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病態のしくみがわかる 免疫学

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免疫学の基礎はもとより、疾患や病態、臓器と免疫といった臨床と免疫学との関わりも解説。基礎的な内容は免疫学の基本的事項程度にとどめ、図を多用することによって難解な免疫学的なメカニズムも理解しやすい内容とした。付録としてフローサイトメトリー、ELISAの原理、CD分類一覧を掲載。
編集 関 修司 / 安保 徹
発行 2010年10月判型:B5頁:296
ISBN 978-4-260-00997-3
定価 4,400円 (本体4,000円+税)

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 免疫学は,文字通りヒトが病気(疫)から免れるメカニズムを研究する学問ですが,現代生命科学の急速な進歩と膨大な情報量のなかで,何が免疫学の基本的な重要事項でどれが枝葉末節なのか,私たち免疫学者でも容易に判断できないのが現状です.まして学生や臨床医の方々には至難の業でありましょう.権威ある欧米の教科書もその意味では例外ではありません.その結果,免疫学は専門用語の多い難解な学問として,多くの学生や医療従事者から距離を置かれてきたことは否めません.
 その一方,患者さんを診る臨床の現場で,免疫学の重要性は,内科系のみならず外科系を含む多くの診療科において確実に増しています.実際に,感染,癌,自己免疫疾患,炎症性疾患,アレルギー,移植・再生医療などはもとより,外傷,熱傷,動脈硬化や高血圧にいたるまで,あらゆる臓器,疾患の病態,生体防御ならびに治療において,免疫系が大きくかかわっていることに今や疑いの余地はありません.また,科学技術の進歩によって白血球・リンパ球の分子や機能,サイトカイン/ケモカイン,さらにはRNAやDNAなどの分子免疫学的解析が,臨床分野でも頻繁に登場するようになってきています.しかしながら,実際の臨床と免疫学がいかにかかわっているのかを,理解し実感することは非常に難しいのが現状です.
 こうした状況のなか,私たちは,免疫学を学ぶ学生や臨床に携わる若手の人たち,そしてかつて免疫学に心ならずも挫折した方々を対象に,免疫学と臨床の結びつきを実感できる新しいタイプのテキストを,日本人の手によって作る必要性を強く感じておりました.そのためには,免疫学の基本事項・重要事項のアウトラインをしっかりと提示すると共に,臓器や疾患の病態などについては臨床を念頭に置いて,免疫学的にわかりやすく,しかも掘り下げて解説する必要があると考えました.
 そこでこのたび,本書を刊行するに至ったのです.本書の特徴は,前半で免疫学の歴史や考え方,基本事項について図を用いてわかりやすく解説し,後半の臓器の免疫,疾患や病態と免疫に関しては,実際に臨床に携わりながら免疫学を研究している一線の先生方に,最新の知見も盛り込んで執筆していただいた点にあります.そして,免疫学が有機的に臨床医学と結びつき,読者層なりの読み方と理解ができるテキストの執筆・編集に努めました.
 本書の読者諸氏が,免疫学を少しでも身近に感じていただけることを心より願っています.

 2010年9月
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I.免疫の基礎と全体像
 A 免疫学を学ぶにあたって
 B 免疫を担う白血球の起源
 C 自然免疫と獲得免疫を担う白血球の概要
  1.自然免疫
  2.獲得免疫
 D 自然免疫と獲得免疫の捉え方
 E マクロファージ
 F 樹状細胞
 G T細胞の分化と機能
  1.胸腺内でのT細胞の分化
  2.NKT細胞
  3.胸腺外分化T細胞
  4.制御性T(Treg)細胞
  5.Th1とTh2
  6.新しいThサブセット,Th17
 H B細胞の分化と抗体
 I NK細胞の機能
 J 補体
 K サイトカインの種類とその特徴
 L ケモカインとケモカイン受容体

