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成人市中肺炎管理ガイドライン 第2版

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市中肺炎はコモンディジーズとして,臨床現場の課題として常在している。本邦での死亡原因の第4位,80歳以上に限れば2位であり,超高齢化の見込まれるわが国で,その対策にぬかりがあってはならない。本書は米国感染症学会の実地ガイドライン委員会編集による最新の知見を,本邦第一線の臨床家が監訳した待望の改訂版である。
監訳 河野 茂
発行 2005年01月判型:A5頁:214
ISBN 978-4-260-10667-2
定価 3,300円 (本体3,000円+税)
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第I部 成人市中肺炎管理ガイドライン〔2000年改訂版〕

 実施するうえでの要約

 はじめに

  1.頻度

  予後,リスク層別化および初期治療場所の決定

  市中肺炎における特異的病原体の役割

  原因菌の診断法と臨床的設定

 2.診断評価

  胸部X線検査

  病因

 3.それぞれの重要事項

  肺炎球菌性肺炎

  誤嚥性肺炎

  嫌気性菌感染症

  クラミジア肺炎

  レジオネラ症

  ハンタウイルス肺症候群(HPS)

  マイコプラズマ・ニューモニエ肺炎

  カリニ肺炎(PCP)

  インフルエンザ

  膿胸

  急性気管支炎(AB)

  バイオテロリズムに関連する肺炎

 4.治療

 5.入院が必要でない患者の治療

 6.入院患者の治療

 7.抗菌薬に関する重要事項

  b-ラクタム系薬と関連薬剤

  セファロスポリン系薬

  カルバペネム系薬

  マクロライド系薬

  キノロン系薬

  アミノグリコシド系薬

  テトラサイクリン系薬

  バンコマイシン

  クリンダマイシン

  TMP-SMZ(トリメトプリム-スルフォメトキサゾール)

  抗ウイルス薬

 8.治療期間と経路

  治療に対する反応の評価

  治療に反応しない患者

 9.市中肺炎の予防

 10.実施指標

 文献

第II部 成人(免疫正常)市中肺炎管理ガイドライン〔2003年改訂版〕

 はじめに

 改訂 初期治療場所の決定

 改訂 クラミドフィリア・ニューモニエの診断

 新項目 肺炎球菌の尿中抗原検査

 新項目 肺炎球菌に対するセフォタキシムならびにセフトリアキソンに対する新たなブレイクポイント

 新項目(特別事項) 重症急性呼吸器症候群(SARS)

 新項目(特別事項) 菌血症を伴った肺炎球菌性肺炎の治療

 改訂(特別事項) レジオネラ症

 新項目(特別事項) ウイルス性市中肺炎

 改訂(特別事項) バイオテロリズムを背景とする肺炎

 新項目 高齢者における肺炎

 改訂 市中肺炎予防

 改訂 マクロライド系薬

 新項目 ケトライド系薬

 新項目 北米におけるフルオロキノロン系薬に対する感受性が低下した肺炎球菌

 改訂 実施指標

 利害の抵触(conflict of interest)の開示

 付記A どのようにして肺炎予後研究班の重症度指数(PSI)は得られるか

 文献

解説1)IDSA 2003とJRSガイドラインとの比較

 重症度分類

 治療場所の決定

 原因微生物の検索

 抗菌薬の選択

 まとめ

解説2)わが国におけるIDSA ガイドラインを考慮した抗菌薬の選択

 原因菌別の肺炎治療薬

 市中肺炎に対する経験的抗菌薬処方

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予防や治療成績について論文に基づいた具体的数字をあげて記述
書評者: 佐々木 英忠 (秋田看護福祉大学長)
 ガイドラインは通常,「このようにすべきです」と書かれていて,当たり障りのないように記述されている場合が多いが,本書はさながら市中肺炎のレビュー(review)になっている。しかも,一行一行の記述がすべて論文成績に基づいており,効果は何%の予防,または治療成績が得られると具体的数字をあげている。その数字の根拠は,無作為二重盲検対象研究から得られたものか否か,大規模試験かによって,断定の仕方が違う可能性があるので,「~と示されている」等々,区別されて表現されている。場合によっては,ある重要な用い方について「証明されていない」とその限界すら述べてあり,明解である。

