内科医のための薬の禁忌100

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薬剤の適正使用が強く求められている今日,「知らないでは済まされない」内科薬物治療の禁忌を100項目精選し,その禁忌の理由,有害事象発生のメカニズム,類似のメカニズムで起こる禁忌,代わりの治療法や,もしもその禁忌を行ってしまったらどう回復させるのかまでをコンパクトにまとめた。研修医はもとより,第一線の実地医家にも一読をお薦めしたい「目から鱗」の1冊。
編集 富野 康日己
発行 2005年04月判型:B6頁:264
ISBN 978-4-260-10670-2
定価 3,520円 (本体3,200円+税)
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第1章 循環器内科

 1 肥大型心筋症患者への強心薬の投与

 2 β遮断薬の投与

 3 急性心筋梗塞患者へのニフェジピンの投与

 4 高血圧患者へのニフェジピンの舌下投与

 5 徐脈,心不全に使えないCa拮抗薬

 6 心房粗動患者へのアトロピンの投与

 7 WPW症候群に合併した心房細動の治療

 8 徐脈患者への抗不整脈薬の投与

 9 Slow kineticナトリウムチャネル遮断型抗不整脈薬の投与

 10 QT延長時のカリウムチャネル遮断型抗不整脈薬の投与

第2章 呼吸器・感染症内科

 11 骨髄抑制のある患者への抗癌剤の投与

 12 腎機能障害のある患者への抗癌剤の投与

 13 アスピリン喘息患者への解熱・鎮痛剤の投与

 14 胸水の貯留したリウマチ患者の治療

 15 慢性呼吸不全患者に対する向精神薬の投与

 16 妊婦に対する予防接種

 17 難聴を有する高齢者の抗生物質治療

 18 インフルエンザ脳炎・脳症患者に対する解熱・鎮痛薬の投与

 19 脳血栓症や深部静脈血栓症の治療

 20 糖尿病患者への抗真菌薬の投与

第3章 消化器内科(腸管)

 21 出血性消化性潰瘍患者への抗凝固薬の投与

 22 消化性潰瘍患者への非ステロイド性抗炎症薬の投与

 23 妊婦へのプロスタグランジン製剤の投与

 24 透析患者へのアルミニウム含有胃腸薬の投与

 25 潰瘍性大腸炎患者への止痢薬の投与

 26 偽膜性腸炎患者に対する塩酸ロペラミドの使用

 27 O157感染患者への抗コリン薬や止痢薬の投与

 28 急性腹症患者や硬結便を有する患者への刺激性下剤の投与

 29 胃腸管閉塞患者などへのニフレックの投与

 30 牛乳アレルギー患者への乳酸菌製剤の投与

第4章 消化器内科(肝・胆・膵)

