失行・失認の評価と治療 第3版
脳神経領域・リハビリテーション領域の従事者必携の書
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脳血管障害や頭部外傷に伴う視覚障害,知覚障害,認知過程の障害の評価法と治療技術について,これまでの研究や臨床経験をふまえてわかりやすく解説した。理論面についても,患者のリハビリテーション全般にかかわる視点から包括的に述べている本書は,この領域に関心のあるすべての人の必読の書である。
著 | Barbara Zoltan |
---|---|
監訳 | 河内 十郎 |
訳 | 河内 薫 |
発行 | 2001年06月判型:B5頁:216 |
ISBN | 978-4-260-24397-1 |
定価 | 4,180円 (本体3,800円+税) |
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- 目次
- 書評
目次
開く
第1章 評価と治療の理論的背景
第2章 評価の諸問題
第3章 視覚情報処理技能に関連した障害
第4章 失行症
第5章 身体図式障害
第6章 視覚弁別技能障害
第7章 失認症
第8章 見当識,注意,記憶
第9章 実行機能障害
第10章 失計算
第11章 患者の視覚,知覚,認知に影響を及ぼす諸要因
第12章 視覚,知覚,認知のリハビリテーションにおけるコンピュータの利用
第2章 評価の諸問題
第3章 視覚情報処理技能に関連した障害
第4章 失行症
第5章 身体図式障害
第6章 視覚弁別技能障害
第7章 失認症
第8章 見当識,注意,記憶
第9章 実行機能障害
第10章 失計算
第11章 患者の視覚,知覚,認知に影響を及ぼす諸要因
第12章 視覚,知覚,認知のリハビリテーションにおけるコンピュータの利用
書評
開く
認知障害一般の評価と治療のすぐれた成書
書評者: 里宇 明元 (埼玉県総合リハビリテーションセンター部長)
◆版を重ねるごとに厚みと重み
小生が,リハビリテーション医学の道を志したのは1979年のことであるが,翌1980年に出版された本書の第1版は,当時まとまった情報が得られにくかった失行・失認分野のハンディなマニュアルとして日常臨床で大いに重宝したものである。当初は,A5判,113頁のサイズで,ポケットに入れて持ち歩くのに便利な本であったが,この20年間に,第2版がA5判,202頁,今回翻訳された第3版が,B5判208頁と,版を重ねるごとに厚みと重みを感じさせる本格的な書物に育ってきたことに改めて感慨を覚えさせられる。
各版を並べてみると,この間の失行,失認領域における進歩が積極的に取り入れられてきたことがわかる。さらに,第2版からは,失行・失認の枠組みを越えて,注意・記憶,遂行機能障害(訳書では実行機能障害)など,今日「認知障害」として注目を集めている問題が扱われるようになり,時代の流れが先取りされている。
◆認知障害の定本の1つに成長
訳者が序文で述べておられるように,本書はこれまで共著であったが,第3版では,Barbara Zoltanの単著となり,彼女の臨床家としての経験と理論的考察を集大成した認知障害の定本の1つに成長してきた足跡がうかがえる。
内容を見てみよう。まず,第1章として新たに「評価と治療の理論的背景」が設けられ,ここでは,「治療的アプローチ」(感覚統合アプローチ,Affolterアプローチ,神経発達アプローチ)と「適応的アプローチ」の理論が詳細に解説されている。本章で展開された治療理論は,各種の神経心理学的障害を扱った各論における治療法に関する記述の底流をなすものである。
「第2章:評価の諸問題」では,評価の信頼性と妥当性や評価法の選択などが扱われている。多くの(必ずしも標準化されていない)評価法が氾濫している認知リハビリテーションの分野において,評価法についての吟味はきわめて重要な課題であるが,本書の記述はやや表面的な感をまぬがれず,もっと突っ込んだ議論が欲しかったところである。
