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基本的臨床技能ヴィジュアルノート
OSCEなんてこわくない

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「週刊医学界新聞医学生・研修医版」の好評連載「OSCEなんてこわくない」が単行本で登場。医学部卒業までに身につけるべき基本的臨床技能を,200点を超える写真と図でわかりやすく解説。実技手順を明快に示し,コツや落とし穴についての記述も豊富。単行本化にあたり解説や写真を大幅に追加。臨床実習およびOSCE対策に万全の1冊。
編集 松岡 健
発行 2003年03月判型:B5頁:184
ISBN 978-4-260-12704-2
定価 3,300円 (本体3,000円+税)
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OSCEとはなにか
I 医療面接
II 基本的な身体診察手技
 1 バイタルサイン
 2 胸部(肺)の診察
 3 心臓の聴診
 4 腹部の診察
 5 神経の診察
 6 頭頸部の診察
 7 小児の診察
III 基本的な臨床手技
 1 心肺蘇生法(CPR)
 2 気管挿管
 3 静脈採血
 4 手洗い・手袋の装着
 5 縫合(器械縫合)・抜糸
 6 心電図
Index

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ぜひ一度手に取って「このわかりやすさ」を感じてほしい
書評者: 太田 優 (東海大学医学部6年)
◆OSCEを受ける前に欲しかった

 まず全体をざっと見て思ったのは「これ,OSCEを受ける前に欲しかったな……」である。

 昨年,一昨年と自校でOSCEを受けたが,特に初めて受けたときはOSCEがどのようなものなのかが,受けてみるまでイメージし難かった記憶がある。

 本書では,OSCEとは何なのかということの説明はもちろん,医療面接から始まる一連の一般的なOSCEを,各ステーションごとに章を設け,説明がなされている。章ごとの説明も,多くの写真が非常に効果的に用いられており,受験者の手元が大きく写されているところがとてもよい。BSLやクリクラでは,先生と学生の距離が近く,小人数のグループで先生から手技を教授してもらえるため問題はまったくないが,大教室での授業やVTRで実際の『手技』について学ぼうとすると非常に困難である。

 しかも,今後,全国で臨床研修前の進級判定としてOSCEが用いられることを考えると,OSCEの受験者は主にベッドサイドに一度も出たことのない学生である。彼らが学ぶのは大教室であり,VTRである。大教室の前で説明する先生の手元は見えるはずもなく,VTRも現行のOSCEに沿ったものはまだまだ少ない。

◆痒いところに手が届く学習者本位の構成

 本書はOSCEを初めて受ける者にも,非常に親切に書かれている。手袋の装着を例にとっても,ポイントごとに何枚もの写真で順を追って示されており,それらの写真も大きすぎず小さすぎず,何ページにも説明が漫然と広がるという事態も見事に回避されている。著者らの細部への心遣いを感じる。

 今までは,○番のステーションの課題は外科の教科書,○番は循環器の教科書,内科の身体診察の教科書などと,色々な教科書をひっくり返さないとOSCE対策がままならなかった。それを本書は1冊で解消してくれている。本文も,診察手順に沿って箇条書きにすべきところは箇条書きに,解説として説明すべきところは文章となって,非常に見やすいレイアウトである。先に述べた写真に関しても,矢印や,模式図を重ねることにより,動きも含めわかりやすい作りとなっている。まさに痒いところに手が届く感がした。

◆現在実施されているOSCEに沿った内容

 初めて学ぶ者の立場を考えて書かれた本が少ない医学の教科書の中で,入門者にも見やすくわかりやすい本である。現行のOSCE対策の本で,これほど現状に沿っているものは他にあまりないように思う。

 たくさんの受験者の手元の写真と,図表の用い方,2色刷りの見やすい文章など,OSCEを控えている方に一度手に取ってもらい,他のOSCEに関する本と比較していただきたい。今後,初期研修の採用でもOSCEを取り入れる研修病院もあるようである。上級生にとっても,今までBSLで十分に学べなかった手技を本書で確認するのもよいだろう。きちんとした基本を知ることは大きな力と思う。

 全体を通し,著者らの学ぶ側に立った,読み手に「わからせよう」という思いが伝わってくる,非常に温かく細やかな心遣いを感じる1冊だった。

医療の基本中の基本を解説した「OSCEの教科書」
書評者: 北村 聖 (東大教授・医学教育国際協力研究センター)
◆医学教育改革の代名詞「OSCE」

 ここ数年の医学教育改革の大きな流れは,とどまるところを知らない。その中で,医学教育改革の代名詞となった感があるのが,OSCE(Objective Structured Clinical Examination;客観的臨床能力試験)であり,またSP(Standardized Patient;標準模擬患者)である。OSCEは,2005年の共用試験での実施に向けて多くの大学ですでに取り入れられており,数校ずつが相互に試験官を送りあうことで評価の標準化が試みられている地域もある。

 OSCEは,文字通り外来の制度・教育法であり,日本における標準法はまだない。教育熱心な教官が見学にいったり,米国の教師を招聘したり独自のルートでその方法を学んできたというのが現状であり,まさしく群盲象を撫でるの図である。したがって,試験のやり方は学校ごとにさまざまであり,試験室(ステーション)の数や,試験内容も一定したものはない。さらに,このような外枠からして一定していないことから考え,内容のばらつきに関しては現状ではきわめて大きいと考えられる。いまだ研修医のシャッフルが十分でないため,大学卒業生間の臨床技能能力の差異に関しては,まだ気づかれていないというのが本当かもしれない。

