胆道外科
Standard & Advanced Techniques

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胆道外科を学び、消化器外科専門医を志す研修医・勤務医のための実践的テキスト。胆道系の解剖、生理の基礎的知識から病態に応じた外科治療まで、第一線のベテランが解説。きめ細かな編集とコラムで読者の「なぜ? どうして?」に明快に答える。日夜研鑽に励む意欲的な消化器外科医のための絶好の手引書。
編集 高田 忠敬 / 二村 雄次
発行 2005年05月判型:B5頁:448
ISBN 978-4-260-12264-1
定価 22,000円 (本体20,000円+税)

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1. 胆道の外科解剖と生理

 I. 肝臓の肉眼解剖

 II. 肝外胆道系の解剖

 III. 胆道系の血管分布

 IV. 胆道系の神経支配

 V. 胆道の形成異常

 VI. 手術時に起こりうる胆道損傷の例

 VII. 胆道の機能・生理

 VIII. 胆汁の変化

2. 胆道癌の外科病理

 I. 外科病理と臨床とのかかわり

 II. 胆道の解剖学

 III. 胆道癌の肉眼的形態分類

 IV. 胆道癌の組織学的分類

 V. 胆道癌の臨床病理学的特徴

3. 胆道癌取扱い規約からみた癌の進展度

4. 胆嚢結石、胆管結石

 I. 外科的診断

 II. 病態と手術適応

 III. 術式の選択

 IV. 術中検査

 V. 術後管理

5. 肝内結石症

 I. 診断法

 II. 病態と治療方針

 III. 手術術式の選択

 IV. 術中検査

 V. 術後管理

6. 遺残結石、再発結石

 I. 定義

 II. 病態

 III. 遺残・再発結石に対する治療法の選択

 IV. 遺残結石、再発結石に対する治療の考え方

7. 胆嚢良性隆起性病変(壁肥厚も含む)

 I. 病因と病態

 II. 鑑別診断のポイント

 III. 外科的診断

 IV. 代表的疾患の肉眼所見と超音波所見

 V. 手術適応と経過観察

8. 胆道形成異常(膵胆管合流異常も含む)

