HOME雑 誌medicina誌面サンプル 46巻8号(2009年8月号) > 連載●手を見て気づく内科疾患
●手を見て気づく内科疾患

第8回テーマ

リウマチ性多発筋痛症,高齢者の手の浮腫には注意

松村正巳(金沢大学医学部付属病院 リウマチ・膠原病内科)


図1 手背に浮腫を認める.
図2 第4 病日,浮腫の改善を認める.
患者:93歳,女性
病歴:3週間前から左手の腫脹,疼痛が出現した.近医にて蜂窩織炎と診断され,加療されたが改善しなかった.2週間前からは右手にも腫脹が出現した.さらに,肩から上腕のこわばり感,疼痛のため朝は起きることができなくなった.こわばり感は1時間以上持続する.体重が2kg減ったという.
身体所見:両手背に浮腫を認める(図1).側頭部の圧痛はない.
検査所見:血沈70.0 mm/時間,リウマトイド因子陰性

診断:リウマチ性多発筋痛症(Polymyalgia rheumatica:PMR)

治療経過:プレドニン10 mg/日の投与で翌日には手背の浮腫,症状は劇的に改善した(図2).

リウマチ性多発筋痛症にはBirdの診断基準があります1).血沈の亢進以外に特異的な検査はありません.病歴,身体所見が大切です.

1:65歳以上
2:血沈40 mm/時間以上
3:両肩甲部の疼痛・こわばり
4:両側上腕部の圧痛
5:急激な発症(2週間以内に症状が完成)
6:朝のこわばりが1時間以上持続
7:抑うつ状態または体重減少

以上のうち3つ以上を満たせばよいとされています(感度92%,特異度80%).

ステロイドが奏効します.診断を正しく行い治療されれば,とても喜ばれる疾患です.

(画像は本誌をご覧ください)

文献
1)Bird HA, et al:An evaluation of criteria for polymyalgia rheumatica. Ann Rheum Dis 38:434-439, 1979