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消化器内視鏡リスクマネージメント

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日本消化器内視鏡学会をはじめ、多くの学会・研究会がガイドライン作成の機運にあるなかで、内視鏡医療に携わるすべての医師・コメディカルのために、医療安全のためのノウハウをピックアップし、コンパクトに解説。具体的な対策とテクニック、安全とは何かという根幹を含めた考え方、法的根拠にいたるまで、永年の経験に裏付けられた確かな知識を惜しげなく開陳。
小越 和栄
発行 2008年05月判型:B5頁:144
ISBN 978-4-260-00604-0
定価 4,400円 (本体4,000円+税)
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 1998年の『消化器内視鏡機器洗浄・消毒法ガイドライン』以来,日本消化器内視鏡学会で作成されたいくつかのリスクマネージメント・ガイドラインに携わってきた。2005年暮れには長年の懸案であった『治療内視鏡に関するリスクマネージメント』および『内視鏡治療時の抗凝固薬,抗血小板薬使用に関する指針』も完成し,さらに世界消化器病学会(WGO-OMGE)と世界消化器内視鏡学会(OMED)と合同で作成されたリスクマネージメント・ガイドラインも,2005年に公開され,私の携わってきた一連の仕事も一段落することができた。
 これを機に,内視鏡医療のリスクマネージメントについてその作成の理由,記載事項の持つ意味,またそこに至る背景などについてまとめ,内視鏡に携わる皆様に学会のリスクマネージメント・ガイドラインの真の目的などを理解していただくため,本書をしたためることとした。
 学会のリスクマネージメントに携わってきて感じたことは,リスクマネージメントとは単に内視鏡を事故なく安全に行うだけでなく,患者に満足してもらえて,常に質の高い内視鏡医療を提供でき,さらに新しい内視鏡手技の発展につながるものであることが必要であるということである。それには技術や情報の標準化,卒後教育充実,法規制の求める意味合いの理解なども重要事項であり,医学全般にわたる総論の一部を構成するものとも考えている。
 ただ,ガイドラインで規制される個々の問題は,医学の進歩で年々変化するものであるが,底に流れる基本的な考え方は容易に変わるものではないと考える。本書は単に内視鏡医療での危険回避に関する技術的情報の羅列ではなく,基本的に質の高い標準的な内視鏡医療を行うための考え方を中心に述べたつもりである。新しいエビデンスの出現によって,各自の心のマニュアルもそのつど書き換えていっていただきたいし,本書はその助けになれば幸いと考えている。
 また,日本消化器内視鏡学会卒後教育委員会から2006年に出版された,医学書院の『消化器内視鏡ガイドライン第3版』は,学会のリスクマネージメントをもとに,さらに診療ガイドラインの一部も加えられたものであり,本書とともにお読みいただければ幸いである。
 種々の日本消化器内視鏡学会のリスクマネージメント作成に努力された日本消化器内視鏡学会リスクマネージメント委員会の諸先生,および私の長年の内視鏡を支えてくれた県立がんセンター新潟病院の歴代の内視鏡室スタッフに深謝する。

2008年春 著者

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第I章 内視鏡医療でのリスクマネージメント
 1.ガイドラインとは何か
 2.日本消化器内視鏡学会で作成されたガイドライン
 3.医療の標準化とガイドライン
 4.医療の標準化がもたらすその他の効果

第II章 インフォームド・コンセント
 1.インフォームド・コンセントの歴史的背景
 2.インフォームド・コンセントの基本的内容とは
 3.内視鏡医療で行わなければならないインフォームド・コンセント
 4.同意書は必要か
 5.個人情報保護法とインフォームド・コンセント

