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≪系統看護学講座 別巻≫

緩和ケア


(第3版)

編集:恒藤 暁/田村 恵子
執筆:新幡 智子/市原 香織/宇都宮 明美/梅田 恵/小江 奈美子/大久保 暢子/太田 桂子/小泉 亜紀子/笹原 朋代/佐藤 寧子/白井 由紀/高梨 早苗/高野 純子/竹川 幸恵/竹之内 沙弥香/竹之内 直子/田村 恵子/恒藤 暁/朴 順禮/平原 優美/二見 典子/松岡 真里/宮下 光令

  • 判型 B5
  • 頁 320
  • 発行 2020年02月
  • 定価 2,420円 (本体2,200円+税10%)
  • ISBN978-4-260-03865-2
本書の特徴
近年の緩和ケアでは、がん以外の患者への緩和ケアが注目されるようになったこと、診断早期からの緩和ケアが目ざされるようになったこと、小児やAYA世代の患者への緩和ケアが注目されるようになったことなど、大きな変化が見られるようになりました。
本書の今回の改訂では、こうした対象となる疾患の広がり、病期の広がり、患者の広がりといったさまざまな緩和ケアの広がりに対応すべく、「病気の種類、病期、年齢、療養場所を問わず、多職種によって行われる横断的な緩和ケア」を学べる1冊とすることを大きな方針として改訂を行いました。
緩和ケアで重要な基盤となるチームアプローチやコミュニケーション、倫理的課題から、全人的ケアの実践や対象のライフサイクル・疾患ごとのアセスメントとケアの実践、臨死期のケアや家族のケアといった実践的な内容、そして医療スタッフのケアや教育・研究まで、緩和ケアを学ぶ際に必要とされるエッセンスを凝縮した1冊です。
*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
序 文
はしがき

 わが国の緩和ケアは,これまでがん医療を中心に発展してきた。しかし,緩和ケアはがん患者だけではなく,がん以外の疾患の患者にも不可欠であることが広く認識されるようになり,2018(平成30)年には末期心不全患者の緩和ケアが診療報酬上認められるようになった。また,世界保健機...
はしがき

 わが国の緩和ケアは,これまでがん医療を中心に発展してきた。しかし,緩和ケアはがん患者だけではなく,がん以外の疾患の患者にも不可欠であることが広く認識されるようになり,2018(平成30)年には末期心不全患者の緩和ケアが診療報酬上認められるようになった。また,世界保健機関は,緩和ケアの定義を「生命をおびやかす病に関連する問題に直面している成人と小児の患者およびその家族の苦痛を予防しやわらげることである。これらの問題には,患者の身体的,精神的,社会的,スピリチュアルな苦痛,そして家族の精神的,社会的,スピリチュアルな苦痛が含まれる」と2018年に改定した。緩和ケアの中核は,「苦痛へのアプローチ」と「Quality of Lifeの向上」と言えるであろう。緩和ケアは,身体的・精神的症状の軽減を主とする症状マネジメントに焦点が当てられることが多いが,その本質は,病むことや死と向き合うことを余儀なくされることに苦悩し,これからの人生をどう生きるかについて思い悩む人々に寄り添い,歩んでいくことにある。すなわち,医療者にも,人間の根源的な苦悩に目を向けていく姿勢が求められている。
 こうした緩和ケアの広がりと深まりを鑑み,今回の改訂では,「病気の種類,病期,年齢,療養場所を問わない,多職種による横断的な緩和ケア」を提供することを心に留めながら,全体の構成を刷新している。第1章では「緩和ケアの現状と展望」,そして第2章,第3章,第4章では質の高い緩和ケアの実践に欠かせないチームアプローチ,コミュニケーション,倫理的な課題についての基本的な知識および臨床でよく遭遇する課題とその対応を学ぶ。そして,第5章では全人的ケアの実践を行うために必要とされる身体的ケア,精神的ケア,社会的ケア,そしてスピリチュアルケアについて,これまでがん患者に対する緩和ケアで積み上げられてきた基本的な考え方と臨床での実践を学び,第6章では「緩和ケアの広がり」として,ライフサイクルにおける広がり,さまざまな疾患への広がり,療養の場の広がりを学ぶ。現場での実践に基づく「臨床の知」とも言うべき内容をふんだんに織り込み,提示している。
 第7章,第8章では,緩和ケアのなかでもとくに配慮を必要とする臨死期のケアのエッセンスや,多様化する社会の縮図ともいえるそれぞれの家族に対するケアについて,理論やエビデンスをふまえて解説した。また第9章では,近年,緩和ケアで重視されている内容の1つである医療者自身のケアについて学ぶ。これまで,医療者は自身の悲しみを表出してはいけないとの無言のルールのもとに,黙々とケアに従事することが美徳とされてきた。しかし,よりよい緩和ケアの実践には医療者のストレスやグリーフへのケアが不可欠であり,そのためにはセルフケアが必要であることについて,マインドフルネスを中心に解説した。そして第10章,第11章では,提供する緩和ケアの質を向上するための医療者に対する教育システムや,エビデンスに基づく緩和ケアの開発を目ざす研究について,丁寧にわかりやすく説明している。
 このように本書は,緩和ケアに関する基本的な知識と考え方と「臨床の知」を織り混ぜながら,さらなる発展をとげようとする緩和ケアに必要な内容を網羅している。各章において,その領域の第一人者として認識されている著者により執筆を行った。看護を学ぶ学生,および臨床に携わる看護師をはじめとする医療者の緩和ケアへの関心が高まり,それぞれが理解を深めてその実践力を高めることができれば,それはまさしく患者と家族のQuality of Lifeの向上に繋がることであろう。ぜひ本書を手に取っていただき,一方通行ではない,双方向の書籍として活用していただければ幸いである。

