c.肝切除における下大静脈靭帯の処理の意味と重要性
7 胆嚢静脈
a.胆嚢静脈の流出部位および肝内流入経路 b.肝内流入領域
c.胆嚢静脈と胆癌肝内転移との関係 d.胆嚢静脈と肝内pseudolesion
8 肝動脈-CTAPとCTAによるFusion画像に基づく肝内動脈枝の解剖
a.右葉門脈枝と動脈の関係 b.右葉前区域における門脈と動脈
c.右葉後区域における門脈と動脈 d.左葉における門脈と動脈
e 右葉前区域動脈解剖と血管造影像・肝動脈塞栓術
9 尾状葉の動脈
a.検索方法
b.左右尾状葉動脈枝と肝動脈交通枝communicating artery(CA)の定義
c.尾状葉動脈の分岐パターン d.肝動脈交通枝(CA)型のパターン
e 尾状葉の動脈支配 f.パターン別の症例提示
g.尾状葉動脈と肝動脈交通枝 h.尾状葉動脈と肝門部胆管への動脈血流
10 右側肝円索の解剖
a.右側肝円索と左側胆嚢 b.右側肝円索の意義
c.肝内門脈の分岐異常 d.肝静脈解剖は左側肝円索例と同様に正常
11 肝静脈還流域からみた新しい肝区域分類
a.肝静脈の解剖 b.肝静脈還流領域の分類
12 肝動脈および肝静脈のクランプによる肝静脈うっ血領域の描出
a.anterior fissure b.中・左肝静脈,固有肝動脈のクランプによるうっ血域
c.右肝静脈,固有肝動脈のクランプによるうっ血域
d.うっ血域が描出されない例
VI 胆管
1 左肝管
a.左肝管合流様式 b.左肝管合流様式と門脈臍部との関係
2 右肝管合流様式
a.右肝管の合流様式 b.前区域胆管の合流様式
c.胆管の走行異常はすべて肝門板内で
3 尾状葉の胆管
a.尾状葉胆管 b.尾状葉胆管症例
VII 肝門板
1 血管造影からみた肝動脈左右交通枝
a.plate systemとhilar plate b.左右肝動脈の交通枝
c.左右肝交通枝の臨床的意義
2 castからみたplate system
a.方法 b.結果
c.左右肝動脈交通枝(CA)の解剖学的位置づけと機能
3 三次元立体画像からみた肝門板
a.門脈の解剖:3D-portographyを用いて
b.胆管と門脈の位置関係:3D-porto-cholangiographyを用いて
c.肝動脈,門脈,胆管の立体的位置関係
VIII 立体解剖からみた肝臓の治療
1 われわれの新解剖からみたCouinaudの解剖のvarietyの解釈
総論-われわれの解剖とCouinaudの解剖の相違点
各論-われわれの解剖からみたCouinaudの解剖のvarietyの解釈
2 切除
a.肝切除の鍵-Open the door of the liver to perform epatectomy
b.内側区域切除 c.肝前区域切除 d.後区域切除
e.内側区域+腹側区域切除(中肝静脈還流域切除) f.肝中央2区域切除
g.左肝+前腹側区域切除(中および左肝静脈還流域切除)
h.後区域+前背側区域切除(右肝静脈還流領域全切除)
i.肝S3切除 j.肝左paramedian sector(S3S4)切除
k.肝S3S4(left paramedian sector)+前腹側上区域切除
l.内側下区域+前腹側下区域切除
m.肝前腹側上区域切除(経肝的アプローチ)
n.肝前腹側上区域切除(経肝門アプローチ)
o.肝前背側上区域切除 p.肝前背側区域切除
q.肝前腹側下区域切除 r.肝門部胆管癌の縮小手術-尾状葉+前腹側区域切除
3 腹腔鏡下肝切除術
a.腹腔鏡下左外側区域切除 b.腹腔鏡下肝左葉切除術
c.腹腔鏡下肝右葉切除術
付録:撮影条件と再構成画像
索引
書評
開く
豊富な症例の徹底した画像解析に基づく納得の新解剖を提唱
書評者: 藤元 治朗 (兵庫医大主任教授・肝胆膵外科学)
私が竜崇正先生の『肝臓の外科解剖 第1版』を手にしたのはもう7-8年前になる。学会での竜先生のお話を拝聴した後すぐに買い求め,まさに「目からうろこ」であった。それまではHealeyおよびCouinaudの肝区域分類が中心であり,肝静脈を基にした「肝癌取扱い規約」の区域・亜区域分類が一般的であった。しかし実際の肝切除においては,肝臓外科医はこれらが実情に合わないことを経験的に察知していた。すなわち,S5-S8間,S6-S7の画一的な境界などあるべくもなく,また中肝静脈に沿ったmain portal fissureに沿い肝を切離し,右肝のいわゆる「前区域枝・後区域枝」分岐に達しても,必ずしも前区域枝は頭・尾側1本ずつに分岐せずさまざまな分岐形態を有し,またこれらをテーピングして阻血領域をみると,Couinaud分類とはかけ離れた症例が多々存在した。竜先生の本は大変新鮮で「ああ,こういうことだったのか」と納得させられる内容であった。
2009年には日本語版の内容をさらに充実された英語版の『New Liver Anatomy』(Springer社)を発刊され,さらに今回日本語では第2版となる本書を上梓された。