II.臓器の免疫
 A 肝臓
 B 扁桃・腸管
 C 皮膚

III.疾患や病態にかかわる免疫(臨床と免疫)
 A 疾患と免疫
  1.抗腫瘍免疫
  2.細菌・ウイルス感染
  3.寄生虫・原虫疾患
  4.ウイルス肝炎
  5.自己免疫疾患
  6.消化管疾患(胃潰瘍,クローン病,潰瘍性大腸炎)
  7.腎疾患
  8.肺疾患
  9.神経疾患(多発性硬化症,重症筋無力症)
  10.循環器疾患
  11.アレルギー
  12.免疫不全
 B 病態や治療と免疫
  1.外科手術と免疫
  2.組織傷害と免疫
  3.移植と免疫
  4.消炎鎮痛薬・ステロイド,免疫抑制薬と免疫
  5.麻酔と免疫

IV.生理機能の変化と免疫
 A 免疫の成長発達
 B 加齢と免疫
 C 妊娠と免疫
 D 運動と免疫
 E 自律神経と免疫

V.付録
 A 免疫学の理解に必要な実験・検査法
  1.フローサイトメトリー
  2.抗腫瘍細胞活性測定法
  3.ELISA法
 B CD分類一覧表

 索引

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読みやすく,身近に感じる免疫学書
書評者: 佐藤 譲 (岩手医大教授/糖尿病・代謝内科)
 免疫学の教科書を久しぶりに手にして,まず手ごろな大きさと重さに親しみを感じた。関修司先生と安保徹先生が編集された『病態のしくみがわかる 免疫学』である。

 目次に目を通し,ページをパラパラとめくると30余年前の世界が鮮やかによみがえってきた。今春亡くなられた恩師熊谷勝男先生(東北大学名誉教授)の研究室である。当時,熊谷先生(東北大学歯学部微生物学講座教授)の元には学内外から免疫学と熊谷先生の洒洒落落〈しゃしゃらくらく〉で明るいお人柄に惹かれて,多くの若手研究者が集まり熱気にあふれていた。後年その中から10数名の教授が誕生した。安保先生は熊谷教室の創生期からのメンバーである。安保先生がアメリカ留学から帰国後,関先生も加わった。毎晩,酒を片手にNKTや胸腺外分化Tリンパ球をさかなにした熱い議論が夜半まで続いた。時に大発見を祝い,時に落胆したシーンが思い出される。安保先生と大学の同期の私は,当時,自己免疫性糖尿病(1型糖尿病)モデルのNODマウスの研究のために内科学教室から熊谷教室に通っていた。安保・関グループが連発する大発見の祝杯を何度楽しませてもらったことか。

 安保先生と関先生のオリジナルな発想と研究成果を骨子に構成,編集されたのが本書である。当時の熱気がそのまま伝わってくる。膨大な体系に取りつく島のなさを感じる現代免疫学であるが,本書では基礎免疫学から臨床免疫学や先端的な話題まで学生や初心者を意識して,単なる知識の羅列ではなくストーリー性を重視して書かれている。そのためにまず感じるのが読みやすさとわかりやすさである。

 I章の「免疫の基礎と全体像」では免疫システムと,免疫に関与する細胞やサイトカインが解説され,その知識を基に次に「臓器,疾患や病態にかかわる免疫(臨床と免疫)」が登場する。詳し過ぎず,飽きずに臨床免疫の全体像を理解させてくれる。1型糖尿病の項目がなかったのが私には心残りである。終章の「生理機能の変化と免疫」では安保先生の真骨頂が登場する。自律神経と免疫の章の「ヒト白血球の日内リズム」の図は,私を含む熊谷教室研究員が集団で大学の同窓会館に泊まり,朝まで経時的に採血されてできたデータである。30数年前からの安保先生の情熱が改めて伝わってきた。

 座右に置き,生体における免疫の意味を理解するにも,知識の補強にも利用できる。身近に感じる免疫学書である。ぜひ一読をお勧めしたい。

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