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実践 病院原価計算


(第2版)

編著:渡辺 明良

  • 判型 A5
  • 頁 176
  • 発行 2014年06月
  • 定価 3,240円 (本体3,000円+税8%)
  • ISBN978-4-260-01936-1
病院経営における原価計算の“戦略的実践”を目指して
わが国における病院原価計算の地平を開いた初版の刊行以降も、病院経営環境の変化はさらに激しさを増すとともに、原価計算に対する考え方や利用方法も変化を遂げている。今版では、原価計算の手法を最新のものに修正したうえで、DPCの導入により特に重要となる疾病別原価計算の手法について、さらにBSCとの関係や部門予算制への展開など、病院原価計算をより戦略的に活用するための方法についても解説した。
序 文
第2版 はじめに

 本書の初版が発行されてからすでに10年以上がたった。この間,Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System(DPC/PDPS)の導入をはじめ,電子カルテに代表されるICTの発達など,病院を取り巻く...
第2版 はじめに

 本書の初版が発行されてからすでに10年以上がたった。この間,Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System(DPC/PDPS)の導入をはじめ,電子カルテに代表されるICTの発達など,病院を取り巻く環境の変化は,病院経営にも大きな影響を及ぼしてきた。これに伴い,病院原価計算もその手法に関する研究や実践が大きく進展した。
 しかし,病院原価計算を活用するという点においては,2014年の現在においても発展途上であると考えられる。これは,病院原価計算は経営管理のツールであり,その作成のみを目的としてはならないことを示している。
 この点を考え,本書では病院原価計算の目的をより明確にすべく,病院が置かれている現状を把握し,そこから経営課題を抽出し,経営戦略を構築して実行する,という一連の経営管理の流れを整理した。そして,この経営管理の中で,経営意思決定や業績評価などの目的をもって原価計算を行うことの重要性を提示した。これらの改訂により,病院原価計算が単に「原価」を「計算」するものではなく,経営管理の重要なツールであるという位置付けを明確に示し,手法論から実践論への展開が求められている病院原価計算の現状と課題を中心的テーマとして,整理を行った。
 一方,病院原価計算の手法が多様化している現状を踏まえ,その実践事例から,今後の病院原価計算の展開についていくつかの方向性を示した。
 これらの検討は,図に示す病院経営モデルの整理にもつながった。それは,病院経営における,医療サービスを通した社会的責任と利益というアウトプットに対して,適正な経営資源のインプットを計測するというアプローチと,目標利益を上げるために許容される経営資源の投入を見積もるという,事業計画や予算策定のアプローチというように,病院原価計算の目的の明確化が必要であることがここでも示された。

図
図 経営プロセスのモデルと原価計算の目的


 今回の改訂版の発行にあたり,多くの方々にご協力をいただいたことに感謝申し上げる。特に,医学書院の大橋氏には,初版発行の際にお世話になって以来,改訂版発行まで忍耐強く長い期間を待っていただいた。聖路加国際大学法人企画室の梅井君には,病院原価計算の実務やシステム導入の担当を通じて,病院原価計算の実践をまとめていただいた。物品管理センターの羽場君,施設課の糸賀さん,研究事務室の中澤君には,財務会計システムの洗練化を通じて,セグメント会計の導入と病院原価計算の精度向上に尽力いただいた。済生会本部事務局の伊藤・森田の両氏には,後述する済生会医学・福祉共同研究における済生会原価計算カンファランス(CAC)を通じて,病院原価計算の実践手法の開発への参画という,大変刺激的な機会を与えていただいた。また,済生会吹田病院事務長の宮部氏,済生会千里病院事務部次長の高元氏,済生会川口総合病院財務・法務課課長の清水氏の3氏からはその貴重な実践報告をいただいた。
 最後に,本書が多くの病院において,病院原価計算を実践するための一助となれば幸いである。

 2014年5月
 聖路加国際大学
 渡辺明良
目 次
第2版 はじめに
初版 はじめに

第1部 病院原価計算の基本的理解
 第1章 病院原価計算が求められる背景
  1.環境分析の概要
  2.マクロ環境分析の事例
   1)高齢・少子社会
   2)成熟化社会
   3)国際化社会
   4)情報化社会
  3.ミクロ環境分析の事例
   1)顧客ニーズ分析
   2)内部環境分析
  4.医業費用の対収益比率分析
   1)給与費率
   2)材料費率
   3)委託費率
   4)設備関係費率
   5)経費率
   6)研究・研修費率
  5.財務分析の限界
  6.環境要因を整理して現状を把握する(SWOT分析・クロス分析)
  7.第1章まとめ
 第2章 原価計算の基礎的概念
  1.管理会計としての原価計算の位置付け
   1)経営者としての院長が果たす2大職責と原価計算
   2)会計の2大分野とその役割
   3)財務会計と管理会計の相違
   4)求められる経営情報とは?
  2.収益と原価と利益の関係について考える
   1)収益と費用の区分
   2)コストの定義
  3.原価の構成と分類
   1)原価の要素と分類
   2)原価の構成
   3)変動費・固定費
  4.原価計算の目的
   1)原価計算の目的の明確化
    (1)病院会計の原価計算の目的
    (2)原価計算の目的に応じた原価の範囲
   2)経営意思決定のための原価計算
   3)採算性把握のための原価計算
  5.原価計算の種類
   1)部門別原価計算
   2)科別原価計算
   3)行為別原価計算
   4)疾患別原価計算・患者別原価計算

第2部 病院原価計算の実務
 第3章 部門別原価計算の実務
  1.原価計算の基本的しくみ
  2.部門別原価計算の手続き
   1)部門別原価計算実施のための準備作業
    (1)経営トップの意思決定
    (2)原価計算実施体制の構築
    (3)部門の設定・調査票の設計
   2)部門別収益の把握
   3)原価の算出
    (1)給与費の算出
    (2)材料費の算出
    (3)委託費の算出
    (4)設備関係費の算出
    (5)経費の算出
    (6)研究・研修費の算出
   4)部門原価の配賦
    (1)補助部門原価の配賦
    (2)中央診療部門原価の配賦
  3.部門別原価計算の課題
 第4章 診療科別原価計算,患者別原価計算への展開
  1.診療科別原価計算の手法
   1)診療科別収益表の作成
   2)診療科別原価の算出
    (1)給与費の算出
    (2)材料費の算出
    (3)経費の算出
    (4)部門配賦と総括表のポイント
  2.患者別原価計算の手法
 第5章 病院原価計算の多様化
  1.セグメント会計
  2.シェアリング概念を用いた原価計算
  3.原価データを利用した診療科別生産性指標
   1)原価データを利用した診療科別生産性指標「済生会SMART」
   2)従来式診療科別原価計算と済生会SMARTとの比較から考える
    (1)従来式原価計算と済生会SMARTの配賦の相違点
    (2)既存ソフトと済生会SMARTを比べる~吹田病院の事例~
   3)済生会SMARTを用いた経営改善
 第6章 病院原価計算の活用事例
  1.事業計画策定と予算策定
  2.経営戦略実行の成果尺度

索引