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地域保健スタッフのための「住民グループ」のつくり方・育て方


編集:星 旦二/栗盛 須雅子

  • 判型 B5
  • 頁 176
  • 発行 2010年10月
  • 定価 2,700円 (本体2,500円+税8%)
  • ISBN978-4-260-01186-0
住民グループ活動の立ち上げや支援にどうかかわるか
本書は、住民の主体的で自主的なグループ活動の特性を、さまざまな活動事例をもとに概括。住民グループ活動を推進するための諸条件を整理したうえで、その立ち上げや発展に関わる保健師や管理栄養士の実践的な支援方法を詳解。住民グループ活動を質的に発展させるとともに、量的にも拡大させるためのノウハウをビジュアルな紙面と解説で示したマニュアル。
序 文
はじめに

住民グループ活動の高まりのなかで
 世界的にみると,日本は最も寿命の長い国の1つです。いま日本では,世界最高水準の長寿を達成した一方で,急速な少子高齢化が進み,要介護状態にならずに健康に長寿を保つ「健康寿命」を延ばすことの意義が高まっています。また,核家...
はじめに

住民グループ活動の高まりのなかで
 世界的にみると,日本は最も寿命の長い国の1つです。いま日本では,世界最高水準の長寿を達成した一方で,急速な少子高齢化が進み,要介護状態にならずに健康に長寿を保つ「健康寿命」を延ばすことの意義が高まっています。また,核家族化が進むなかで,育児支援の重要性が指摘されるとともに,フリーター(働く意志をもつ無職)や非正規職員が若い世代に増加しているなど,多くの課題も抱えています。介護問題については2006年4月に,介護保険制度の大幅な改定がなされ,介護予防事業が強化されました。少子化については,子育て支援の社会的基盤の充実に関する新たな制度が構築されています。
 上記のような時代背景のなか,公的機関による事業や対策のみならず,住民の主体的な活動が盛んに展開されつつあります。このような住民活動の高まりは,生活を企業中心に位置づけていた団塊世代の人たちが,地域に根ざした活動の意義を理解するようになったことも大きな要因の1つとなっています。また,住民の主体的な活動は,団塊世代のみならず,それぞれの世代ごとに,全国各地で展開されつつあり,さまざまな効果も明確になりつつあります。
 本書は,住民の主体的で自主的なグループ活動の特性を踏まえながら,その支援の中心となる保健師の役割と機能を明らかにし,グループ活動を質的に発展させるとともに,量的に拡大させるためのマニュアルを提供したいと思います。

住民グループ活動の意義
 住民グループの意義は,どのような点にあるでしょうか。具体的な活動の様子をみると,自主的なグループ活動の意義がよくみえてきます。
 たとえば,核家族になりがちな都市部で楽しく子育てをしていくためには,育児グループで悩みを共有し,相互に支援し合うことが大切です。そうすることで主体性の発揮や,具体的な課題解決や自信獲得にもつながっていきます。特に若い世代では,インターネットを活用して,「子どもへの適切な対応法と育児の楽しさを相互に学ぶプロセス」を共有できる仲間づくりが,爆発的に広がっています。インターネットを介した新たな形の育児グループが,量的にも質的にも拡大・発展する理由の1つとして,育児情報を受け取るだけの受動的なかかわりではなく,自分が感じている育児不安,対処した行動,学んだポイントなど,豊富な体験を能動的に情報発信したり,新たな情報を発見したり確認できたりすることがあげられます。
 また,高齢者が介護予防のために身体を動かすことについては,保健師による短時間の支援活動に加え,自主的な活動が付加されることで,優れた成果があがります。たとえば,一緒に運動する仲間がいると,相互に励まし合うことで運動が継続され,優れた成果につながっていくのです。囲碁や将棋,音楽などの趣味活動でも,知的能動性が発揮され,次の活動が待ち遠しくなるような気の合う仲間同士の相互支援が不可欠のようです。
 住民グループの活動にかかわる際には,保健医療福祉専門職(以下,「専門職」と表記)による支援だけでは量的な限界があることを確認する必要があります。人々が健康で豊かにいきいきと楽しく生きていくうえで,専門職による支援は不可欠です。しかし,量的にみれば,きわめて短時間の対応に限られがちなため,足りない分を質の高さと専門性で補わなければなりません。自主的なグループ活動は,日常的,定期的に繰り返されており,保健師などの専門職が支援にあたれる時間はそのうちのほんの一部に過ぎないのです。

