膵嚢胞性疾患の診断

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画像診断の進歩,普及に伴い膵嚢胞性疾患が発見される機会は増加しているが,依然として病変の確定診断,治療法の決定など,臨床的な取り扱いに難渋することが多い。本書では,これまで提唱されてきた分類・概念を整理し,膵嚢胞性疾患の本態と診断・治療の指針を示す。臨床上のポイントを理解するのに有用な症例を多数呈示。
編集 大橋 計彦 / 山雄 健次
発行 2003年06月判型:B5頁:184
ISBN 978-4-260-10284-1
定価 14,300円 (本体13,000円+税)

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  • 目次
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I 膵嚢胞性病変の概念の変遷
 1. 膵嚢胞性疾患の変遷と最新の考え方
 2. 提唱者からみた“いわゆる粘液産生膵腫瘍”の15年
II 膵嚢胞性疾患の分類
 1. 病理学的分類
 2. SPTの最新の考え方
III 診断法
 1. 診断の進め方
 2. 体外式超音波
 3. ERCP
 4. 超音波内視鏡
 5. 膵管内超音波
 6. 膵管内視鏡
 7. CT
 8. MRCP
 9. 細胞診
IV 治療方針
 1. 内科から
 2. 外科から
V 症例
特別寄稿 粘液産生膵癌の黎明期(高木國夫)
索引

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再検討されている膵嚢胞性疾患の現在の道標
書評者: 有山 襄 (順天堂大名誉教授)
◆IPMTをひとつの疾患概念として報告した大橋氏の遺作

 大橋計彦,山雄健次両先生の編集による本書は,名古屋を中心とした専門家の分担執筆による優れた著書である。大橋先生は2002年6月に逝去されたが,山雄先生の努力と熱意によって本書が完成された。大橋先生も喜んでおられることと思う。

 膵嚢胞性疾患は現在,再検討されており,診断と治療のコンセンサスを得るべく学会や研究会で議論されている。本書の出版は誠にタイムリーであり,内容はコンパクトでよくまとまっていて理解しやすい。
 最初に膵嚢胞の概念の変遷が記載されている。1960年のHoward and Jordanのものから最近改訂された膵癌取扱い規約の分類までもれなくあげられており,概念の変遷がよくわかる。現在の話題は粘液性嚢胞腫瘍(MCT)と膵管内乳頭腫瘍(IPMT)が同一疾患か否かであるが,多数の文献によって両者の病理学的,臨床的な差異が示されており,異なる疾患と考えられていることが示されている。1980年に大橋,高木がIPMTをひとつの疾患概念として初めて報告したが,現在までのIPMTの定義,取扱いの変遷が最初の報告者である大橋によって述べられているのは興味深い。

◆病理・診断・治療・症例と幅広く言及

 第II章では病理学的な分類が述べられている。明瞭な肉眼的,組織学的な像が示されており,嚢胞の違いがよくわかる。第III章は診断法で主に画像診断所見が提示されている。カラードプラを含む体外式超音波,EUS,IDUS,膵管内視鏡,CT,MRCPを含むMRI,細胞診がもれなく記載されている。欲を言えば造影超音波,最近進歩が著しいdynamic MRIの位置づけについて記載してほしかった。第IV章は治療法で,内科と外科の立場から治療方針が述べられている。漿液性嚢胞腺腫は内科では径の大きなものを除いて経過観察,外科では基本的に切除と意見の相違がみられる。MCTは内科,外科ともに原則的に切除としているが,MCTのmalignant potentialは従来考えられていたよりも低いのではないかとの最近の知見もある。今後,症例を重ねて治療法を再検討する必要があると思われる。IPMTは,過形成は経過観察,腺腫・癌は手術が原則であるが,画像診断所見と病理所見の対比から両者の鑑別が高頻度に行なえるようになった。内科,外科ともに手術適応になる症例の画像所見はほぼ一致しており,治療選択のコンセンサスが得られたように思われる。第V章は症例で,典型例の画像所見がもれなく記載されている。非典型例で診断に難渋した症例が示されれば,臨床の実際でさらに役立つと考えられた。
 最後の章は高木国夫先生の特別寄稿で,粘液産生膵癌の発見動機,ひとつの疾患概念として提唱された背景について詳しく述べられており,興味深く読ませていただいた。

 本書は膵嚢胞性疾患の現在の道標である。膵疾患を専門とする医師のみでなく,内科,外科,放射線科,病理の先生方にも広く読んでいただきたいと思う。

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