本書では,多くの症例において前区域門脈枝(3次分枝)が頭側・尾側ではなく,腹側・背側に分岐する概念・事実を示された。また肝切除の鍵となる(1)中央入口(main portal fissure),(2)左の入口(umbilical fissure),に続く第3の扉である(3)右の入口(anterior fissure)がわかりやすく解説され,それにより,前腹側領域切除・前背側領域切除・左肝+前腹側領域切除・後区域+前背側領域切除,など極めて合理的な新たな概念の肝切除術式が提唱されている。これらは今後,再発様式の研究を経て,「系統的切除」と認識されると考えられる。
本書の礎となっているのは,豊富な症例と徹底した術前の美しくかつ正確詳細な画像解析に基づいた事実の検証である。ことに本第2版においては,肝静脈のドレナージ形態・尾状葉の詳細・右側肝円索・胆管の詳細・肝門板など,詳しく知りたい点についてわかりやすくかつ詳細に述べられており,「あれ,どうだったかな?」というときに必ず役に立ってくれる頼りになる1冊である。
本書はこれから肝臓外科を志す若い外科医には必須の書であり,またこれまでに多くの肝切除を経験されてきたベテラン医師にもぜひ読んで納得していただきたい素晴らしい1冊である。
肝静脈還流に基づく区域分類が新たな肝切除の地平をひらく
書評者: 山本 雅一 (女医大主任教授・消化器外科学)
『肝臓の外科解剖――門脈segmentationに基づく新たな肝区域の考え方 第2版』が発刊された。初版より7年が経過したが,その内容の充実ぶりには目を見張るものがある。
初版の序には,肝区域の考え方の変遷が記載されている。肝区域はこれまでさまざまな分類がなされているが,どれも不十分なものであった。特に「肝癌取扱い規約」の区域・亜区域分類は,実は解剖学的門脈分岐に沿ったものではなく,このため多くの誤解が生じた。また,著者らが主張しているように,肝内門脈分岐は決してCouinaud区域分類と一致していない。実際の門脈分岐形態に沿った新しい区域分類が提唱されるのは,3D画像の進歩を見ると当然なことと考えられる。
肝の門脈分岐を左右対称で考えると,4本の主門脈により4つのsectorと7つの区域に分類できるとしている。左paramedian vein(門脈臍部)がP3とP4に分岐するように,右paramedian vein(前区域門脈)が頭側と尾側ではなく,腹側と背側に分かれているとした。これらの門脈により還流される領域を腹側区域,背側区域とし,腹側・背側区域の境界にはanterior fissure vein(AFV)の走行がみられている。また,AFV部で肝を離断することで,肝右側門脈3次分枝にアプローチ可能であることを示した。幕内らの,超音波ガイド下に3次分枝門脈を同定する方法とは全く異なるアプローチで,肝内グリソン鞘(門脈)に到達が可能となった。このアプローチは1980年中頃より,高崎健が施行してきた肝門経由グリソン鞘アプローチと同様と考えられる。これらの手術方法は,肝門部,さらには肝内グリソン鞘アプローチによる肝切除であり,日本を中心に発展してきたが,最近では海外でもこのアプローチの簡便性,重要性が認められつつある。
このアプローチについて,本書序には,「術中エコーを必須としない新たな肝臓外科の時代」という言葉で表現されている。さらに著者らは,肝静脈還流と新しい区域分類の整合性についても述べている。著者らの説明で,肝内門脈分岐,肝静脈還流を重視した肝切除が可能となった。新しい区域分類の概念を頭に置き肝切除を施行することで,肝切除がさらに簡単に,安全に施行できるようになったと考える。
ワークステーションによる細密な門脈像と,肝切除イラストレーションは見飽きることはなく,手術時の臨場感を味わいながらページをめくることができる。また,所々に新しいトピックスが含まれており,肝臓外科の知識の整理に役立つよう工夫されている。
本書は肝臓外科医のバイブルとして手元に置きたい本であるが,肝胆膵高度技能専門医をめざす医師はもとより,肝胆道系の画像診断に携わる医師にもぜひ手に取って見ていただきたい良書である。
書評者: 藤元 治朗 (兵庫医大主任教授・肝胆膵外科学)
私が竜崇正先生の『肝臓の外科解剖 第1版』を手にしたのはもう7-8年前になる。学会での竜先生のお話を拝聴した後すぐに買い求め,まさに「目からうろこ」であった。それまではHealeyおよびCouinaudの肝区域分類が中心であり,肝静脈を基にした「肝癌取扱い規約」の区域・亜区域分類が一般的であった。しかし実際の肝切除においては,肝臓外科医はこれらが実情に合わないことを経験的に察知していた。すなわち,S5-S8間,S6-S7の画一的な境界などあるべくもなく,また中肝静脈に沿ったmain portal fissureに沿い肝を切離し,右肝のいわゆる「前区域枝・後区域枝」分岐に達しても,必ずしも前区域枝は頭・尾側1本ずつに分岐せずさまざまな分岐形態を有し,またこれらをテーピングして阻血領域をみると,Couinaud分類とはかけ離れた症例が多々存在した。竜先生の本は大変新鮮で「ああ,こういうことだったのか」と納得させられる内容であった。
