整形画像読影道場

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内科医も、これは読めたほうがいいんでナイカイ? プライマリ・ケアの現場で多くみられる首・肩・手・腰・膝・足の痛み。内科医に必要な整形疾患に関する知識、X線画像の読み方、診断のポイント、そして記憶に残る覚え方などを多くの写真やイラストとともに解説します。高齢者に多い疾患だけでなく、子どもに特有の疾患や骨&関節の特徴も詳しく解説。レベルアップのための練習問題も付いています。
*「ジェネラリストBOOKS」は株式会社医学書院の登録商標です。
シリーズ ジェネラリストBOOKS
仲田 和正
発行 2019年05月判型:A5頁:166
ISBN 978-4-260-03833-1
定価 3,960円 (本体3,600円+税)

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まえがき

 研修医の時,天竜川上流の僻地診療所での診療を初めて見学しました.驚いたことのひとつは,膝の痛みや腰痛,四肢外傷など,整形外科疾患の多さでした.それまで私は外科志望でした.しかし内科,小児科,整形外科の3科がわかれば僻地で遭遇する疾患の8~9割に対応できるなというのが実感でした.「僻地で役に立つ医師になりたい」というのが私の願いでしたから,これを見て整形外科医を目指すことを決めました.
 内科,小児科も必ず研修を受けなければなりませんが,研修終了後は独学で知識を広げることができます.しかし外科系は師について地道に技術を研鑽しなければなりません.整形外科をベースにして,内科系のことは独学で学び,僻地で役立つ医師になろうと思いました.
 また以前,関西のある都市の外科医会から,整形疾患の講義の依頼を受けました.「外科医会でなぜ整形外科の講義なのですか?」とお聞きしたところ,消化器外科などを専門としても,ひとたび「外科」で開業すると,診る疾患のほとんどは整形疾患であり,消化器外科疾患の知識・技術はほとんど役に立たず,整形外科の知識が一番必要なのだとのことでした.
 プライマリ・ケアの現場で,整形外科の知識は必須であり,骨・関節のX線読影の力は必ず必要とされます.米国の医療訴訟で多いのが骨折の見逃しなのです.この本では,診療所レベルで需要の多い整形疾患に絞り,無駄な知識を排し,明日からの診療に役立つX線知識をまとめました.日常診療で,この本程度の知識があれば,さほど困らないと確信しております.画像は,私がいままで蓄積してきた2,000枚程のteaching fileからまとめました.

 2019年3月
 西伊豆健育会病院 院長
 仲田和正

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まえがき

第1章 整形疾患診察の基本編
 骨折はどのように起こる?
 体で覚える頸椎の神経支配

第2章 整形画像部位別読影編
 【頸部】胸部正面像は頸椎も見よう!
 【手・指】手は口ほどに物を言う!
 【手首・肘】FOOSH! 手をついて転んだ!
 【肩】あなたの水平線(horizon)が大きく広がる!
 【脊椎・腰】体のカナメを読めるようになろう!
 【股関節・骨折編】“大腿骨骨折音頭”を踊ってみよう♪
 【股関節・疾患編】知識を増やして股関節を読もう!
 【膝】膝はこれだけ知っていれば十分でナイカイ?
 【下腿・足関節・足趾】足の代表的疾患を診断できるようになろう!
 【小児】子どもの骨・関節を読もう!

索引
著者紹介

COLUMN
 1枚のX線写真の背後にあった壮絶な過去

SPECIAL LECTURE
 腰椎穿刺の極意

さらなるレベルアップのための画像読影練習問題
 Q1/Q2・3/Q4/Q5/Q6/Q7・8/Q9/Q10/Q11・12/Q13・14/Q15/Q16
 解答

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みんなで読めるようにならナイカイ?
書評者: 北 和也 (やわらぎクリニック院長)
 今から12年前,卒後2年目のレジデントだった僕は,救急外来で遭遇する外傷について勉強したいと思い,研修医室の本棚を物色していた。そこで見つけた色鮮やかなオレンジ色の本が仲田和正先生の『手・足・腰診療スキルアップ』(株式会社シービーアール)の初版であった。おもむろに手に取りページを開いてみると,まずその構成に驚きをおぼえた。「手・足・腰診療」と銘打ちながら,序盤には救命に必須のスキルであるBLS,ACLS,JATEC,輸液などに多くのページが割かれていた。しかしその意図を理解するのに時間はかからなかった。熱量に溢れ返った,共感の思いでどんどん読み進めた。気付けば西伊豆に行って仲田先生に習いたいと思うようになり,念願かなったのがその5年後の夏であった。思い切って単身赴任して,3か月間弟子入りすることに決めた。

