学生のための精神看護学

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学生のために、難解な精神看護学を分かりやすく丁寧に記述。本文の途中にコラム「臨床では」を挿入し、学生にも現場をイメージしやすくなるように工夫がされている。また欄外の「NOTE」ではプラスαの知識を補える構成となっている。
編集 吉浜 文洋 / 末安 民生
発行 2010年06月判型:B5頁:336
ISBN 978-4-260-00189-2
定価 3,740円 (本体3,400円+税)

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はじめに

 1997(平成9)年,看護基礎教育のカリキュラムが大幅に改正され,「精神看護学」が独立した科目として位置づけられた。以来10数年が経過し,この間,多くの精神看護学テキストが発刊されてきた。本書も,その「精神看護学」のテキスト群の一隅を占めんと編集されたものである。
 本書の特徴は,各看護専門学校での精神看護のテキストとして必要十分な内容を網羅した使いよさ,看護師国家試験の精神看護学領域に対応した内容となっていることの2点にある。

 どのような対象であれ,看護は生物学的,心理・社会的な理解を基盤として展開される。諸看護対象のなかで対人関係,精神的成長発達と課題,社会への適応など心理・社会的側面を重点的に扱うのは精神看護をおいて他にはなく,「精神看護学」は,今後,ますます重要な科目となっていくものと思われる。
 閉塞した社会状況のなかで自殺者数が1999(平成11)年以来,3万人をこえていて,一向に減少する気配をみせていない。その背景には,うつ病,アルコール・薬物依存,統合失調症などの精神疾患がある。自殺対策基本法が制定され対策が講じ始められたが,まだ実効性のある施策は打ち出されていない。自殺は,わが国の精神保健問題のなかでも最も重要であり深刻な問題である。
 一方,精神科医療を受けている患者は増加を続けており,入院患者35万3千人,外来患者は267万5千人,計302万8千人(平成17年10月患者調査)と推計されている。このような状況を背景に精神科医療以外でも医療関係者が精神疾患をもつ患者に出会う頻度は高まっていくことが想定できる。
 うつ病,発達障害などの情報が氾濫している。精神疾患についての一定の客観性のある情報や知識が医療従事者全般,あるいは国民一般に必要とされているということも,精神看護を学ぶ意義の一つにあげていいだろう。
 少子高齢化社会が進展していく時代でもある。なんらかの疾患をかかえている高齢者は多い。そのなかには,認知症やせん妄,がん患者の抑うつ状態など精神看護的なアプローチが必要な人々も少なくない。
 このような時代状況を踏まえると精神看護が看護一般のなかにきちんと位置づけられるのでなければ,十全なケアは展開できないといえる。

 このテキストは,比較的若手の全国の精神看護担当教員の方に多くの項目を執筆頂いている。編集担当者に「専門ではない人が自分自身に説明でき,納得できるように書いたテキストが他人にもわかりやすいものだ」という言葉に励まされての執筆だったのではないかと思う。
 看護学生の学習の助けとなり,看護教員が授業で使いやすいテキストに仕上がったのではないかと考えている。多くの皆さんに活用いただけることを願ってやまない。
 最後に,編者の一人であり,最も精力的にこのテキストの企画・編集にあたっていただいていた中川幸子さんが,本書の発刊を待たず亡くなられた。本書の刊行を中川さんの霊前に報告するとともに,ご冥福を祈りたいと思う。

 2010年5月
 編者を代表して
 吉浜 文洋

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1章 精神の構造とはたらき
 A 精神看護学とは
 B パーソナリティの発達
2章 患者-看護師関係の理解
 A 患者-看護師関係
 B 看護師の自己理解
3章 精神保健の歴史と法制度
 A 精神医療の変遷
 B 精神科看護の変遷
 C 精神科看護における倫理
4章 ライフサイクルにおける危機と看護
 A 乳児期から学童期における危機と看護
 B 思春期・青年期における危機と看護
 C 壮年期における危機と看護
 D 老年期における危機と看護
 E 家族関係の危機と看護
5章 危機状況における看護
 A 危機の概念
 B 危機介入
 C ストレス状況における危機と看護
6章 精神症状・精神状態の把握と看護
 A おもな精神症状の理解
 B おもな精神状態の理解と看護
 C 統合失調症の理解と看護
 D 気分障害(うつ病・躁病)の理解と看護
 E 神経症性障害,身体表現性障害の理解と看護
 F ストレス関連障害(急性ストレス反応,外傷後ストレス障害,適応障害)の理解と看護
 G 物質関連障害(アルコール依存,薬物依存)の理解と看護
 H 認知症の理解と看護
 I 小児期の精神障害の理解と看護
 J てんかんの理解と看護
 K 性同一性障害の理解と看護
 L 境界性パーソナリティ障害の理解と看護
7章 看護で活用する技法
 A 観察
 B グループワーク
 C コミュニケーション技術
 D カウンセリング
 E 面接
 F 自己活用
 G コンサルテーション
8章 治療的アプローチ
 A 検査と看護
 B 身体へのはたらきかけ─薬物療法を中心に─
 C 内面へのはたらきかけ
 D 治療環境の整備
9章 地域社会と看護
 A 患者・家族とサポートシステム
 B 医療の場における活動と看護

INDEX

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