看護情報学

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本書は、「情報」に関する基礎的な知識から医療・看護に即した実践的な内容まで、看護の基礎教育として学ぶべき「情報」に関する知識が包括的にまとめられています。 第1部では、高校卒業時までに学んできた「情報」や「情報化社会」に関する基礎的な知識を振り返り、あらためて看護につながるものとして学習しなおせる内容としています。 第2部では、保健医療・看護の現場でどのように情報が取り扱われているのかを学習できる内容としています。第5章では、実際に使われている病院内のシステム画面などを例示して、電子カルテなどの病院情報システムがどのようなものかを視覚的に学習できるようにしています。 第3部では、「情報」を取り扱ううえで必要とされる倫理や患者の権利に関して学べる内容としています。また、コンピュータリテラシーとセキュリティに関しても「情報」を取り扱うために必要な知識としてここで取り上げています。 第4部では、情報の収集や文字・統計情報の整理・発表などを具体例とともに展開して、演習的に学習できるようにしています。なお、具体例としては、汎用されているマイクロソフト社のワードやエクセル、パワーポイントでの情報処理の方法をわかりやすく取り上げています。
*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
*「第12章 Excelによる統計解析」の紙上演習に用いている「外来患者満足度調査のアンケート結果」のExcelデータ(→p.238)は 本書第2版のページ からご利用ください。
シリーズ 系統看護学講座
中山 和弘 / 瀬戸山 陽子 / 藤井 徹也 / 篠崎 惠美子 / 会田 敬志 / 高木 晴良 / 戸ヶ里 泰典
発行 2012年02月判型:B5頁:368
ISBN 978-4-260-01360-4
定価 2,750円 (本体2,500円+税)
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はしがき

看護師にとっての「情報」とは
 看護師にとって,「情報」とはなんであろうか。
 それはとても便利なもので,ますます身近なものになっている。医療現場はすでにコンピュータの端末であふれ,さらに,携帯電話やスマートフォンなど,持ち運べて,歩きながらでも,いつでもどこでも情報を手に入れられるコンピュータも数多く導入されてきている。他方では,そうやって便利になったがゆえに,患者の個人情報が流出したというようなニュースも聞かれる。便利なものとはいえ,思わぬところにリスクもかかえている両刃の剣なのである。したがって,「情報とはなにか」を知り,その「いかし方」と「まもり方」の両方を学ぶ必要がある。情報によって得られる患者の利益と同時に,患者の人権はなんとしてもまもらなければならない。
 看護師は,医療の最前線において患者に最も近いところにいて,患者中心の医療の実現において重要な役割を担っている。そのため,患者をつねによく観察し,そこから得られる情報によって,看護を展開しなくてはならない。そして,そのプロセスを情報として記録し,医療チームのメンバーとコミュニケーションをとって,共有し合う。もちろん,誰よりも患者にこそ,治療やケアについての情報を,わかりやすく伝えていかなくてはならない。すなわち,看護師は,患者の情報を安全に活用し,情報をもとにコミュニケーションをとる仕事であるともいえる。しかし,この「情報」と「コミュニケーション」の特徴をよく知らないと,単にうまく伝わらないだけでなく,それが原因で大きな医療ミスにつながることが多いのである。
 もう1つ大事なこととして,看護師の仕事を発展させていくためには,看護学の研究が不可欠である。そのためには,新しい情報の「つくり方」も知らなくてはならない。それにはまず,すでにある研究の情報を収集し,わかっていることとわかっていないことを明らかにしなくてはならない。そして,新たに解明する課題が見つかれば,調査などによって,患者や看護師などから情報を正確に収集し,適切に統計処理を行うという作業が待っている。そこで得られた研究結果は,協力してもらった患者のためにも,より多くの人が役だてられるように発表する必要がある。さらにいえば,このような看護の仕事は,まだまだわが国の人々に十分に知られているとは言いがたい。「看護学」とはなんなのかの「広め方」を,学んでいかなくてはならない。
 したがって,「情報」と「コミュニケーション」の専門職である看護師にとって,ICT(Information and Communication Technology,最近はITのかわりにこうよぶ)は,その専門性を発揮するために必要不可欠なものであり,看護師にとって,いまだかつてない強力な味方となるものである。

