今月の主題

しびれと痛み
患者の“何か変な感じ”をどう受け止め,応じていくか

大生定義(立教大学)


 外来診療では痛み・しびれで受診する患者さんは多い.この感覚は身体的な問題の存在を示唆することもあり,重要な体からの警告であることもある.また,心因性の場合もあり,心からのメッセージとして捉えるべきときもある.

 医師も患者もこのしびれ・痛みという感覚が何なのか捉えきれず,治療のタイミングを逸したり,症状が固定化することもある.この変な感じを早めに上手に適切に捉え,患者さんのQOLの回復・向上の援助をすることが臨床医の務めであり,それがうまくできれば医療専門職としての喜びにもなろう.

 もちろん,外来の初診医は,自らで十分に取り扱えない分野のものは,適切な時期を逸することなく,適切な他の医師に患者さんを紹介することもまた重要な任務である.

 この特集のねらいについては,次ページに骨子を述べるが,巻頭にしびれ・痛みに関して,やや独断的な基本4項目を挙げておきたい.本誌をお読みになってご批判を頂きたいと願っている.

  1. しびれ・痛みの症状が患者さんにとって何を意味しているのか,そしてどんな苦痛なのかを確認する.
  2. 医療面接・身体診察を頻度や年齢・背景因子などを考慮して,系統的に行い,「上肢なら何」「下肢なら何」「半身なら何」というふうに,治療可能性,致死性,頻度を考慮したそれぞれの診療の場にあった鑑別診断を進める.
  3. 特に,運動麻痺,手足以外の部位のしびれ・痛みのあるものや身体的な随伴症状のあるしびれや痛みは専門医への紹介を早めに的確に行う.
  4. 心因性や糖尿病,薬剤,膠原病,免疫性など原因を追求し,粘り強く再検討しても,結局は原因不明のしびれで進行も強くないものも稀ではないことも心得ておくべきである.高齢者や中年以降の慢性的な下肢の感覚優位のポリニューロパチーは結構多い1,2)

1) Wolfe GI, et al:Chronic cryptogenic sensory polyneuropathy;Clinical and laboratory characteristics. Arch Neurol 56:540-547, 1999
2) Baldereschi M, et al:Epidemiology of distal symmetrical neuropathies in the Italian elderly. Neurology 68:1460-1467, 2007