HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻7号(2007年7月号) > 連載●Case Study 診断に至る過程
●Case Study 診断に至る過程

第11回テーマ

病歴と身体所見 2

松村正巳(金沢大学医学部付属病院リウマチ・膠原病内科)


 本シリーズではCase Studyを通じて鑑別診断を挙げ,診断に至る過程を解説してみたいと思います。どこに着目して鑑別診断を挙げるか,次に必要な情報は何か,一緒に考えてみませんか。

 さて,今回の患者さんです。

病歴&身体所見

66歳,女性

主訴:手の関節炎,筋肉痛,発熱
現病歴:生来健康であったが,10週間前から手の対称性の関節炎,筋肉痛,食欲低下が出現した。また,2時間あまり続く,朝の手のこわばり感があるという。6週間前からは37℃台の発熱を認めるようになった。さらに,3日前からは最高38。5℃の発熱を認めていた。この2カ月で1。5kg体重が減ったという。食べ物が飲み込みづらいということはないが,口腔内の乾燥感は数年前からあるという。また,10カ月程前からは水仕事をすると,指が白くなる現象を認めていた。
既往歴:特記事項なし。
家族歴:特記事項なし。
嗜好:たばこは吸わない。お酒は飲まない。
職業:主婦
ペットは飼っていない。
身体所見:血圧120/74mmHg,脈拍96/分,整,体温39。1℃,呼吸数20/分。患者さんには慢性的な病的な印象がある。リンパ節腫脹,皮下結節,皮疹は認めない。眼,耳,鼻,口腔に異常所見はない。呼吸音,心音に異常なし。腹部にも異常所見なし。
両手の指は全体に腫れており,PIP(近位指節間),MP(中手指節)関節に腫脹,圧痛を認める。左の第2,3指の爪床の毛細血管の拡張を認める。また,下肢に沈下性の浮腫1+を認める。徒手筋力テストで異常は認めない。

 いかがでしょうか。まず病歴,身体所見から問題点を重要なものからすべて挙げて,鑑別診断を考えてみたいと思います。検査をオーダーする前に,どこまで診断に迫ることができるか,チャレンジしましょう。

プロブレムリスト

  1. 手のPIP,MP関節の対称性の関節炎
  2. 朝の手のこわばり感
  3. 発熱
  4. 寒冷刺激で指が白くなる→レイノー(Raynaud)現象
  5. 爪床の毛細血管の拡張
  6. 筋肉痛
  7. 口腔内の乾燥感
  8. 下肢浮腫
  9. 食欲低下,体重減少

 プロブレムリストのどの項目に注目したらよいでしょうか。まず,この方は10週間にわたり,多発性の関節炎が持続しているので,慢性多発性関節炎として鑑別を考えてみましょう。

(つづきは本誌をご覧ください)


松村正巳
1986年に自治医科大学を卒業し,石川県立中央病院でローテート研修後,奥能登,白山麓など県内諸国巡業の旅に出ました。数年前にLawrence M. Tierney先生に出会ってから,仕事上の目標が大きく変わってしまいました。病歴と診察でどこまで診断に迫ることができるか修行中です。