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症例に学ぶ呼吸器疾患診療の実際

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限られた時間で多くの症例にあたるには,ケーススタディは非常に有用な手段である。本書では各種の呼吸器疾患の症例を通して,鑑別診断からそのスタンダードな治療法に至るまで,ベテランの実際の診断の過程を臨床経過図を示して解説している。卒後臨床研修の副読本として,また実地医家の臨床能力のブラッシュアップに最適の1冊。
編集 四元 秀毅 / 折津 愈 / 金澤 實
発行 2005年04月判型:B5頁:352
ISBN 978-4-260-10671-9
定価 7,040円 (本体6,400円+税)
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症例1 発熱,咳嗽,喀痰と浸潤影を呈した,63歳女性

症例2 咳,発熱,徐々に進行する呼吸困難と浸潤影を呈した,22歳女性

症例3 意識障害,幻覚,下痢,横紋筋融解症,腎不全を伴い,肺炎様陰影を呈した,49歳男性

症例4 糖尿病の経過中に腰痛と胸部異常影を呈した,51歳男性

症例5 脳梗塞後長期臥床中に咳と発熱を伴う両肺の浸潤影を呈した,68歳男性

症例6 発熱,腰痛の出現後24時間以内に肺炎様陰影,呼吸不全を呈した,72歳男性

症例7 咳,微熱と空洞を伴う浸潤影を呈した,22歳女性

症例8 咳,痰,体重減少と浸潤影を呈した,48歳女性

症例9 発熱,咳嗽を主訴に抗真菌薬投与にもかかわらず増悪する肺病変を呈した,61歳男性

症例10 血痰と左上肺野に腫瘤影を呈した,59歳男性

症例11 学校健診で胸部異常影を指摘された,20歳女性

症例12 発熱,呼吸困難とびまん性のスリガラス陰影を呈した,30代男性

症例13 海外旅行後に感冒様症状と浸潤影を呈した,39歳男性

症例14 緩徐に進行する労作時呼吸困難を呈した,66歳男性

症例15 膿性痰と呼吸困難を訴え救急来院した,73歳男性

症例16 咳嗽・喀痰・労作時呼吸困難を呈した,45歳男性

症例17 夜間から明け方にかけての呼吸困難を繰り返し呈した,46歳男性

症例18 咳嗽,喘鳴を伴う呼吸困難を呈した,26歳女性

症例19 咳,発熱,浸潤影を呈し,徐々に呼吸困難を呈した,22歳女性

症例20 咳嗽,発熱,呼吸困難を伴いびまん性スリガラス陰影を呈した,47歳女性

症例21 呼吸困難,咳,痰を呈し,左肺完全無気肺のみられた,82歳女性

症例22 喘鳴を伴う呼吸困難とびまん性スリガラス陰影を呈した,35歳男性

症例23 慢性の咳と息切れの後,急性呼吸困難を呈した,57歳女性

症例24 左眼霧視で発症し,胸部異常影を認めた,24歳男性

症例25 発熱,呼吸困難をきたし,両側浸潤影を呈した,78歳男性

症例26 微熱,咳が持続し,両側浸潤影を呈した,55歳男性

症例27 急性の低酸素血症と両側性陰影を呈した,72歳男性

症例28 8年来の多関節炎の増悪とともに労作時呼吸困難が出現した,41歳男性

症例29 混合性換気障害と労作時呼吸困難が慢性的に進行した,60歳男性

症例30 乾性咳と胸痛で発症し,両側胸水を認めた,78歳男性

症例31 発熱,咳を主訴とし,多発性空洞影を認めた,80歳女性

症例32 検診で胸部異常影を指摘され,びまん性の嚢胞性陰影を認めた,40歳女性

症例33 血痰,急性腎不全を認め,両側びまん性スリガラス陰影を呈した,54歳女性

症例34 乾性咳と体重減少,背部痛を呈した,36歳男性

症例35 右背部痛を主訴にした,35歳男性

症例36 血痰,全身性倦怠感を呈し,右肺門部に塊状影を認めた,70歳男性

症例37 起床時に突然胸痛と呼吸困難を発症した,75歳男性

症例38 夜間睡眠中の咳嗽を主訴に受診した,49歳男性

症例39 微熱と左胸痛を訴えた,25歳男性

症例40 背部痛,右胸痛とニボーを伴う胸水を呈した,43歳男性

症例41 突発性の左胸痛と透過性亢進を認めた,16歳男性

症例42 胸部圧迫感と右下肺野の腫瘤状陰影を呈した,54歳女性

付録 呼吸器科で必要な薬の知識

別表・別図一覧

症例一覧

索引

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第一線臨床医の診断・治療から診療のエッセンスを学ぶ
書評者: 青島 正大 (杏林大助教授・第1内科)
 呼吸器疾患に限らず,診療では最初に医療面接,身体診察からいくつかの疾患(あるいは病態)を想定し,それらを鑑別するために一般的な検査,さらに特殊な検査と進め診断にいたる。呼吸器疾患はvital organに起こったものであるために,診断確定を待たずに治療を開始しなければならない場合も多く,いかに早く治療に結びつく有用な情報を引き出せるかで患者の予後が左右される場合も少なくない。有用な情報を効率よく抽出する能力は,多くの症例を経験するだけでは身に付かず,経験したうえで自ら考え,(文献などを)調べ,指導医に尋ねるといったプロセスを経て初めて自分のものとなる。しかしながら,研修医の時期や診療の第一線にいる忙しい医師には丹念に文献に当たる時間がないということもまた事実である。

