今月の主題

ズバリ!見えてくる不整脈

村川裕二(帝京大学溝口病院第四内科)


1903年12月,ノースカロライナ州.
ライト兄弟の12馬力の飛行機は12秒だけ空中に浮かんだ.
ブレークスルーまでは時間がかかるが,ひとたび動き出せば話は早い.
40年も経たずにジェット機が飛んだ.

1903年とくれば,アイントーベンが心電図を報告した年.
少しずつ不整脈のメカニズムもわかってきた.
抗不整脈薬はいろいろできたし,外科的治療も行なわれた.
なのに,どうもすっきりしない.
不整脈の治療にブレークスルーは来なかった.

1980年を過ぎて現れたのがカテーテル・アブレーション.
房室結節の離断から始まって,PSVTや心房粗動にとどめを刺した.
コレくらいでひとまず……と思っていたら,心房細動にまで手を出してしまった.

一方,植込み型除細動器は致死的不整脈が致死的でない時代を作った.
海の向こうでは,なんだかんだと言いながら植込み型除細動器の適応を広げている.
不整脈治療はブレークスルーを経験した.

しかし,「多過ぎる情報」は「整理できない頭」に混沌を招くばかり.

というわけで,今回の特集は……
●抗不整脈薬がピンと来ないし
●期外収縮の数にとらわれて,
●wide QRS tachycardiaに歯がたたず,
●ハイリスク患者を見逃しそうで,
●QTが長いのとQT延長症候群がどう違うのかよくわからない
のどれかにあてはまる方を念頭に企画した.

ねらうのは……
●薬物治療の迷路から抜け出せて,
●非薬物治療がいまどうなっているのかみえてきて,
●心房細動と血栓塞栓症の治療が納得できること……
精鋭執筆陣にはホンネのところを依頼した.
不整脈診療は面白い.楽しんでいただければ有り難い.