はしがき
第2版に寄せて
保健師助産師看護師学校養成所指定規則等の一部を改正する省令が2008(平成20)年1月8日公布され,2009(平成21)年度入学生から看護教育新カリキュラムが適用されることになった。今回のカリキュラム改正は,社会の急速な高齢化と医療技術の進歩で,看護職者に求められる能力や役割も大きく変化してきていることから,これまで以上に質の高い看護を提供するためのものである。
改正のポイントの1つに,「統合分野」の創設がある。その中の『看護の統合と実践』にチーム医療や看護管理,災害看護とともに医療安全も明記され,授業4単位・実習2単位が配された。『看護の統合と実践』は,新人看護師の不適応の要因ともなっている教育と臨床の乖離を狭めることを意図し,臨床準備教育を充実させて,学生が卒後の早くに臨床へ適応する力を高めるねらいがある。このカリキュラム改正の適用年度と時を同じくして本書の改訂ができたことに,身が引き締まる思いである。
臨床現場での看護師は,疾患や重症度,病期の異なる複数の患者を受け持ち,医療行為やケアの提供者としての業務のほかに,患者の病態の観察といった多様な業務が輻輳(ふくそう)するきわめて多忙な日常に身をおいている。それぞれのシーンにおいて安全に業務をこなすことは,けっして容易なことではない。そのため,業務における知識と技術ばかりでなく,患者の病態や障害に対する相当な知識と判断力が求められる。診療の補助業務では,どこで,どのような間違いが,なぜおきるのか,間違いによってどのような事態がおこるのかを,また療養上の世話では,どのような患者にどんな事故がおきる危険があるのかという知識に加えて,間違いや不適切な行為を防止し,もしそれがおきた時に患者の傷害を最小化する知識や技術も必要である。しかし,それらがあっても,卒後の臨床現場における実務で使えるとは,限らない。そこで『看護の統合と実践』では,科目をこえた教員同士の,また実習施設との連携でそれらの知識や技術を統合・整理し,卒後の実務でのさまざまなシーンで使えるような教育が広がっていくことを願わずにはいられない。
さて,この第2版では新たに加筆した箇所が2点ある。1つは第6章の「医療安全とコミュニケーション」である。医療現場は,さまざまな医療職者と多数のメンバーからなるチームが力を合わせて,患者の治療にあたっている。チーム医療において,安全で適切な医療・看護を提供するために必要な情報をメンバーに正確に伝達し,共有するためのコミュニケーションが重要な役割を果たしている。看護師は,医師の診療の補助者として,すべての医療行為に直接・間接的に関与し,医師や他のコ・メディカルと連携・協働している。また,患者・家族との関係も緊密であることから,コミュニケーションの要(かなめ)として存在している。この章が,看護師のコミュニケーションのあり方を考えるきっかけになればと思っている。
もう1点は,第7章の「組織的な安全管理体制への取り組みとわが国の医療安全対策の展望」である。人間が間違いをおかしにくい,あるいは間違いの発見を容易にするためのシステム改善とはどういうものかを理解するために,実際の事例でのシステム改善の例を相当量の紙面をとって解説した。システムとして医療安全を考える力も養ってほしいと思っている。また,カラー印刷になったことで,図表の理解もしやすくなっている。
第2版もまた,看護基礎教育における医療安全教育に活用してもらい,不幸な医療事故が1件でも少なくなれば,著者としてなによりの喜びである。
2009年2月
著者