はしがき
初版の序
放射線医学は基礎放射線医学と臨床放射線医学からなり,臨床放射線医学は従来,X線診断学・核医学・放射線治療学をその鼎としてきた。しかし,近年はX線診断・核医学診断に加え,X線CTや超音波診断が目ざましい発展を示し,診療の第一線に欠くことのできない手段として広く普及するにいたった。そのため,これら体内情報を画像として描出し,診断に利用する臨床分野を画像診断学と総称し,体系化する動きが定着しつつある。
一方,放射線治療においては,放射線腫瘍学というさらに広い視野からこれを位置づけ,各治療法の併用による総合的な腫瘍治療が展開されている。すなわち,症例に応じて外科療法・化学療法・ホルモン療法・免疫療法などを適宜選択し,各治療法の特徴をいかした効果的な併用療法によって,著しい治療成績の向上がもたらされている。
本書はこのような現在の放射線診療の動向に即して編集され,系統的に放射線看護を学習しようとする人たちを対象に執筆されたものである。
しかしなかには,画像診断の知識などは,医師の診療には必須であっても,看護婦には不必要なものではないかと考える人もいるであろう。しかし,たとえば病院の第一線で働く看護婦にとって,X線写真を見ない日は一日もないはずであり,これらの診断を通して患者の状態を正しく把握しておくことは,日常最も密接に患者と接触し,ケアを行う看護婦にとって不可欠なことであろう。またそのような理解によって,よりインテリジェントな患者への接触と自主的な看護行為,質の高いケアが行われることになると考える。
また,放射線による検査と治療は,患者の理解と協力なしには行うことはできない。したがって,看護婦による患者指導がきわめて大きな役割を果たしており,そのためには診療の目的・内容・方法をよく理解していることが要求される。このような知識をもってなされた適切な前処置や介助は十分な診療情報をもった検査を可能にし,またよりよい治療効果を生み出すものと考える。
1981年11月
著者ら
改訂の序
放射線医学はレントゲン博士が1895年11月8日にX線を発見したことに始まる。他の医学と比べて比較的歴史が浅いが,進歩の著しい分野である。
放射線医学は画像診断と放射線治療からなる。画像診断ではレントゲン博士の時代から続く単純X線写真の診断からPETやMRIのような最先端技術を駆使した診断までを行う。画像はデジタル化され,いつでもどこでも画像が見られる技術が開発され,日常診療に導入されるようになった。放射線治療では放射線を使って悪性腫瘍の治療を行う。最近は,放射線を病変部に集中させて照射し,正常組織への障害を最小限に抑える治療法が開発され,低い侵襲性でより効果的な治療が可能となってきた。画像診断も放射線治療もIT技術の進歩に支えられて急速に診療方法が変貌している。また,医療の質と安全が問われ,医療環境も大きく変化した。これらに対応するため,今回,「臨床放射線医学」を全面的に改訂することとなった。
「放射線医学のなりたちと意義」を序章として新たに設け,本文を「第1部 画像診断」,「第2部 放射線治療」,「第3部 放射線防護」の3部構成とした。なお,核医学検査とIVR・血管造影は「画像診断」に,内部照射療法は「放射線治療」に含めた。
「第1部 画像診断」ではいきなり「原理」からはいることを避け,画像に親しみがもてるようにまず画像の特徴を総論的に述べ,続いて画像のなりたち,画像検査の実際,代表的疾患の画像所見を基本構成とした。画像検査の実際では,検査のための準備,検査中および前後の看護,造影剤使用などの説明と同意を盛り込み,患者さんからの質問にも答えられるように解説を加えた。
「第2部 放射線治療」は,放射線治療の適応と治療法,放射線治療による有害反応とその対処,看護上のポイントから構成し,放射線治療の原理と放射線看護の実際とが読者の頭のなかでつながるようにくふうした。「放射線」や「核医学」という言葉を聞いただけで漠然と放射線障害を心配する読者も多いと思う。「第3部 放射線防護」を読み,放射線障害と防護に対する基本的な考え方を学んでいただきたい。
改訂にあたっては,図と症例の写真を多用し,図はオールカラーにして見やすくした。また,症例の写真の前に,正常像を掲載し,両方の画像を比較して学習できるようにくふうした。なお,看護師国家試験出題基準である「検査時の看護」と「化学療法・放射線療法時の看護」については,それぞれ「第1章 画像診断と看護」と「第9章 放射線治療と看護」において取り上げた。
放射線医学の講義で使用する教科書として,国家試験受験前の参考書として,また,臨床現場で必要とされる知識の整理をする実用書として,それぞれの目的に応じた使い方をしていただければ幸いである。
愛宕下にて
2008年11月
著者ら