レベルアップ心電図
波形パターンから学ぶ

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カギは「波形パターン」だった―。Case/Questionで考え,Answerで確かめ,「解説」で応用力を養う。バリエーションに富んだ130症例もの心電図を,著者らの明快かつ緻密な解説にサポートされながら読み込んでいくうちに,その波形から判読できる実力が身につく。今問われる「基本的診療能力」を確実にしたいすべての臨床医に。
編集 山科 章 / 近森 大志郎
発行 2004年07月判型:B5頁:220
ISBN 978-4-260-10657-3
定価 4,180円 (本体3,800円+税)
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  • 目次
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1 心電図の基本と判読のポイント
2 心電図記録
3 P波の異常
4 QRSの異常
5 QRS幅の延長
6 Q波
7 STの異常
8 T波の異常
9 QT延長/U波
10 急性心筋梗塞
11 心筋虚血
12 心筋症
13 左室肥大および拡張
14 右心系の異常
15 薬剤による影響
16 電解質による影響
索引

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難しい心電図判読を学ぶ若手医師に最高の指導医が手をさしのべる
書評者: 西村 重敬 (埼玉医大教授・循環器内科)
 2004年度は,医師卒後研修制度改革がスタートした年となった。後で振り返れば,あの年が教育・研修制度の大きな変換点であったという年になるであろう。山科教授が序で述べておられるように,その研修目標は,「プライマリ・ケアの基本的な診察能力(態度,技能,知識)を身につけること」である。そのプログラムの中で循環器科領域においては,経験すべき症状・病態として胸痛,動悸,呼吸困難など,緊急を要する症状・病態としてショック,急性心不全など,経験すべき循環器領域の疾患として,心不全,狭心症,心筋梗塞,不整脈(主要な頻脈性,徐脈性不整脈),弁膜症(僧帽弁膜症,大動脈弁膜症),動脈疾患(動脈硬化,大動脈瘤)があげられている。これらは,診療する機会の高い(common)病態と疾患である。その診断にあたっては,病歴,身体所見が最重要であり,加えて心電図検査は不可欠である。医師には,プライマリ・ケアに必要な一定レベル以上の心電図診断能が求められていることを意味する。

 心電図は難しくまだまだ不明な点が残されている。誤解を恐れずに言えば,単心筋細胞の電気的現象モデルから,ST変化,T波変化は十分に説明できない。また,不整脈の発生機序を説明する心臓電気生理学的仮説のすべてが証明されたものではない。そのために,学生や研修医の中には,厳密さを求めるあまり,心電図診断はあいまいであると,敬遠しがちな者がいる。心電図判読のある部分は,パターン認識で経験によらざるを得ないのが実情なのである。それだからこそ,かつて(私の研修医の頃)は,心電図判読の力をつけるためには,「心電図をまず判読し,次に先輩医師から教えを受け,その心電図をファイルし,症例を積み重ねながら学べ」と言われた。

 本書は,最高級の指導医が,膨大な症例の中から最適の症例を厳選,分類し,「さあ,この症例の心電図を判読しながら勉強しよう」と手をさしのべてくれているように感じる本である。構成は,心電図提示,病歴等の臨床所見,本質的な質問と解答,解説,チェック項目の確認からなっている。なによりもすばらしいのは,心電図所見の臨床的意義をどのように判断し患者を診ていくのか,という視点が貫かれていることである。この点が,これまでの心電図診断演習本との最大の違いである。

 医学生,初期臨床研修を受けている医師,内科研修中の医師,循環器専門医をめざしている医師に加えて,救急疾患の診療にたずさわっている医師やコメディカルの方々にも,本書を強く推薦する。ただし,読んでいく際の注意点は,編集・著者らの長年の指導経験から得られた,学習者の誤りやすい点等が,キーワード,表にさりげなくまとめられているので,一字一句を理解していくことである。

心電図判読のレベルアップをめざすすべての臨床医に
書評者: 桑島 巌 (東京都老人医療センター内科部長)
◆均質でレベルの高い医療を求められる時代

 近年における病診連携の促進は,すべての医療機関が均質かつレベルの高い医療サービスを提供することをめざすものであり,勤務医・開業医とも一層高い診療技術と知識の習得が要求される。このような時代においては,効率的かつ実践に即役立つ教育資材が求められる。とりわけ,内科医のみならずすべての臨床医が,基本的な知識としての心電図判読の能力を高めることが必要不可欠であることは,誰しもが認めるところである。

 そのようななかで,本書はまず心電図波形パターンからさりげなく学べるような工夫がしてあり,次のページをめくるのももどかしいほど最後までいっきに読み通すうちにおのずから心電図判読能力が向上する格好の書であり,これから心電図を学ぶ研修医のみならず,今一度心電図のレベルアップをめざしたいすべての臨床医にぜひお薦めしたい。

 山科章教授は,ベストセラーである『不整脈の診かたと治療』を五十嵐正男先生(前聖路加国際病院)とともに著しているわが国の不整脈教育の第一人者であるが,本書は心臓核医学の専門である近森助教授とのタイアップによって,視覚的にも読者の理解を深めやすくしている。

◆読むうちにおのずから実力がつく

 本書の特徴をいくつかあげると,まず130もの実例をあげながらquestion,answer形式で各章のテーマをはじめ,そのあと実例の解説と続くために,自然に心電図の基礎的な知識が身につくようになっていることである。心電図はなんといっても実例をこなすことが力をつけるための第一歩であることを熟知した,長年研修医教育に携わった著者ならではの工夫であろう。第2に,随所に盛り込まれた「チェック」は,難しそうな理論を非常にわかりやすく,かつ簡潔なフレーズに表している。これらのフレーズを数回繰り返すうちに,心電図判読のコツが自然に身に付けられるようになっている。すでに臨床経験のある医師にとっても,これらのフレーズを流し読みするだけでも忘れかけた知識を整理するうえで役立つ。解説のところどころには,循環器を専門としない医師・研修医やコメディカルのために,専門用語をわかりやすく解説しているのも特徴であり,指導書としての工夫が見受けられる。

 さらに本書では,心電図上のSTやQ波の波形パターンを心筋シンチの所見によって確認,対比を行うことで,心筋虚血や梗塞の部位と範囲を視覚的に確認しながら解説を進めている。そのために読者はそのつど理解し,納得しながら心電図波形を習得できるようになっている。これも心臓核医学を得意とする両執筆者ならではの特徴といえよう。

 とかく,心電図教本というと難しい理論が先行するために,せっかく購入しても最初の数ページだけ読んで本箱入りの本が多いが,本書は,解説をみながら読み進めるうちに,波形から異常所見の有無をすみやかに見分けることができる実力がおのずからついてくる近年屈指の好著であり,すべての臨床医にお薦めする。

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