医療従事者必読のペースメーカー指南書
書評者:松浦 雄一郎(広島大名誉教授)
最近の医療の発展,中でも心臓ペースメーカーは長足の進歩を遂げながら,また著しい普及をしつつあり,さまざまな医療の現場で色々なペースメーカー患者に遭遇する可能性が高くなっている。
一方「百聞は一見に如かず」という諺があるが,近年の世相の流れか,医学書においても「図説○○○○」「図解××××」...
医療従事者必読のペースメーカー指南書
書評者:松浦 雄一郎(広島大名誉教授)
最近の医療の発展,中でも心臓ペースメーカーは長足の進歩を遂げながら,また著しい普及をしつつあり,さまざまな医療の現場で色々なペースメーカー患者に遭遇する可能性が高くなっている。
一方「百聞は一見に如かず」という諺があるが,近年の世相の流れか,医学書においても「図説○○○○」「図解××××」と題した書籍が,これまでの古典的論述型に代わってお目見えするようになってきた。
そうした流れの中で,庄田守男先生,小林義典先生,新田隆先生らを中心とするBarold SS, Stroobandt RX, Sinnaeve AF著『Cardiac Pacemakers Step by Step・AN ILLUSTRATED GUIDE』の訳本『イラストで学ぶ心臓ペースメーカーStep by Step』が発刊されることは時宜を得たものであり意義深いといえよう。
本著はペースメーカーに関わるそれぞれの話題に対し解説する形式をとっており,まずペースメーカーとは何かから始まり,電気現象の基本原理を含め,ペースメーカーの機能診断に不可欠の心電図の基礎的解釈,ペースメーカーの構成,種類,機能,それに対応する生体側のさまざまな生理反応などについて前半で解説している。
次いで,各種のペースメーカーと生体側の間の不適切な機能関係とそれに対する対応策,リードの異常,ペースメーカーのX線写真上の注意についての解説が続いている。
後半部分では,高度機能ペースメーカーの問題点,その他の生理現象を含む問題点や合併症,ペースメーカー患者の日常生活の中での注意点,ペースメーカー以外の医療を受ける場合の注意点,さらにはペースメーカー患者のフォローアップについてという問題が続き,ペースメーカー管理の十戒が示されている。
最後に締めくくりともいうべきか,それまでの解説方式と異なる「テキスト:心臓ペースメーカー概観」と題した詳しい解説文が置かれている。
訳者の言葉を借りるならば,実物よりは本物らしい図や動物の挿し絵がふんだんに使用され,文字からだけでは難解であろうところ,内容が取っつきやすく,肩が凝ることなく理解しやすくなっている。
ペースメーカー指南書としてその筋の専門家にはもとより,初心者,看護師,コメディカルを含めペースメーカーに直接的にあるいは間接的に関わる可能性のある広い範囲の多くの方々に役立つものといえよう。
そういった意味からペースメーカー患者に関わりが持たれる各人,各施設で1冊ずつ備えられることが勧められる。