第III章 消化器内視鏡機器の洗浄・消毒法
 1.内視鏡機器の洗浄・消毒のガイドラインが作成されるまでの経緯
 2.内視鏡機器による交差感染の機序と感染事故の報告
 3.ガイドラインに沿った内視鏡機器の洗浄と消毒
 4.消毒の方法と使用する消毒薬について
 5.処置具の消毒とディスポーザブル処置具の使用
 6.消毒薬の効果と毒性
 7.その他の消毒上の問題点
 Q and A

第IV章 内視鏡検査前の準備,前・後処置
 1.内視鏡検査の選択と前準備
 2.前処置
 3.後処置
 4.術前・術後の患者へのオリエンテーション
 Q and A

第V章 内視鏡治療時の抗血栓療法症例への対応
 1.抗血栓療法とは何か
 2.現在はどの程度の抗血栓療法が行われているか,
   それらの休薬のリバウンドはどの程度か
 3.どの程度の凝固能で内視鏡治療は可能か
 4.抗血栓薬休薬時に必要な基礎的事項
 5.抗血栓療法時の内視鏡治療
 6.抗血栓薬の再開
 7.内視鏡治療後の注意事項
 8.消化器内視鏡学会ガイドラインに沿って施行できない症例の取り扱い
 Q and A

第VI章 呼吸・循環動態モニタリング
 1.モニタリングはなぜ必要か
 2.モニタリングが必要な場合
 3.モニタリングの方法
 4.モニタリングの実際

第VII章 術中の注意および事故防止策
 1.偶発症への対処法
 2.内視鏡検査および治療での留意事項

第VIII章 臨床に必要な法律
 1.日常診療にかかわる事項の法的根拠
 2.医療と個人情報保護法
 3.異常死の届け出義務
 Q and A

索引

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内視鏡に携わる者が必読すべき教科書
書評者: 多田 正大 (多田消化器クリニック院長)
◆社会的に要求される内視鏡医療のリスクマネージメント

 繰り返される医療事故が社会的にも問題視されてから久しいが,医療従事者が原因究明と事故防止に努めることは責務である。まして合併症や偶発症の危険性が少なくない消化器内視鏡診療において,普段からリスクマネージメントの在り方を考えておくことは重要である。その精神を理解することは正しい診断と安全な治療に直結し,偶発症発生の予防,不幸にして事故が発生したときには患者の被害を最小限に留めることにつながる。内視鏡医やコメディカルはリスクマネージメントを知らずして診療に携わることはできないと断言しても過言ではない。

 日本消化器内視鏡学会でも各種委員会などにおいて,安全な内視鏡診療の在り方に関する討論が繰り返され,必然的にさまざまなガイドラインが提案されてきた。本書の執筆者である小越和栄先生は常にこの方面の議論の中心にいる存在であり,さまざまな提案を行ってきた最大の功労者の1人である。小越先生は海外における内視鏡診療の現況と問題点に熟知し,わが国の医療水準と社会的ニーズなどの事情を考慮しながら,リスクマネージメントの概念の普及に尽力してきた先駆者である。私も学会リスクマネージメント委員会における報告書作成の場で,小越先生の博学と篤い情熱を知り,教えられることが少なくなかった。

◆消化器内視鏡リスクマネージメントの聖書

 その小越先生が永年のテーマである消化器内視鏡診療におけるリスクマネージメントの基本を一冊の書籍としてまとめたことは意義深い。小越先生の主導する消毒法や循環動態に関する報告書は過去に学会誌に記載されてきたし,総会の特別講演の場で先生の持論を拝聴する機会は幾度もあった。これらの内容を一冊の書籍にまとめていただいたことは,学会会員やコメディカルにとっても理解しやすく,ありがたいことである。