 I. 胆管拡張を伴う膵胆管合流異常

 II. 胆管拡張を伴わない膵胆管合流異常

 III. 膵胆管合流異常を伴わない胆道形成異常

9. 急性胆嚢炎

 I. 急性胆嚢炎の病因、病態と合併症

 II. 外科的診断

 III. 治療方針の選択

 IV. 患者管理と手術のタイミング

10. 急性胆管炎

 I. 病因と病態

 II. 診断法

 III. 治療

 IV. ショックやDICを含む臓器不全を伴った患者の管理

11. 特殊病態

 I. adenomyomatosis

 II. xanthogranulomatous cholecystitis

 III. Mirizzi症候群

 IV. Confluence stone

 V. 内胆汁瘻

 VI. Sump syndrome

 VII. 術中胆管損傷

 VIII. Tチューブトラブル

12. 乳頭部癌

 I. 存在診断と進展度診断

 II. 術前管理

 III. 手術術式の選択

 IV. 術中検査

13. 中下部胆管癌

 I. 存在診断と進展度診断

 II. 術前管理

 III. 手術術式の選択

 IV. 術中検査

14. 肝門部胆管癌

 I. 肝門部の外科的解剖

 II. 存在診断と進展度診断

 III. 術前管理

 IV. 手術術式の選択

 V. 術中検査

15. 胆嚢癌

 I. 胆嚢周囲の局所解剖

 II. 術前の存在診断と進展度診断

 III. 術前管理

 IV. 手術術式の選択

 V. 術中検査

 VI. 腹腔鏡下胆嚢摘出術(LC)後に発見された胆嚢癌の取り扱い

16. 術中・術後に胆嚢癌と判明した症例の取り扱い

17. 定型的手術術式と術後管理

 I. 定型的胆嚢摘出術

 II. 急性期胆嚢摘出術

 III. 総胆管切開術、切石術

 IV. 乳頭切開、乳頭形成術

 V. 胆管十二指腸吻合術

 VI. 胆管空腸吻合術

 VII. 肝左外側区域切除術(肝内結石症における)

 VIII. 肝門部胆管癌に対する尾状葉切除を伴う肝左葉切除術

 IX. 肝門部胆管癌に対する肝右葉切除術

 X. 肝門部胆管癌に対する尾状葉切除術

 XI. 胆嚢胆管切除術

 XII. 胆嚢癌に対する胆嚢床(肝床)切除術

 XIII. 肝中央二区域切除術(胆嚢癌)1

 XIV. 標準膵頭十二指腸切除術(幽門輪温存膵頭十二指腸切除術)

 XV. 幽門輪温存膵頭十二指腸切除術

18. 胆道癌の拡大手術

 I. HPD(肝切除兼膵頭十二指腸切除術)

 II. 血管合併切除

19. 胆道癌の姑息手術

 I. 観血的療法(胆道-消化管バイパス手術)

 II. 非観血的治療(内瘻術)

20. 胆道結石の非手術的療法

 I. 内視鏡的乳頭括約筋切開術(EST)

 II. 術後胆道鏡下切石術

 III. 経皮経肝胆道鏡的切石術

21. 腹腔鏡下胆道手術

 I. 腹腔鏡下手術に必要な器材と使用方法、注意点

 II. 腹腔鏡下胆嚢摘出術

 III. 腹腔鏡下胆管結石摘出術

22. 術後合併症とその対策

 I. 良性胆道疾患手術後

 II. 膵切除後

 III. 肝切除後

和文索引

欧文索引

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胆道外科の最先端を網羅 ベテランにも役立つ書
書評者: 宮崎 勝 (千葉大大学院教授・臓器制御外科学)
 肝胆膵外科領域において,日本の外科医は世界をリードしている。中でも胆道外科領域,特に肝門部胆管癌および胆嚢癌では,日本の外科成績は世界をリードするもので,国際的にも高い評価を得ている。その中心的な役割を果たして来られたのが,本書の編者である高田忠敬教授と二村雄次教授で,このお二人はいまもなお教授として,また手術場や病棟で臨床外科医として,若い外科医の先頭に立ち実践しておられる。

 その高田・二村両教授が企画・編集された本書『胆道外科―Standard & Advanced Techniques』は2005年の胆道外科の最先端の内容をup―dateしたものであり,この領域に携わる臨床外科医にとって,極めて多くの実践に役立つ内容が満載されている。

 胆道外科は,その解剖学的特性から,肝臓外科,膵臓外科の知識およびその手術手技を兼ね備えなければもはや成り立ちえない外科領域である。したがって胆道疾患の治療に携わる外科医師は,そうした肝胆膵領域すべてについての的確な知識とともに,適切な判断と,かつ洗練された外科手技を習得しなければならない。この領域の外科手術は生体にとって侵襲も大きく,それゆえに患者さんの術後合併症発生率も高く,かつ致死的な合併症も少なくない。特に胆道悪性腫瘍に対しては現在外科手術以外には根治させうる治療手段はなく,胆道外科医の役割は極めて大きなものがある。ということは,本領域を志す外科医の務めとして,常に最新の情報を元に患者さんに適切な外科手技を積極的かつ安全に行う姿勢を持っていなければならない。本書はその意味で若い消化器外科医はもちろん,胆道外科手術を多く手がけるベテランの外科医にとっても,極めて有用で読み応えのあるものとなっている。

 本書の特徴は,従来の成書に比べてより実地臨床で実践的に役立つ,知りたい情報が網羅されていることであろう。図版はわかりやすいシェーマが中心で,画像は著者らが経験した症例から教育的な配慮のもとに選択されている。そのため読者は症例カンファレンスに実際に参加しているような臨場感を味わいつつ読むことができる。これは本書の編集者のお二人が,実地臨床の第一線で多くの患者さんの治療に直接携わっている胆道外科医に執筆を依頼されたためであろう。

 強いて注文をつけるならば,この本の判型がB5判であるため,せっかくのわかりやすいシェーマや図が,やや小ぶりになってしまったことであろうか。判型がもう少し大きければ,絵の魅力がより引き立っていたのではと惜しまれる。しかしいずれにせよ,胆道外科の臨床現場で有用な外科手術の考え方およびその実際が,2005年現在の最もup―dateされた形で本書に凝縮されており,ぜひ多くの消化器外科医に一読をお薦めしたい。

パイオニアの手による胆道外科の集大成
書評者: 窪田 敬一 (獨協医大教授・第二外科)
 わが国における胆道外科は,肝門部胆管癌に代表されるように,最もaggressiveな手術が積極的に施行され,そのレベルは世界をリードする立場にある。胆道外科の特徴として,その領域が狭いにもかかわらず胆道疾患は多種多様であり,それを対象とする胆道外科に画一的な手技はなく,また緻密なtechniqueが要求され,治療が難しい,などの点が挙げられる。しかし,胆道外科手術手技を網羅した手術書はなく,ゴールドスタンダードとなる書が望まれてきた。

 今回,胆道外科を中心に豊富な経験をお持ちの高田忠敬,二村雄次両教授が編者となり,まさに消化器外科医,とりわけ肝胆膵外科医が待ち望んでいた胆道外科の現在の集大成となる書が出版された。言うまでもなく,両教授はわが国の胆道外科領域のパイオニア的存在であり,この領域を牽引し続け,新しい情報を世界に向け常に発信してきた功労者であり,本書は編者の力の入れ込みを感じる書となっている。