 31 インターフェロン治療の適応

 32 インターフェロン治療中の併用薬

 33 慢性肝疾患患者へのグリチルリチン製剤の投与

 34 肝硬変患者へのフロセミド製剤の投与

 35 C型慢性肝炎患者へのリバビリンの投与

 36 膵管閉塞性疾患患者への胃粘膜防御因子製剤の投与

 37 胆道閉塞性疾患患者への利胆薬(催胆薬)の投与

 38 肝性脳症患者における鎮静剤の選択

 39 慢性膵炎患者における鎮痛剤の選択

 40 慢性膵炎患者への排胆薬の投与

第5章 腎臓・高血圧内科

 41 イオン交換樹脂の併用禁忌

 42 カリウムの投与法

 43 ナトリウムの投与法

 44 副腎皮質ステロイドの投与法

 45 透析患者における高リン血症の治療法

 46 妊娠時の降圧療法

 47 糖尿病性腎症患者への副腎皮質ステロイドの投与

 48 腎不全患者への抗癌剤の投与

 49 腎不全患者への利尿薬の投与

 50 透析患者への抗不整脈薬の投与

 51 透析患者への消化管運動賦活調整剤の投与

 52 透析患者への抗高脂血症薬の投与

第6章 神経内科

 53 抗てんかん薬と抗生物質の併用

 54 Parkinson病治療薬と抗うつ薬の併用

 55 ヘルペス脳炎患者への副腎皮質ステロイドの投与

 56 脳塞栓患者への抗血栓薬の投与

 57 重症筋無力症患者への抗てんかん薬の投与

 58 重症筋無力症患者への抗コリン薬の投与

 59 緑内障患者への抗うつ薬の投与

 60 緑内障患者へのParkinson病治療薬の投与

 61 緑内障患者への抗痴呆薬の投与

 62 急性間欠性ポルフィリア患者への抗てんかん薬の投与

第7章 血液内科

 63 イレウスや便秘症患者へのビンカアルカロイドの投与

 64 うつ病またはうつ状態の患者へのインターフェロンアルファの投与

 65 血小板減少性紫斑病(TTP)患者への血小板輸血

 66 出血傾向のある患者へのアスピリンの投与

 67 伝染性単核球症患者へのペニシリンの投与

 68 DIC患者へのヘパリンの投与

 69 心機能低下患者への抗癌剤の投与

 70 多発性骨髄腫患者への造影剤の使用

 71 悪性リンパ腫患者へのリツキシマブの投与

 72 急性骨髄性白血病患者へのG-CSFの投与

第8章 内分泌内科

 73 妊婦への放射性物質の投与

 74 副腎不全と甲状腺機能低下症がある患者への甲状腺ホルモンの投与

 75 副腎皮質不全の症状がある患者でのメチラポン負荷試験

 76 褐色細胞腫患者への鎮吐薬メトクロプラミドの投与

 77 高齢または虚血性心疾患のある甲状腺機能低下症患者への甲状腺ホルモンの投与

 78 心因性尿崩症患者への抗利尿ホルモンの投与

 79 橋本病患者へのリファンピシンの投与

 80 カルシウムと炭酸水素ナトリウム(重曹)の配合

 81 褐色細胞腫患者における降圧療法

第9章 代謝内科

 82 肝障害を合併する患者へのベンズブロマロンの投与

 83 腎不全患者へのアロプリノールの投与

 84 アロプリノールと他剤との併用

 85 痛風腎・尿路結石合併患者への尿酸排泄促進薬の投与

 86 糖尿病患者における低血糖対策

 87 糖尿病妊婦の治療

 88 肥満を伴う2型糖尿病(NIDDM)患者の治療

 89 糖尿病性ケトアシドーシス患者の治療

 90 インスリン抵抗性改善薬と肝障害

第10章 膠原病・アレルギー内科

 91 金チオリンゴ酸ナトリウムとペニシラミンの併用

 92 メトトレキサートとST合剤の併用

 93 副腎皮質ステロイドとリファンピシン,バルビツール酸誘導体の併用

 94 シクロホスファミドと他剤の併用

 95 緑内障患者への抗ヒスタミン薬の投与

 96 NSAIDと他剤の併用(1)

 97 NSAIDと他剤の併用(2)

 98 NSAIDと他剤の併用(3)

 99 シクロスポリンと他剤の併用(1)

 100 シクロスポリンと他剤の併用(2)

禁忌症・禁忌事項索引

薬剤名・薬効分類名索引

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日常診療で陥りやすい禁忌を厳選して解説
書評者: 堀田 知光 (東海大医学部長/教授・血液・腫瘍内科学)
 まれに起きる,原因がよくわからない薬の有害事象に対して,かつて「特異体質」という用語がよく用いられた。今日では薬剤の代謝や体内動態の解明が進み,薬物の相互作用のメカニズムや効果と副作用における個人差の理由が遺伝子多型によることなどが明らかにされた薬剤も少なくない。薬物療法に関するさまざまな理解が進む中で,副作用(期待しない効果・毒性)に対して,「飲み合わせ」や「特異体質」などという経験的で非科学的な説明に頼るべきではない。

 本書は,日常診療において内科領域で「禁忌」とされる薬物療法について重要なもの100件を選んで,禁忌の種類(絶対的か,相対的か),重要度(1,2,3),内科で関連する領域,基本薬剤データ(一般名,商品名,適応,副作用,類似薬),禁忌の理由と起こりうる病態,禁忌処方をしてしまいやすい状況,同様の作用機序で発症する禁忌,禁忌処方の予防策,代替治療などについて,簡潔にまとめられている。