 本書はガイドラインの目的と意義,内視鏡診療に従事する者の基本的な心構え,実際の安全な内視鏡診療の基本,そしてガイドラインに沿うことができないケースでの対応の仕方など,内視鏡医療に必要なリスクマネージメントの精神と実践のすべてが記載されている。書籍のタイトルは堅苦しいが,誰が読んでも理解できる平易な文章であり,その精神は十分に理解できる。今日のわが国の内視鏡医療水準における重要な事項がすべて記述されているから,本書は参考書ではなく教科書,否,聖書と断言できる位置づけの書籍である。それだけに第一線の現場にいる内視鏡医はもとより,これから内視鏡を学ぶ研修医,内視鏡医療に従事するコメディカルに至るまで,すべての人に読んで欲しい貴重な書籍である。本書の内容を理解せずして,内視鏡医療を安全に行うことはできないことを痛感する。

 『医療崩壊』が取りざたされている昨今,医療の本質と構造を根幹から見直す機運が高まっている。それだけに内視鏡医療の在り方を考えるためにも,本書に記載されたリスクマネージメントの精神は重要である。

消化器内視鏡に携わるすべての医療者に
書評者: 金子 榮藏 (浜松医大名誉教授・消化器内科学)
 すばらしい本が出た。消化器内視鏡の分野で長年指導的活躍をされてきた小越和栄先生による『消化器内視鏡リスクマネージメント』である。著者はERCPの開発者の一人であり,日本消化器内視鏡学会の各種検査やリスクマネージメントのガイドライン作成において中心的役割を果たし,さらに学会が5年ごとに行っている偶発症全国調査の委員でもあった。

 全国集計のデータにみるように,内視鏡の分野は常に事故の危険をはらんでいる。高齢社会になり,かつ消化器内視鏡の目的が,診断から治療へと大きくシフトしつつある昨今,偶発症の危険は今後さらに大きくなる恐れがある。そのような背景があって消化器内視鏡学会が作成してきた,安全に内視鏡検査を行うためのガイドラインも「消毒法ガイドライン」に始まり,最近の「抗凝固剤,抗血小板薬使用に関する指針」までの6つで一応の区切りをみた。この時期にこれらすべてのガイドライン作成にかかわり,その多くで委員長を務められた著者が,ガイドラインをより深く理解し,より良い利用法を目指して本書を著したのは極めて大きな意義を持つものである。

 全体の構成は,「内視鏡医療でのリスクマネージメント」「インフォームド・コンセント」「消化器内視鏡機器の洗浄」「内視鏡検査前の準備,前・後処置」「内視鏡治療時の抗血栓療法症例への対応」「呼吸・循環動態モニタリング」「術中の注意および事故防止策」「臨床に必要な法律」の8章に分かれている。

 内容の一部に触れると,はじめの2章ではガイドラインと医療水準の意義,インフォームド・コンセントのあり方と法的根拠などが,インフォームド・コンセントの具体的な例とともに示される。続く「消毒法」では,学会のガイドラインがup-dateされ,最近の過酢酸や酸性電解水なども含めたすべての方法の得失が詳細に述べられ,安全な消毒室の設計にも触れられている。「前処置」では,降圧剤などの検査当日の服薬への対応,消泡剤の効果的な使用法,咽頭麻薬,鎮静剤の安全な投与法などが示され,日常ルチーンに行っている手技でもさらによい投与法のヒントが得られるであろう。「抗血栓療法剤」では,欧米人と日本人の抗血栓剤に対する反応性の違いから,わが国独自のガイドラインが作成された経緯と服用者への対応が具体的に示されている。

 全体の記述は極めて実践的であり,さらに各章の終わりには要点がQ&A形式でまとめられ,理解をより容易にしている。日ごろ疑問に思っている点の多くが本書によって解決されることは間違いない。

 著者が述べるように,ガイドラインは単に事故なく検査を行うためだけのものでなく,質が高くかつ患者が満足する医療を提供するための指針である。本書を通読し,筆者も教えられることが多々あった。本書は,消化器内視鏡に携わるすべての医療者の必読の書であることを強調したい。

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本書の記述の正確性につきましては最善の努力を払っておりますが、この度弊社の責任におきまして、下記のような誤りがございました。お詫び申し上げますとともに訂正させていただきます。

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