創傷治療の間違った常識を打ち破る!
書評者:光嶋 勲(岡山大教授・形成再建外科)
◆患者を思う優しさから生まれた綿密な理論
読み終わったとたん痛快な思いのする本が久々に出版された。ページを開いたとたんに最後まで読破してしまうぐらい面白い本である。本書は創傷の消毒法,上皮化などに関して,皆がおかしいと思っていたことを堂々と批判し,新しい形成外科的な傷の処置法を提案し,納得のいく理論的な説明がなされている。
傷に貼りついたガーゼをはがされ,疼痛に泣く処置を毎日受け続けるという,古くからの外科処置法は改善されなければいけない。本書は古典的な外科処置法の欠点を指摘し,最新の創傷治癒機序の解明にもとづいた創傷の管理法を実践し,その優位性を証明している。
確かに多くの形成外科医は,その経験から多くの間違った常識が創傷の治癒を遅らせていることは少なからず知っていたと思う。しかしそれはあくまでも個人レベルで,限られた患者さんにこの新しい処置法が試みられる程度であり,大々的な動きとはならず,皆何とかしなければと思うにとどまっていた。このような好機に本書は世に出たわけである。
夏井先生とは,かつて日本形成外科学会認定医試験問題作成委員会で仕事をご一緒したことがある。先生は当時まだ若かったが,膨大な問題点を綿密に調べあげ,他の委員を驚かせた。短期間に驚異的な仕事のできる天才的な人物という強い印象があった。
本書の魅力のひとつは,背景にある著者の綿密な理論の展開であろう。さらに,医療における従来の常識を打破しようとする反骨精神もすばらしい。著者の患者さんを思う優しい心から出た見解には,誰も反論できないであろう。
◆コメディカルや患者も読める,工夫された構成
この本の特長は,症例ごとに見開きとなっており,必要最小限の解説で実に読みやすく,きれいなカラー図による症例提示,気の利いたワンポイントアドバイス,各種創傷被覆材のリストなど,新しい試みが随所にみられ,実にうまくまとめられていることにある。これまで日本はおろか海外でもこのような本はなかった。
すでに著者の講演を聞いた若い医師,看護師などが,勉強会でさらに知識を深め,外来で実践しはじめている病院も多いと聞く。最近は褥瘡の管理をはじめとして,創傷の管理にかける看護師などのコメディカルスタッフのパワーは素晴らしい。患者さんの立場に立ったこの本は,彼らの間でベストセラーとなり,新しい創傷管理がはじまるであろう。多くの医療関係者はこの本を座右の銘とし,著者の提唱する創傷管理を実践すべきであろう。そして,多くの患者さんが包交の苦痛から開放されるであろう。患者さんやコメディカルスタッフが直接読んで,医者に処置法を逆に教えるということもありそうだ。