住民グループ活動とは―本書の定義
 さまざまな住民グループ活動が全国各地で展開されています。その背景としては,少子高齢化が急速に進み,子育てグループの活動がますます盛んになったことや,高齢者の趣味活動が幅広くなっていることがあげられます。さらに,市民主導による活動の意義が認識され,NPO法人の活動を推進するような行政基盤が整ってきたこともあげられます。いまはまさに,住民グループ活動の全盛期到来といえるかもしれません。
 本書では住民グループを,「同じ目的を共有し,その目的を達成するための活動を自主的,主体的に継続する,経済活動を主目的にしない,家族以外の2人以上の仲間」ととらえています。住民グループ活動の特性は,参加する当事者が主体性を発揮して,企画実践し,ときに改善,発展していくことです。参加者それぞれの創意工夫があれば,どんどん改善,発展させることができる反面,参加者からの支持が薄くなったり,リーダーの独善的な行動が目立つようになると,活動が中断したり,グループ自体がなくなったりする場合もあるという特性があります。この特性こそが,法的根拠に基づく組織活動や行政主導型で進められる組織活動との違いです。

住民グループの種類
 住民グループは,大きく2つに区分できます。1つは,法的根拠に基づく活動で行政による関与が強いものです。もう1つは,住民の主体性が強く住民の役割がより重視されるものです。
 これらをまた,組織面,機能面に着目して分類することもできます。組織面でみると,保健福祉計画策定委員会や,「健康日本21」の地域計画策定委員会などは,上記分類のうちの前者です。自治会,婦人会,健康推進員などは,住民の主体性が強い組織との中間に位置づけることができます。地域ボランティア組織(健康ボランティア,育児ボランティア,配食ボランティアなど),患者会,趣味活動などは後者になります。住民主体の組織活動は,形式的に継続されがちな行政施策と比べると,活動の意義が大きく異なります。
 また,機能面でみると,住民の主体性を発揮する度合いや,活動によってエンパワーされる対象(対象が専門職か,住民か,あるいはともに成長するか),などの視点から区分することができます。
 本書で取り上げる住民グループの事例は,行政主導による組織活動だけではありません。住民主体の自主的活動も取り上げ,行政への政策提言につながった例もみていきたいと思います。

本書のねらい
 本書は,さまざまな住民グループの活動事例について,そのプロセスを含めて概括しています。事例分析においては,活動によるさまざまな効果を重視し,住民グループ活動を推進するための諸条件を整理しました。本書のねらいは,主として保健師による実践的な支援方法を明確にすることに力点を置いたマニュアルづくりにあります。そのために,それぞれの地域特性を活かしながら,住民グループ活動の立ち上げや発展を支援する保健師や管理栄養士,看護や心理職などの専門職が活用できるよう,ノウハウを含めてわかりやすいビジュアルな誌面および解説を心がけました。
 全国的な水準に照らして優れた住民グループ活動事例を数多く検証し,その活動プロセスのなかでも保健活動と関連深い具体的なノウハウを,(1) 準備期,(2) 創造期,(3) 継続・転換期,(4) 発展期という4つの段階に分けて,わかりやすくまとめてみました。このようにまとめた理由は,住民グループの活動支援が,それぞれの地域の特性に応じて展開されていくことを願っているからです。
 住民グループ活動を展開するときの理念として,従来よくみられた専門職主導型の方法論から脱却し,住民も専門職もともに成長することで,個人,集団,地域のエンパワメントを実感するということがあげられます。住民と専門職との相互支援の意義だけではなく,相互支援によって両者がともに成長していくことの意義をもっと重視してもよいのではないでしょうか。
 本書は,住民の力を信じ,住民とともに段階を追って力量を形成できる専門職が,それぞれの地域に増えることで,地域全体の健康度向上を目指すポピュレーション戦略としても役立つと期待しています。
 今後は,住民グループ活動の継続と参加者の健康感や満足度の向上,および地域全体でみた健康寿命の延伸や介護予防効果との関連を明確にすることにより,その意義を高めることが課題だと考えています。
 本書を手に取っていただいたあなたの地域においても,本書が示すノウハウを応用することで,住民グループ活動の可能性が広がり,その効果が発揮されることを祈っています。