 本書は,第一線で呼吸器疾患診療に当たられている執筆陣の実際の症例を基に診断,治療をコンパクトにまとめたものである。その構成は1例ごとに症例提示,診断,治療の3パートよりなる。すなわち初期の一般的な臨床情報を基に診断し治療するという診療の流れに沿い,読者は症例の体験を著者と共有する。症例は典型例であり,取り挙げられている疾患も呼吸器診療において遭遇する頻度の高いもの,頻度は高くはないが重要で落とせないものなど,ほぼ過不足はない。当初,本書を手にしたときは,どのような読者層を対象としたものかが明確には伝わってこなかったが,読んでみると私のような呼吸器診療を専門とする人間には現在の呼吸器全般の知識を手軽に再整理するのに役立ち,これから内科認定医試験や呼吸器学会の専門医試験受験を考えている人達には,受験のための知識の整理と実際の診療のヒントとして,呼吸器を専門としていない人には専門外疾患をみた場合の診療のヒントあるいは生涯学習の素材として,利用の仕方は異なっても本書が多くの読者層に受け入れられるものであることがわかる。

 ただし,実際の診療では,診断が直ちに決まるのではなく,得られた情報に対して医師がレスポンス(検査の追加あるいは治療行為)を行い,さらにそれに対する患者のレスポンスをみて次の対応を考えるという流れをたどる。これを紙上で再現するのは難しいが,過去に内科専門医認定試験で行われていたPMP(patient management problem)のような形式で,もう少し臨場感あふれる診療の流れを再現できたならば,読者とより一層深い症例の共有ができたかもしれない。また,症例提示中のバイタルサインの記載では呼吸数の省略が目立つが,呼吸数は非常に重要な情報であり,たとえば日本呼吸器学会の市中肺炎の旧ガイドラインでも,新ガイドラインに盛り込まれる重症度分類(CURB65)でも呼吸数が重視されている。しかし,研修医をはじめとする若い医師たちの診療録には呼吸数の記載漏れが目立つ。できれば本書でも呼吸数をすべてに記し,その重要性をアピールしていただきたかったというのが私からの注文である。

代表的な呼吸器疾患の専門医の思考過程を提示
書評者: 井上 洋西 (岩手医大教授第三内科)
 この能力は,本来は学生時代に身に付けるよう訓練されなければならない。しかしこれまでの日本の医学教育では,講義を通じての知識や技術の理解・修得が優先され,実践的な診断能力の向上は二の次とされることが少なくなかった。これは国公立大学においても同様で,学生時代に客観的・合理的な推量法を教わることはほとんどなかった。よってわが国では,卒業後に患者さんの協力を前提に上司の指導を受けながら試行錯誤を重ねて,あるいは独学で診断能力を身につけてきたものといえる。それゆえ,身についた思考法は,上司のやり方や勘をまねた客観性に欠けるものが少なくなかった。

 学生の診断能力の欠如は,臨床実習の学生に新患の患者さんの病歴を聴取させてみるとすぐにわかる。頻度の高い疾患でも,鑑別を含めてその疾患を土俵際に追いつめる(臨床診断を行う)能力はほとんど身に付いていないのが一般的といえる。これでは卒後研修必修化の新制度のもとに卒業し医師免許を取得しても,医師として患者さんの前に立たせることはできない。医療の安全上も由々しきことといえる。

 しかし欧米,また日本の近隣の東アジアの国々では,すでに何年も前から系統診断学の手法が取り入れられ,個々の知識や技術が有機的に結合しあい,無駄なく合理的に診断に至る実践的な訓練が学生時代から行われている。わが国でも,医師国家試験においては,最近ようやくこのようなproblem solvingの能力を問う問題を増やす傾向に変わりつつあり,国家的なコンセンサスを得て,近い将来医学教育根幹の大きな変革が行われるに違いない。

 本書の特色は,特徴ある代表的な呼吸器疾患42症例を通じて,個々の具体的な病歴,身体所見,検査成績を提示し,これの解決のためのポイントを得た設問を提示し,その合理的な思考過程をその領域において最高峰の実践能力を身につけた専門医が充分議論のうえ提示している。さらにこの問題形式は,最近の医師国家試験の臨床実地問題の長文問題と同様な形をとっている。この意味でも国家試験を前にした学生が問題の解決能力を養ううえでも必須の書といえる。

 さらに,研修医や実地医家の診断能力の向上をはかり,また指導医の指導能力に一層の磨きをかけるうえでも,本書が極めて重要な役割を果たすことが期待できる。

 この書を読まれた方は,呼吸器の診療が楽しくなるに違いない。よって一読をお勧めしたい。

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