心臓血管疾患のMDCTとMRI
MDCTとMRIの基礎から各疾患の臨床までを解説
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心臓血管疾患の臨床でマルチスライスCT(MDCT)とMRIが注目されている。MDCTでは検出器の多列化、ガントリーの回転速度の高速化と空間分解能の向上、高精細な三次元画像を実現。MRIでは冠動脈造影や心筋灌流、心筋viabilityの評価、血管壁のプラーク評価も始まっている。本書はMDCTとMRIの基礎から各疾患の臨床までを網羅して解説する。
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I. MDCT(マルチスライスCT)
1. 基礎
2. 後天性心疾患
3. 先天性心疾患(成人例を含めて)
4. 虚血性心疾患
5. 心臓静脈のMDCTとその意義
6. 血管疾患
7. 心臓血管MDCTにおけるX線被曝
8. 心臓MDCTの将来展望
II. MRI
1. 基礎
2. 後天性心疾患
3. 先天性心疾患
4. 虚血性心疾患
5. 血管疾患
索引
1. 基礎
2. 後天性心疾患
3. 先天性心疾患(成人例を含めて)
4. 虚血性心疾患
5. 心臓静脈のMDCTとその意義
6. 血管疾患
7. 心臓血管MDCTにおけるX線被曝
8. 心臓MDCTの将来展望
II. MRI
1. 基礎
2. 後天性心疾患
3. 先天性心疾患
4. 虚血性心疾患
5. 血管疾患
索引
書評
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循環器科・放射線科の間を埋める臨床重視の実践書
書評者: 山科 章 (東京医科大学教授・第二内科)
循環器の診療も大きく変化してきた。私が研修医になった1970年代には,循環器疾患は病歴,身体所見,心電図と胸部X線写真で8割は診断がつくといわれていた。その当時の治療法の主体は薬物治療であり,それで十分であったかもしれない。ところが,80年代になって断層エコー,心筋シンチが普及し,さらに心臓カテーテル検査が多くの病院でルーチンに行われるようになった。一方で,冠動脈カテーテルインターベンションが普及し,従来の機能的情報だけでなく,詳細な解剖的情報が要求されるようになった。そういった要求に応えるように,90年代後半からは機器のディジタル化,画像処理の進歩などに伴って循環器画像診断が大きく進歩した。特にMR,CTは日進月歩であり,循環器病診断を大きく変化させつつある。MR,CTによってわかる心血管系の解剖,心機能,冠動脈病変,心筋灌流,心筋性状などは循環器科医にとって極めて重要な指標であり,大きな注目を集めている。
ところが,心臓CT,心臓MRは普及してきているとはいえ,機器の進歩が先行しており,正直なところ,われわれ臨床医がこれらを使いこなせるという状況でない。循環器科医にはCTやMRの理論や画像処理がよくわからない。MRを例にあげると,傾斜磁場,スピンエコー法,インバージョンリカバリー,T1強調画像,ブラックブラッド,フローボイド,MIP,などと続くとつい敬遠してしまう。そこで,放射線科医や放射線技師を巻き込んで一緒にやりたいと思うが,検査が混んでいて,心臓の検査まではできない。一方,放射線科としても,なじみの少ない心臓でありとっつきにくい。そういったことで,お互いに二の足を踏んでいるのではないだろうか。
そういった循環器科・放射線科の“はざま”を埋めるために,いろいろな機会が持たれてはいるが,わかりやすく勉強できる教科書がない。そういったタイミングで今回,医学書院から『心臓血管疾患のMDCTとMRI』が上梓された。本書を編集された栗林,佐久間両先生は心臓放射線研究会,ハートイメージング研究会,心臓MRハンズオンセミナー,心血管画像動態学会などで中心的に活躍され,心臓CTと心臓MRの普及に努めてこられている。お二人とも放射線科が出身であるが,われわれ循環器科医が理解しにくい領域,あるいは放射線科医や放射線技師が苦手な点を熟知されている。そういったノウハウを凝集して編集されたのが本書である。お二人の長年の啓蒙・教育活動に基づいた,臨床を重視した実践的な企画になっている。