 2020年1月
 編者ら
目 次
第1章緩和ケアの現状と展望 (恒藤 暁)
 A 緩和ケアの歴史と発展
  1 世界の緩和ケア
  2 わが国の緩和ケア
 B 緩和ケアの理念
  1 緩和ケアの定義
  2 全人的苦痛
  3 Quality of Life(QOL)
  4 全人的ケア
 C 緩和ケアの展望
  1 緩和ケアの教育・研修
  2 緩和ケア提供体制の整備・拡充
  3 心にかける

第2章 緩和ケアにおけるチームアプローチ (梅田 恵)
 A 緩和ケアにおけるチームアプローチの意義
  1 生命をおびやかす疾患の診断を受けたとき
  2 侵襲を伴う治療の選択をするとき
  3 人生の最終段階が近づいているとき
 B チームアプローチにおいて求められる専門性
  1 専門性とは
  2 緩和ケアにおいて看護師に求められる専門性
  3 さまざまなチームメンバー
 C チームアプローチにおけるメンバーシップ
  1 チームのネットワーク
  2 メンバーシップとリーダーシップ
  3 メンバーとのコミュニケーション

第3章 緩和ケアにおけるコミュニケーション (白井由紀)
 A コミュニケーションの基本的知識
  1 医療におけるコミュニケーション
  2 コミュニケーションの種類
  3 コミュニケーションの基本スキル
 B 看護師のコミュニケーションの意義
 C コミュニケーションに関する患者と医療者の認識
  1 コミュニケーションに関する医療者の意識
  2 コミュニケーションに関する患者の意向
 D コミュニケーションを支えるスキルとプログラム
  1 コミュニケーション・スキル・トレーニング・プログラム
  2 患者を対象としたプログラム
 E むずかしい場面でのコミュニケーション
  1 患者が怒りを表出したとき
  2 患者が「死にたい」と訴えたとき
  3 患者が自身の話をしないとき
  4 患者が治療をあきらめたくないと話すとき

第4章 緩和ケアにおける倫理的課題 (竹之内沙弥香)
 A 生命倫理と看護倫理
  1 倫理
  2 生命倫理
  3 臨床倫理と看護倫理
  4 看護者の倫理綱領
  5 生命倫理の4原則
 B 意思決定支援
  1 インフォームド・コンセント
  2 アドバンス・ケア・プランニング
 C 緩和ケアをめぐる倫理的課題
  1 倫理的問題
  2 緩和ケアの臨床で直面する倫理的課題
  3 倫理的問題への対応
  4 倫理委員会