 なかには,「えっ,こんなものが禁忌なの?」と意外に思うものが含まれている。よく読むと「なるほど,そうか」と納得できる。また,自分の専門以外の領域の薬物療法が「こんなに変わったのか」と驚かされるものもある。

 近年,医師国家試験において禁忌肢問題が出題され,2問を誤答するとそれだけで不合格となることから受験生には「地雷」と呼ばれて恐れられている。もっとも,国家試験レベルの禁忌は,間違うと死に至る,もしくは重篤な機能障害を残すもので,医師として基本的な能力が欠如したとんでもない医療行為が対象となる。日常の内科診療においてはこのようなとんでもない禁忌は誰でも知っており,わざわざ取り上げて解説するまでもない。むしろ,それとは知らずにやってしまいそうな禁忌や,かつては一般的に行なわれていたが,今日では正しくない薬物療法が問題であり,これが意外に多い。

 本書は,内科のそれぞれの領域の臨床の第一線で活躍するエキスパートによる日常診療で陥りやすい禁忌を厳選して解説する従来にはないタイプの本である。内容は,当たり前とされてきた処方の最近の知見に基づく見直し,分かってきた薬物相互作用,新規分子標的薬の使い方など,「禁忌」集のスタイルをとった薬物療法の最新知見集でもある。本書は禁忌のいわばアドバンスド・コースであり,内科医,臨床研修医のみでなく,看護師や薬剤師にも役立つように配慮されている。

 本書は医療現場において,薬物療法の安全性の確保と質の向上に役立つものと期待される。

医療ミス予防のための大きな意義を有する書
書評者: 島本 和明 (札幌医大教授第二内科)
 最も薬剤を使用する機会の多い内科領域において,薬剤に関する医療ミスが増加している。これらの中ではdo処方により必要な変更がなされていないことや,似た名前の薬剤を誤って書いてしまうミス,さらには薬局段階で誤投薬がされるなど,不注意によるミスが多い。当然,処方箋記載後も薬局,院外薬局とダブルチェック機能もあり,大きな問題にならないことが多いが,注意が必要であることは言うまでもない。一方で,病態によっては投与できない処方があり,また併用においても行ってはいけないものもある。これらは,処方箋を作成するうえでのミスとは異なり,むしろ薬剤に関する知識が不十分であることによっておきるもので,それだけ事は重大となる。

 今回,順天堂大学の富野康日己教授によって編集された『内科医のための薬の禁忌100』は,そのような意味でも薬剤による医療ミスを予防するうえで大きな意義を有する書籍である。

 多くの医師は,自分の専門領域の薬剤については,使用禁忌,慎重投与,副作用,併用禁忌についてはよく知っているものである。本書はまずは,それらの確認を手早くできるのがありがたい。時には専門領域でも知らない項目があったり,機序・病態の内容で再確認される項目もあり勉強になる。一方,専門分化が進む今日の医学では他領域の薬剤の開発,新薬への切り替えも多く,専門外の領域においては,必ずしも十分な薬剤知識を有することは容易ではない。本書の特徴と有用性は,循環器内科領域から膠原病・アレルギー領域まで内科全体をカバーして薬の禁忌を紹介している点にある。広い内科領域について,重要な項目を絞って紹介されているため読者にとっての意義がさらに大きくなっている。

 本書の特徴としては,病態と薬剤を明確にした見出しがコンパクトで分かりやすい点もあげられる。さらに,その病態や同様の使用機序でおき得る禁忌,そして対策や代替療法など現実的に必要な知識が分かりやすく説明されている。見事な構成でついつい目を奪われ,一気に読んでしまう内容となっている。

 また,書籍は,一度読んでも何かの折に,また確認や読み直しをするものである。本書のコンパクトサイズの判型は,座右の書としていつでもとり出して見ることのできるサイズであり,この点も本書の特徴である。富野教授の読者に対する気遣いが随所に表れている名著である。

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