 2010年9月
 星 旦二
 栗盛須雅子
書 評
  • 住民グループ活動が必要な時代に応える待望の書
    書評者:湯浅 資之(順天堂大准教授・公衆衛生学)

     医学雑誌『Lancet』でBeagleholeらは,世界の健康をめぐる状況の急激な変化に今日の公衆衛生は対応できておらず,新しい時代の公衆衛生には住民自身によるグループ活動が何よりも重要であると述べている(Lancet 2004;363:2084-2086)。彼の指摘を待つまでもなく,今日ほど住民...
    住民グループ活動が必要な時代に応える待望の書
    書評者:湯浅 資之(順天堂大准教授・公衆衛生学)

     医学雑誌『Lancet』でBeagleholeらは,世界の健康をめぐる状況の急激な変化に今日の公衆衛生は対応できておらず,新しい時代の公衆衛生には住民自身によるグループ活動が何よりも重要であると述べている(Lancet 2004;363:2084-2086)。彼の指摘を待つまでもなく,今日ほど住民グループによる活動が必要な時代は,かつてなかったかもしれない。本書はまさに時代の要請に応える待望の書である。

     本書は,保健師や管理栄養士ら保健医療福祉専門職が住民の自主グループ活動を推進するためのノウハウをまとめたマニュアルである。そのねらいは,豊富な事例を検証し抽出した実践的な住民グループ支援方法をわかりやすく解説することにある。また,行政主導・専門職主導ではなく,住民の主体性に基づく活動をいかに育てるかに力点を置き,住民と専門職がともに成長できる方法を論じることもねらいとする。この点で,本書は住民の自主性を尊重したグループ活動の手順をわかりやすく解説することに成功している。

     本書では住民グループを「住民の主体的な意思が尊重され,住民自身の健康づくりにつながりやすい活動を推進させる家族以外の複数で構成される仲間」と定義し,その活動の特性を「形式ではなく内容が重視され,楽しく,継続的に取り組まれ,経済成果を最優先としない」ものと規定している。形ではなく中身が大事であり,何よりも継続するには楽しいこと,素晴らしい仲間づくりが大切であるというのである。このことは誰もが認識していることではあろうが,多くの指南書は学者好みの学術的あるいは根性論的な組織形成論にとどまっている。他の類似本とは異なり,本書が現場の専門職や住民の視線で執筆されていることは特筆すべきことであろう。

     本書は大きく4つの章から構成されている。第1章では,住民グループとその活動の基本が,前述した要点を中心にわかりやすく解説されている。第2章では,子育て・介護予防など読者が担当する領域ごとに,住民グループのつくり方・育て方のポイントが事例をもとに説明される。第3章は,日常遭遇するさまざまな問題について先輩が助言するような語り口の問答(Q&A)が記載されている。例えば,若い保健師の「こんなに忙しいのに,なぜ住民グループ支援までやらなければならないのですか」という問いに対する回答には,励まされる読者も多いことだろう。最後の第4章では,具体的な先進事例が紹介される。

     本書の特長は,要点がわかりやすく記載されていることである。一般的に,住民グループ活動は一つとして同じものはなく,グループの数ほどその成り立ちも構成も異なって存在する一方で,千差万別の複雑な社会現象にも共通点が観察される。本書は活動のそうした共通項を「ポイント」として数か条にまとめた上で,各節の末尾で「ポイント」を再度図式化して示している。読者は全体の流れが一目で理解できるのである。

     本書では,さまざまなタイプの住民グループ活動を,(1)準備期,(2)創造期(グループ結成時・活動開始時),(3)継続・転換期,(4)発展期の4段階に分けて記述することで,活動をより詳細に見て,そのダイナミズムを理解できるような工夫が施されている。支援の原則や,グループ発展の推進要因と阻害要因,グループの特徴などもわかりやすく記述されている。事例として挙げた住民グループ活動に関連する,より詳細な説明や学術的資料などは「コラム」として取り上げている。

     住民グループ活動支援の現場経験が豊富な執筆陣によって書かれた本書は,住民とともに楽しみながら地域保健活動を展開したいと切望する専門職読者に,必ずや大きな示唆や励ましをもたらしてくれると確信する。ぜひ,ご一読をお勧めしたい。
  • 現場の経験知が豊富に織り込まれたグループ支援の指南書 (雑誌『看護教育』より)
    書評者:新納 美美(札幌市立大学看護学部)

