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こどもの検査値ノート 第2版

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成人と異なり,世界的にもデータの少ない小児の基準値を,文献をもとに専門家が一覧表にまとめた,臨床に即した1冊。1997年発行の初版に,臨床化学12項目を追加するとともに,一部データの差し替えを行った。小児を診る機会のある臨床医はもちろん,小児医療に携わる検査技師やナースにとっても必携の書。
編集 戸谷 誠之 / 宮坂 勝之 / 白幡 聡
発行 2004年03月判型:B6変頁:256
ISBN 978-4-260-11923-8
定価 2,860円 (本体2,600円+税)

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臨床化学
穿刺液検査
血液
免疫
内分泌
生理機能検査
和文索引
欧文索引

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小児医療にかかわるすべての医療者にすすめる,「小さくて大きな本」
書評者: 内山 聖 (新潟大教授・小児科学)
◆白衣のポケットに収まる

 小児科診療においても,的確な診断と治療のためにさまざまな検査を行なうことが多くなってきている。結果の評価に当たっては,特に小児では,年齢による変動,性差,採血および検体採取の条件,結果に影響する因子などを常に念頭におく必要があり,細かいことを確認するために分厚い成書を開くこともしばしばである。

 本書はB6変型判のコンパクトな本で,丈夫で光沢のあるライトブルーのソフトカバーと相まって,するりと白衣のポケットに入り込み,存在感をまったく感じさせない。しかし,いったんページをめくると,数倍大きな類書にも決してひけをとらない存在感に圧倒される。

◆コンパクトながら必要事項を網羅

 臨床化学,穿刺液検査,血液,免疫,内分泌,生理機能検査と日常診療に不可欠な領域をカバーし,160もの検査項目それぞれに分類,検体種,検査値,測定法,解説,文献が過不足なく記載されている。すべての項目が見開き1―4ページに区切りよくまとめられており,図表が実にうまく配置されている。また,解説は極めて簡潔で的を射ており,各領域の専門家が自らの経験と知識をもとに書き記したことが実感として伝わってくる実践的な内容にあふれている。よし調べるぞ,などと肩に力を入れなくとも,必要な折に必要なページを開くだけで,すっとすべてが理解される。

 これだけコンパクトな本であるのに,各種内分泌負荷試験や生理機能検査まで十分な記載があるのには驚きである。また,私自身の経験として,海外の雑誌に臨床論文を投稿する際に検査値にSIユニットを要求され,苦労した思い出がある。関連する検査については換算式をファイリングしていたほどであるが,なんとこの本にはすべての項目でSIユニットが紹介されており,海外の雑誌に投稿する際にも大いに役に立つこと請け合いである。

 小児の診療にかかわる研修医からベテラン医師まで,そして看護師や助産師にも大いに活用してもらいたいと思う。十分に理解しているつもりの検査でも,それぞれの立場で新たな発見があるものと思う。医学生や看護学生の勉強にも役立つことはいうまでもなく,白衣のポケット,外来,ベッドサイドあるいは研究室,図書室に常時置いておきたい,小さくて大きな本である。

小児医療に関する臨床検査のバイブル
書評者: 濱崎 直孝 (九州大教授・臨床検査医学)
◆新生児,小児医療への関心薄い日本

 「こどもの検査値ノート」が7年ぶりに改訂された。臨床検査の領域で働いていて感じさせられることは,医療のさまざまな領域で新生児,小児に関する部分への配慮が,一般的に足りない点である。例えば,近年,発達著しい臨床検査分析機器についても,小児専用機器の開発は皆無であるといっても過言ではない。また,検査項目についても,現行の医療保険制度の中で保険適用として収載されている臨床検査項目を概観してみると,新生児の遺伝性疾患に必須な検査項目が収載されていなかったりする。一方で,代表的な生活習慣病である糖尿病などについては,手厚くさまざまな角度から検討できるように検査項目が充実している。さらに,第2版の序文に編集者が書いておられるが,日本人小児の臨床検査に関する専門書がほとんどないのも,新生児,小児医療への関心の薄さを示している1つの反映であるのだろう。そのような中で小児医療に長年携わってこられた戸谷,宮坂,白幡の諸先生方が編纂されている「こどもの検査値ノート」は非常に貴重なものである。

◆ポケットサイズで実用的

 この本はポケットサイズで小児医療にかかわっている方々の白衣のポケットに収められるもので,常時携帯可能であること,また検査項目が臨床化学,内分泌,免疫,血液,凝固項目などについてはもちろんのこと,尿,髄液についても,さらには生理検査までも含んでいることから,この1冊があれば,日常の新生児,小児の診療には不自由はしないはずである。

 検査項目の記載に工夫が凝らしてあり,検査項目の分類,使用すべき適切な検体の種類,基準範囲,測定法,その単位とそれぞれ明確に区分して簡潔に記載してある。各項目はすべて2頁以内にまとめられている。それ故に,調べたい項目を探して頁を開けばその見開きの頁だけで知りたい検査項目についての情報をすべて知ることができるようになっている。この工夫は日常診療の上では大変便利がよいはずである。しかも,各項目について参考にした主な文献が厳選して記載してあるので,詳細な検索もできるようになっている。

 要するに,非常に実用的な小児医療に関する臨床検査のバイブル的な書である。小児医療に携わっている方々は新人からベテランまで,常に携帯されることをお勧めする。

◆基準範囲の設定が今後の課題

 このような貴重な著書であるが故に改良していただきたいことを最後に記しておく。初版で編集代表者の戸谷先生も述べておられるが,ここにあげてある基準範囲は厳密にいえば基準範囲ではなく,単なる目安にすぎないことである。

 新生児や小児を取り扱うことの性格上,病気でない子どもたちからデータを集めるためだけの目的で検査を行なうことは許されないことである。それ故に,基準に則った基準範囲を決定できていない。しかしながら,基準範囲の整備は診断・治療基準の設定には必ず必要であり基準範囲の設定は必須の要綱である。

 このジレンマを解決する1つの方法は外来患者データを利用して基準範囲を決定することである。数千から数万の個体データを蓄積し手順に則って統計処理をすることで,信頼できる基準範囲を決定できることは,既にほぼ証明されている。臨床化学会,臨床検査医学会や小児科学会などが協調して全国規模で外来患者データを集め,信頼できる基準範囲を設定することは不可能ではない。本書の編集者が音頭をとって新生児,小児の成長過程における基準範囲を整備され,さらに進化した「こどもの検査値ノート」(第3版)が近い将来出版されることを祈念している。

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