筆者もこれまで幾度となく心臓MRやCTの講演を聞き,あるいはセミナーを企画したりしてきたが,なかなか理解できないことが多かった。しかし,本書を通読する機会を得て,「目からウロコ」の連続であった。たとえば,CTではガントリーを回転しながら拍動している心臓を撮像して,どうやって画像を再合成するかという基礎的な疑問も解けたし,VRやMPRなどの画像表示法も理解できた。心臓のcross―sectional anatomyもよく勉強できた。上述したMRの基本的事項や,遅延造影などMRでしかわからない臨床的意義も理解できた。などなど,あげはじめたらきりがない。
疾患の項目も非常に多くとってありCT・MRの特徴を理解するうえで勉強になる。それぞれの疾患・病態について“知っておくべきこと”をまず紹介したあとで,その疾患における検査の意義,手順,診断・評価の仕方が解説されており,非常に理解しやすくしかも実践的である。また,CT・MRの現状と限界・ピットフォール,さらに,将来への展望までup to dateが網羅されており興味深く読むことができた。本書は読み手として循環器科と放射線科の両者を意識して書かれているため,いずれが専門でも読みやすくなっている。
心血管系の詳細な解剖,心機能,冠動脈病変,心筋灌流,心筋性状などの非侵襲的評価が望まれている。こういった時代のニーズにマッチしているのが心臓CT・心臓MRである。まだまだ,発展途上で日々進化し続けている検査法であり,今からでも遅くない。始めなければ始まらない。これから心臓MR,心臓CTを学ぼうとする方,始めようとする方,始めたけどうまくいかない方に,ぜひとも本書を薦めたい。
心臓血管疾患の実用的な指南書
書評者: 高宮 誠 (医誠会病院ソフィア健康増進センター顧問/国立循環器病センター客員研究員,元放射線診療部長)
動く器官「心臓」は,常に動かない器官「脳」の診断法の後塵を拝しながら発展してきた。その過程で多列検出器ヘリカルCT(MDCT)とMRIにおいては高速撮影の多様な手法が開発され,時間分解能と空間分解能,S/N比の向上が図られ,動きの激しい細い冠動脈も診断可能になってきた。冠動脈造影を目標に開発された64列MDCTの普及は間近であり,whole heart coronary MRAというような非造影冠動脈画像法が実用域に入りつつある。また,心臓血管疾患の診断アルゴリズムにMDCTとMRI診断法が本格的に組み込まれようとしている。この時期に,本書が出版された意義は大きい。
編者の栗林氏は電子ビームCTの時代からの心臓血管CTの専門家,佐久間氏は心臓血管MRI一筋の人であり,両氏とも国内外でのこの領域の指導者である。
私が本著を高く評価する点は,個別の専門書として扱われることの多いCTとMRIを並列におき,診断法として確立している部分と両者の診断法の優劣を容易に比較できるように構成されている,参考書としての実用性の高さである。わが国の心臓血管放射線科医はサービス精神のみならず学術的貢献度も高く,RadiologyやRadiographics,AJRなどに掲載された論文はしばしば学会から顕彰,論評され,実力は世界的な水準にある。執筆者の多くが心臓血管放射線研究会の気鋭のメンバーであり,彼らが各々の得意分野を執筆して内容の充実度を高めている。世界の一流メーカーの技術者たちも執筆し,自社の装置の技術的特徴を述べ合っているのも読み応えがある。日本企業が256列MDCTプロトタイプの実験の結果を記しており,頼もしい開発精神を知ることもできる。
本書で最も紙数を割いているのは心臓画像法であり,特に,最新の冠動脈画像法に重点がおかれ,時代の要請に応えている。冠動脈造影にはそれなりの高速型高性能装置が必要であるが,本書を通読すれば,いずれの施設でも歩留まりのよい冠動脈撮像が可能になるであろう。ステント開存性評価はCTCAの重要な診断目的であるが,この診断能に関する項も参考になることが多い。冠動脈石灰化指数による日本人の冠動脈疾患リスク評価法に関する執筆者の新しい提言も見逃せない。
胸部大動脈瘤におけるAdamkiewicz動脈の位置は血管外科医にとって重要な術前情報であるが,この撮像法を開発したのは本項の執筆者らである。大血管や大動脈分枝,末梢血管疾患では診断目的のカテーテル造影を行う意義は殆どないことを執筆者らは明確にしている。
本書は,実用的な情報にあふれ,心臓血管系疾患を専門にする医師のみではなく,無侵襲心臓血管画像法の知識は一般の臨床家にとっても絶好の指南書である。また,画像法に携わる診療放射線技師,生理検査技師,ME技師,工業技術者の参考書としても非常に役に立つ本であると思う。
