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長寿科学事典


監修:祖父江 逸郎

  • 判型 A5
  • 頁 1200
  • 発行 2003年04月
  • 定価 10,780円 (本体9,800円+税10%)
  • ISBN978-4-260-13652-5
高齢者に関わる医療・看護・介護・福祉職・行政職,待望の事典
高齢者の医学・医療,看護・介護と福祉,社会科学領域の最先端の知識,研究成果を網羅した,わが国初の事典。高齢者の医療やケアに携わる医師・看護師・コメディカルスタッフはもとより,医療の側から福祉を知りたい人,福祉の側から医療・医学を知りたい人には格好の参考書。地域医療計画策定に関わる行政職の人達にも必携の手引。
書 評
  • 長寿社会に対する医療のあり方がみえる
    書評者:井村 裕夫(内閣府総合科学技術会議)

    ◆世界一の長寿国としての日本

     20世紀の100年の間に日本人の平均寿命はおよそ2倍に延伸し,世界一の長寿国となった。多くの人が長い人生を享受できることはめでたいことであるが,そのことが社会全体に,なかでも医療に大きな変化をもたらしつつあり,高齢者の健康の維持と病気への対策が極めて大きな課題と...
    長寿社会に対する医療のあり方がみえる
    書評者:井村 裕夫(内閣府総合科学技術会議)

    ◆世界一の長寿国としての日本

     20世紀の100年の間に日本人の平均寿命はおよそ2倍に延伸し,世界一の長寿国となった。多くの人が長い人生を享受できることはめでたいことであるが,そのことが社会全体に,なかでも医療に大きな変化をもたらしつつあり,高齢者の健康の維持と病気への対策が極めて大きな課題となってきている。当然疾病構造も著明に変化し,医学のあらゆる分野で高齢者に多い病気が増加し,看護・介護やリハビリテーションなどの果たすべき役割も大きくなってきた。

     そのような状況のなかで,この度「長寿科学事典」が出版されたことは,誠に時宜を得た企画であると言えよう。本書は辞典ではなく事典と名付けられているように,教科書の順序で配置されている。しかし教科書とは異なり,個々の事項の説明は簡潔でわかりやすく,編集者の努力の跡が伺われる。さらに索引を利用すれば辞典としても使用できるよう配慮されている。これだけの事典をまとめることは短時日ではできないことは明らかである。序文を読むと十数年にわたる長寿科学の協同研究の基盤があり,さらに数年にわたって長寿科学研究エンサイクロペディア情報開発事業が展開されたとある。本書はその成果を一般の人々にも理解しやすくまとめられている。

    ◆「予防」がキーワード

     長寿社会にどう向きあうかは,21世紀の人間社会の重要なチャレンジである。医学・医療の面では高齢者の疾患の予防が何よりも大切であろう。それによって本人も老後の生活を楽しむことができ,周囲や社会の負担も軽減される。今後ヒトゲノムの研究が進めば,遺伝的素因に立脚した疾患の予防も可能になるであろう。しかしそれまでは,一般的な健康維持の方策に頼らねばならない。

     このように予防は長寿社会の医療にとって最重要な課題であるが,残念ながら高齢者はさまざまな疾患に罹患し,重篤な状態になることも少なくない。こうした疾患への対策は大きな問題で,本書でも多くのページが割かれている。将来はこの分野においても再生医療,バイオニクスなどの先端医療が導入されるであろう。

     長寿社会にとって重要なことは,生命の長さではなく質である。本書でもこの点は配慮され,社会科学分野でかなりよく書き込まれている。少子化が進むなか,高齢者の職業や社会参加の問題は今後さらに重みを増すであろう。サクセスフル(ウェル)エージングこそ,これからの社会の目標である。その意味でも本書の果たす役割は大きいものと評価できる。今後定期的に改訂され,一層充実した内容のものになることを期待する。
  • 高齢者に関わるすべての人に
    書評者:尾前 照雄(国立循環器病センター名誉総長/ヘルスC&Cセンター長)

    ◆世界に類を見ない長寿科学研究の集大成

     現在わが国は,世界に類を見ないスピードで人口の高齢化が進み,医学・医療のみならず社会のあらゆる面で対応が迫られている。本書は1997年長寿科学研究エンサイクロペディア事業による調査研究報告書の内容を検討し,その後の知見を整理して刊行されたものである。5...
    高齢者に関わるすべての人に
    書評者:尾前 照雄(国立循環器病センター名誉総長/ヘルスC&Cセンター長)

    ◆世界に類を見ない長寿科学研究の集大成

     現在わが国は,世界に類を見ないスピードで人口の高齢化が進み,医学・医療のみならず社会のあらゆる面で対応が迫られている。本書は1997年長寿科学研究エンサイクロペディア事業による調査研究報告書の内容を検討し,その後の知見を整理して刊行されたものである。530名の執筆者が長寿科学に関するあらゆる分野を1,500項目について解説した前例のない力作である。

     長寿科学は生命科学とも直結し,人間のライフサイクルのすべての問題に関わっている。生命は遺伝と環境の所産であり長寿はそれが望ましい状態で具現した姿と考えられるが,一方では人間の生活を複雑化し克服すべき多くの問題が生じていることも事実である。臨床医学は老年医学においてその真価が問われ,いい社会であるか否かは高齢者のQOLが重要な判断材料になると考えるが,これらは21世紀における日本社会の最重要課題であろう。世界の最長寿国である日本は,これらの問題に関して先進国の役割を担っていかねばならない。この時期にあたってこのように包括的,総合的な書籍が出版されたことに深い敬意と共感を覚える。

     本書の構成は老化の基礎分野,老年病の総論(老年病へのアプローチ,診断・治療・疫学,高齢者の福祉・医療)と疾患別に書かれた各論,漢方・東洋医学・リハビリテーション,看護・介護分野,社会科学分野,支援機器開発分野からなっている。現時点で考えられるすべての分野がこの1冊のなかに集約されているのは見事というほかはない。

    ◆高齢者に関わるすべての人に有用

     生命は身体所臓器の機能の調和の上に成り立っているが,高齢者ではそれがより大きな意味を持っている。家族や社会との関わりもきわめて重要である。その意味でも高齢者の心身の健康保持と疾病の予防と治療,看護と介護,社会復帰とそれを支援するための社会的,経済的配慮も親切に記述されている。新しい技術や新知見の開発も当然必要であるがそれをapplyするbackgroundへの配慮が同時に要求されている。そのbackgroundが,長寿科学の原点であろうと考える。

     執筆者が多く,病名の表現など若干の不統一と誤植が気にならぬことはないが,記述の内容が豊富で,それを十分にカバーした見事なできばえである。高齢者に関わる医療・看護・福祉職・行政職などすべての方々に推薦したい所以である。
目 次
基礎分野
老年病分野 総論
老年病分野 各論
漢方・東洋医学分野
リハビリテーション分野
看護・介護分野
社会科学分野
支援機器開発分野