人体の構造と機能 第2版

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読んで楽しく,理解しやすい「マリーブ」第2版。すべてのイラストに手を入れ,理解をより確実にするよう新しい図も多数追加。リンパ系を「血液」から「生体防御機構」の章に移行。第1版では省略した「Closer Look」を収録し,「心電図」「AIDS」「肺がん」「肥満」など臨床に関連した事項を取り上げた。ビジュアル世代に格好の「目で見てわかる」テキスト。
エレイン N. マリーブ
林正 健二 / 小田切 陽一 / 武田 多一 / 淺見 一羊 / 武田 裕子
発行 2005年03月判型:A4変頁:576
ISBN 978-4-260-33393-1
定価 5,500円 (本体5,000円+税)
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1. 人体:オリエンテーション
2. 化学の基礎
3. 細胞と組織
4. 皮膚と膜
5. 骨格系
6. 筋系
7. 神経系
8. 特殊感覚
9. 内分泌系
10. 血液
11. 心臓血管系
12. リンパ系と生体防御機構
13. 呼吸器系
14. 消化器系と代謝
15. 泌尿器系
16. 生殖器系
補遺
 A 元素の周期表
 B ビタミンとミネラルに関する重要事項
索引
 和文索引
 欧文索引

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解剖学と生理学の「実」を伝える教科書
書評者: 井上 泰 (東京厚生年金病院病理科部長)
 マリーブの『人体の構造と機能』の日本語第1版が世に出たのは1997年5月である。当時,このような包括的なテキストはまだなく,いわばこのての教科書としては初めてのものであった。この翻訳のもとになった原著は“Essential of Human Anatomy & Physiology”の第4版(1994年)である。著者エレインN.マリーブ(Elaine N. Marieb)女史は,動物学の博士号をもち,さらに看護学の修士号取得。教育歴は長くその講義のすばらしさは定評のあるところだと聞く。

 この教科書に対するマリーブ女史の熱意は,以下のような点に表れている。解剖と生理をいわばほどよく攪拌し,全体として1つの流れとなるような記載である。イラストはあくまでも実感できる肉眼にこだわる。目に見えない組織像は肉眼像と必ずリンクさせ,肉眼像のより深い理解を意図している。さらに超微形態は走査電子顕微鏡の三次元像を用い組織像の理解の一助とする。心憎い配置と配慮。そして,生理の破綻により病気が成り立っていることを,ホメオスタシスの破綻としてとりあげ,病理学的な記述を入れ込んでいる。例えば,皮膚(外皮系)の章では,足白癬,せつ,よう,ヘルペス感染,接触性皮膚炎,膿痂疹,乾癬,熱傷,癌(扁平上皮癌・基底細胞癌・悪性黒色腫)がコンパクトに取り上げられている。さらに,「臨床の場で」という質問コーナーをもうけ,患者の具体的な訴えや徴候の成り立ちを問いかけている。例えば,神経系の章では,「70代前半のジョゼフは,食物を噛むのに困難を感じていた。舌を突き出させてみると,舌は右に偏位し,舌の右側は萎縮していた。どの脳神経が障害されているのだろうか?」などなど。思い当たるままその感想を言語化すると以上のようになる。

 つまり,解剖学と生理学を教室の中で学ぶ看護学生に対して,「あなた方の目の前に立ち現れる患者さんの訴える様々な苦痛を,冷静かつ正確に分析するに必要な解剖学と生理学」を伝えたいというマリーブ女史の熱意が感じられるということ。

 したがって,この原著の趣を失わずに翻訳することは大変な作業だったと想像するのである。林正健二氏をはじめとする5名の訳者たちは相当苦労されたに違いない。分担翻訳という作業はそれを1つの流れとしてのその統一性を確保することが極めて難しい作業だからである。しかし,翻訳の文章は読んでいて違和感はなく,日本語としてなめらかである。分担翻訳は成功している。

 筆者はこの教科書を1997年以来看護学校で使用している。その使用方法は,講義を確認補完するものとしてである。そして,可能な限り3年間で真剣な通読をと。

 原著はすでに第7版(2003年)まで版を重ねている。2005年3月,このマリーブの第7版が日本語版第2版として上梓された。タイムリーである。現代の基礎科学の進歩を貪欲に取り込み,免疫や遺伝関連がより充実した。基礎科学の知見を無視しては瞬く間にそれらのページはセピア色になろう。結果,ページ数は85ページ増えた。従来,割愛されていたCloser Look(もっと詳しく見てみよう)が取り上げられ,設問の解答も加えられたことは読者にとってはありがたい。そして,特筆すべきはイラストの線がより明瞭に,配色はよりカラフルに書き直され視覚的な理解が改善された。しかし,これ以上のカラフルさは無用だろう。

 いささか大きくて持ち運びすることは難しいが,本自体の大きさのデメリットはその内容のメリットをこえるものではない。看護学生だけではなく,医療に関わる様々な分野で自己のプロフェッショナリティを目指すすべての人に勧めたい。日本人による日本語のこのようなテキストの出現を願ってやまないが,今は,かなうまい。したがって,おそらくマリーブの『人体の構造と機能』,これは当面,一生繰り返しページを繰るテキストとしての資格をもつものとして読まれていくに違いない。

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