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≪系統看護学講座 専門分野Ⅰ≫

基礎看護学[1]

看護学概論


(第17版)

執筆:茂野 香おる/吉岡 京子/林 千冬/益 加代子/玉田 雅美/岩本 里織/柳澤 理子/大野 かおり

  • 判型 B5
  • 頁 384
  • 発行 2020年01月
  • 定価 2,640円 (本体2,400円+税10%)
  • ISBN978-4-260-03862-1
本書の特徴
これからはじめて看護を学ぶ学生に向けて、看護とはなにか、看護師とはどのような職業なのかをわかりやすく解説しています。
看護基礎教育の概論として、必要と考えられる教育内容を網羅しています。看護学や看護専門職としての基盤づくり、看護師国家試験対策を意識した内容になっています。
初学者にもイメージしやすいよう、随所に物語風の事例を挿入しています。理論の理解だけでなく、看護場面の想像力や読解力の向上にも役だちます。
『基礎看護学[2]基礎看護技術I』および『基礎看護学[3]基礎看護技術II』と一貫性のある内容とすることによって、基礎看護学全体に対する学生の理解が深まる構成としています。
多職種連携やチーム医療、継続看護や地域包括ケア(第1章、第6章)、ヘルスプロモーション(第3章)、看護倫理(第5章)、医療安全(第6章)など、「現在の看護」の重要なテーマにも十分に対応しています。
アーリーエクスポージャー(早期体験教育)への対応として、第1章 C節「臨床における看護実践の流れ(仮)」を設けています。医療の現場、および看護の仕事の流れの一部が学生にイメージできる内容になっており、病院見学実習などの事前学習に効果的です。
看護の活動・役割の広がりに対応するため、第7章では「国際看護」と「災害看護」のエッセンスをまとめています。
*「系統看護学講座/系看」は株式会社医学書院の登録商標です。
序 文
はしがき

 団塊の世代が75歳に達し,後期高齢者が急増する2025年が間近に迫っている。わが国は高齢多死社会化がすすみ,2040年のピークには現在よりも3割近くも多くの人々の看取りをすることとなる。看取りの場は,治療の場である医療施設から生活の場である在宅や福祉施設などへと,一層...
はしがき