2009年には日本語版の内容をさらに充実された英語版の『New Liver Anatomy』(Springer社)を発刊され,さらに今回日本語では第2版となる本書を上梓された。
本書では,多くの症例において前区域門脈枝(3次分枝)が頭側・尾側ではなく,腹側・背側に分岐する概念・事実を示された。また肝切除の鍵となる(1)中央入口(main portal fissure),(2)左の入口(umbilical fissure),に続く第3の扉である(3)右の入口(anterior fissure)がわかりやすく解説され,それにより,前腹側領域切除・前背側領域切除・左肝+前腹側領域切除・後区域+前背側領域切除,など極めて合理的な新たな概念の肝切除術式が提唱されている。これらは今後,再発様式の研究を経て,「系統的切除」と認識されると考えられる。
本書の礎となっているのは,豊富な症例と徹底した術前の美しくかつ正確詳細な画像解析に基づいた事実の検証である。ことに本第2版においては,肝静脈のドレナージ形態・尾状葉の詳細・右側肝円索・胆管の詳細・肝門板など,詳しく知りたい点についてわかりやすくかつ詳細に述べられており,「あれ,どうだったかな?」というときに必ず役に立ってくれる頼りになる1冊である。
本書はこれから肝臓外科を志す若い外科医には必須の書であり,またこれまでに多くの肝切除を経験されてきたベテラン医師にもぜひ読んで納得していただきたい素晴らしい1冊である。
肝静脈還流に基づく区域分類が新たな肝切除の地平をひらく
書評者: 山本 雅一 (女医大主任教授・消化器外科学)
『肝臓の外科解剖――門脈segmentationに基づく新たな肝区域の考え方 第2版』が発刊された。初版より7年が経過したが,その内容の充実ぶりには目を見張るものがある。
初版の序には,肝区域の考え方の変遷が記載されている。肝区域はこれまでさまざまな分類がなされているが,どれも不十分なものであった。特に「肝癌取扱い規約」の区域・亜区域分類は,実は解剖学的門脈分岐に沿ったものではなく,このため多くの誤解が生じた。また,著者らが主張しているように,肝内門脈分岐は決してCouinaud区域分類と一致していない。実際の門脈分岐形態に沿った新しい区域分類が提唱されるのは,3D画像の進歩を見ると当然なことと考えられる。
肝の門脈分岐を左右対称で考えると,4本の主門脈により4つのsectorと7つの区域に分類できるとしている。左paramedian vein(門脈臍部)がP3とP4に分岐するように,右paramedian vein(前区域門脈)が頭側と尾側ではなく,腹側と背側に分かれているとした。これらの門脈により還流される領域を腹側区域,背側区域とし,腹側・背側区域の境界にはanterior fissure vein(AFV)の走行がみられている。また,AFV部で肝を離断することで,肝右側門脈3次分枝にアプローチ可能であることを示した。幕内らの,超音波ガイド下に3次分枝門脈を同定する方法とは全く異なるアプローチで,肝内グリソン鞘(門脈)に到達が可能となった。このアプローチは1980年中頃より,高崎健が施行してきた肝門経由グリソン鞘アプローチと同様と考えられる。これらの手術方法は,肝門部,さらには肝内グリソン鞘アプローチによる肝切除であり,日本を中心に発展してきたが,最近では海外でもこのアプローチの簡便性,重要性が認められつつある。
このアプローチについて,本書序には,「術中エコーを必須としない新たな肝臓外科の時代」という言葉で表現されている。さらに著者らは,肝静脈還流と新しい区域分類の整合性についても述べている。著者らの説明で,肝内門脈分岐,肝静脈還流を重視した肝切除が可能となった。新しい区域分類の概念を頭に置き肝切除を施行することで,肝切除がさらに簡単に,安全に施行できるようになったと考える。
ワークステーションによる細密な門脈像と,肝切除イラストレーションは見飽きることはなく,手術時の臨場感を味わいながらページをめくることができる。また,所々に新しいトピックスが含まれており,肝臓外科の知識の整理に役立つよう工夫されている。
本書は肝臓外科医のバイブルとして手元に置きたい本であるが,肝胆膵高度技能専門医をめざす医師はもとより,肝胆道系の画像診断に携わる医師にもぜひ手に取って見ていただきたい良書である。
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