     保健師には,日々の実務の積み重ねが地域住民の健康につながることを展望する力が求められる。しかし,それは,初学者や経験が浅い者にとって難しいものである。力量を伸ばすには,現場で先輩の活動に触れながらリアルに学ぶ体験が必要だが,現状では,後進に技を伝承する機会が減少している。本書には,そのような現状を...
    現場の経験知が豊富に織り込まれたグループ支援の指南書 (雑誌『看護教育』より)
    書評者:新納 美美(札幌市立大学看護学部)

     保健師には,日々の実務の積み重ねが地域住民の健康につながることを展望する力が求められる。しかし,それは,初学者や経験が浅い者にとって難しいものである。力量を伸ばすには,現場で先輩の活動に触れながらリアルに学ぶ体験が必要だが,現状では,後進に技を伝承する機会が減少している。本書には,そのような現状を補う「先人の知恵」が随所に織り込まれており,温かみのある実践的な内容で構成されている。よき先輩に出逢えたような読後感が残る1冊である。

     本書は,主に行政の保健師が企画・事業化するグループ支援の方法について,柱となる考え方と方法論を提示したうえでテーマ別の具体例を紹介している。全章を通して簡潔な文章で,節ごとにポイントがまとめて記述されるなど,途中からでも読みやすく構成されているので,初学者やまとまった時間がとりにくい読者にも使いやすいだろう。

     第I章は地域保健活動の理論と実践の間をつなぐ内容である。保健師と対象との出逢いから,グループの結成,自立,発展までの関わり方について段階を追って記述しており,その地域保健活動としての意義や,支援過程を通して得られる支援者自身の成長にも触れている。著者自身が現場から得た気づきや学びも挿入しながら,論を展開し読み手の関心を引き出して次章以降の実践編につなげている。

     第II章は,第I章で述べられたグループ支援の段階と方法に沿いながら,「子育て」「介護予防」「生活習慣病予防」「患者・障害者のセルフヘルプ」など,地域保健活動のコアとなるテーマ別に,対象特性をふまえた具体的活動方法を紹介している。特に経験に支えられたリアルな事例が魅力である。経過を追ったナラティブな記述は,グループ支援のイメージ構築や教科書には書かれていないコツをつかむための生きた情報として役立つだろう。第III章のQ&Aでは,グループ支援の過程でよく遭遇する躓きや難局の乗り越え方が記述されており,実務の厳しさや現実的な課題と,それゆえに感じられるやりがいも伝わってくる。そして,最後の第IV章では先駆的事例を紹介し,保健活動のイノベーションを触発する発展的内容で結ばれている。

     本書は,地域看護学教育の参考書として適しており,保健師として就業する学生には,卒後の実践や数年後の実習指導にも役立てられるだろう。第I章は机上の学習と実践の橋渡しに,第II章以降は現場における保健師の機能の可視化に有用である。保健師と十分に対話しなければ得られない「活動の含意」を理解するための教材として,また,授業では伝わりにくい保健師活動の奥深さを伝承する資料としても活用したい良書である。

    (『看護教育』2011年4月号掲載)
目 次
I章 住民グループを「つくる・育てる」キホン
 1 支援の基礎知識
 2 「つくる・育てる」テクニック
II章 [領域別]住民グループを「つくる・育てる」ためのポイント
 1 子育てグループ
 2 介護予防グループ:サークルづくり型
 3 介護予防グループ:リーダー養成型
 4 食育グループ:リーダー養成型
 5 生活習慣病予防グループ:壮年期の男性グループ
 6 セルフヘルプ・グループ:患者・障害者およびその家族による自助グループ
 7 健康な町づくりグループ:多様な講座をもつ生涯大学型
 8 健康な町づくりグループ:住民自治志向型
III章 Q&A こうすれば避けられる! 住民グループづくりと支援の落とし穴
 1 保健師の意識の問題
 2 内部の他職種・他部署から支援を得るコツ
 3 住民グループ立ち上げ時の問題
 4 グループメンバーの問題
 5 グループリーダーの問題
IV章 先駆事例をちょこっと紹介
 1 シニア読み聞かせボランティア「りぷりんと」:地域貢献型介護予防グループ
 2 シルバーリハビリ体操指導士グループ:行政育成型介護予防指導者グループ
 3 「健康村長〈むらちょう〉」グループ:計画策定型町づくりグループ

索引