 仲田先生の後ろにべったり付いて,診療スキルを生で伝授していただけるという,まさに夢のような日々であった。とにかく勉強会やカンファランス(西伊豆ではカンファレンスではなく,圧倒的にカンファランスなのである)が多く,学びたいだけ学べる環境であった。画像読影の勉強会もあった。シャーカステンに挿した秘蔵のX線画像を前に,仲田先生からレジデントへクイズ形式でレクチャーしていただけるという贅沢なものだ。本書『《ジェネラリストBOOKS》整形画像読影道場』には,その際に習った多くのX線読影法が紹介されている。これほど贅沢なことはない。

 そして,何といっても「体で覚える頸椎の神経支配」だ。これは本当に記憶しやすく,診察中とても役に立つ。そして,一度覚えたら何年経っても覚えていられる。仲田先生に教えていただいたあの日のことを思い出しつつ読み進めていたら,C7の「にゃにゃ」をしている坂本壮先生をみつけた。「にゃにゃ」に思い入れがある一人として,表現し難いジェラシーを感じている自分にふと気付いた。坂本先生に憧れたときは「SSN!(Sakamoto Souni Naritai)」と叫ぶルールが救急・総合診療界隈にはあるようだが,この時ほど「SSN!」な思いを経験したことはなかった。

 そしてもう一つ,C7に関するエピソードを思い出した。以前,仲田先生に「肘をシチッ!(7)と伸ばした時に,体がちょうど7の形をするという覚え方なんてどうですか?」とお伝えした時に「なるほど,それいいですね~!」と微笑んでおられたので「よっしゃ!」と思ったのだが,本書をみると全く採用されていなかった。今度お会いした際,第2版にはぜひとも採用していただけないか,お願いしてみたいと強く思った2019年の夏の日であった。

 超高齢社会では診療科を問わず外傷診療を行うケースが増えることだろう。当直中に病棟で転倒が発生し,股関節のX線を撮るものの整形外科医がいない,なんて経験は皆さんにはないかい? というわけで,内科医の皆さんもぜひ一冊買っといたほうが良いんでナイカイ?
コンパクトで重厚 プライマリ・ケアの整形画像はこの一冊!
書評者: 志水 太郎 (獨協医大主任教授・総合診療医学)
 仲田和正先生の新刊が出ました。実は15年来ずっと仲田先生のファンです。仲田先生といえばTFCメーリングリストの論文(NEJM,Lancet,JAMA)レビューが有名です。それだけでなく,ベテランの整形外科医であり,しかも院長でいらっしゃるのに,内科や小児科への学びのボーダレスさには憧れとともに,自分も総合診療医として貪欲に学び続けたいという前進の勇気をいつもいただいています。

 仲田先生のお名前を知ったのは2004年発行の名著『手・足・腰診療スキルアップ』(シービーアール)ですが,あれから15年が経った今年出版された本書は,上記の本のエッセンスを継承しつつもさらに密度の濃い,それにタイトルどおり画像読影のポイントが前景に出た非専門医のための整形外科の新しい名著です。とにかく画像が豊富です。仲田先生秘蔵の2000枚のティーチングファイルからの抜粋とのこと,「日常診療で,この本程度の知識があれば,さほど困らない」という仲田先生のコメントは,整形外科のX線を学ぶものにとって大きな安心を与えてくれます。

