Editorial

“ヤブ化”を防ぐ! これだけ知っておけば“60点以上の及第点”
山中 克郎
福島県立医科大学会津医療センター 総合内科

 新型コロナウイルス感染症の流行で生活が大きく変化した。福島県から外に出ることは全くできなくなった。週末はのんびりと本を読んだり、執筆をしたり、ネットで映画を見る。しかし、1人きりになる時間が多いこの生活を、私は結構気に入っている。自分はあまり社交的な人間ではなかったようだ。人恋しくても美味しいものを食べると、明日も頑張ろうと活力が湧いてくる。

 cookpadと呼ばれるアプリがある。これがなかなかの優れものである。6年前に単身赴任を始めるまで、料理はほとんど作ったことはなかった。しかし、cookpadの人気メニューを見ながら作れば、中高年のおじさんでも結構おいしい料理を作ることができる。週末に3皿ぐらい料理を作っておき、少し味見をした後に分割冷凍し、その週の夕食とするのである。

 今月の特集『“ヤブ化”を防ぐ!「外来診療」基本のき Part 2』は、これだけ知っておけば”60点以上の及第点”という診断や治療のコツを学ぶ目的で企画された。料理の達人のレシピのように、臨床経験豊かなベテラン医のコメントは、外来診療を華麗に切り抜けるための強い味方だ。前回、同タイトルの特集(『総合診療』2019年9月号)でカバーができなかった「不眠」「肺炎」「心不全」「貧血」「低ナトリウム血症」などという外来患者でよく遭遇する症状や疾患を取り上げた。ヤブ化を防ぐ方策、紹介すべき状態、遭遇する頻度が高い重要疾患、検査や治療の基本、参考となるガイドラインなどについて解説されている。

 また、トピックスとして高齢者医療で大きな問題となっている「ポリファーマシー」、エビデンスがある「がん検診」、予防医療として重要な子どもと大人の「ワクチン接種」についても、簡潔に重要ポイントを教えていただいた。前作と合わせて読んでいただくと、最強の外来診療マニュアルとなるはずである。

 先日、前日の夕食だった水炊きを病院の電子レンジで温めていたら、大音響とともに扉が開き、勢いよく皿が飛び出してきた。床は水炊きが散乱し、一瞬にして悲惨な情景となった。鶏のうま味が出て美味しかったのに……。恐る恐るレンジの中をのぞくと、ゆで卵の残骸が壁面と天井にこびりついている。「ゆで卵を電子レンジで加熱すると爆弾になる」なんて、小学校で習わなかったぞ。単身赴任は毎日が冒険なのである。