医療安全ワークブック

もっと見る

医療安全の必須事項とその根拠を理解し,現場で応用の効く知識としての定着を図るためのワークブック。エラーを防ぐ知識とともに,危険を感知したときの対応についても具体的に解説。考える道筋を重視した看護業務に付随する計算のドリル,リスクを察知するセンスを磨くトレーニングなど,教材として学生からベテランまで幅広く使える1冊。
川村 治子
発行 2004年10月判型:B5頁:224
ISBN 978-4-260-33367-2
定価 3,080円 (本体2,800円+税)
  • 販売終了

お近くの取り扱い書店を探す

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。

  • 目次
  • 書評

開く

UNIT1 知らねばならない“危険”の知識
 PartI 注射
 PartII ポンプ
 PartIII 内服
 PartIV 輸血
 PartV 経管栄養
 PartVI チューブ類の管理
 PartVII 酸素
 PartVIII その他
UNIT2 看護業務に必要な計算ドリル
 SECTION1 ウォーミングアップ
 SECTION2 指示薬剤量を液量「ml」に換算して取り出す
 SECTION3 注入速度(流量,滴数)計算
 SECTION4 酸素ボンベの残量,使用可能時間を計算する
UNIT3 リスクセンストレーニング

文献
UNIT1 解答と解説
UNIT2 解答と解説
おわりに
INDEX

開く

医療を安全にすすめるための臨床基礎知識を学ぶ(雑誌『看護管理』より)
書評者: 大田 すみ子 (元北海道大学医学部附属病院看護部長)
 北海道看護協会に所属していた頃,毎日配られる医療情報誌に目を通していた。医療界のさまざまな動向とともに,医療事故のニュースが必ず目に入ってきた。人命を危うくさせたもの,訴訟になったもの,内容的にどうしてこんなことが起こるのだろうかというものから日常にありがちなことまでいろいろあった。なかには,当事者の気持ちになって背筋がぞっとしてしまうこともあった。

 高度化・精密化する診療内容,チームで分担連携する医療体制,技術教育の軽視が指摘される基礎教育など,その要因は多彩である。しかし,どんなことがあっても医療事故はあってはならない,起こしてはならない,看護者にとって最大にして最低限の責任課題である。

◆事故防止のために臨床実践上獲得しなければならない知識

 本書の著者は,多発する医療事故の調査と分析において,現在医療界の第一人者である。1999年から厚生労働省の科学研究のリーダーとして,1万例を超える事例の収集と分析を行ない,医療現場で起こりやすい事故とその防止についてさまざまな提言をされてきた。今回,新人ナースが起こしやすい医療事故事例を集め,臨床実践上,獲得しなければならない知識として整理し,演習形式のワークブックとして本書をまとめた。

 本書は,全体が3つのUNITから構成されている。UNIT1では,「知らねばならない‘危険’の知識」定着演習として,注射,輸液ポンプ,内服,輸血,経管栄養,チューブ類の管理,酸素,ME機器が取り上げられている。

 UNIT2では,「看護業務に必要な計算ドリル」として,注入速度の計算例や酸素流量と残量について,日常の業務に付随する具体例が紙上でトレーニングできるようになっている。

 UNIT3では,「リスクセンストレーニング」として,患者の療養生活上のリスクを察知するセンスを磨くためのトレーニングができるよう,危険場面を図で示している。これをもとに,日頃チーム内で起こりやすいリスク事例の検討を行なうことも可能であろう。

◆事故を未然に防ぐための道しるべ

 学生時代に具体的な医療事故に関する教育を行なうことは,医療現場の厳しさに圧倒され困惑を招くことから,あまり積極的には行なわれていない。しかし,厳しい臨床環境を職場として選んだ人たちには,事故を未然に防ぐための道しるべとして本書の活用を勧めたい。本書は,自己学習用として,グループワークのテキストとして,また,アレッ?と思ったときに手軽に取り出せるナースステーションの常備書として,さまざまな使い方ができそうだ。こうして積み重ねたトレーニングが新人ナースの不安を除き,臨床ナースとしての自信につながるものと考える。

 危険と背中合わせの看護活動の現場では,正確さや機敏さが求められるが,同時に優しさやゆとりある対応も欠かすことができない。このような高い職業意識が必要な看護職に,いつも近い視点から絶えずエールを送り続けてくれる著者へ心からの感謝を表したい。

(『看護管理』2005年2月号に掲載)
この春,看護師としてスタートするあなたに
書評者: 久常 節子 (慶應大教授・看護学)
 ヒヤリ・ハット体験者5万人のうち17%近くが新人だったという話を聞いた。

 国家試験も無事合格し,いざ,プロとしてスタートという時に,こんな話を聞くと急に不安が押し寄せてくる。患者の安全と自分自身の看護師としての職業生命を守るために,あなたは何か手を打っているだろうか? 神に祈るだけという人に是非お薦めしたいのが,この川村治子著『医療安全ワークブック』である。

 川村治子氏は,看護のヒヤリ・ハット1万事例の分析であまりにも有名な研究者である。私が先生から直接話を聞かせていただいたのは,ほんの1―2年前。先生に授業にきていただいた時である。この時,感銘を受けたのは先生の研究方法であった。事例の事実整理から学んだこととおっしゃっていたが,1万事例を表象レベルで整理し,抽象化し過ぎず,現場で生かせる研究のまとめ方に感動した。口で言うのはやさしいが,1万事例を統計処理でなく,事例として活かしつつ,まとめていくことは並大抵のことではない。研究が現場の人間に役立つこと。このことに価値をおいていなければ,こんなしんどいまとめはできないだろうと,研究方法を通して先生の医療安全を願う心情に触れた気がする。

 その先生が,多くの現場の看護には判断がなく,直ぐ行為に走ってしまう傾向を見抜かれ,新人のために書かれたのが本書である。本書の“はじめに”には,「医療事故防止のためには,リスク感性を向上させなければならないと,よくいわれます。この感性は,自然に育つわけではありません。少なくとも“危険”と判断できるための知識が,実際に使える形で身についていることが,リスク感性向上の必須条件です。使える形の“危険”の知識とは,看護業務や行為の視点から『してはならないこと』や『するべきこと』を知っているにとどまらず,それがなぜかを理解していることです」とあり,読者が問題意識をもって理解できることをめざしていることがわかる。

◆看護業務を知り抜いた実践訓練の書

 本の構成も実践的で,クエスチョン・アンサー・コメントの演習形式をとっている。全体は3部からなり,ユニット1は,危険な診療の補助業務について,ユニット2は,臨床で遭遇する計算場面(注射準備・実施,酸素ボンベ使用時)が取り上げられ,計算に至る考え方を理解することを支援している。ユニット3は,療養上の世話に関する事故発生場面をイラスト化して潜む危険を判断する訓練ができるよう工夫されている。看護業務を熟知しつつ潜む危険について紙上で訓練を施す。いったい,こうした本が,今まであったろうか。こうした本の構成とユニット3でとられた問題提起のあり方をみると,改めて川村先生の教育者としての優れた資質とセンスを感じないわけにはいかない。

 新人看護師のみならず,いかに教育しようか悩んでいる教師にも是非すすめたい。

  • 更新情報はありません。
    お気に入り商品に追加すると、この商品の更新情報や関連情報などをマイページでお知らせいたします。