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トップナイフ

外傷手術の技・腕・巧み

著者:Asher Hirshberg /Kenneth L. Mattox 
訳者:行岡 哲男

  • 判型 A5
  • 頁 264
  • 発行 2006年11月
  • 定価 4,180円 (本体3,800円+税10%)
  • ISBN978-4-260-00309-4
手術現場で最善を尽くすための奥義を、軽快な切り口で解説
米国海軍の精鋭パイロット養成校は「トップガン」と呼ばれている。本書のタイトルはこれになぞらい「トップナイフ」とした。本書は外傷外科医養成における「トップガン」であるが、ここでの教習は教科書に書かれている知識の焼き直しではない。手術現場で最善を尽くすための奥義が、軽快な切り口で解説されている。外傷外科手術を経験するすべての医師に読んでいただきたい1冊である。
書 評
  • 一刻を争う外傷手術の極意を小気味良いリズムで解説
    書評者:重松 宏(東医大主任教授・外科学第二)

     腹腔内出血で腹部は膨満し,意識レベルは既に患者の血圧とともに低下し,呼吸は促迫して脈は微弱,「瘤破裂だ!」,ストレッチャーを駆けるように押して手術場に運ぶ,正中切開とともに血液は噴出して吸引が間に合わない,小網を指で分けて腹腔動脈上で大動脈を把持して遮断鉗子をかける,途端に血圧低下が止まってパンピ...
    一刻を争う外傷手術の極意を小気味良いリズムで解説
    書評者:重松 宏(東医大主任教授・外科学第二)

     腹腔内出血で腹部は膨満し,意識レベルは既に患者の血圧とともに低下し,呼吸は促迫して脈は微弱,「瘤破裂だ!」,ストレッチャーを駆けるように押して手術場に運ぶ,正中切開とともに血液は噴出して吸引が間に合わない,小網を指で分けて腹腔動脈上で大動脈を把持して遮断鉗子をかける,途端に血圧低下が止まってパンピングする輸血とともに血圧は上昇に転ずる,執刀から遮断までこの間5分,というように診断治療が容易であればよい,が,外傷では,そうはいかない,噴出する出血,裂けた肝臓を助手に把持させても止まらない,「出血部位は何処だ! 肝破裂だけではないぞ!」,後腹膜は血腫でせり上がっている,警告音が頭の芯で鳴り響く,「まずい,どうしよう,間に合うか」,別の自分が語りかけてくる,ここから先は本書を読むのがよい。

     外科手術の進歩は,外傷手術とともに歩んできた。米国で血管外科が発達し,外科の基本手技として重要視されている背景には,第一次,第二次世界大戦,朝鮮戦争,ベトナム戦争,そして最近の20年近くの間に展開されている中近東での戦争と,絶え間なく繰り返されている戦争に必要とされている戦傷外科への対応がある。救命率の向上,肢切断率の低下には,外科技術的な要因のみではなく,処置に至る時間を如何に短縮するかが大きな問題であり,改善にはヘリコプターの出現を必要とした。外傷手術は時間との闘いでもあり,現場に直面して教科書を開いている余裕は無い。外傷手術で必要とされるのは何か,技,腕,巧み,を,垣間見て,何時でも取り出せるように記憶の底に納めておかなければならないもの,それが本書である。頭部を除いて,頸部から下肢まですべての外傷に対して,主には出血のコントロールを軸に損傷臓器への対応を含めて,到達法,行うべき処置,ピットホール,撤退の判断などが,小気味良いリズムにこなれた名翻訳で,読者を引き込むように読ませる。重大損傷とダメージコントロールがキーワードであり,外傷手術において目標とするところは何か,何処か,その戦略を的確に立てることの重要性を繰り返し協調している。まさに戦場での戦いそのものである。

     評者は生活の糧を得るためもあって(本当は多分好きであったのだが),30年間にわたって週に一度,湘南の150床程の外科系中規模救急病院で当直バイトをしていた。1次から3次まですべての救急を扱い,多分数万人の患者を診てきたが,救急外傷が最も応用を必要とする領域であった。外科は外傷に始まり,外傷に終わる。30年前に本書を手にしていたら,助かる患者もいたのではないかと悔やまれる。臨床研修を終えて現場に立ち向かう新兵のみではなく,外科系を専門とする医師たちにとっても必読の書である。最後に,30年前に初めて手にして衝撃を受けたNorman M. Richの“Vascular Trauma”(Saunders, 1978)も併せて読まれることをお奨めする。
目 次
はじめに 本書のねらい
第1節 外傷手術に必要な物と事
 第1章 外傷外科の3次元
 第2章 止血せよ!
 第3章 血行再建への路
第2節 腹部
 第4章 緊急開腹術
 第5章 腸管の修復:管腔臓器損傷
 第6章 肝損傷:忍者マスター
 第7章 実質臓器引き出し術
 第8章 腹部外科的芯部損傷
 第9章 腹部血管外傷の「赤」と「青」:出血と血腫
第3節 胸部
 第10章 胸腹部移行帯損傷:そこにある2つの脅威
 第11章 胸部外傷:外傷開胸術
 第12章 胸部外傷:修復の技,総覧
 第13章 胸部大血管損傷で一般外科医が行うべきこと
第4節 頸部および四肢
 第14章 頸部損傷:虎穴を探る
 第15章 末梢血管損傷こそシンプルに
エピローグ 外傷外科の『花』
翻訳者補遺
索引