 団塊の世代が75歳に達し,後期高齢者が急増する2025年が間近に迫っている。わが国は高齢多死社会化がすすみ,2040年のピークには現在よりも3割近くも多くの人々の看取りをすることとなる。看取りの場は,治療の場である医療施設から生活の場である在宅や福祉施設などへと,一層変化していくだろう。
 それに伴い,看護師の活動の場の多様化が推し進められている。これまでの看護師像は,“病院や診療所などの医療施設で看護を提供する専門職”という見方が主流だったが,訪問看護師の需要が拡大するとともに,介護保険施設や高齢者向けの住宅など,多様な生活の場における看護師の活躍が期待されている。
 看護の場がいくら多様化しても,看護師は,「生」と「死」という,人の一生のなかで最も重要な局面に立ち会う職業であり,「病」や「老」という,負のイメージを伴う自身の大きな変化に悩む人々を対象とし,その人の健康問題を,その人とともに解決していこうとする職業であることに違いはない。
 看護を志こころざし,本書を手にしている皆さんの多くは,「人の役にたちたい」という願いを持っていることだろう。なかには,大きな病気などを体験し,「自分が受けた看護ケアを人に提供したい」と願う人,直接的な悲しい体験を持ち,その経験から今後は自分が「人を支える立場になりたい」と願っている人もいるだろう。あるいは,両親をはじめ周囲の人々のたくさんの愛といつくしみにはぐくまれ,「自分が受けたたくさんの愛をなんらかのかたちで返したい」という思いを持っている人もいるだろう。
 皆さんは本書をとおし,看護とはなにか,看護師とはどのような職業かを学ぶ。そして,人を世話するにあたって基本となる姿勢・考え方や,どのような援助が人のためになり,または人のためにならないかなどについて学んでいく。それは言いかえれば,いま皆さんが持っている「人の役にたちたい」という気持ちを,実際の行為として具現化する方法を学んでいくことである。基本的知識がなければ,せっかくの援助もただのおせっかいになったり,人の気持ちを害すことになったり,かえってその人の生きる力を萎なえさせてしまうことさえある。それゆえに,ここでしっかりと,看護を志す初学者としての基本的な“考え方”を身につけてほしい。
 “考え方”と言ってしまえば簡単に聞こえてしまうかもしれないが,看護においては,これが本当にむずかしいことだと,筆者は考えている。なぜなら,看護の対象となる人々は,ひとりとして同じ人がいないからである。年齢・性別はもとより,疾病の状況も異なれば,疾病に対する受けとめや向き合いかたも異なるし,価値観・人生観もさまざまである。それゆえに,同じ状況に思える複数の対象者がいても,ある人には効果的と思われたかかわりが,別の人にはそうではないことも多い。このような意味で,「正解がない」ということが,看護の大きな特徴の1つといえる。
 中学校や高等学校における皆さんの学習のほとんどは,設問に「正解する」ことが目的であっただろう。しかし,看護の場面においては,「どちらともいえる」「どちらも部分的には正しい」など正解が明確ではない部分も多く,その場面や援助にかかわる多くの人々(看護職どうしだったり,看護職以外の他職種も含んだりする)との話し合いが重要になる。それゆえに,これからの学生生活のなかで,たくさんの人々と意見を交わし,取り入れるべきところを取り入れ,そのなかから自分の“考えの素地”をつくり上げていくことが重要になる。
 本書では,まず,序章で対象者の自然の回復力を促すケアの実際について触れ,看護が最も得意とするケアの役割について解説し,第1章で看護の基本的な考えかたを扱う。具体的にある施設を例に,臨床での実際の取り組みについても紹介する。第2章で看護の対象である人間のさまざまなとらえ方を紹介している。この序章から第2章までが「看護とはなにか」を考える基盤となる部分である。
 ついで,第3章で国民健康と生活,第4章でわが国の看護職の成立や養成制度,第5章で看護倫理,第6章で看護制度や看護政策,看護管理,医療安全を学ぶ構成となっている。第7章は応用的な意味合いを持ち,現在の看護の活動領域の広がりを反映して,国外での看護や在留外国人への看護,災害時の看護を紹介している。
 このように,本書にはたくさんの素材が盛り込まれている。しかし,これらを活用するのは学生である皆さん自身だということを肝に銘じてほしい。読んだことを「そうなんだ……」と鵜呑みにしてしまう前に,これはどのような意味があるのだろう,どう考えていけばよいのかなどの疑問を持ち,ディスカッションの素材として使っていただければ幸いである。
 最後に,本書を執筆するにあたり,長きにわたってご助言・ご指導いただいた諸先生方,また,じっと見まもり耐えてくれた家族に,感謝の意をあらわしたい。

 2019年11月
 著者を代表して
 茂野香おる
目 次
序章 看護を学ぶにあたって (茂野香おる)
 A 看護師とはなにをする職業なのだろうか
  1 看護学生Aさんの臨地実習での経験
  2 看護学生Aさんが行ったケアの意味
 B 看護師の本来的役割と看護独自の機能
 C ナイチンゲールの実践にみる看護師の知識と判断力
 D 看護を学ぶにあたって

第1章 看護とは (茂野香おる)
 A 看護の本質
  1 看護の変遷
  2 看護の定義
  3 現代の動向と今後の展望
 B 看護の役割と機能
  1 看護ケアについて
  2 看護実践とその質保証に必要な要件
  3 看護の役割・機能の拡大
 C 看護の継続性と連携
  1 看護における情報伝達と共有
  2 多職種チームの連携と継続的かかわり
  3 在宅療養を支える連携と継続的なかかわり

第2章 看護の対象の理解 (茂野香おる)
 A 人間の「こころ」と「からだ」を知ることの意味
  1 対象理解の基盤となる人体の構造と機能・病態生理
  2 看護の使命と結びつくホメオスタシス
  3 「こころ」と「からだ」にかかるストレスの影響
  4 患者心理の理解─病気による「こころ」の変化をとらえる
  5 対象者の「こころ」の理解に役だつさまざまな理論
 B 生涯発達しつづける存在としての人間の理解
  1 身体的発育
  2 心理・社会的側面における発達
 C 人間の「暮らし」の理解
  1 生活者としての人間
  2 看護の対象としての家族・集団・地域

