はしがき
初版の序
本書は,高等看護学院学生のための薬理学入門書である。現代の医療にふさわしい,しかも実際的な内容をおり込んだつもりである。
薬理学の教育・学習は,薬品の種類が多いだけに,とかく断片的な知識の切り売りとその暗記に終始しがちである。このような欠点を少しでも補うために,本書では現在広く用いられている医薬品のかずかずを,つとめて体系づけながら紹介したつもりである。もし行間からその気持ちを察していただけるなら,著者にとって望外の喜びとするところである。
薬理学の内容は,飲み物を入れたコップにたとえることができよう。この場合,第1章は容器であり,第2章が飲み物に相当する。飲み物の種類は時代のうつりかわりに応じて少しずつ変化するかもしれない。しかし,容器のできがよければ,どんな飲み物を入れてもつねによくそれにマッチするものである。この点を留意されて,第1章の学習にはとくに力をいれていただきたい。また,かなりの紙面をさいて,「学習課題」の欄を設けた。これを活用することによって,実力をのばしていただきたい。そして,薬理学から得た知識を,看護の実際によりよくいかされることを,心から期待するものである。
本書を作成するにあたって,札幌医科大学の田中教授,藤野講師,薬剤部の木下副部長からご教示をいただいた。ここに厚くお礼を申しあげる。
1968年2月
改訂の序
薬物治療においては,医師・薬剤師・看護師の三者の連携が重要となっている。なかでも,看護師は患者と接する機会が最も多く,薬物治療を受けている患者の回復に果たす役割は大きい。看護師の薬物治療への理解が十分でなければ,よい治療効果は期待できないといえよう。
上記を念頭において大幅に書き改めた前版(第11版)をふまえて,今回の改訂(第12版)では次のことがらを改めた。
第1部の薬理学総論では,薬物に対する生体側の応答を治療効果にかぎらず,その延長上におこる有害作用の機序に関しても記述を加えた。複雑な薬物のはたらきに対し,副作用の予知・発見や患者ケアのうえで一助となることを望んでいる。
第2部の薬理学各論では,治療上,生体側の状態を調整するという重要な役割を果たす輸液剤と輸血剤について,付章としてごく基本的なことがらをまとめた。
また,各項において新たに「服薬指導・看護のポイント」と称したコーナーを設けた。ここでは,代表的な薬剤の副作用や取り扱う際の注意点,与薬後の観察ポイントなどをまとめた。
さらに,医薬品に関する情報を活用できるように,巻末に付録として処方せんや添付文書の読み方について解説を加えたので,学習あるいは看護業務を進めるうえで役だてて欲しい。
この教科書を通じて治療薬のはたらきを学んだ学生の皆さんは,人体の精緻なはたらきについても同時に学ばれたのではないかと思う。そうした知識を,治療薬を十分にかつ安全に活用するために役だててもらえることを願っている。
2008年11月
著者ら