◆標準的な基本技能をわかりやすく説明

 このような状況のもと,本書は出版が待たれていたものである。本書の内容は,「週刊医学界新聞」の学生・研修医版に連載されたもので,私はかねてよりぜひ単行本にまとめて出版していただきたいと思っていた。OSCEがほとんどの大学で施行されても,現状では受験する学生のための教科書がなく,学生諸君は各大学ごとに作っている冊子で勉強していた。日本の医学教育における臨床技能の教育は,ややもすれば知識の教育より低く見られ,その内容も標準化されておらず,診察の順番,手の置き方,聴診器の当てる順番などなどすべてにおいて学校ごと,教授者ごとに異なっていると思われる。確かにこの独自性の中に名人芸が存在するかもしれないが,学生に必要なものは当たり前の標準的な基本技能で,本書はこの点を非常に多くの写真を駆使してわかりやすく説明している。とくに異常呼吸状態(起座呼吸や口すぼめ呼吸など)では,実際の患者の写真を使い,また小児診察では,小児の写真が使われている。ただ,一部の診療行為は,実際には動きのあるものであり写真だけではどちら方向への動きかわからないものもあり,図の併用や,願わくは,本書と対応したDVDなどによる動画も出版していただけるとありがたい。

 また,本書は学生のための教科書であるから,望んではいけないことかもしれないが,著者の先生方の経験を生かしてステーションの設営,人員の配置,チェック項目の実際などなど教官のためにOSCE実施のノウハウも付録で教えていただきたかった。これはわがままなお願いであり,また受験者には手の内を見せないということかもしれない。

 医療のことを「手あて」という。医療の原点は,患者に触れることである。患者に触れる技能を試験するのがOSCEであるのだから,OSCEの教科書である本書は,「医療の基本の『き』の字」の教科書といえる。

全国の医学生にとって強力な助っ人が登場
書評者: 福島 統 (慈恵医大教授・医学教育研究室)
◆平成15年度から全80医学部で共用試験OSCEを実施

 松岡健先生が,2000年から「週刊医学界新聞」に連載された「OSCEなんてこわくない」が単行本化された。共用試験OSCE(客観的臨床能力試験)が,平成13年度は12校の医学部,平成14年度は59校で実施され,そして平成15年度(第3回トライアル)は,80校のうちほぼすべての医学部がこれを実施する勢いである。この時期に『基本的臨床技能ヴィジュアルノート―OSCEなんてこわくない』が出版されたことは,タイムリーであるというだけでなく,全国の医学生にとっては強力な助っ人を得たことにもなる。

◆わかりやすい写真と解説で効率的に学習できる

 臨床実習開始前の学生評価のための共用試験システムでのOSCEでは,医療面接,頭頸部診察,胸部診察,腹部診察,神経診察,脈拍・血圧の測定,救命処置,手洗い・ガウンテクニック,外科基本手技(手袋の装着,消毒,縫合結紮,ドレッシング,抜糸)が基本ステーションとして提案され,平成17年または17年度での本格運用では,これらの基本ステーションでの学生評価が求められている。『基本的臨床技能ヴィジュアルノート―OSCEなんてこわくない』には,これらの評価項目のすべてが含まれている。それぞれの面接,診察,臨床手技の各項目では,初めに診察のポイントがまとめられ,ふんだんな写真による手技の解説があり,ところどころに,「臨床では」でその手技の臨床的意義を,「先輩からのアドバイス」でどのようなトレーニングをしておくべきなのかを,「OSCEでは」で実際のOSCEでの課題の出され方,実技時間の使い方や評価方法などを,そして「OSCEでの落とし穴はここだ!!」では,OSCEを受ける学生が陥りやすい間違いや勘違いなどが書かれている。

 OSCEでは,評価者から口頭試験をされることもあるが,この時評価者から質問されそうな内容は,「調べておこう」に列記されている。写真の多さ,解説の読みやすさ,そして上記のポイントが学生の学習を効率的にするであろう。

◆医学生には自ら力をつけていく責任がある

 最近ではどの医学部でも,面接,診察,検査・治療手技の講義・実習が組まれている。しかしながら,それぞれの項目について1回だけの講義と実習は組まれているが,必ずしも十分な練習時間はカリキュラムに組まれてはいない。したがって,医学生は時間外に(特にOSCE直前に)同級生同士で練習しなければならない。この時,忙しい臨床医が指導医として一緒にいることは少ないであろう。この本は,医学生同士で手技の練習をする時に大きな力を発揮するものと思う。

 医学生は,臨床実習で患者さんの診療責任の一部を担うクリニカル・クラークシップ形式の実習を行なう。患者さんとご家族にその教育を担っていただくことになるが,この時,患者さんの安全性の確保と学生が患者さんから学ぶ能力(準備状況)とが要求される。医学生には,臨床実習開始前までに基本的臨床技能の修得が社会的にも強く求められている。医学部が医学生に十分な基本的臨床技能の学習の場を設定することはもちろんであるが,医学生も自らの力を自らつけていく責任がある。その責任を果たすために,この本は医学生にとって強力なツールの1つであろう。

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