画像診断新時代の到来を告げる最適のガイドブック
書評者: 児玉 和久 (大阪警察病院・名誉院長)
心臓カテーテル法の出現は冠動脈造影法をはじめとした種々の侵襲的画像診断法への応用を生み,心臓血管系疾患診断や治療に革命的変貌をもたらした。しかし近年,MDCTやMRIなどの非侵襲的画像診断法は装置面における著しい進歩と改良,さらに諸家のたゆまぬ努力により問題点とされていた時間分解能や空間分解能に著しい改善がみられ,侵襲的な画像診断に迫る勢いを示している。
このことを踏まえ,非侵襲的な冠動脈造影は,心血管疾患のスクリーニングの手段だけでなく,より迅速な診療ストラテジーの手段となるなど,画期的なモダリティとしての評価が高まり,多くの学会,研究会で盛んに採り上げられ議論され始めている。特に最新の64列MDCTでは5秒で全ての冠動脈を撮影することが可能で,処理にもいわゆるボタンひとつで,拍動している心臓の明瞭な像が迅速に得られる時代になった。
このようにハード面においては広く活用される可能性が強まるとともに解決を要する幾つかの問題点も指摘されている。すなわち機器メーカーごとに異なる撮影や処理の条件,画像の解釈の知識や経験,更には心血管系の解剖だけでなく,疾患について,ひいては冠動脈形成術についての経験や知識などが必要になる。本年7月にACCF/AHAからCTおよびMRIの習熟についてのガイドラインが出されたことも,新しいこの分野への熟練の必要性が差し迫っていることを示している。
本書は現在,心臓血管分野のMDCTとMRIのそれぞれに日本の先駆的存在として高名な慶應義塾大学放射線科栗林幸夫教授と三重大学放射線科佐久間肇助教授の共同編集によるものである。概していえば,この分野の基礎から臨床にいたる膨大な知識を過不足なく網羅しACC/AHAの勧告意図にも沿った最新の良書である。MDCT,MRIとも一見難解な原理や撮影プロトコール,処理法に至るまで詳細に記述するとともに各論として冠動脈,心筋から大動脈,肺動脈疾患まで幅広く多岐にわたって記載があり,稀な疾患にもそれぞれ解説を付け他書の追従を許さない。そのうえ初学者の為の専門用語についての丁寧な解説,各メーカーの最新のワークステーションについてまでも付記され,まさに産学挙げての力作である。
これまで未成熟なうえに難解な領域として誤解され敷居が高かった心臓MDCT,MRIの分野に新しい時代の到来を告げる優れたテキストとして,医師,放射線技師など多くの方々にぜひとも活用していただきたいと願っている。
心臓血管領域におけるMDCTとMRIの臨床応用を解説
書評者: 大友 邦 (東大大学院教授・放射線診断学)
撮像断面の自由度と血流からさまざまなコントラストを得ることができるMRIは,当初から心臓血管領域の画像診断に新たな地平を開くものと期待されていた。しかし実際には装置の性能や診療報酬など医療経済面からの制約のため,広く一般に普及しているとは言い難い。一方電子ビームを用いた超高速CTを除いて,この領域ではMRIに大きく水を空けられた感のあったCTではあったが,多列化検出器を備えたMDCTの急速な進歩で,両者の差が一気に詰まってきた印象がある。その結果,臨床の現場で,どちらを使ってどのように心臓血管疾患の評価を行えばよいかについて,混乱が生じているようにも思われる。
このような現状に対して,一般の放射線科医・技師,さらにMRIとMDCTになじみの薄い循環器・血管領域の医師が,それぞれの病院にある装置を的確に使用して最善の結果を得ることができるように企画されたのが,本書である。
前半MDCT,後半MRIの二部構成となっているが,主な章立ては共通しており,検査法の基礎(画像再構成,造影剤の投与法,ワークステーションの活用法),心筋疾患を中心とする後天性心疾患,さまざまな先天性心疾患,冠動脈と心筋の壁運動とバイアビリティの評価を中心とした虚血性心疾患,大動脈瘤と末梢動脈を含めた血管疾患から構成されている。
本書の第一の特徴は,検査法の根幹を占めるMDCTによる撮像プロトコールとワークステーションの特徴と,心臓MRとMRAの検査プロトコールと撮像条件について,メーカーごとにはっきりと分けて記述がなされている点である。このような章立てが必要な現状をどう評価するかは別として,極めて実用性の高い編集となっている。
