今月の主題

アレルギー疾患を疑ったら,こう診る!

森本佳和(山田メディカルクリニック)


 今や国民の3割がアトピー性皮膚炎,花粉症,喘息などのアレルギー疾患をもつといわれている.アレルギー疾患はもはや国民病であり,どの医師にとっても,ますますその診療の重要性を増しているといえよう.アレルギー疾患は何科の医師にとっても頻繁に出会う疾患であるが,鼻・肺・皮膚……と,多臓器にいくつもの疾患が合併することがその診療に障壁を伴う.「プライマリケア医」の重要性が叫ばれているものの,プライマリケア医をかかりつけ医としてもち,その医師の管理のもとで,ほかの専門の科にかかる患者はまだ少数派である.つまり,アレルギー疾患の治療を求められた専門の医師にもプライマリケア医としての役割が求められ,プライマリケア医にもアレルギー専門医としての役割が求められているのが現状である.当然,難治例は別としても,あるレベルを維持しながら,アレルギー全般の診療を行うことは可能であるし,またそれが求められているのである.

 また,アレルギー疾患によって致命的な結果をもたらされることもあるものの,アレルギー診療の多くは患者のQOL(生活の質)を改善することが目的となる.そのため,従来から比較的軽視されがちで,その診療の質向上にあまり努力が払われない傾向があったことも事実であろう.アレルギー診療も科学の発達,エビデンスの集積によって常に改善されて進化している.多くの医療関係者にそれらを伝えることのできる一貫したアレルギー診療の情報提供の場は大変重要であると考えられる.

 このような背景をもとに,本特集は特に一般内科医・プライマリケア医・研修医の方々を対象に,日常での診療現場において,新しいガイドライン・知見を取り入れた効果的なアレルギー診療を可能にすることを目的として企画した.また,導入されて間もない抗IgE抗体や将来的な展望を含めた新しいアレルギー診療についても扱っており,より専門的な知識を求める方にも有益なはずである.これらの内容を,私が尊敬してやまない,各分野の権威の先生方,現場第一線で活躍される先生方など素晴らしい著者陣にご執筆いただいた.

 読者の方々のアレルギーへの興味と知識を深め,アレルギー疾患の診療技術の向上の一助となれば,たいへん幸いである.