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噴門部癌アトラス


編:南風病院消化器内科 

  • 判型 B5
  • 頁 168
  • 発行 2010年10月
  • 定価 8,800円 (本体8,000円+税10%)
  • ISBN978-4-260-01049-8
胃癌の診断・治療に携わる医師の必読書
胃癌は語り尽くされたか。胃上部、特に噴門部周辺の癌は依然未解決の問題が多い。世界に冠たる日本の胃癌診断学もその意味で完成したとは言い難い。本書は噴門部領域の癌50例について、消化管形態診断学の王道というべきX線・内視鏡・病理の三位一体となった解析でその本態に迫るとともに、診断上のヒントを数多く提供している。胃癌の診断・治療に携わる医師にとって必読の1冊。
序 文


 1970年代には,癌の存在部位によっては5mm以下の微小癌も診断可能で,胃癌の拾い上げ診断は硬性癌を除くとほとんど解決されたと考えられていた.しかし,噴門部に関しては大きな進行癌しか発見できず,噴門部は胃癌診断の暗黒地帯といわれていた.当時は内視鏡機器の進歩が顕著で,パンエ...


 1970年代には,癌の存在部位によっては5mm以下の微小癌も診断可能で,胃癌の拾い上げ診断は硬性癌を除くとほとんど解決されたと考えられていた.しかし,噴門部に関しては大きな進行癌しか発見できず,噴門部は胃癌診断の暗黒地帯といわれていた.当時は内視鏡機器の進歩が顕著で,パンエンドスコピーをもってすれば上部消化管の診断にX線検査は不要であるとするパンエンドスコピー学派が多数おり,全国的に上部消化管のスクリーニング検査はX線検査に代わってパンエンドスコピーで行う施設が多くなった.
 しかしながら,内視鏡によるスクリーニング検査が行われるようになっても噴門部早期癌の症例は増えなかった.われわれは,大きな進行癌は発見されるのに早期癌が発見できないのは,噴門部癌の初期病変は粘膜面の形態変化に乏しいのであろうと考えた.また,内視鏡でも発見が困難なことから,色調の変化に乏しい病変であろうと想定した.
 噴門部癌の早期発見を南風病院消化器内科のグループ全員で行うためには,一定の検査体系の確立が必要であった.粘膜面の形態変化の乏しい病変をX線検査で拾い上げるには,噴門部を正面像として描出できる撮影体位が必要であり,また色調の変化の乏しい癌を内視鏡で拾い上げ正確に生検するには,食道胃接合部を含めて噴門部を正面から近接撮影することが必要であると考えた.また切除標本上の癌の肉眼形態とX線像,内視鏡像,病理組織像を対比するために,X線像上で病変の存在する部位を,切除標本上の小彎および食道胃接合部を座標軸にして同定する方法を検討した(西俣寛人,他:噴門部癌のX線診断に関する研究─陥凹型早期胃癌を中心に.胃と腸17:1035-1043, 1982).
 このように,わが国で開発された早期胃癌の診断法は癌の肉眼形態をもとにX線像,内視鏡像,病理組織像を対比することで発展してきたといえる.形態的変化の乏しい噴門部早期胃癌も,症例が増えるに従い,その診断学が進歩してきたことは疑いをいれないが,しかし未だ完成されたものではない.
 臨床病理学的検討の結果,癌の発育・進展に関する新しい知識が得られると,癌の診断能が飛躍的に向上することがある.1978年の噴門部のIIc症例の発見以来,約30年を経過し,多くの噴門部早期癌,早期類似進行癌を発見し,多くの知識を得た.これらの検討を通じて得られた事項,すなわち噴門部早期癌を拾い上げるための検査体系,また,臨床病理学的検討によって得られた噴門部癌の発育・進展に関する知識,さらに診断理論を作り上げるために必要と考えた事項をこれまで数多く報告してきた.本アトラスは上述の努力の集積の結果生まれたものである.「はじめに」の項で,各症例の診断の基礎になっているこれらの検査体系,診断理論を紹介した.本書に提示した各症例の読影の手助けになる事項を学んでいただければ幸いである.
 本書は長い時間をかけて南風病院消化器内科のグループ全員で作りあげたものである.日々の臨床の中で気づいたことを話し合い,論文にまとめる中で疑問に思ったことを皆で議論し,新しい事実に気づき,皆の知識にして診断能を向上させてきた.全員で臨床研究を行って1つの結論をだしていく息遣いを感じながら,本書を一読,御利用いただければ幸甚である.

 2010年夏
 西俣寛人
書 評
  • 胃癌を扱う臨床医必携の書
    書評者:浜田 勉(平戸市国民健康保険度島診療所)

     噴門部とされる食道胃境界部のごく狭い範囲は,X線検査においても内視鏡検査においても観察が不十分となりやすく,病変の認識および診断,特に癌の早期発見がしばしば困難である。多くの消化管の専門家ですら経験できた症例は少なく,日常臨床検査で大きな盲点となってきた。

     編集代表である西俣寛人氏は,噴門...
    胃癌を扱う臨床医必携の書
    書評者:浜田 勉(平戸市国民健康保険度島診療所)

     噴門部とされる食道胃境界部のごく狭い範囲は,X線検査においても内視鏡検査においても観察が不十分となりやすく,病変の認識および診断,特に癌の早期発見がしばしば困難である。多くの消化管の専門家ですら経験できた症例は少なく,日常臨床検査で大きな盲点となってきた。

