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医療者が知っておきたい自殺のリスクマネジメント


(第2版)

著:高橋 祥友

  • 判型 A5
  • 頁 192
  • 発行 2006年11月
  • 定価 2,970円 (本体2,700円+税10%)
  • ISBN978-4-260-00378-0
医療者は自殺予防の大きな役割を果たせる
1998年以来、わが国の年間自殺総数は3万人台で、交通事故死の4倍以上という深刻な状況が続いている。彼らの多くは自殺を図る前にさまざまな身体症状を伴って医療機関を訪れている。自殺に予兆はあるのか? 医療の介入によって予防しうるのか? 自殺未遂者にどう対応したらよいのか? 不幸にも患者が自殺してしまったら? 個々の医療者が自殺予防において大きな役割を果たしうることを知ってほしいという思いをこめて全面改訂。
書 評
  • 「避けることのできる死」を防ぐために必要な情報を収載
    書評者:山田 光彦(国立精神・神経センター精神保健研究所部長)

     平成18年6月15日にはわが国の自殺対策の要となる「自殺対策基本法」が成立し,同年10月28日に施行された。本法の目的は,自殺対策を総合的に推進して,自殺の防止を図り,あわせて自殺者の親族等に対する支援の充実を図り,もっと国民が健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会の実現に寄与すること,とさ...
    「避けることのできる死」を防ぐために必要な情報を収載
    書評者:山田 光彦(国立精神・神経センター精神保健研究所部長)

     平成18年6月15日にはわが国の自殺対策の要となる「自殺対策基本法」が成立し,同年10月28日に施行された。本法の目的は,自殺対策を総合的に推進して,自殺の防止を図り,あわせて自殺者の親族等に対する支援の充実を図り,もっと国民が健康で生きがいを持って暮らすことのできる社会の実現に寄与すること,とされている。本書『医療者が知っておきたい自殺のリスクマネジメント第2版』の著者は,精神科医であると同時に,わが国をリードする自殺予防対策専門家である。そして,本書は,自殺対策の総合的推進という大きな流れの中でタイムリーな改訂がなされたものである。

     わが国では1998年に年間自殺者が前年度比130%以上という,他国に類のない激増をみた。現在でも,実に交通事故による死者数の約4―5倍もの人が毎年自殺によって命を落としている。さらに,自殺未遂はその10倍以上ともいわれており,家族や友人など周囲の人々が受ける心理的影響を考慮すると,毎年,百数十万人の人々が自殺問題に苦しんでいることになる。近年の自殺死亡者数増加の背景には,健康問題(精神疾患・身体疾患),経済・生活問題,家庭問題のほか,人生観・価値観や地域・職場・学校教育のあり方の変化等,さまざまな社会的要因が複雑に関係しており,予防対策の実施に当たっては多角的な検討と包括的な対策が必要になる。一方,自殺した人の多くは自殺前の1か月間に医師のもとを受診していたと報告されているが,その多くは精神科医ではなく,一般診療科を受診していたことが明らかになっている。したがって,プライマリケアの場や自殺未遂者が搬送される救急医療において一般診療科の医師がうつ病患者等の自殺ハイリスク者を早期に発見し,専門医等に紹介し,適切なサポートを早期に提供することは,自殺予防の重要な第一歩となる。

     世の中には,自殺についてはさまざまな憶測や誤解,偏見を含んだ情報が流されている。そして,これらの誤解は,当事者や家族や友人など周囲の人々の苦しみを強める大きな原因となっている。私の身近でも,「本人が自殺しようとしているのだから止めることはできない」という意見を聞く機会も少なくない。確かに,すべての自殺を防止することは不可能な試みであるかもしれない。しかし,世の中に「あってもよい自殺」などない。自殺は,多くの場合に「避けることのできる死」なのである。そのため,自殺のリスクマネジメントを考えるうえで必要な「正確な情報提供」が目論まれている本書を,第一線で自殺対策に携わっている,国や地方自治体,関係機関・団体,NPO等民間支援団体,医療スタッフなどすべての関係者の方々にご一読いただきたい。
  • 自殺問題を多面的に論じた自殺予防ハンドブック
    書評者:西村 隆夫(都立府中病院・精神神経科部長)