 本書を読み始めた時,編者の序文にまず圧倒された。各項目で強調したい点が逐次記載されており,本書に対する編者の思いがひしひしと伝わってくる。本文は「胆道の外科解剖と生理」からはじまり,消化器外科医が最低限知っておかなくてはならない基礎知識がまず記載されている。その後,各項目で,病因,診断,術前管理,術式選択,術中管理,などについて丁寧に記載されている。本書の珠玉は「定型的手術術式と術後管理」という項目で,各疾患に対する定型的胆道外科手術手技が詳述されている点である。特に肝門部胆管癌,胆嚢癌などの悪性疾患に対する現時点での定型的術式がエキスパートにより解りやすく記載されている点は特筆に値する。さらに,「胆道癌の拡大手術」「胆道癌の姑息手術」では,定型的手術が施行できない進行癌に対して,どう対処すればよいか,また,「術後合併症と対策」ではいざ合併症に遭遇した時どのように対処したらよいか,が記載されており,日常臨床の大きな助けとなることは間違いない。

 さらに本書の特徴として,One Point Lesson,Do’s & Don’ts,Coffee Break,トピックスなどコラムが随所に設けられている点がある。トピックスでは,例えば,胆管拡張を伴わない膵胆管合流異常症例で胆管を切除すべきかどうか,という点について,根拠を挙げ,問題点を把握しやすいように記載されている。また,各手術術式では,推奨するポイント,やってはいけないポイントがDo’s & Don’tsという項目でアピールされている。これらのコラムを読むだけでも勉強になる。

 このように胆道外科を網羅した本書は,消化器外科を学び始めた初学者にとどまらず,肝胆膵外科専門医レベルの先生方にも,また,それぞれの医療機関においても日常診療,手術の際に傍に置いて絶えず参考として使用するべき書として自信を持って推薦する次第である。
胆道外科のあらゆる項目を網羅 深い知見に満ちあふれた書
書評者: 木村 理 (山形大大学院教授・消化器・一般外科学)
 ざっとページをめくってみた。読みやすいのに驚いた。その理由を考えてみた。余白が多く,1ページに書いてある量が少なかった。図がきれいで豊富に存在した。ちりばめられたCoffee BreakやDo’s & Don’ts,あるいはOne Point Lessonなどが拾い読みをいっそうしやすくしており,さっと目に飛び込んできた。構えて読まなくても手術や診断・治療の要点がとらえやすく,気楽な気分で入っていけた。そんなことが,理由としてすぐに浮かんだ……。

 随所に設けられたコラムにはちょっとした,それでいて示唆にあふれ,胆道外科のキーポイントとなるような知識が簡潔に,明瞭に述べられている。また,「胆管拡張を伴わない膵胆管合流異常に対する術式は胆管分流手術か胆摘術のみか」などの現在のさまざまな論争点が十二分に述べられているトピックスのコラムも存在する。

 編集者はいわずと知れた世界の胆道外科の大御所,高田忠敬教授,二村雄次教授である。したがって,本書の内容が両編者のこれまで世界の胆道外科を究極に導いてきた実力が遺憾なく発揮されており,折り紙付きであることには何の不思議も感じない。その微に入り細を穿った緻密な解剖や手術の要点は,胆道を手術する外科医にとって日常の診療になくてはならないものである。

 本書はたとえば胆嚢摘出術を施行する際に,患者さんやその家族から「胆嚢をとってしまって大丈夫ですか?何か障害は起こらないのでしょうか?」などの質問を受けたとき,基本的な知識をもとに的確,かつ患者さんにもわかりやすい懇切丁寧な説明ができる,臨床の現場のニーズに沿うような内容の情報を提供することを目的に企画されたものだという。しかしその目的は軽々と達成され,さらに有り余る専門知識・情報が満載されている。この領域を専門にしていこうとする外科医にとっても,十分に満足できるだけの深い知見に満ちあふれている。

 執筆者は現在の日本の胆道外科の分野を引っ張っている選び抜かれた精鋭の先生方で,どの項目にも力が入っている。最新の情報が盛り込まれていて,読者を飽きさせない。胆道の外科解剖と生理,胆道形成異常,肝門部胆管癌,胆嚢癌,定期的手術術式と術後管理,尾状葉切除術,標準膵頭十二指腸切除術,胆道癌の拡大手術,腹腔鏡下胆道手術,術後合併症とその対策などなど,胆道外科に関するあらゆる項目が網羅されていて,しかもいずれも力作であり,本書があれば日常の臨床現場で生じるほとんどすべてのことに対処できるものである。

 さあ,「胆嚢のadenomyomatosisでなぜ腹痛が起こるか」知りたい方,「左肝管にも南回りがあること」をご存じなかった方,胆道外科手術のコツを1日で知り尽くしたい方,すぐにでも本書を手に入れ,読んでみましょう。

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