第3章以降は,各論として,「視覚情報処理技能に関連した障害」,「失行症」,「身体図式障害」,「視覚弁別技能障害」,「失認症」,「見当識・注意・記憶」,「実行機能障害」,「失計算」が順次扱われている。それぞれの障害について,まず概念が解説され,評価法の紹介,そして治療法の解説と続く。この構成自体は,前2版とほぼ同様だが,記述に最新の研究成果が取り入れられており,特に治療法については,第1章で解説された理論的枠組みを踏まえて,詳しく具体的に述べられており,患者を前にどのようにアプローチしたらよいかわからずに頭を悩ませてきたわれわれ臨床家にとって役立つ内容となっている。
最終章には,この分野におけるコンピュータの利用に関する解説が新たに加えられ,今後の方向性を示唆している。
このように本書は,もはや書名にある「失行・失認の評価と治療」という範囲を越え,広く認知障害一般の評価と治療を扱った優れた成書と言えよう。読みやすい訳書を提供していただいた監訳者の河内十郎先生,ならびに訳者の河内薫先生の労力に心から感謝したい。
書評者: 里宇 明元 (埼玉県総合リハビリテーションセンター部長)
◆版を重ねるごとに厚みと重み
小生が,リハビリテーション医学の道を志したのは1979年のことであるが,翌1980年に出版された本書の第1版は,当時まとまった情報が得られにくかった失行・失認分野のハンディなマニュアルとして日常臨床で大いに重宝したものである。当初は,A5判,113頁のサイズで,ポケットに入れて持ち歩くのに便利な本であったが,この20年間に,第2版がA5判,202頁,今回翻訳された第3版が,B5判208頁と,版を重ねるごとに厚みと重みを感じさせる本格的な書物に育ってきたことに改めて感慨を覚えさせられる。
各版を並べてみると,この間の失行,失認領域における進歩が積極的に取り入れられてきたことがわかる。さらに,第2版からは,失行・失認の枠組みを越えて,注意・記憶,遂行機能障害(訳書では実行機能障害)など,今日「認知障害」として注目を集めている問題が扱われるようになり,時代の流れが先取りされている。
◆認知障害の定本の1つに成長
訳者が序文で述べておられるように,本書はこれまで共著であったが,第3版では,Barbara Zoltanの単著となり,彼女の臨床家としての経験と理論的考察を集大成した認知障害の定本の1つに成長してきた足跡がうかがえる。
内容を見てみよう。まず,第1章として新たに「評価と治療の理論的背景」が設けられ,ここでは,「治療的アプローチ」(感覚統合アプローチ,Affolterアプローチ,神経発達アプローチ)と「適応的アプローチ」の理論が詳細に解説されている。本章で展開された治療理論は,各種の神経心理学的障害を扱った各論における治療法に関する記述の底流をなすものである。
「第2章:評価の諸問題」では,評価の信頼性と妥当性や評価法の選択などが扱われている。多くの(必ずしも標準化されていない)評価法が氾濫している認知リハビリテーションの分野において,評価法についての吟味はきわめて重要な課題であるが,本書の記述はやや表面的な感をまぬがれず,もっと突っ込んだ議論が欲しかったところである。
第3章以降は,各論として,「視覚情報処理技能に関連した障害」,「失行症」,「身体図式障害」,「視覚弁別技能障害」,「失認症」,「見当識・注意・記憶」,「実行機能障害」,「失計算」が順次扱われている。それぞれの障害について,まず概念が解説され,評価法の紹介,そして治療法の解説と続く。この構成自体は,前2版とほぼ同様だが,記述に最新の研究成果が取り入れられており,特に治療法については,第1章で解説された理論的枠組みを踏まえて,詳しく具体的に述べられており,患者を前にどのようにアプローチしたらよいかわからずに頭を悩ませてきたわれわれ臨床家にとって役立つ内容となっている。
最終章には,この分野におけるコンピュータの利用に関する解説が新たに加えられ,今後の方向性を示唆している。
このように本書は,もはや書名にある「失行・失認の評価と治療」という範囲を越え,広く認知障害一般の評価と治療を扱った優れた成書と言えよう。読みやすい訳書を提供していただいた監訳者の河内十郎先生,ならびに訳者の河内薫先生の労力に心から感謝したい。