     編集代表である西俣寛人氏は,噴門部癌における膨大な症例の集積と多数の研究論文を発表してきた日本における第一人者であり,まさに,『噴門部癌アトラス』は待望の書といえよう。本書で示されている多くの症例画像は,西俣氏と鹿児島南風病院グループが噴門部癌にじっくり焦点を合わせ,症例を長年にわたり追い続けた結果の集大成であり,薩摩魂の真骨頂を見せている。

     本書は厳選された50例で構成され,その症例ごとに丁寧なX線や内視鏡画像とともに切除標本と病理組織像が提示され,症例の本質をついた表題と簡潔なコメントが記されている。掲載された症例は癌深達度がM癌(17例)からSM癌(18例),そして進行癌の順で,すなわち癌の形態的変化が軽微のものから次第に凹凸の変化が明瞭なものへと工夫して配列されており,これにより読者は噴門部癌がその発育に従い形態的な変化が顕著になっていく様を知ることができるだろう。特に早期癌症例の精密なX線像,色素散布像を混じた内視鏡像は秀逸で,思わず凝視するほどであり,編者たちのこれらの症例にかけた並み並みならぬ熱意を感じる。

     さらに,具体的なコメントを読み進むうちに,噴門部以外の胃における早期癌の形態とは異なる噴門部癌の特徴を学ぶことができ,次第に癌による異常所見の指摘や癌の深達度の予測が可能になってくることを読者は実感するだろう。本書は噴門部癌を余すところなく画像で示しており,消化管癌,特に胃癌を扱う臨床医にとって,内科医であれ外科医であれ,必携の書といえる。

     形態診断学はX線や内視鏡画像により視覚的に疾患の本質をとらえようとするものであり,数字によるパーセントや有意差検定などの統計学的な手法とは異なっている。したがって,提示される1枚1枚の病変の画像は,精密であるばかりでなく病理組織像を含めた形態を正しく表現しているかどうかが常に求められる。そのためには検査医の目を錬成していく必要があり,その点でも本書は最良の教科書に仕上がっている。

     どのような所見をどのようにとらえるかを追求して,日本は世界に冠たる消化管画像診断学を築き上げた。より良き画像への日々の研鑚こそが疾患の解明への道であることを確信できる1冊である。
目 次

謝辞
はじめに

症例1 存在診断が困難な正色調の噴門部早期癌
症例2 進行癌に併存した存在診断が困難な噴門部早期癌
症例3 慢性胃炎の影響で診断が難しかった噴門部早期癌
症例4 斜視鏡の見下ろし観察が有用だった噴門部の小胃癌
症例5 側視鏡の見下ろし観察が有用だった噴門部早期癌
症例6 肉眼所見に乏しい0-IIc型噴門部癌
症例7 斜視鏡の見下ろし観察が有用だった0-IIc型M癌
症例8 線状分離線の変形を認めたEGJ直下の噴門部癌
症例9 正色調の噴門部0-IIc型早期癌
症例10 広範な粘膜内浸潤を呈した噴門部早期癌
症例11 噴門部の多発早期癌
症例12 扁平上皮下に進展した噴門部早期癌
症例13 色調の変化に乏しい噴門部M癌
症例14 内視鏡で血管透見消失領域として認識できた5cm大の0-IIc型M癌
症例15 粘膜下腫瘍様の隆起を伴った0-IIa型M癌
症例16 SM浸潤癌と誤診したM癌(1)
症例17 SM浸潤癌と誤診したM癌(2)
症例18 悪性所見に乏しい噴門部SM癌
症例19 悪性所見に乏しい0-IIc病変
症例20 食道浸潤を伴うSM癌
症例21 食道裂孔ヘルニアを伴う噴門部SM癌
症例22 病変の一部が内視鏡所見に乏しい表層拡大型癌
症例23 穹窿部の捻れが著明な噴門部0-IIc+III型癌
症例24 全体像の把握にX線が有用だった0-IIc+III型癌
症例25 噴門部~胃体上部の表層拡大型SM癌
症例26 噴門部と胃体上部の重複癌
症例27 内視鏡の見下ろし観察が有用な噴門部SM癌
症例28 典型的な噴門部SM癌
症例29 粘膜下腫瘍様の形態を呈した噴門部SM癌
症例30 深達度診断が困難であった噴門部早期癌
症例31 粘膜下層に微小浸潤を伴った噴門部早期癌
症例32 高度の粘膜下浸潤を伴っていた0-I+IIa病変
症例33 lymphoid stromaを伴ったSM癌
症例34 SM浸潤の診断が困難であった噴門部早期癌
症例35 粘膜下腫瘍様の形態を呈した噴門部SM癌
症例36 SSBE由来の腺癌
症例37 バレット腺癌の重複例
症例38 バレット腺癌
症例39 浸潤範囲診断が困難な噴門部進行癌
症例40 食道浸潤を伴った噴門部進行癌
症例41 浸潤範囲診断が困難な噴門部進行癌
症例42 噴門部の2型進行癌
症例43 食道腺由来の食道胃接合部癌
症例44 食道胃接合部を原発とするLP型胃癌
症例45 下部食道に壁外性圧排所見を呈した進行癌
症例46 粘膜内進展を伴う噴門部進行癌
症例47 X線が深達度診断に有用であった12mm大の隆起型MP癌
症例48 X線診断が困難であった0-IIc類似進行癌
症例49 一部が平皿状の形態を呈した進行癌
症例50 形態的に悪性リンパ腫に類似した進行癌