 本書の構成は,整形疾患の診察・フィジカル技術に重点の置かれた第1章,そして本書のメインである部位別の整形画像読影の第2章からなります。画像読影にとどまることなく,整形疾患の診察のポイントも本書の1割以上のページを割いてまとめられているため,仲田先生の教育エッセンスを学ぶこともできます。また第2章では,ジェネラリストに有用と思われる整形画像が,これでもかというくらい紙面狭しと提示されています。X線だけでなく,シェーマや体表写真も満載で,大変わかりやすいです。痒い所に手が届く整形画像の指南書として,これまで仲田先生が後進を指導される中で工夫されてきた教育のコツが多く盛り込まれていると感じました。中には化膿性脊椎炎と転移性脊椎腫瘍の画像上の鑑別ポイント(p.78)や,腰椎穿刺の極意(p.87)など内科的にも重要な内容が含まれ,内科医にも広く読まれるべきと思いました。

 仲田先生といえば「怒涛の反復」が代名詞ですが,本書も各章末に「怒涛の反復」として要点がまとめられ,計16問の章末画像問題集もあり,勉強になります。

 ボーナストラックのように加えられている仲田先生のチャーミングでウィットの効いた写真(p.90,他)も素敵です(購入してご覧ください)。仲田先生といえば前述の論文レビューの真面目な内容の中に挿入される,アートに富んだ多くの逸話が印象的ですが,本書にも魅力的なコラムが含まれています。「1枚のX線写真の背後にあった壮絶な過去」(p.74)はまさにその真骨頂で,ミッドウェイ海戦(1942年)とそれにまつわる患者さんのエピソードに深い感銘を受けました。
 このように,164ページというコンパクトさを感じさせない,重厚さに満ちた仲田先生の最新刊3600円は安すぎます。ぜひ皆さんご購入をお薦めいたします。

 なお,本書は医学書院《ジェネラリストBOOKS》シリーズの一環として出版されています。シリーズには他にも魅力的な書籍が並んでいますので,併せてお読みになると学びも大きいと思います。
まるでアトラクション巡り!? 読影道場という遊園地
書評者: 平島 修 (徳洲会奄美ブロック総合診療研修センター)
 思わず一気読みしてしまった。

 私が仲田和正先生(の本)に出会ったのは15年前,医師になってすぐの研修医時代。年間1万台の救急搬送を受け入れる研修病院の救急室で週に2回の当直業務をこなしていたときに,同僚の研修医が「とてもわかりやすい本が出た!」と騒いで持ってきた。当時,整形外科学といった固い医学の本はあっても臨床現場との乖離があり,実践で生かせる本はほとんどなく,仲田先生の著書『手・足・腰診療スキルアップ』(シービーアール,2004)はこれまでの医学書作法の常識をひっくり返すような明快でユーモアに富んだ本だった。その中でも漫画『おそ松くん』に登場するイヤミがシェーのポーズをしたイラストを用いた,アキレス腱断裂の解説は15年経った今でも頭を離れない。

 そして,15年の歳月を経て『整形画像読影道場』という新しい仲田ワールドが帰ってきた。「読影道場」だが,首・肩・手・腰・足と全身の画像所見についてユーモラスに解説された内容は,遊園地のアトラクションを回っているようなワクワクした気持ちになる。もちろんアトラクション(章)を順番に回るのではなく,好きなアトラクションから入る(読む)ことができる。特に救急外来で外傷を担当する医師には,かなり力になるのではないだろうか。外傷⇒診察⇒X線という流れは整形外科医よりも救急・総合診療医が経験することが多い。しかし整形外科医ではないので,手術までかかわることはなく,整形外科医に診てもらうべきか,診てもらう場合,すぐになのか,翌日なのかという判断が一番気になるのではないだろうか。膨大な疾患に対応する救急・総合診療医は,全身の骨折の細かい分類や具体的な手術の内容はさほど必要ではない。それよりは,見逃しやすい骨折や,軽度の骨折でも専門医受診が必要なものを覚えて,必要に応じて成書にアクセスできる環境が現実的なのではないだろうか(私はそうしている)。本書は全身の骨折や関節,神経分布などが簡潔にまとめられており,2~3時間もあれば読み終えることができる。

