第2版への序
執筆者/高橋 長裕
本書の初版発行から,あっという間に10年が過ぎてしまったが,その間本書が多くの臨床の現場で色々な形で活用されてきたことは,著者として大変ありがたいことである.本書の目的は初版の序でも述べた通り,小児循環器科・心臓血管外科の専門医を目指す医師のための参考書としてのみならず,看護師,生理機能検査技師などのコメディカルスタッフの先天性心疾患への理解を深めて頂くことであり,実際に多くの病棟や検査室で本書が利用されているのは大変喜ばしいことである.
この10年間で先天性心疾患の治療は大きく進歩し,それまでは極めて成績の悪かった難しい手術が多くの施設で当たり前に行われるようになり,しかもそうした複雑な心内修復術が新生児期早期に行われ,良好な成績をおさめている.著者のような昔を知る者にとっては,まさに隔世の感があり,極めて喜ばしいことではあるが,このことは同時にFontan型手術のような極めて特殊な形の血行動態を持ったままで成人となる患者が益々増えてくることを意味している.成人を扱う循環器科医も多くの先天性心疾患に対する理解が必要となり,過去には誰も経験しなかった新しい領域が広がってくることが予想される.そうした意味からも,本書が先天性心疾患を扱う多くの医療従事者に活用されることを切望するものである.
最近の治療の発展の一つにカテーテル治療の進歩があげられる.心房中隔欠損のデバイスによる閉鎖が国内でも開始され,良好な成績をあげつつある.今回の改訂にあたり,これらのカテーテル治療の記載を加えたこと,また初版では記載しなかった手術術式を幾つか追加した.各術式も術者により細かい変法があるので,それらすべてを詳細に記載するのは困難であるが,現在多くの施設で行われている手術法の基本形は大体ほぼ網羅できたのではないかと思う.さらに今回の改訂にあたり,どちらかといえばまれな疾患ではあるが,時に臨床現場で遭遇することがあり,視覚的イメージなくしては理解が困難と思われる疾患を幾つか追加した.
第2版のもう一つの大きな特徴は,全図譜のCD-ROMを付けた点である.本書は従来も,患者・家族への疾患・治療方針の説明のための材料を提供するという面で広く利用されているが,今回のCD-ROMは更に充実したインフォームドコンセントを得るのに役に立つのではないかと考えている.
今後も各種先天性心疾患治療の進歩にあわせて,本書の改訂を行って行きたいと考えているが,著者自身がややもすると臨床の第一線の現場から遠ざかる傾向にあり,最新の情報を入手するのが必ずしも容易でなくなることから,読者諸氏からの率直なフィードバックをお願いする次第である.本書の記載で必ずしも時代に即していない部分や,新しい発達分野で追加した方がよいと思われる部分などがあれば,是非ともご一報下さるようお願いいたします.
2007年1月