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●手を見て気づく内科疾患

第13回テーマ

カロチン血症,あれ黄疸?

松村正巳(金沢大学医学教育研究センター リウマチ・膠原病内科)


図1 両手の指が黄色い
図2 手掌も黄色い
患者:50歳,女性
病歴:10年前から慢性糸球体腎炎で外来通院中である.冬のある日の診察時のこと「先生,1週間前から手の色が気になるんです」.
身体所見:手の指,手掌を中心に黄染を認める(図1,2).眼球結膜に黄染は認めない.
「柑橘類はお好きですか?」とお聴きすると,「大好物です」とのお答え.「ここしばらくみかんを毎日7個食べていました」とのこと.みかんの旬の時期が過ぎたら黄染は自然にとれた.

診断:カロチン血症,別名柑皮症

 柑皮症は冬場に多く見かけます.みかんを多く食べるのが原因です.眼球結膜が黄染していないこと,柑橘類を多く摂取していることがわかれば,黄疸との区別がつきます.黄疸の有無を身体診察上評価するには,眼球結膜の黄染を観察するのが最もよい方法です.カロチン血症では手掌,足底,鼻に黄染を認めるのが特徴です.カロチンが多い柑橘類,人参,南瓜などの過剰摂取を止めれば自然に治るので治療の必要はありません1)


(画像は本誌をご覧ください)

文献
1)Bickley LS, Szilagyi PG:第5章 皮膚,毛,爪.ベイツ診察法,p 133, メディカル・サイエンス・インターナショナル,2008