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消化管超音波診断ビジュアルテキスト

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疾患によっては最も有用な情報源となりうる消化管の体外式超音波検査だが,どのようなときに使用し,どのように画像を解釈して診断に迫るか。また,超音波では診断できない場合に何を考えるかに至るまで,明瞭な画像で内視鏡,病理写真と対比させながら,各疾患の典型像を示すとともに,超音波による消化管疾患への包括的なアプローチを啓蒙する。
編集 春間 賢
執筆 畠 二郎 / 眞部 紀明 / 楠 裕明 / 岡信 秀治
発行 2004年06月判型:B5頁:140
ISBN 978-4-260-10655-9
定価 8,800円 (本体8,000円+税)
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  • 目次
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1 消化管超音波診断の基礎
2 各症候における超音波所見
3 手術適応を考慮すべき急性腹症
4 小児の消化管疾患
5 無症状のことも多い疾患
6 消化管の造影超音波
7 消化管運動機能異常
文献
索引

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他に類を見ない,体外式超音波を用いた消化管診断テキストが登場
書評者: 千葉 勉 (京大教授・消化器内科学)
◆先入観を打ち破く

 「消化管の超音波診断」と言うと,誰もがまず「超音波内視鏡」を考えるに違いない。しかし本書はそうではなく,消化管の「体外式」超音波による診断用テキストである! 超音波診断学の教科書は山ほどあるが,私が知る限り,「体外式」超音波を用いた消化管の診断テキストは,他に見たことがない。おそらくこれが日本,いや世界でも初めてのテキストではないだろうか?

 言うまでもなく,また編集者の春間先生ご自身が述べておられるように,「体外式」超音波診断法の最大の特徴は,その手軽さと,患者さんに苦痛を与えない「非侵襲性」である。したがって,外来でちょっと見る手段として,また救急外来でのfirst lineの検査法として,CTなどと比較してもずっと簡便である。また内視鏡や,さらには透視検査と比較しても患者さんにとってはずっと楽であり,特にイレウスなど消化管透視が禁忌の人にも施行できる。ところが,消化器専門医の中でさえ,「消化管は管腔臓器であり超音波検査はあまり適していない」という先入観がなんとなく蔓延しているように思える。本書はそうした私たちの先入観を打ち破いて,体外式超音波検査が消化管のfirst lineの診断法として極めて有用であることを見事に示している。

◆症候ごとに分けられた項目で気軽に読める

 本書の特徴は,とにかく読んでいて面白いことがあげられる。また,項目が疾病ごとではなく,「胸やけ」「嘔吐・食欲不振」「下腹部痛」「便秘」などと各症候ごとに分けられているので,臨床の現場に即しており,そのためにかえって気楽に読める。面白いところを拾い上げてみても,アカラシアの固有筋層の肥厚とか,AGMLにおける層構造の保たれた全層性の肥厚,SMA症候群の十二指腸の見事な狭搾像,さらには一瞬,アニサキスそのものが見えるのでは,と思うようなアニサキスによる粘膜下層を中心とした肥厚など,盛りだくさんである。

 また,感染性腸炎では起炎菌が同定できない場合が多いが,本書では,サルモネラ腸炎として上行結腸の層構造の保たれた肥厚例が,またアメーバ腸炎やO157腸炎では,層構造が不明瞭な肥厚例が示されており,鑑別診断の一助となることが示されている。読者の方々も「そういえばそうだ」と思われるかもしれない! このように本書を読むと,「よし自分でも試してみよう」と思われる方がきっと多数おられるに違いない。

 最後に,本書では,著者らが最も得意とする消化管運動異常に対する機能検査法としての超音波検査法の項目が設けられている。最近わが国でも,functional dyspepsiaや過敏性腸症候群など,機能性消化管運動異常に対する関心が深まるなか,本法は消化器病診断の新しい分野を切り開くものとして期待されているが,本書は,そうした将来をも見据えた著者らの考え方が伺える,一本筋の通った快著である。

類書にない工夫に満ちた,超音波診断最良のテキスト
書評者: 芳野 純治 (藤田保健衛生大第2病院教授・内科)
◆消化器病分野では聴診器に代わる重要な診断法

 川崎医大内科学食道・胃腸科春間賢教授が編集された消化管に対する腹部超音波診断の本である。春間教授がこれまで行ってきた機能から形態に至る幅広い研究の成果の1つである。多数の症例のきれいな超音波画像をみることができる。

 超音波検査は,消化器病を担当する医師にとって聴診器に代わる重要な診断法である。しかも,非侵襲的な検査のため,受け入れやすいメリットもある。この検査により消化管のスクリーニングが行われればよく,内視鏡検査が行いにくい状況ではさらに有用である。術者がプローブを自在に動かすことにより,良好な画像が得られる。

 本書には類書にない工夫がいくつもされている。まず,症候別に超音波所見が記されている点に驚く。嚥下障害から血便まで11の症候に分けて症例の説明がされている。超音波検査の本で同様な項目がある本はまずないであろう。被検者の訴えを聞いた後,どこに重点を置いて検査をすべきであるか,本書を開きながら検査を行ってもいいのではないか。しかも,症例を並べただけに終わらず,症候ごとに超音波像がまとめられ,これにより鑑別すべきポイントが明確にされている。

 次に,症例の多くに内視鏡像が配されている。超音波検査の本に内視鏡像がある本はめずらしい。消化管を検査するものにとって内視鏡画像があると,疾患の状況を把握しやすい。病変の位置,拡がり,程度がそのまま頭に入ってくる。さらに,超音波内視鏡像,X線検査像,切除標本像,病理組織像が添えられ,超音波像の成り立ちを理解しやすくする工夫がされている。特に,急性腹症では別項として取り上げて,注意が喚起されている。

◆きれいな超音波像で眼を肥やす

 さて,画像診断では症例をたくさんみて,まず眼を肥やすことが上達の早道である。本書の超音波像は大変きれいである。しかも,それぞれにシェーマがつけられている。超音波診断と関係がないのではないかと思われる疾患にまで超音波画像があり,説明はすべて箇条書きで読みやすい。カラフルであり,書名に「ビジュアルテキスト」とあるのもなるほどと思わせる。

 新しい検査法として造影超音波,運動機能異常検査が入れられている。造影超音波は色々な症例に付けられており,本法が疾患の特徴を明確にする上で有用であることを示している。さて,春間教授が編集されるからには運動機能検査について多くの紙面が割かれるのではと期待したが,それほど多くはなかった。これは,次の出版を考えておられるのであろうか。

 これほどまでに工夫がされている本書だが,超音波診断の本にしては,超音波像がやや小さいのではと思われた。これだけきれいな画像を集めたのであるから,もう少し大きくしてもいいのではないかと惜しまれるくらいである。しかし,これにより本書の価値が減ずるものではない。むしろ,超音波検査の有用性・重要性を再認識させられ,読者にとっても,臨床の現場で手元に置いて使える最良のテキストとなりえることは間違いない。

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