標準公衆衛生・社会医学

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医学部学生が日々吸収する医学の知識を変化著しい社会にいかに適応させ、医師の責任を果たしていくのか――広大な公衆衛生学を体系的にまとめ、注目の医療経済学、臨床疫学等も社会医学の見地から収載した新教科書。各節では、“Standpoint”で学習目標、“View”でまとめと今後の考察の視座を提供。コアカリキュラムの内容収載。コラム・図表満載。2色刷り。
シリーズ 標準医学
編集 岡崎 勲 / 豊嶋 英明 / 小林 廉毅
発行 2006年03月判型:B5頁:424
ISBN 978-4-260-00055-0
定価 6,270円 (本体5,700円+税)
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  • 目次
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序章 公衆衛生・社会医学とはどういう学問か

第1章 社会・環境と健康

 A 公害の歴史

 B 地球環境と健康

 C 生活環境と健康

 D 食と健康

 E 室内環境と健康

第2章 疫学と予防医学

 A 疫学

 B 保健統計

 C スクリーニング

 D 予防医学

第3章 生活習慣と疾病

 A 生活習慣病

 B 生活習慣の実態

 C 循環器疾患の疫学と予防

 D 肥満・糖尿病・血清脂質異常の疫学と予防

 E がんの疫学と予防

第4章 感染症対策

 A 新興再興感染症

 B 結核対策

 C 輸入感染症・熱帯地域の感染症

 D 感染症法

 E 予防接種

第5章 地域保健

 A 地域住民の健康管理

 B 地域保健法と保健所の役割

 C 健康危機管理

 D 精神保健福祉

 E 母子保健

 F 先天異常モニタリング

 G 学校保健

 H 高齢者保健

第6章 産業保健

 A 職域の健康管理

 B 産業保健体制と法規

 C 産業医の役割

 D 職場におけるメンタルヘルス

 E 女性労働者の健康管理

 F 夜勤労働者の健康管理

 G 化学物質による健康障害

 H じん肺対策

 I 金属による健康障害

 J 物理的要因による健康障害

 K 有害ガス・酸素欠乏

 L 作業態様による健康障害

第7章 保健・医療・福祉と介護の制度

 A わが国の医療制度の歴史

 B 医療従事者の養成と関連法規

 C 医療施設機能の体系化

 D 医療計画

 E 医療の質の評価と病院機能評価

 F わが国の社会保障と医療保障

 G 医療経済学

 H 介護保険と高齢者福祉

 I 地域の保健・医療・福祉の連携

 J 主要各国の医療制度

第8章 国際保健

 A 途上国における健康問題

 B 国際保健における健康指標

 C 国際機関とNGO

 D 国際保健活動の実際

第9章 臨床研究と医の倫理

 A 医の倫理

 B 医療の発展と臨床研究

 C 保健医療の情報

 D 医療における安全性確保と危機管理

資料編

 アルマ・アタ宣言

 患者の権利に関するWMAリスボン宣言

 ヒポクラテスの誓い

 ヘルシンキ宣言-ヒトを対象とする医学研究の倫理的原則

 21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)概要

和文索引

欧文索引

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医療従事者必須知識を明瞭・簡潔に解説
書評者: 能勢 隆之 (鳥取大学長)
 今度,医学書院より『標準公衆衛生・社会医学』(編集:岡崎勲,豊嶋英明,小林廉毅)が発行されました。

 今日ほど,保健・医療・福祉等の分野の内容が医学教育とくに,医学教育モデル・コア・カリキュラムのなかで多くとり入れられ,重要視されたことはありません。そのため,医学生や医療従事者にわかりやすく,かつ適切に教授するための教科書が必要となっています。