第二の特徴は,わが国でMDCTとMRIの心臓血管領域への臨床応用をリードしている施設や主な装置メーカーから選りすぐられた総勢70名に及ぶ執筆陣である。さらに特筆すべきは,これらの方々がテーマごとに形式に捕らわれず執筆されているにもかかわらず,一冊の教科書としての統一が保たれていることである。国立循環器病センターで長年研鑽を積まれた栗林幸夫現慶應義塾大学教授とわが国の心臓MRIの第一人者である佐久間肇三重大学助教授のお二人の編集ならではと言える。
「序」でお二人が書かれているように,心臓血管疾患の臨床に携わるすべての医師,放射線技師,生理機能検査技師の方々にとって,必ず役に立つ教科書として本書を強く推薦する。
書評者: 山科 章 (東京医科大学教授・第二内科)
循環器の診療も大きく変化してきた。私が研修医になった1970年代には,循環器疾患は病歴,身体所見,心電図と胸部X線写真で8割は診断がつくといわれていた。その当時の治療法の主体は薬物治療であり,それで十分であったかもしれない。ところが,80年代になって断層エコー,心筋シンチが普及し,さらに心臓カテーテル検査が多くの病院でルーチンに行われるようになった。一方で,冠動脈カテーテルインターベンションが普及し,従来の機能的情報だけでなく,詳細な解剖的情報が要求されるようになった。そういった要求に応えるように,90年代後半からは機器のディジタル化,画像処理の進歩などに伴って循環器画像診断が大きく進歩した。特にMR,CTは日進月歩であり,循環器病診断を大きく変化させつつある。MR,CTによってわかる心血管系の解剖,心機能,冠動脈病変,心筋灌流,心筋性状などは循環器科医にとって極めて重要な指標であり,大きな注目を集めている。
ところが,心臓CT,心臓MRは普及してきているとはいえ,機器の進歩が先行しており,正直なところ,われわれ臨床医がこれらを使いこなせるという状況でない。循環器科医にはCTやMRの理論や画像処理がよくわからない。MRを例にあげると,傾斜磁場,スピンエコー法,インバージョンリカバリー,T1強調画像,ブラックブラッド,フローボイド,MIP,などと続くとつい敬遠してしまう。そこで,放射線科医や放射線技師を巻き込んで一緒にやりたいと思うが,検査が混んでいて,心臓の検査まではできない。一方,放射線科としても,なじみの少ない心臓でありとっつきにくい。そういったことで,お互いに二の足を踏んでいるのではないだろうか。
そういった循環器科・放射線科の“はざま”を埋めるために,いろいろな機会が持たれてはいるが,わかりやすく勉強できる教科書がない。そういったタイミングで今回,医学書院から『心臓血管疾患のMDCTとMRI』が上梓された。本書を編集された栗林,佐久間両先生は心臓放射線研究会,ハートイメージング研究会,心臓MRハンズオンセミナー,心血管画像動態学会などで中心的に活躍され,心臓CTと心臓MRの普及に努めてこられている。お二人とも放射線科が出身であるが,われわれ循環器科医が理解しにくい領域,あるいは放射線科医や放射線技師が苦手な点を熟知されている。そういったノウハウを凝集して編集されたのが本書である。お二人の長年の啓蒙・教育活動に基づいた,臨床を重視した実践的な企画になっている。
筆者もこれまで幾度となく心臓MRやCTの講演を聞き,あるいはセミナーを企画したりしてきたが,なかなか理解できないことが多かった。しかし,本書を通読する機会を得て,「目からウロコ」の連続であった。たとえば,CTではガントリーを回転しながら拍動している心臓を撮像して,どうやって画像を再合成するかという基礎的な疑問も解けたし,VRやMPRなどの画像表示法も理解できた。心臓のcross―sectional anatomyもよく勉強できた。上述したMRの基本的事項や,遅延造影などMRでしかわからない臨床的意義も理解できた。などなど,あげはじめたらきりがない。
疾患の項目も非常に多くとってありCT・MRの特徴を理解するうえで勉強になる。それぞれの疾患・病態について“知っておくべきこと”をまず紹介したあとで,その疾患における検査の意義,手順,診断・評価の仕方が解説されており,非常に理解しやすくしかも実践的である。また,CT・MRの現状と限界・ピットフォール,さらに,将来への展望までup to dateが網羅されており興味深く読むことができた。本書は読み手として循環器科と放射線科の両者を意識して書かれているため,いずれが専門でも読みやすくなっている。