第3章 国民の健康状態と生活 (吉岡京子)
 A 健康のとらえ方
  1 健康とはなにか
  2 健康でない状態とはどのようなものか
  3 障害とはなにか
  4 健康と生活
 B 国民の健康状態
  1 国民の健康の全体像
  2 子どもの成長と健康
  3 高齢者と介護
 C 国民のライフサイクル
  1 平均寿命と出生
  2 結婚と出産
  3 家族

第4章 看護の提供者 (林 千冬・益加代子)
 A 職業としての看護
  1 職業としての看護のはじまり(明治期から第二次世界大戦終結までの看護)
  2 職業としての看護の確立(終戦時から昭和中期の看護)
  3 職業としての看護の充実(昭和後期から平成初期の看護)
  4 職業としての看護の発展(現在の看護)
  5 職業としての看護の新たな展開(これからの看護)
 B 看護職の資格・養成制度・就業状況
  1 看護職の資格
  2 看護職の養成制度
  3 看護職者の就業状況
 C 看護職者の継続教育とキャリア開発
  1 看護における継続教育
  2 専門看護師・認定看護師・認定看護管理者
  3 看護職のキャリア開発
 D 看護職の養成制度の課題
  1 看護職養成の場としくみに関する課題
  2 看護基礎教育の内容・方法をめぐる検討
  3 「特定行為に係る看護師の研修制度」の開始

第5章 看護における倫理 (林 千冬・玉田雅美)
 A 現代社会と倫理
  1 倫理について
  2 職業倫理としての看護倫理
 B 医療をめぐる倫理の歴史的経緯と看護倫理
  1 患者の権利とインフォームドコンセント
  2 患者の意思決定支援と守秘義務
  3 現代医療におけるさまざまな倫理的問題
  4 医療専門職の倫理規定
 C 看護実践における倫理問題への取り組み
  1 看護の本質としての看護倫理
  2 医療をめぐる倫理原則とケアの倫理
  3 看護実践場面での倫理的ジレンマ
  4 倫理的課題に取り組むためのしくみ

第6章 看護の提供のしくみ (林 千冬・岩本里織)
 A サービスとしての看護
  1 「看護とはなにか」の3つの視点
  2 3つの視点の相互関連
 B 看護サービス提供の場
  1 看護サービスの担い手とチーム医療
  2 看護サービス提供の場
 C 看護をめぐる制度と政策
  1 看護制度─看護サービスと看護職者にかかわる法制度
  2 看護政策─法をつくり,実行するしくみとその過程
  3 看護サービスと経済のしくみ─診療報酬と人員配置
  4 看護の人員配置基準と看護サービスの評価
 D 看護サービスの管理
  1 看護サービスの管理とはどのようなことか
  2 看護管理システム
  3 組織
  4 リーダーシップとフォロワーシップ
  5 人的資源の管理
 E 医療安全と医療の質保証
  1 医療事故の増加
  2 医療事故の要因と医療の質の向上
  3 ヒューマンエラーと医療事故
  4 看護業務の特性と医療事故
  5 医療事故防止対策としてのインシデントレポートの活用
  6 医療安全における医療者と患者の協働の必要性

第7章 広がる看護の活動領域 (柳澤理子・大野かおり)
 A 国際化と看護
  1 国際看護学とはなにか
  2 健康と保健医療の世界的課題
  3 国際協力のしくみ
  4 国際看護活動の展開
  5 日本に在留する外国人の看護
  6 異文化理解
 B 災害時における看護
  1 災害看護の概念と構造
  2 災害と健康
  3 災害サイクルにそった看護活動
  4 心理的回復の過程
  5 災害への備えとそのシステム

資料1 主要な看護理論家の看護概念
資料2 戦後における看護の変遷
資料3 保健・医療・福祉関係者養成制度
資料4 看護にかかわる定義および綱領

索引