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「患者中心」で成功する病院大改造

医療の質を向上させる15章

原書編集:Susan B. Frampton /Patrick A. Charmel 
訳:平原 憲道/和田 ちひろ

  • 判型 A5
  • 頁 368
  • 発行 2016年06月
  • 定価 4,104円 (本体3,800円+税8%)
  • ISBN978-4-260-01242-3
「プレイントゥリーモデル」にみる、患者中心の医療モデル
患者中心の医療のモデルとして知られている米国「プレイントゥリーモデル」の考え方と、導入した医療施設の概要をまとめたもの。患者中心の医療に求められる要素とは何か、医療の質を向上させるためのケアはどういったものか、実践も含めて解説。さらに、病院経営の視点からみた「患者中心の医療」、医療者と患者の関係、医療の質と安全性等にも言及。患者のための病院づくりに応用可能な事例も掲載。
序 文
推薦の序(大熊由紀子)/訳者の序(平原憲道)

推薦の序
 『「患者中心」で成功する病院大改造—医療の質を向上させる15章』 —— なんという素敵な,しかも本質をついた日本語のタイトルでしょう.
 朝日新聞の健康面...
推薦の序(大熊由紀子)/訳者の序(平原憲道)

推薦の序
 『「患者中心」で成功する病院大改造—医療の質を向上させる15章』 —— なんという素敵な,しかも本質をついた日本語のタイトルでしょう.
 朝日新聞の健康面で,社説で,そして,「福祉と医療・現場と政策をつなぐ志の縁結び係&小間使い」を名乗って訴えたいと願ってきたことが,ここに凝縮されています.
 「お客さんを粗末な丸いすに座らせて医者は背もたれの立派ないすに座る.こんな国は日本だけ」「医療はサービスである」「薬のラベルをはがして手の内は見せない.そういう日本の医師の行動形態は,魔法使いの流れをくんでいる」など,医師と患者の関係をめぐる“過激”でユーモラスな発言で,医療界に旋風を巻き起こしていた,当時大阪大学助教授だった故中川米造さんと組んで,「どう医療をよくするか」というシリーズを朝日新聞から刊行したのは1973年のことでした.
 その後も,髭の殿下の名で知られる三笠宮寛仁親王を患者代表に招いたシンポジウムを開いたり,デンマークの「でんぐりがえしプロジェクト」にヒントを得て,国際医療福祉大学大学院で公開講義シリーズ「患者の声を医療に生かす」を企画して,医学書院から出版していただいたり.「でんぐりがえしプロジェクト」というのは,病気や障害を体験した人に教師役をつとめてもらって医療や福祉の教育の質を高める試みです.また,英国発の患者の語りのWebサイト,ディペックス・ジャパンも応援してきました.

 本書も患者さんの体験から出発しているのですが,考えられる限りのさまざまなプロフェッショナルが一緒になってシステムに組みたてたという着想が前例のない挑戦です.それぞれの専門性が発揮され,しかも,原点は少しもぶれていないのが見事です.
 どの章にも「物語」がとけこんでいるのも,説得力を増しています.米国で運動として広がっているのも納得できます.
 この本が,患者さんの幸せにつながるだけでなく,スタッフの働く誇りにもつながっていくことを願っています.