心血管系の詳細な解剖,心機能,冠動脈病変,心筋灌流,心筋性状などの非侵襲的評価が望まれている。こういった時代のニーズにマッチしているのが心臓CT・心臓MRである。まだまだ,発展途上で日々進化し続けている検査法であり,今からでも遅くない。始めなければ始まらない。これから心臓MR,心臓CTを学ぼうとする方,始めようとする方,始めたけどうまくいかない方に,ぜひとも本書を薦めたい。
心臓血管疾患の実用的な指南書
書評者: 高宮 誠 (医誠会病院ソフィア健康増進センター顧問/国立循環器病センター客員研究員,元放射線診療部長)
動く器官「心臓」は,常に動かない器官「脳」の診断法の後塵を拝しながら発展してきた。その過程で多列検出器ヘリカルCT(MDCT)とMRIにおいては高速撮影の多様な手法が開発され,時間分解能と空間分解能,S/N比の向上が図られ,動きの激しい細い冠動脈も診断可能になってきた。冠動脈造影を目標に開発された64列MDCTの普及は間近であり,whole heart coronary MRAというような非造影冠動脈画像法が実用域に入りつつある。また,心臓血管疾患の診断アルゴリズムにMDCTとMRI診断法が本格的に組み込まれようとしている。この時期に,本書が出版された意義は大きい。
編者の栗林氏は電子ビームCTの時代からの心臓血管CTの専門家,佐久間氏は心臓血管MRI一筋の人であり,両氏とも国内外でのこの領域の指導者である。
私が本著を高く評価する点は,個別の専門書として扱われることの多いCTとMRIを並列におき,診断法として確立している部分と両者の診断法の優劣を容易に比較できるように構成されている,参考書としての実用性の高さである。わが国の心臓血管放射線科医はサービス精神のみならず学術的貢献度も高く,RadiologyやRadiographics,AJRなどに掲載された論文はしばしば学会から顕彰,論評され,実力は世界的な水準にある。執筆者の多くが心臓血管放射線研究会の気鋭のメンバーであり,彼らが各々の得意分野を執筆して内容の充実度を高めている。世界の一流メーカーの技術者たちも執筆し,自社の装置の技術的特徴を述べ合っているのも読み応えがある。日本企業が256列MDCTプロトタイプの実験の結果を記しており,頼もしい開発精神を知ることもできる。
本書で最も紙数を割いているのは心臓画像法であり,特に,最新の冠動脈画像法に重点がおかれ,時代の要請に応えている。冠動脈造影にはそれなりの高速型高性能装置が必要であるが,本書を通読すれば,いずれの施設でも歩留まりのよい冠動脈撮像が可能になるであろう。ステント開存性評価はCTCAの重要な診断目的であるが,この診断能に関する項も参考になることが多い。冠動脈石灰化指数による日本人の冠動脈疾患リスク評価法に関する執筆者の新しい提言も見逃せない。
胸部大動脈瘤におけるAdamkiewicz動脈の位置は血管外科医にとって重要な術前情報であるが,この撮像法を開発したのは本項の執筆者らである。大血管や大動脈分枝,末梢血管疾患では診断目的のカテーテル造影を行う意義は殆どないことを執筆者らは明確にしている。
本書は,実用的な情報にあふれ,心臓血管系疾患を専門にする医師のみではなく,無侵襲心臓血管画像法の知識は一般の臨床家にとっても絶好の指南書である。また,画像法に携わる診療放射線技師,生理検査技師,ME技師,工業技術者の参考書としても非常に役に立つ本であると思う。
画像診断新時代の到来を告げる最適のガイドブック
書評者: 児玉 和久 (大阪警察病院・名誉院長)
心臓カテーテル法の出現は冠動脈造影法をはじめとした種々の侵襲的画像診断法への応用を生み,心臓血管系疾患診断や治療に革命的変貌をもたらした。しかし近年,MDCTやMRIなどの非侵襲的画像診断法は装置面における著しい進歩と改良,さらに諸家のたゆまぬ努力により問題点とされていた時間分解能や空間分解能に著しい改善がみられ,侵襲的な画像診断に迫る勢いを示している。
このことを踏まえ,非侵襲的な冠動脈造影は,心血管疾患のスクリーニングの手段だけでなく,より迅速な診療ストラテジーの手段となるなど,画期的なモダリティとしての評価が高まり,多くの学会,研究会で盛んに採り上げられ議論され始めている。特に最新の64列MDCTでは5秒で全ての冠動脈を撮影することが可能で,処理にもいわゆるボタンひとつで,拍動している心臓の明瞭な像が迅速に得られる時代になった。
