実践 ヘルスプロモーション
PRECEDE-PROCEEDモデルによる企画と評価

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ヘルスプロモーションの標準的テキストとして定評のある原著の第4版を翻訳。原書第4版は、対象読者を健康教育やヘルスプロモーションの専門家・学生から、すべての保健・医療従事者や学生に拡大されている。健康教育や限定されたヘルスプロモーション領域だけでなく、すべての保健計画モデルを提示し、評価の要素を計画の初期の段階から導入した本書は、保健・福祉活動を実践的に企画・評価するうえで必携の1冊。
ローレンス W. グリーン / マーシャル W. クロイター
神馬 征峰
発行 2005年11月判型:B5頁:380
ISBN 978-4-260-00171-7
定価 5,060円 (本体4,600円+税)

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 訳者序文
 序
 日本語版にむけて
1章 企画のフレームワーク
 1. キー・コンセプト
 2. Precede-Proceedモデル
 3. ホールマーク
 4. 要約
 5. 演習
 注と文献(エンドノート)
2章 社会アセスメント
 1. 社会アセスメントと参加:その根拠
 2. QOL:究極的な価値の1つの表現
 3. 参加の原理とプロセス
 4. 実行能力の形成と持続可能性:参加の事例
 5. 社会アセスメントと状況分析の方法と戦略
 6. 社会アセスメントと状況分析データを用いた
   企画プロセスのマッピング
 7. まとめ
 8. 演習
 注と文献(エンドノート)
3章 疫学アセスメントと行動・環境アセスメント
 1. 疫学による一般集団への健康づくりアプローチ
 2. 途中から始めるために:実践家が抱えている現実
 3. 記述疫学のキーとなる諸原則と用語
 4. 保健プログラムの優先事項と目的の設定
 5. 病因論:健康問題を抱えている人たちは
   なぜその問題を抱えているのか?
 6. 行動アセスメント
 7. 環境アセスメント
 8. 評価のまとめ
 9. 要約
 10. 演習
 注と文献(エンドノート)
4章 教育/エコロジカル・アセスメント
 1. 行動と環境に影響を及ぼしている要因
 2. 準備要因
 3. 実現要因
 4. 強化要因
 5. 行動変容,環境変化の決定要因の選択
 6. 学習目的と資源獲得目的の記載
 7. 要約
 8. 演習
 注と文献(エンドノート)
5章 運営・政策アセスメントとプログラムの実施運営
  -形成的評価からプロセス評価へ PRECEDEからPROCEEDへ
 1. 用語の定義
 2. プログラム要素のなかの優先項目の調整
 3. 運営アセスメントとプロセス評価
 4. 政策アセスメントと実行責任
 5. 実施と評価
 6. プログラムのインプットとアウトプットを予測すること,計算すること
 7. まとめ
 8. 演習
 注と文献(エンドノート)
文献一覧
索引

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進化したPRECEDE―PROCEEDモデルで活動も評価も“前進!”
書評者: 村中 峯子 (全国保健センター連合会)
 「モデルチェンジでシャープになった新車みたい!」。手にした瞬間,そう直感した。本書はローレンス W. グリーン著『ヘルスプロモーションPRECEDE―PROCEEDモデルによる活動の展開』の第4版邦訳書である。ちなみに『~活動の展開』の原著は1991に出版されている。当時,すでに第2版であったことからも,本理論が実践と研究を積み重ね,確実に,日々,刻々と進化していることに驚きを禁じ得ない。

 さて,第2版と本書を見比べると,まず,装丁からして求心的な気配を漂わせている。次に第2版と比べて,とにかく読みやすい。読み進む中で,著者や訳者と対話しているような感覚すら覚える。恥を忍んで告白すると,私にとって第2版の読解は困難を極めた。直感的に納得できるかどうかが勝負だった当時の私には,第2版を読んでも,ポンと膝打つ感を覚えにくかったのだ。

 ところが,本書は「保健プログラムを企画・評価するときの,教育的・エコロジカル的アプローチ」の書籍として,方位の定まった感があり,それが読みやすさに繋がっている。原題では「ヘルスプロモーション」の文字が消えているものの,邦題で「実践・ヘルスプロモーション」としているのは,親しみやすさをねらったためであろう。それでも原著の意図は遺憾なく発揮され,明確に質の確保としての評価を各段階に組み込んだ保健活動企画のためのテキストとなっている。章の冒頭にはアルゴリズムを提示し,知りたいところや自分の位置を確認しながら近道をして読める工夫がなされており,画期的だ。

 内容にも随所に進化が見て取れる。例えば,第2版でも紹介のPPMモデル統括図にも変化がある。第2段階のアセスメントにおいて,「行動とライフスタイル」「環境」と並んで「遺伝」が明確に記された。人間の健康において,複雑な生態系や環境要因の影響を軽視することはできないと強調し,その根拠を追記している。

 実践的な事例と優れた研究の引用も豊富であり,理論が実践に添い,実践がその理論を十分に発展させているところが読み物としてもおもしろい。意欲が湧いてくる。ポンポンと膝を打ちっぱなしになりそうだが,敢えて難をさがすと,我が国における数々の有用な実践の引用のないところが残念ではある。

 ちなみに,本版から補助教材としてWebサイトを利用できるようなった。当然,すべて英文であり,申し訳程度に拾い読みをして私はサイトからすごすごと退散した。なおさら,原著発行からほぼ1年で本書を邦訳し,我々の手許に届けてくれた神馬征峰氏の貴重な労苦に心から感謝したい。 

 蛇足だが本書は,職場内での詳読会(勉強会)テキストとしても適している。そういえば,現場にいたころは先輩がプライベートの時間を使って,勉強会を設けてくれた。当時は,事前に調べてまとめあげ,皆に解説をする「チューター」当番が順番で当たるとしんどかった。読み込んだ内容について,容赦なく質問や意見を寄せてくるのである。そこでは,先輩も後輩もなく真実を目指した議論を交わし,互いの理解を深め合った。思えば,あの勉強会がその後の私を支えてくれた。そうした意味でも,本書の章末ごとに設けられた演習課題を関係者が共に考えることで,実践力を高めていけるのではないだろうか。ということで,近々,勉強会を現在の職場内で初めて開催してみようと企てている。技術職は私1人だけれど,だからこそさまざまな意見を交換できるのではないかと期待している。

 モデルチェンジのようであっても,PRECEDE―PROCEEDモデルの変わらない基盤と本質は「参加」である。まず,本書を手に取り「参加(読み考える)」することで,一歩前進できる。そう確信できる本である。

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