 2016年3月
国際医療福祉大学大学院教授(医療福祉ジャーナリズム分野責任者)
大熊由紀子


訳者の序
 本書の編者である米国NPO団体プレイントゥリーのスーザン・フランプトン代表と私の出会いは2000年,日差しがまぶしい春の鎌倉であった.フランプトン氏は,訳者の和田ちひろ氏が主催するシンポジウムに登壇することになっていた.聖路加看護大学の講堂で行われたシンポジウムでは,「患者中心の医療」の先駆的取り組みが紹介され,そのとき,私は通訳を担当した.
 和田氏が亀田信介院長(亀田総合メディカルセンター)に「患者中心の病院を勉強したいならプレイントゥリーを見学するとよい」と助言されたのは1999年.翌年に,彼女は早速ベス・イスラエル・メディカルセンター(マサチューセッツ州)の導入病棟を訪れている.続いて彼女は,病院全体でこのシステムを取り入れたミッドコロンビア・メディカル・センター(オレゴン州),そしてプレイントゥリー本部のあるグリフィン病院(コネチカット州)を訪れた.
 プレイントゥリーの特色の1つに,第2章で紹介されている患者自身が病気について学習できる「ヘルスケア・リソースセンター」がある.和田氏は米国と医療事情が異なる日本でも工夫次第ですぐに導入できると考え,翌年に国立長野病院(現・国立病院機構 信州上田医療センター)の武藤正樹副院長(当時)や京都南病院の山室眞知子司書などの協力を得て,同院内に「ホっとらいぶらり・長野」を開設.15年の歳月を経た今も,精力的なボランティアたちによって運営が続けられている.
 私がプレイントゥリー本部とグリフィン病院を訪れたのは2003年のことであった.フランプトン氏や病院幹部と一緒に院内を巡りながら,私はこの急性期病院が予想以上に静かなことに拍子抜けした.「患者様のために!」と燃えるスタッフが走り回りながら働いているという私の予想は見事に裏切られた.スタッフは開放的なナースステーション,ラウンジ,ヘルスケア・リソースセンターなどで,患者・家族と穏やかに会話していた.
 その理由はすぐに分かった.院内では誰も「無理」をしていなかった.本書で繰り返し書かれている通り,ここでは「患者中心の医療」が少数の頑張る個人が院内の抵抗を押し切って突き進む類のものではなく,病院全体のシステムとしてしっかりと組み込まれていた.院内デザインや部屋の配置,スタッフの労働環境や福利厚生,業務内容や人材教育に至るまで,すべてのシステムが1から10まで患者中心であるがために,誰も無理する必要がないのである.
 高い患者満足度で知られるこの病院は,2006年に米国フォーチュン誌により最も働きやすい企業100の第4位に選ばれ,業界を騒然とさせたが,幹部たちに驚きはなかった.本書の第3・11章に詳しく述べられている,職場に満足する医療スタッフが患者を満足させるのは当然のことだから.
 2007年春,医療の質に関する研究会(日野原重明会長)が招聘し,フランプトン氏は7年振り二度目の来日を果たす.このシンポジウムの後,同研究会の故郡司篤晃理事らは,多くの病院にヘルスケア・リソースセンターを開設し,国内に普及させていくことになる.
 プレイントゥリーのシステムを丁寧に解説するようなマニュアルがあれば日本でも有用だろうに,と思っていた矢先の2009年,待望の原書改訂版が出版された.大熊由紀子教授(国際医療福祉大学大学院)と,河北総合病院の河北博文理事長の力添えもあって,医学書院から本書が出版されることが決まり,さっそく各章の内容に近い背景を持つ医療関係者などに翻訳の協力を依頼した.
 翻訳作業は数年間で完成するはずだったが,私の妻となった和田ちひろの発病と数度の再発とで,とりまとめの作業が大きく滞りこのタイミングでの出版となった.自らの闘病体験からプレイントゥリー活動を始めたチェリオット氏のように,妻もこの体験を活かし,患者中心の医療活動にさらなる貢献ができることを願っている.
 本書は冒頭から順に読み進めていただく必要はない.むしろ目次を見て,興味をもった章から読むことをお勧めする.病院経営者,医師,看護師,薬剤師,管理栄養士,司書,ボランティア,病院建築家,医療政策者,そして患者・家族など,多様な立場の方が興味を持つ内容が,必ずどこかの章で具体的な事例とともに扱われているからだ.

 本書のすべての読者にこの勇敢な言葉を捧げたい.
“Normality is a paved road : It's comfortable to walk, but no flowers grow on it.”
「あたりまえ」とは舗装された道のようなものだ.歩きやすいが,そこに花は咲かない.
ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ

 2016年3月
平原憲道
目 次
 推薦の序
 訳者の序
 謝辞
 編集者
 プロローグ
 イントロダクション

I.患者中心のケアに必要な要素
 第1章 人間的な触れ合いとかかわりを中心としたケア
 第2章 情報へのアクセス 多様な人々への情報提供とエンパワーメント
 第3章 癒しをもたらすパートナーシップ 患者・家族・ボランティアを巻き込むことの重要性
 第4章 食事と栄養 育み癒す食べ物とは何か
 第5章 スピリチュアル(霊性)および文化的な多様性 癒しを呼び起こす内なる力
 第6章 補完代替療法を現代医学のケアに組み込む
 第7章 アート鑑賞の医療効果への影響
 第8章 癒しの環境 健全で育みのある環境をつくる
 第9章 ヘルシーコミュニティ 医療サービスの境界範囲の拡大

II.患者中心のケアの最近の動向
 第10章 患者中心のケアで病院経営を強化する
 第11章 患者中心のケアモデルにおける医師-患者の関係
 第12章 患者中心のケアをさまざまな医療環境で導入
 第13章 患者中心のケアによる医療の質と安全との統合
 第14章 公共政策としての患者中心のケア 政府,保険者(支払者),一般市民の役割
 第15章 患者中心のケアに対する障壁を乗り越えるには

 エピローグ
 索引