NPPVハンドブック

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NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)は、従来の換気療法に比べ呼吸管理が容易で、ニーズも高い有効な治療法であり、年々広がりをみせ、近年では適応の幅も広がっている。患者への導入のすすめ方やマスクフィッティングについてなど、NPPVに携わるスタッフすべてが共通に認識しておくべきことを中心に、図表を用いてわかりやすくまとめた。
執筆 聖路加国際病院呼吸療法チーム
編集 蝶名林 直彦
発行 2006年04月判型:B5頁:176
ISBN 978-4-260-00070-3
定価 4,180円 (本体3,800円+税)
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  • 目次
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第1章 NPPVの目的と原理
第2章 NPPVのための人工呼吸器と器具
第3章 NPPVの対象疾患と適応-急性呼吸不全・急性増悪を中心に
第4章 急性呼吸不全および慢性呼吸不全の急性増悪に対するNPPVの実際
第5章 慢性呼吸不全に対するNPPV(Type II)
第6章 NPPV中の呼吸ケアの実際
第7章 NPPVの実際例-症例と解説
第8章 小児のNPPV
第9章 経過中の合併症
第10章 これからのNPPV
資料1.NPPVの可能な人工呼吸器(集中治療~病棟)
資料2.NPPV専用人工呼吸器の比較(病棟~在宅用)
索引

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NPPVに携わるすべての医療従事者の必読書
書評者: 宮城 征四郎 (群星沖縄研修センター長)
 聖路加国際病院呼吸療法チームによるNPPV(非侵襲的人工呼吸管理)ハンドブックがついに日の目を見た。本書の編集は,私が日ごろから親しくお付き合いをさせていただいている蝶名林先生である。その内容が内容だけに,彼によれば企画から本の完成までに3年もの年月を要したという。しかし,この本をくまなく読んでみると,それは当然だということがよくわかる。

 この方法が日本に導入されたのは,ほんの15年ほど前のことであり,従来の侵襲的人工呼吸管理そのものを根本的に見直す機会を与えた人工呼吸管理法だからである。

 鉄の肺に始まり,閉鎖回路による陽圧人工呼吸管理に終始していた1980年代後半までの人工呼吸管理法に,決定的な改革をもたらしたのはこの方法によるものであった。それだけに,この療法に関する教則本の数は日本の医療界を席巻するほどあまたある。

 しかし,この本の特徴はまずすべてが箇条書きに統一されているので,読者にとって大変に読みやすいことである。NPPVを導入しているこの聖路加国際病院独特の図がいたるところにちりばめられていて,きわめてその内容も具体的である。

 従来の人工呼吸管理法と違って,本法は一部の医療者によって独占される類のものでは決してない。その証拠に,呼吸不全を起こしている病態に導入されている場所が救急室,集中治療室,一般病棟,小児病棟,外来,自宅など多岐である。それだけに,本法に携わっている医療者は麻酔医,呼吸器科医,小児科医,臨床工学技士,看護師,看護ステーションケアマネジャーその他であり,これらの人々によるバランスのとれたチーム医療である。それぞれの立場から,これだけの人々に意見を募るだけでも容易ではない。編集者が最も苦労されたであろう理由はここにある。

 本法を導入するにあたっては,これらの医療人それぞれがこの方法に習熟していなければならない。決して一部の人々の特権的医療行為ではないのである。NPPVは現在,急性や慢性を問わず,呼吸不全のあらゆる分野で導入が試みられている。そして大事なことは,従来の閉鎖式人工呼吸管理法の適応条件その他が根本的に修正を余儀なくされたことである。

 従来の方法に比して,何よりも廉価である。呼吸不全を伴うあらゆる病態に,禁忌条項さえなければ,まず本法を導入し,どうしてもそれが駄目なら従来の人工呼吸管理法を導入するというのが一般的である。循環器を専門としてきた医療人も,この方法を通じて呼吸器,麻酔との接点を求めているし,従来にはなかった早目の導入,すなわち「予防的導入」や「早期抜管」,術後管理などが容易となった。

 本書は10章から構成されているが,どの章を読んでも余すところなく,それぞれの専門的立場から書かれており,有意義である。スタッフの時間的・物理的制約の多さ,導入の困難さ,知識や技術の必要性,適応病態,合併症その他が惜しみなく書かれているが,なお,各病院でこぞって導入すべき方法であり,また,本書はその点でも圧巻である。

 この分野に携わるすべての医療人に一読をお願いしたい良書である。

呼吸療法チーム医療をめざすすべての医療従事者に
書評者: 田中 一正 (昭和大教授・医学疾病学/山梨赤十字病院内科(呼吸器)非常勤医師)
 誰が誰のためにどのようにNPPVを安全に行うか,刻々とバイタルサインの変化する中でNPPVをどう具体的に行うか,そのための指導書として,本書は実に簡潔に編纂されています。また,NPPVの適切な対応とは何か?等,実践の中から湧き出たさまざまな問題点も本書では,見事に解き明かしてくれています。

「これはどうするの?」,「え~っとどうだったっけ?」,「ちょっと調べてよ!」

これらは,現場の毎日の会話の中にある疑問と不安のやり取りです。

「こうでいいのよ!」つい,知ったかぶって言ってしまった。「うまくいかないのは私のせいじゃない」患者さんの状態や体つきが悪くて合わないのだ。先生の指示がおかしいから……,思うことはみな同じです。でもいちばん困っているのは,あなたではなく患者さん。経験不足で自信のない先生とNPPVを試したことはあるけど指示されたことだけをやっていたあなた,この本の中で症例を振り返ってみませんか。こうしてあげられれば……,こういう方法もあったんだ!経験と知識が結びついてこそ,よりよい医療に結びつくのではないでしょうか。

 そんな気持ちで本書を読んでみると,急性期NPPVのための施設とチームワークでは「何を,なんのためにモニターするか」「患者状態の観察で注意するポイントと対処法」「挿管のタイミング」という表題で書が進み,さらに,「慢性期に移行する場合」「クリティカルパスによるNPPV導入の実際」「長期導入例のモニタリング」と呼吸器疾患患者の急性期から慢性期の流れに沿ってその時々のポイントが記されています。

 さらに,呼吸ケアの実際としてまずマスクフィッティング維持のコツが解説されています。それぞれの出会う場面場面で何が患者さんとのコミュニケーションで最も大事か,そのためには何をすべきか,を大切にされる聖路加国際病院の呼吸療法チームの姿勢が注がれた良書となっています。

 経験豊富な先生も,これから必要に迫られてNPPVの指示を出す先生も,在宅でご家族と一緒に看取る先生も,ぜひご一読していただきたい本です。

 チーム医療をめざしたいあなた! 本書をテキストに勉強会を始めてみませんか。医師とともに患者さんのために一緒に読んでみたい本です。あなたの病院にも呼吸療法チームの産声が上がりますよ。

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