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ヴァージニア・ヘンダーソン選集

看護に優れるとは

編:エドワード J. ハロラン 
訳:小玉 香津子

  • 判型 B5
  • 頁 392
  • 発行 2007年07月
  • 定価 5,280円 (本体4,800円+税10%)
  • ISBN978-4-260-00289-9
ヴァージニア・ヘンダーソンにとって「看護とは」を浮き彫りにする
ヴァージニア・ヘンダーソンの名前は、ICNの看護の定義とともに広く知られている。本書はヘンダーソンが残した膨大な著作から、珠玉の「看護に優れる」や、大部のテキスト『看護の原理と実際』の主要部分、雑誌発表論文、講演記録などを『選集』にまとめた。多彩な文章が、ヘンダーソンにとっての「看護とは」を浮き彫りにする。
序 文
序詞

アンジェラ・バロン・マクブライド



 あまりにも変化が急速なために混乱はなはだしい世の中にあって,『ヴァージニア・ヘンダーソン選集』の出版はまことに時宜にかなっていると思う。病院の数の削減ならびに構造の再編成は多くのナースたちに,居場所をずらされたような感じを与...
序詞

アンジェラ・バロン・マクブライド



 あまりにも変化が急速なために混乱はなはだしい世の中にあって,『ヴァージニア・ヘンダーソン選集』の出版はまことに時宜にかなっていると思う。病院の数の削減ならびに構造の再編成は多くのナースたちに,居場所をずらされたような感じを与え,また,質の高いケアによりは医療保障の払い戻し処置のほうに関心を向けている気配のあるヘルスケア供給システムのなかでどのように仕事をしていけばよいか,自信をもてなくさせてしまった。ヴァージニア・ヘンダーソンの著作は常に優秀性ということに,それもとくに看護の本質にかかわるそれに向けられているので,本書には“看護に優れる”という適切な副題がつけられている。ミス・ヘンダーソンはよき師であったアニー・グッドリッチと同じように,患者ケアへの機械論的な取り組みに批判の目を向けていた。看護以外の職種の人でも十分できるような,保険による払い戻しが可能な一連の手順仕事へと看護を変えたがっている諸勢力のある現在,彼女の言葉は重みを増しつつある。

 ミス・ヘンダーソンのきわめつきの貢献は,国際看護師協会(ICN)が採択した看護の作業上の定義を生み出し,それが何十か国語にも翻訳されたことである。ミス・ヘンダーソンは看護を,日常の生活行動をするうえで患者が誰かにしてもらう必要のあることを供給することによってその患者の不足を満たす,そういう複合サービスであると考えた。この見解は,患者を中心に置くということと人間の機能を最大にすることとの強調をもって,当惑の時代にあった看護にある方向感覚を与える力をもっていた。時機にかなう本書に集められた著作には,健康増進,継続的なケア,患者の代弁,アートとサイエンスの統合,境界に橋を架けてつなぐ,などに対する彼女の熱意がみなぎっている。

 われわれはまたこれらの著作を読むと,ヴァージニア・ヘンダーソンが何と見事な役割モデルであったかに気づかせられる。彼女の思考は彼女が生きた時代の知的発達史が形づくったのであり,彼女は『ナーシング・スタディズ・インデックス』,『インターナショナル・ナーシング・インデックス』その他の仕事を通してその発達史の集成に非常な貢献をした。彼女の認識はデータに基づいており,自分の学問分野を形づくるためにさまざまな研究結果をどう使うかを彼女は知っていた。なかでも特筆すべきは,ナースについて研究することから,ナースが人々の生活のなかに起こすことのできる変化を研究することへと,研究を移行させるための知見の活用である。彼女の著作には,たとえば明快な看護の任務といったようなテーマがいつもあるのだが,それらテーマは彼女の並はずれた職業生活を通じての10年きざみの新たな洞察と結びついていた。

 大学のポストを離れ自由になったミス・ヘンダーソンは,その“名誉待遇”期間(1971年から1990年代まで)を世界の看護コンサルタントとして奉仕することに使った。ナースたちの“賢者”として,看護研究の方向,看護過程の流行,死や死にゆくことに向き合おうとしない社会,に異議を申し立てた。本書に収められた著作は今日なお有意義であるばかりでなく,優れた実践家,教育者および研究者に欠くことのできない特性,ものを見る目の新鮮さ,の手本でもある。

 本書の最後に置かれた健康記録についての考え方の一文は,ヘンダーソンという存在をくっきりと浮かび上がらせたある瞬間を私に思い出させた。1985年6月,ICNは彼女が文句なく世界一のナースであることを認め,第1回クリスティアヌ・レイマン賞を授与した。テルアビブ大会に集った人々の前に立った彼女は,与えられた5分間を使い,次のような感謝とお願いを述べたのであった。(a)贈られた名誉に対する丁重な御礼,(b)クリスティアヌ・レイマンの生涯およびその時代と自分ヘンダーソンとのきずなへの思い,(c)自分の健康記録についてよく理解しているように患者を促すための方策を講じよとの会衆への呼びかけ,である。与えられた短い時間をいかに生かすかを知っている専門家がここにいる,と会衆は思った。それは,われわれが何か変化を起こしたければ必ず身につけねばならない手腕なのである。

 1990年,シグマ・シータ・タウの国際看護図書館にヴァージニア・ヘンダーソンと冠することを彼女に承知してもらうべく動いた私は,その決定が公表されたあと,私の学生や周囲の若者たちの多くが彼女の著作を知らないことに驚かされた。私自身は,ハーマーとヘンダーソンの『看護の原理と実際』がバイブルであった時代に育ったのだったが,彼らはといえば,2,000頁を超えるような必修テキストは受け入れない時代に成年になったのだ。エドワード・ハロランが賢明にも,若い世代のナースたちにミス・ヘンダーソンの豊かで味わい深い文章を広めようと決断したことに,われわれは感謝してやまない。



 アンジェラ・バロン・マクブライド,PhD, RN, FAAN

 インディアナ州,インディアナ大学看護学部教授,学部長
目 次
序詞
ヴァージニア・ヘンダーソン学序説

第I部 患者ケア
 第1章 看護に優れる
 第2章 ハイテクノロジー時代にあって,看護とは
 第3章 ヘルスアセスメントの術と学
 第4章 観察の重要性
 第5章 診断,意思決定,および自律ということについて
 第6章 ケア計画
 第7章 科学技術の時代に看護の真髄を守り続ける
 第8章 死にゆく人のケア
第II部 看護教育
 第9章 一般看護のための教育
 第10章 看護基礎教育のカリキュラムについて
 第11章 専門分化看護のための教育:大学院課程
 第12章 ザ・ナーシング・プロセス-この呼び名はこれでよいだろうか?
 第13章 看護の本質
第III部 看護研究
 第14章 看護実践研究-いつになったら?
 第15章 看護研究展望
 第16章 われわれは“長い道程をやって来た”,しかしその方向は?
 第17章 方法選択の根拠:看護実践向上の一手段としての研究
 第18章 看護における研究の役割について
第IV部 社会的活動としての看護
 第19章 ヘルスケアの一部である看護
 第20章 ヘルスサービスの常在構成要素である看護
 第21章 保健医療プログラム促進におけるナースの役割
 第22章 ヘルスケア“産業”についての見解少々

備考と文献
訳者あとがき
索引