     ブラジルを訪ねた記者がカーニバルの期間に何十人と死者がでたと聞き「クレージーな国だ」と言ったところ,彼の地の友人に「日本では1日に100人が自殺するというがよほど奇怪な国ではないか」と反論されたという。2004年の自殺率の国際比較では,日本は24.1と旧ソ連諸国と肩を並べて10位に位置し,堂々の自...
    自殺問題を多面的に論じた自殺予防ハンドブック
    書評者:西村 隆夫(都立府中病院・精神神経科部長)

     ブラジルを訪ねた記者がカーニバルの期間に何十人と死者がでたと聞き「クレージーな国だ」と言ったところ,彼の地の友人に「日本では1日に100人が自殺するというがよほど奇怪な国ではないか」と反論されたという。2004年の自殺率の国際比較では,日本は24.1と旧ソ連諸国と肩を並べて10位に位置し,堂々の自殺大国である。ちなみに米国は日本の半分以下の10.4である。日本を奇怪な国と考えても無理はない。98年に年間3万人を超えた自殺者数に減少する気配はない。日本は世界の優等生としてひた走り経済大国になったが,どこに向かって走ったのか。多くの問題が表面化し亡国の兆しと人は言う。「少子高齢化」「働かない若者」「いじめ」など。「自殺者の増加」もその兆候ではないか。私たちは否応なしにわが国の陰の部分に目を向けなくてはいけなくなった。

     本書は著者の豊かな研究活動と臨床をもとにして,医療者に向けて自殺についてのこれだけは知っておきたい知識をまとめたものである。第1章「自殺の実態」では増加する自殺の背景が説明され,第2章「自殺の危険因子」,第3章「身体疾患と自殺」,第4章「自殺予防における医療スタッフの役割と限界」では医療者としての最低限の心得がまとめられている。第5章「自殺未遂者への対応」,第6章「精神科における治療と予防」では対応の原則と治療が述べられ,呈示された症例を通してうつ病の要点が余すところなく記されている。第7章「自殺が起きたら」では,遺された人々への配慮も重要であると説き,第8章「トピックス」では自殺対策基本法など最新の話題が述べられている。

     本書は自殺の問題を多面的に論じている一方,コンパクトにまとめられており,手にも取りやすい。精神科医療従事者には知識を確認する意味でお薦めであり,一般の医療者,医師に限らず看護師,コメディカルスタッフの方々には自殺予防のハンドブックとして座右に置き,日々の臨床に活用していただきたい。

     著者が新聞に寄せた文章がある。本書の全編に行き渡っている著者の思いでもあるので要約して記す。――「自殺を止めることはできない」「人間には死ぬ権利がある」といった意見を耳にするが,それは間違いだと思う。自殺は自由意志に基づいた死というよりも,強制された死であると私は考えている。「死んでしまいたい」という気持ちと「もう一度生きていきたい」という相反する気持ちの間を揺れ動いているのが現実である。だからこそ,自殺予防の余地が残されている――自殺しようとする人の真実に長年向き合ってきた著者の言葉である。人にはどんな闇の中にあっても,その向こうにはどこかしら道がつけられているようである。医療者に限らず一般の方々に対しても,著者が発しているメッセージであり希望である。
目 次
第1章 自殺の実態
第2章 自殺の危険因子-だれに自殺の危険が迫るか
第3章 身体疾患と自殺
第4章 自殺予防における医療スタッフの役割と限界
第5章 自殺未遂者への対応
第6章 精神科における治療と予防
第7章 自殺が起きたら-遺族,他の患者,医療者への対応
第8章 トピックス
推薦図書
索引