 本書には,他書には真似できない3つのポイントがある。(1)仲田先生ならではの例える技術。前著はおそ松くんだったが,今回はピカチュウに扮した仲田先生の顔写真が登場する。思わずプッと吹き出してしまうのは間違いない。とにかく明快に脳裏に刻まれ,一度読めば忘れない。(2)仲田和正先生という心優しいお医者さんの姿。変形性肩関節症の患者さんのミッドウェイ海戦のエピソードが書かれたコラム(p.74-5)は,当時の映像が浮かぶような素晴らしい内容である。患者さんに寄り添いながら診療をされている仲田先生を垣間見ることができる。(3)怒涛の反復。これは仲田先生がいつもおっしゃる格言である。覚えておいたほうがいい内容は,繰り返し同僚と呪文のように言い続ける。各章の最後には「怒涛の反復」として覚えておくべき内容のみ,数行でまとめられており,全てを読み終わった後に,もう一度この部分だけ声に出して読んでみると,骨の随まで知識が染みこんでくる。

 道場から出ると,不思議とX線画像を見るのが楽しみになる素晴らしい書籍である。
これはいい!! わかりやすくて,おもしろくて,合点がいく
書評者: 白石 吉彦 (隠岐広域連合立隠岐島前〔おきどうぜん〕病院院長)
 著者はただの整形外科医ではない。ただ整形外科医になりたくて,なったのではないのです。著者は地域で役に立つ医師になるためには内科,小児科,整形外科が必要と感じ,内科・小児科はある程度独学で勉強できると考え,師につく必要のある外科系ということで整形外科医を選ばれた。

 プライマリ・ケアの現場で一番多いのは運動器の訴えで,内科医にも整形外科の知識は必須。ところが,既存の整形外科の教科書は膨大で,やたらと外国人の名前の付いた徒手テストや所見が出てくる。覚えられない。目の前にやってくる運動器の訴えを全て整形外科医に丸投げするわけにもいかない,そんなジレンマの中で仕事をしている医師は少なくないと思います。

 「この本程度の知識があれば,さほど困らないと確信しております」。
 前書きに書かれた著者のこの力強い言葉から,後光がさして見えます。

 整形外科疾患の中でも,特に需要の多いものに絞ってくれているのもありがたい。よくある疾患に対して,できることわかることだけきちんとやる。わからないことは適切に紹介すればよい。

 整形外科専門医の著者が無駄な知識を排除した,と言ってくれているのもいい。たくさんは覚えられないのです。そして,明日から役に立つ,というのがいい。第一線の臨床医に必要なのは実学なのです。X線写真1枚からわかることをきちんとわかるようにすることです。頸椎正面の棘突起がC7は楕円形が1つでC6以上は二股ではっきりしない,正常橈骨関節面は掌側に10°~25°傾いているが,Colles骨折では背側に向かう,などというのは知っておくと読影のキーになります。

 受傷起点とX線上に現れる所見の機序を丁寧に解説してくれているのもいい。臨床医が大切にしている問診からX線にある答えにたどり着くのに,合点がいくのです。

 そして面白いのがいい。ピアノ教本バイエル(下巻)1/2をマスターした著者が繰り出す数々のダジャレ,ユーモア。そして怒涛の反復。妙に頭に残ります。日本中で「ニャニャ」(手関節掌屈はC7),「肘をシチッと伸ばす」(肘伸展はC7)という声が聞こえてきそうです。大腿骨近位部骨折の特有の姿位を「大腿骨骨折音頭」と称して表す著者の姿も一発で脳裏に刻まれます。

 英検1級,米国医師資格取得者の著者が,読み方や外国人名のいわれを解説してくれているのもありがたい。Bouchard(ブシャール)結節や,Chauffeur(ショーファー)骨折(橈骨茎状突起の骨折)のChauffeurは運転手とか,月状骨周囲脱臼のTerry Thomasの歯のすき間などなど。

 あと,結構困るのが,小児の骨。骨端線なのか骨折なのか? 肘の骨化核の出現順,出現時期も「CRITEつれなくイレブン」で大助かり。意味の解読は本書で。

 さらに著者が撮りためた2000枚のX線写真から「さらなるレベルアップのための画像読影練習問題」も出され,一歩突っ込んだ知識が得られるようになっています。

 内科医にわかりやすい整形本,総合診療医がさらにパワーアップ。この本,手に入れるしかないでしょ!

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