 公衆衛生の分野は,大変幅広く奥が深いので,テキストにすると項目が多岐にわたり,大変厚い本となってしまいます。

 しかし,本書はまず,公衆衛生分野の今日的な課題について,国家試験などの資格試験に最近よく出題される部分に集約されて編集されています。また,序章をもうけて,公衆衛生・社会医学のかかえる新しい課題を解説することによって,あらかじめ本テキストの総論的なコンセプトを理解できるようにしているので,教授する側にも都合がよい編集になっています。また,各章の解説内容もそれぞれの専門分野の先生が担当されていますが,テキストとしては専門的な詳しい内容よりも一般の学生が医療従事者として知っておくべき必要最小限の内容について明瞭簡潔に解説されています。また,公衆衛生・社会医学の分野も最近では健康増進に関することのみならず,生活習慣病の具体的予防方法や臨床的な内容を含んだ地域医療,介護保険等の内容も関連するようになりましたが,本書ではわかりやすく説明されています。

 あらゆる医療従事者等の教育に十分適しており,また,医学生諸君が参考書として活用するのに適していると思いますので,本書を推薦いたします。

まったく新しい教科書を紹介・推薦します
書評者: 山本 正治 (新潟大大学院教授・地域予防医学)
 『標準公衆衛生・社会医学』が送られてきました。開封すると,濃紺と黄色でまとめた艶やかな表紙と小口(こぐち)の角を丸く裁断した装丁,さらに表紙の見返し(遊び)の部分に見出しが付いており,「公衆衛生も進化したな!」と思わず叫んでしまいました。私は6年間医学部長としてほとんど専任で医学部の管理運営に当たってきましたので,正直なところ,公衆衛生のテキスト事情には疎くなっていました。アンリ・コルビ監督のフランス映画“かくも長き不在”に出てくる記憶喪失の男に自分をつい重ねてしまいました。不在の間に,すばらしい本が出版されたことをまずはお祝いします。

 手にとってまず想像したことは,公衆衛生に対する“岡崎哲学”が盛り込まれているに違いないということです。編者の岡崎 勲先生は私の恩師が先生と同窓であることから,以前から親しくさせていただいており,グローカル(glocal)な視点をお持ちになった公衆衛生の教育と研究の実践者です。ここでグローカルとはグローバルとローカルの視点を併せ持つとの意味です。また豊嶋 英明先生は以前新潟大学医学部の同僚でしたので判るのですが,彼の持ち味(物静かであるが内なる情熱を秘めている)が出ており,さらに小林 廉毅先生の医療制度や医療経済の最新情報が織り込まれ,見事なコンビネーションを発揮しているに違いないと想像しました。

 実際読んでみますと,3人のコンビネーションはすでに「序章」に表れています。「医学・医療は,政治・経済に影響し,また後者が前者に影響して今日に至る。医学史を学び,将来のあるべき医学・医療に思いを馳せて欲しい」,さらに「公衆衛生・社会医学は予防医学だけで十分か」「国際保健の必要性」まで言及しています。最後に「公衆衛生活動の歴史を知り,その基本的考え方を忘れずに将来へ脈々と受け継いで頂きたい」と結んでいます。

 将来の公衆衛生を担う医学生やコ・メディカルの学生だけでなく,すでに社会で公衆衛生を実践している医療保健福祉関係者にもお勧めします。また教育関係者には本書を新しい教科書として推薦します。

 しかし私は長年医学部長として大学の光と影の部分を数多く見てきたので,蛇足を加えることをお許しください。医学教育の影の部分として,学生の試験に医師法第一条についての穴埋め問題を出した時のエピソードを紹介します。ある学生から次の解答がありました。「医師は,(仁術)及び(算術)をつかさどることによって,(生活)の向上及び(家族)に寄与し,もって国民の(健康)を確保することを任務としている」と。作り話ではありません。医学部長として恥じ入ると同時に深く傷つきました。またわが国では現在,医学教育や医療制度の検討の中で,国際化が深く潜行していることを実感しております。国際化の現実は,『拒否できない日本』で語られているような「アメリカ的標準化」かもしれません。本書は,公衆衛生関係者だけでなく,わが国における現在及び将来の医学教育や医療制度のあり方に問題を感ずる方々にとっても,一読する価値があります。

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