 そのため,本書は臨床で患者を治療する場合は言うに及ばず,臨床家が,自分の成績を発表したいと思った場合には,その箇所を読めば世界最先端の数字がすべて得られ,自分の患者成績と比較するうえにもきわめて有用である。また,論文もすでに十分引用されている。

 河野教授が,日米をはじめ,世界中で通用するグローバルガイドラインを作ったとしたら,日本で治療する臨床家の姿を思いうかべて楽しくなる旨を序文で述べられているが,河野教授ならずとも,小生でさえついつい引き込まれて次々と読んでしまう引力が本書にはある。それはたぶん自分の知識よりちょっと詳しく,「どのような基礎疾患をもつ患者では何%効果があり,予後は何%であり・・・」と述べてあるため,なる程,なる程と思っているうちにどんどん頁をめくってしまう読み物のような記述になっているからと考えられる。

 河野教授は,教授就任後も欧米に留学して日米の感染症を研究してこられたが,日本を外からみることによって,日本の感染症が世界的に見てどういう位置づけになっているのか最も知っている第一人者である。その河野教授が,「ぜひおもしろいから」,というと語弊があるが,事実感染症のおもしろさが伝わってくる本書を訳されて,私共に送っていただいたものである。

 九州大学名誉教授の重松信昭先生があるとき,私の肩をポンとたたいて,「あらゆる疾患は将来克服されたとしても感染症は残る」と言ってくれたことを思い出すが,新興感染症について最先端の報告が盛られていて,本書を手にすることによって,河野教授と同じ「おもしろい気分」にひたれる。

日本版ガイドラインへの具体的提言も
書評者: 松島 敏春 (倉敷第一病院呼吸器センター長)
 本書の訳者序にも述べられているように,肺炎は罹患率,死亡率共に高い重要な疾患であり,その診療ガイドラインは有益性が高いはずであると考えられた。本邦には日本呼吸器学会(JRS)の「成人市中肺炎診療ガイドライン」が存在するが,それを作成するに際して最も参考としたのは,1998年に公表されていたアメリカ感染症学会(IDSA)のガイドラインであった。それはすでに河野茂教授らが2000年に翻訳して,本書の第1版として刊行されている。その後IDSAガイドラインは2000年,2003年に改訂されたので,河野教授らは翻訳本の第2版として,このたび本書を刊行されたのである。

 本書では,第I部として2000年に改訂されたガイドラインが詳細に翻訳され,肺炎の疫学,予後・リスクに基づいた治療の場の決定,診断法の評価,病原微生物ごとの肺炎に関する重要事項,抗菌薬の選択と各種抗菌薬に関する重要事項,治療期間・治療評価・治療に反応しない場合の対応,肺炎の予防,などが紹介されている。

 第II部は初版,改訂版からさらに改定すべきこと,すなわち,治療場所の決定,推奨される抗菌薬,新しい検査法,SARS,ケトライド系薬などの新項目,菌血症を伴った肺炎球菌性肺炎の治療,ウイルス性肺炎などの特別項目,市中肺炎予防の改訂,などが紹介されている。

 注目すべきは2003年のIDSAガイドラインとJRSのガイドラインの比較を試みていることであり,さらに,改訂IDSAガイドラインを参考として,“JRSガイドラインではどのような抗菌薬の選択をすべきか”を,具体的に示していることである。

 現在JRSガイドラインは改定作業中であり,IDSAガイドラインを参考としていることも事実である。したがって本書が,2005年7月に発表予定のJRS「成人市中肺炎診療ガイドライン」を理解するのに有用であることはもとより,ガイドラインの目的である“肺炎治療の向上を図り,国民健康の増進に役立つ”ことは論を待たない。

 監訳者の河野茂 長崎大学教授は,呼吸器感染症に関する研究では世界のトップランナーの一人であり,JRSガイドライン作成にあたっては最も精力的に仕事をされた。翻訳者の大野,東山,柳原長崎大学講師は,現在最も精力的に呼吸器感染症に関する研究を進めている方々である。初版に続く改訂版の翻訳のご苦労に感謝する。

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