第5章 全人的ケアの実践 (新幡智子・佐藤寧子・平原優美・田村恵子)
 A 身体的ケア:苦痛をやわらげ日常生活を営むための援助
  1 身体的苦痛のマネジメント
  2 日常生活を支える援助
 B 心理的ケア:病によるストレスへの対処の力とその支援
  1 生命をおびやかす疾患と治療による心への影響と適応
  2 精神状態のアセスメントと方法
  3 おもな精神症状・精神状態と対応
  4 精神科との連携方法
  5 支持的精神療法
  6 認知行動療法
 C 社会的ケア:住み慣れた地域での暮らしの支援
  1 暮らしのなかの多様な支援
  2 疾患・障害をもつ療養者の暮らしの支援
  3 在宅療養への移行支援
 D スピリチュアルケア:「生・老・病・死」と向き合う苦を支える
  1 病の経験と苦悩
  2 全人的苦痛とスピリチュアルケアの必要性
  3 スピリチュアルについての考え方
  4 スピリチュアルペインについての考え方
  5 スピリチュアルペインのアセスメント
  6 スピリチュアルケアの実践

第6章 緩和ケアの広がり (松岡真里・竹之内直子・高梨早苗・市原香織・宇都宮明美・竹川幸恵・小泉亜紀子・大久保暢子・小江奈美子・太田桂子)
 A ライフサイクルにおける広がり
  1 小児
  2 思春期・若年成人(AYA世代)
  3 高齢者
 B さまざまな疾患における広がり
  1 悪性腫瘍
  2 心疾患
  3 呼吸器疾患
  4 神経難病
  5 脳血管疾患
  6 腎疾患
 C 療養の場の広がり:地域・施設・在宅
  1 療養の場の地域への移行
  2 療養の場と緩和ケア
  3 緩和ケアの地域連携の実際
  4 療養の場の選択としての意思決定支援

第7章 臨死期のケア (高野純子)
 A 臨死期の概念とケアの目標
  1 臨死期の概念
  2 死に対峙する患者と家族
  3 臨死期のケアの目標
 B 臨死期における全人的苦痛の緩和
  1 がん終末期における全身状態の変化の特徴
  2 慢性疾患の終末期における全身状態の変化
  3 臨死期における症状の特徴とケア
  4 臨死期における倫理的課題
  5 全人的苦痛の緩和
 C 死亡前後のケア
  1 死亡前1週間ごろのケア
  2 死亡前数時間のケア
  3 看取りのときのケア
  4 死後のケア
 D 急変時のケア
  1 臨死期における急変
  2 臨死期における急変時のケア

第8章 家族のケア (二見典子)
 A 家族の定義と家族ケアのあり方
  1 家族とは
  2 ありのままの家族像を知るために
 B 緩和ケアにおける家族看護過程
  1 家族の病気体験の理解
  2 援助関係を形成する
  3 家族アセスメント
  4 家族像の形成
  5 家族像に基づいた家族への看護介入
 C 家族ケアの方法
  1 看護師の役割とチームアプローチ
  2 家族の状況と必要とされるケア
  3 緩和ケアを受ける親をもつ未成年の子どものケア
 D グリーフと遺族ケア
  1 グリーフ
  2 遺族のケア(ビリーブメントケア)

第9章 医療スタッフのケア (朴 順禮)
 A ストレスマネジメント
  1 医療者のストレス
  2 レジリエンス
  3 ストレスケア
 B マインドフルネス
  1 マインドフルネスの背景
  2 マインドフルネスによる医療スタッフへのケア

第10章 緩和ケアに関する教育 (笹原朋代)
 A 基礎教育
 B 継続教育
  1 ジェネラリストの教育
  2 スペシャリストの教育

第11章 緩和ケアにおける研究 (宮下光令)
 A 緩和ケアにおける研究
  1 緩和ケアの研究の必要性
  2 緩和ケアにおける研究の問題
 B 緩和ケアにおける研究と倫理
  1 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針
  2 緩和ケアの研究における倫理的配慮の実際
 C 緩和ケアの研究の計画と実施
  1 意義がある研究でなければいけない
  2 研究デザイン
  3 研究対象の選択における問題
  4 対象数
  5 アウトカムの測定
  6 統計解析と臨床的有用性
  7 交絡とその調整
  8 欠損値
  9 プラセボとプラセボ効果

索引