このようにハード面においては広く活用される可能性が強まるとともに解決を要する幾つかの問題点も指摘されている。すなわち機器メーカーごとに異なる撮影や処理の条件,画像の解釈の知識や経験,更には心血管系の解剖だけでなく,疾患について,ひいては冠動脈形成術についての経験や知識などが必要になる。本年7月にACCF/AHAからCTおよびMRIの習熟についてのガイドラインが出されたことも,新しいこの分野への熟練の必要性が差し迫っていることを示している。
本書は現在,心臓血管分野のMDCTとMRIのそれぞれに日本の先駆的存在として高名な慶應義塾大学放射線科栗林幸夫教授と三重大学放射線科佐久間肇助教授の共同編集によるものである。概していえば,この分野の基礎から臨床にいたる膨大な知識を過不足なく網羅しACC/AHAの勧告意図にも沿った最新の良書である。MDCT,MRIとも一見難解な原理や撮影プロトコール,処理法に至るまで詳細に記述するとともに各論として冠動脈,心筋から大動脈,肺動脈疾患まで幅広く多岐にわたって記載があり,稀な疾患にもそれぞれ解説を付け他書の追従を許さない。そのうえ初学者の為の専門用語についての丁寧な解説,各メーカーの最新のワークステーションについてまでも付記され,まさに産学挙げての力作である。
これまで未成熟なうえに難解な領域として誤解され敷居が高かった心臓MDCT,MRIの分野に新しい時代の到来を告げる優れたテキストとして,医師,放射線技師など多くの方々にぜひとも活用していただきたいと願っている。
心臓血管領域におけるMDCTとMRIの臨床応用を解説
書評者: 大友 邦 (東大大学院教授・放射線診断学)
撮像断面の自由度と血流からさまざまなコントラストを得ることができるMRIは,当初から心臓血管領域の画像診断に新たな地平を開くものと期待されていた。しかし実際には装置の性能や診療報酬など医療経済面からの制約のため,広く一般に普及しているとは言い難い。一方電子ビームを用いた超高速CTを除いて,この領域ではMRIに大きく水を空けられた感のあったCTではあったが,多列化検出器を備えたMDCTの急速な進歩で,両者の差が一気に詰まってきた印象がある。その結果,臨床の現場で,どちらを使ってどのように心臓血管疾患の評価を行えばよいかについて,混乱が生じているようにも思われる。
このような現状に対して,一般の放射線科医・技師,さらにMRIとMDCTになじみの薄い循環器・血管領域の医師が,それぞれの病院にある装置を的確に使用して最善の結果を得ることができるように企画されたのが,本書である。
前半MDCT,後半MRIの二部構成となっているが,主な章立ては共通しており,検査法の基礎(画像再構成,造影剤の投与法,ワークステーションの活用法),心筋疾患を中心とする後天性心疾患,さまざまな先天性心疾患,冠動脈と心筋の壁運動とバイアビリティの評価を中心とした虚血性心疾患,大動脈瘤と末梢動脈を含めた血管疾患から構成されている。
本書の第一の特徴は,検査法の根幹を占めるMDCTによる撮像プロトコールとワークステーションの特徴と,心臓MRとMRAの検査プロトコールと撮像条件について,メーカーごとにはっきりと分けて記述がなされている点である。このような章立てが必要な現状をどう評価するかは別として,極めて実用性の高い編集となっている。
第二の特徴は,わが国でMDCTとMRIの心臓血管領域への臨床応用をリードしている施設や主な装置メーカーから選りすぐられた総勢70名に及ぶ執筆陣である。さらに特筆すべきは,これらの方々がテーマごとに形式に捕らわれず執筆されているにもかかわらず,一冊の教科書としての統一が保たれていることである。国立循環器病センターで長年研鑽を積まれた栗林幸夫現慶應義塾大学教授とわが国の心臓MRIの第一人者である佐久間肇三重大学助教授のお二人の編集ならではと言える。
「序」でお二人が書かれているように,心臓血管疾患の臨床に携わるすべての医師,放射線技師,生理機能検査技師の方々にとって,必ず役に立つ教科書として本書を強く推薦する。
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