本書の目的
 本書の目的は,ICTを取り入れながら,「情報」と「コミュニケーション」を,いかに「看護」の実践や学問としての「看護学」にいかすのかを学ぼうとするものである。そのため,本書のタイトルを『看護情報学』とした。
 本書の構成は,4部からなっている。
 第1部は,まず「情報とはなにか」についてである。情報は,よりよい意思決定のために役だつものであり,そのような情報を共有するコミュニケーションがなぜむずかしいのかについて理解し,それを克服し,たすけ合うためのしくみとしてのICTがあることについて解説している。
 第2部は,保健医療における情報の「いかし方」について紹介している。おもな内容は,信頼できる情報としてのエビデンスとナラティブに基づいた医療と看護,看護の「見える化」のための標準化および看護用語と看護の質指標,電子カルテなどの情報システムにおける多職種による連携と医療安全,患者が情報に基づいて意思決定できる能力としてのヘルスリテラシーを向上させる支援方法などである。
 第3部は,情報を扱ううえでの患者を中心とした「まもり方」としての情報倫理について書いている。主として,プライバシーや守秘義務と医療倫理,患者の知る権利としてのインフォームドコンセントやセカンドオピニオンと診療情報の開示,看護における個人情報の利用と保護,患者や看護師みずからをまもるための情報セキュリティなどである。
 第4部は,新しい情報の「つくり方」と「広め方」として,研究によって新しい情報を生み出し,発表する方法について解説している。まずは,文献やインターネットの検索によって,すでにある情報をチェックし,自分で情報を生み出す必要性について検討する方法から,調査によって情報のもとになるデータを収集し,そのデータを統計的に分析し,論文やレポートとしてまとめたり,口頭発表やポスター発表したりする方法までと,さらにインターネットで発表して,看護学について発言やアピールを行う方法まで記してある。
 歴史を振り返れば,「情報は力」であることは間違いない。これまでは独占されてきたが,それを誰もが等しく手に入れることができるようにと,ICTが発展してきたのである。しかし,「いかし方」を知り,「力」を手に入れなければ,格差はかえって開いていき,問題に直面して必要な情報を求めている人々を支援することはできない。それを実感するためにも,実際に活用して,さまざまな人とコミュニケーションをとって共有してみよう。情報化社会とは,誰もが安心して喜びと悲しみを分かち合え,たすけ合える社会である。人のために役だちたいと考えて看護の道に進んだ学生の皆さんが,本書を通して,そのような社会づくりにますます参加していけるようになることを願っている。
 2011年12月
 著者代表 中山和弘

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第1部 情報と情報化社会
第1章 情報の定義と特徴 (中山和弘)
 A 情報とは
 B 情報の特性
 C 情報の認知と意思決定
 D 情報の伝達とコミュニケーション
第2章 情報化社会 (瀬戸山陽子)
 A 情報化社会の成立
 B 情報化社会で求められること

第2部 保健医療における情報
第3章 保健医療と情報 (中山和弘)
 A 医療における情報
 B エビデンス情報に基づいた保健医療
 C ヘルスプロモーションと情報
第4章 看護と情報 (中山和弘)
 A 看護における情報
 B 情報化社会と看護
第5章 医療における情報システム (藤井徹也・篠崎惠美子・会田敬志)
 A 医療における情報の記録
 B 病院情報システムと記録の仕方
 C 保健医療福祉のネットワークと情報システム

第3部 情報と倫理
第6章 情報倫理と医療倫理 (高木晴良)
 A 情報倫理
 B 医療倫理
第7章 患者の権利と情報 (高木晴良)
 A 患者の権利と自己決定への支援
 B 診療情報の開示
第8章 個人情報の保護 (戸ヶ里泰典)
 A 医療・看護における個人情報
 B 情報の利用の仕方
第9章 コンピュータ-リテラシーとセキュリティ (高木晴良)

第4部 情報処理
第10章 既存の情報の収集方法 (中山和弘)
 A 文献検索
 B インターネット上で役だつ情報へのアクセス
第11章 調査によるデータ収集方法 (会田敬志)
第12章 Excelによる統計解析 (高木晴良)
第13章 文字情報の整理 (戸ヶ里泰典)
 A 対象と目的に応じた文字情報整理のポイント
 B 論文の書き方の基礎
 C ワープロソフト(Microsoft Word)の使い方
第14章 情報の発表とコミュニケーション (高木晴良・中山和弘)
 A 口頭発表とポスター発表
 B インターネットにおける発表とコミュニケーション

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